前代未聞の攻撃力100万オーバー。
デュエル界の常識を打ち破り――寧ろ常識を宇宙の彼方に蹴り飛ばした必殺の一撃が炸裂し遊哉の逆転大勝利!
ライフ1からダークネスの90万以上という異常なライフを、其れを上回る異常攻撃力で粉砕しての完全決着。
戻って来た遊哉に仲間達も駆け寄る。
「流石ね遊哉!」
「やったな緋渡!」
「おうよ!ま、オメェ等が居たから紅蓮迦具土の覚醒に至れたんだけどよ。」
勝利を称える仲間達に、しかし遊哉は偉ぶらない。
自分が勝てたのは仲間のデュエルからヒントを得たのだと言う事は誰よりも分っているから。
「ときに霧恵よぉ?」
「ん?」
「勝利の御褒美はなしっすか!?」
「さっきのは勢いよ!!もう人前では絶対やんない!!」
「え~~…」
そして矢張り遊哉と霧恵は何時も通りである。
遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel95
『The End Of Darkness』
「まぁ、霧恵からの御褒美は冗談としてもだ……往生際がワリィなこの腐れ骨は…」
「冗談てアンタね……けど、本当に潔くないわね?」
遊哉達の眼前には黒い塊が。
言うまでもない、遊哉に粉砕されたダークネスの成れの果てだ。
骸骨の身体は消し飛んだが、それでも思念体は健在。
デュエルに負けたくせに何か企んで居る様だ。
「ったく…テメェ負けたんだから潔くクリスタルに封印された雪花達の身体と、カードに封印した魂解放しろよ。
負けて尚苦し紛れに暴れて道連れ狙うなんぞカッコワリィにも程があんぞ?」
『黙れ…そいつ等は解放してやるが…貴様等は全員道連れにしてやる!!』
瞬間、クリスタルが砕け、雪花達の身体が淡く光る。
恐らくは封印が解除され魂が戻ったのだろう――数時間有れば目を覚ますはずだ。
だが其れとは別に、ダークネスの思念体は闇を吐き出しながら肥大化し遊哉達を道連れにせんとする。
倒せないならいっそ闇に引き込んでしまおうと言う所だろう。
何処までも往生際が悪いが、其れを仕掛けた相手が悪すぎた…
「この腐れダボが…!来い『真邪龍皇-ザベルズ』『聖女神-エアトス』『紅天炎龍皇-紅蓮迦具土』!」
「お願い!『聖光霊魔導師-ライナ』『聖獄炎霊魔導師-ヒータ・ヘラルド』『神水霊魔導師-エリア・ヘカーテ』!」
「頼むぞ『ジャンク・ウォリアー』『クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン』『コズミック・クェーサー・ドラゴン』!」
「咲き誇れ『ブラック・ローズ・ドラゴン』『月華竜 ブラック・ローズ』『魔天使-ローズ・ヴァルキリー』!」
「醜いわね…撃ち滅ぼせ『フルール・ド・シュバリエ』『ホーリー・ヴァルキュリア』『スカイソード・ドラゴン』!」
「不満足にも程がある…ヤレ『インフェルニティ・デス・フェニックス』『煉獄神 ナハトヴァール』『煉獄龍 オーガ・ドラグーン』!」
「大人しく消えろ!カモン『TG ストライク・ブレイカー』『TG ブレード・ガンナー』『TG フリーダム・ストライカー』!」
真のデュエリスト7人を相手に其れは余りにも悪手。
全員が3体ずつエース級を召喚しダークネスの思念体を迎え撃つ。
「テメェの往生際の悪さだけは国宝級って褒めてやるぜ堕骨。
けどな、もちっと相手にしてんのが誰か考えろや?……俺達がテメェなんぞに道連れにされると思ってのか?」
「もし思ってるんならお目出度いにも程があるわねダークネス。
デュエリストの魂は砕けないのよ……闇の使者の瘴気であろうともね。」
遊哉と霧恵を筆頭に誰も臆さない。
この悪辣な闇の使者を滅する事に迷いなどは無い。
召喚されたモンスターの力も臨界点突破状態だ。
「テメェみてぇな骨は未来永劫骨壷にでも引き篭もってろ!」
『行くぞ皆のもの!!』
『塵は塵に、灰は灰に!此れで終りだよダークネス!』
『一斉攻撃だ!行くぞオメー等!!』
――キィィィィン……ゴォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
紅蓮迦具土、エリア・ヘカーテ、ヒータ・ヘラルドの号令を合図に21体ものモンスターの一斉攻撃発射!!
超弩級のモンスターの攻撃は溢れ出した闇の瘴気をも簡単に引き裂いてダークネスの思念体を撃ちつける。
『ば、馬鹿な…!如何に上位の精霊達が居るとは言え、私がモンスターの攻撃で沈むなど…!』
最上級モンスターが揃い、7つもの属性が1つになった攻撃は虹色に光りながらダークネスの思念体を削って行く。
徐々に思念体から発せられている闇も小さくなり――
――バガァァァァン!!
爆発!!
それでも未だダークネスは消えていない。
…尤も、既に殆ど残留思念で消えるのも時間の問題だが。
『ぐぅぅ……仕方ない、今この時は闇に還るとしよう…だが、人の心に闇がある限り私は不滅。
何時の日か必ず蘇る……そしてその時は、今度こそ世界を闇に染め上げ支配してくれよう…』
「言ってろ中古骨格モデル、テメェの野望なんざ俺達デュエリストが居る限り成就する事はねぇ。
そうだな、遥か未来に復活しちまったら――その時は俺の子供達によろしくな?それじゃあ、な!!!」
――メキィィィ!!
トドメに喧嘩キック一発!
思念体にどうやって蹴りをかましたのかとか聞いてはいけない――だって遊哉だから。
『お、オノレェェエ…!!』
――シュゥゥゥ…
其れがトドメとなってダークネスは完全消滅。
「…普通思念体を蹴る?」
「と言うか普通は触れられないでしょう?」
「まぁ、緋渡だからな…」
「「「「「確かに。」」」」」
其の止めの一撃も妙に納得されているのだった。
――――――
さて、ダークネスが消えたとなれば其の配下にあったデュエルモンスターズのモンスターも活動は出来ない。
童実野町の彼方此方で、暴れていたモンスター達が消滅している。
「モンスター達が消える……善次郎殿此れは!」
「おう、やってくれたぜチーム遊戯王が!!」
殲滅戦でリーダー的な立場にあったチームYAMATOの撫子とチームレックスの善次郎もホッと一息。
モンスター達が集中していた埠頭付近を担当していた身としては一息つきたくもなるだろう。
「ヤレヤレ…やっとこ一息じゃ…」
「ま、俺達もちゃんとやる事やったから少しばっかし休んでもいいだろ。」
その場に腰を下ろして休憩。
まぁ、街で戦ってたチームメンバーや他のデュエリストから『モンスター消滅』の報告が次々と入ってくるので其の対応には追われているが。
「って、ところで撫子さんよ、あいつ等どうやって神殿から帰ってくるんだ?」
「む…そう言えば海上に道らしきものは無いの……」
「だよな?てか大概の場合ラスボス倒したらこの手の神殿とかは…」
「ウム、崩壊するのがお約束じゃ。」
「「…………………」」
沈黙。
確かに良くあるパターンでは有るだろう、ラスボスの神殿崩壊というのは。
だが、其れに思い至ったとて撫子と善次郎で如何にかできるかと言われれば、其れは否。
ぶっちゃけどうしようもないだろう。
「…まぁ、あやつらなら大丈夫じゃろ?」
「んな適当な……ん?」
――バババババババババババババ!
「…アンタの言う通り大丈夫かもな。今の辰巳財閥のヘリだよな?」
「じゃろう?と言うか辰巳財閥のマークは入っていたが軍用輸送ヘリでなかったか?」
「「……ま、無事に帰ってはくるだろ。」」
取り合えず大丈夫のようだ。
――――――
「王道的に神殿の崩壊が始まってるわけだが如何したもんかな遊星?」
「大丈夫だ、辰巳に連絡を入れて救助ヘリを出してもらった。」
「流石に仕事が早ぇ。」
神殿最上部でも崩壊が始まっていながらも結構余裕があった。
少なくとも最上部はまだ無事だし、揺れも殆ど無い。
埠頭から神殿までの距離を考えれば、ヘリも直につくだろう。
――ババババババババ!!
「おぉ、来たか……って自衛隊のバートル機!?」
「…人数多いしDホイールも乗せなきゃならないから都合はいいな。」
そして到着したのは塗り替えられた自衛隊の輸送機。
恐らくはレンが、旧式機体を極秘に買い取ったのだろう…
「皆無事かい、迎えに来たよ!さぁ、乗った乗った!!」
「派手な登場してくれるぜレン!だが其れが良い!バートルで来るとは思わなかったけどな!」
「人数多いしDホイールも運ぶなら此れさっ!」
話しながらも次々と乗り込んで行く。
勿論雪花達の収容も一緒に行っている。
「おんや?この子はファントムの子だよねぇ?すっごい怪我だね~~…」
「あぁ、可也酷い。詳しくはヘリの中で話すが、緊急入院の手配をして欲しい。」
「訳ありか……OK、即刻手配するよ!」
あんまり踏み込んで聞かないのもレンの良い所だ。
おかげで話はスムーズに進むのだから。
「全員乗ったね?」
「霧恵、遊星、十六夜、シェリー、満足、ブルーノ、雪花以下4名全員OKだ!」
「って、何で俺だけ満足なんだ!!」
「ノリに決まってんだろ!!」
「……取り合えず離陸OKよ。」
「了解!!全速離陸、童実野中央病院に向かって驀進!!」
遊哉と鬼柳のダチ公漫才は隅に置き、霧恵がOKを出して機体は急速上昇し神殿から離陸。
そして、これまた良くあるパターンだが、離陸して充分距離があいた所で、最上部も崩壊。
神殿は音を立てて崩れ去り海の藻屑と化した。
「こら又見事に崩れたなオイ。」
「1000年位経ったら『謎の古代遺跡』として発掘されるかもな。」
ダチ公漫才も取り合えず終って全員無事。
ヘリは一路『童実野中央病院』目指して飛行を続けていった。
――――――
――1週間後:童実野中央病院・507号室(個室)
「ウィ~ッス、調子はどうだ雪花?」
「見ての通り、命は助かったけど全身痛くて堪らないわ。」
遊哉は雪花の見舞いに来ていた。
神殿から離脱し、直ぐに向かった病院では緊急手術が行われた。
受身を取ることも出来ずにDホイールクラッシュを喰らった雪花の身体は結構やばい状態だった。
どれ程かと言うと、現在自由に動かせるのは右腕のみと言えば分るだろうか?
手術は成功したものの、意識は中々戻らず、つい2日前に意識が戻ったばかり。
まぁ、意識が戻ったからこそ『ICU(集中治療室)』から一般病棟に移ったわけだが…
「ま、ゆっくり養生すりゃいいさ。」
「勿論そうするけど……私とフレディは無罪放免で良いのかしら…?」
話は出来るので少しばかり話す。
神殿崩壊後、あの内部で遊哉達を待ち構えてた4人は夫々違う結末が待っていた。
アギトは言うまでも無い。
元々が服役中であったために塀の中に逆戻り、脱獄の罪が加わって懲役年月が増えた。
ディックは…何と言うか精神鑑定中。
調べた所重度の麻薬中毒者であることが発覚し、どれほどのレベルか精神鑑定が必要になったのだ。
尤も、麻薬の不法所持と使用で言うまでも無くお縄になっている。
で、雪花とフレディだが……特に何も無い。
幸運と言うか何と言うかファントムとしての活動は本より、ファントム加入以前の事件その他について『証拠が無い』のだ。
ダークネスが雪花の力を操って起こしたと言う数々の事故や事件。
闇堕ちしたフレディのデュエリスト襲撃事件、全てが無証拠故に逮捕も何も無いのだ。
仮に自首しても証拠が無いのでは数日間取調べの為に留置所に入るくらいで『証拠不十分』で釈放だ。
フレディに襲われたデュエリストも、ダークネスが記憶を操作していたらしく『誰に襲われたか覚えてない』らしい。
「良いんじゃねぇの、証拠ねぇんだし。まぁ、刑務所入るだけが罪の償い方じゃねぇだろ?
大体オメェもフレディのオッサンも、あの骸骨未満のせいで悪行働かされてたんだから直接的な罪は0だっての。」
「だが、私の心が強ければ…」
「アホ、お前の心は強いよ。強いからこそあのボケは『疑似人格』なんぞを作らざるをえなかったんだろ。
結局お前の心を闇に取り込んで自由にできなかったからそんな事したんだろうしよ。」
「え?」
「敢て言うなら、オメェは自己評価が低すぎだ――もっとテメェに自信持てよ?
本当は強いのに『弱い』って自分を卑下してたら……また精神のバランス欠いてアイツに入り込まれちまうぜ?」
「!!」
雪花に、遊哉は自分の思った事を素直に伝える。
きっと本気でそう思っているのだろう。
「もしそれでも自信がねぇってんなら、さっさと怪我治してフレディと世界一周デュエルの旅でもしてみたら如何だ?
存外、今まで見えなかったものが見えるかも知れねぇし、新しい仲間が出来るかもだぜ?俺が遊星と出会ったみたいにな。」
「……それも、良いかもしれないね…」
「ま、如何するかはテメェで決めりゃ良い。決められなかったらフレディに相談しろよ……仲間なんだろ?」
「えぇ、そうするわ……ありがとう緋渡遊哉…」
「どういたしましてっと…んじゃ、そろそろ帰るわ。」
もとより余り長居するつもりはなかったのか、遊哉はそろそろ帰るらしい。
だが、雪花にはふと『何か』が感じられたのだろう。
「…何か、とんでもないこと考えてないか?」
「さて、如何だろうな?」
悪役全開の笑みを浮かべて答えをぼかして病室をあとにする。
そして、その日の夕方に雪花が感じた『何か』が何であったのか判明する事になる。
霧恵のコンドミニアムから遊哉が消えたのだ。
たった1枚のメモ書きを残して…
「アンの馬鹿垂れは何考えてんのよ!!!」
霧恵が少々キレ掛けてるこの状況。
残されたメモには、こう記されていた。
『1ヶ月ほどデュエルの武者修行してくっからくれぐれも探したりしないように!
1ヶ月経ったら連絡いれっから、そん時まで元気でやってろよ~~!んだばアディオス!!By緋渡遊哉(悪役)』
果てさて一体何を考えての武者修行なのか?
其の答え――其れは1ヵ月後にチーム遊戯王とその関係者が知る事になるのだった。
To Be Continued… 
*登場カード補足