シンクロ、エクシーズ、融合、儀式を夫々1体ずつリリースして現れた『虚無の神皇−エンドレス』

 さながら『蜘蛛人間』とでも言うべき姿は生理的嫌悪感を催すモノがある。

 「うわ…よりにもよって蜘蛛人間かよ?悪趣味にも程があるだろコラ。
  ったく、テメェ自身が骨人間だからって使うモンスターまで気持ちの悪いの用意してんじゃねぇ!」

 遊哉ですら『気持ち悪い』と思うくらいなのだから相当だろう。
 尤もそれでも悪役は怯まないし、退かない。

 「まぁ、気持ち悪かろうが4体もリリースしたんだ、高々攻撃力5500だけってこたねぇよな、肉食獣の食べ残し?」

 「確かにそれだけでは無い。……が、さっきから聞いていれば好き放題呼んでくれるな?私を何だと思っているのだ?」

 「骨。」



 「「「「「「確かに。」」」」」」


 でもって、ダークネスの問いに対する答えは霧恵達も見事に納得するものだった。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel93
 『Ignition New Advance』











 「貴様…」
 ダークネス:LP3400    SC5
 虚無
の神皇−エンドレス:ATK5500



 「だってマジに骨だろうが?それ以上にシンプルな呼び名があるか!」
 遊哉:LP4000   SC5
 真炎龍皇−カグヅチ:ATK3700
 真嵐龍皇−ミナギ:ATK3300
 邪龍皇−ヴァリアス:ATK3800(マキシマム・スピリッツ装備)

 守護女神−エアトス:ATK4000


 いやはや、相手の神経を逆撫でして煽る煽る。
 此れもまた遊哉が得意とする心理戦ではある。

 徹底的に相手を挑発して冷静さを失わせる。
 此れに引っかかるようではそもそも相手にすらならないだろう。

 「私を侮辱した罪は其の命で払って貰おう…」

 ダークネスは(骨故に表情は読めないが)怒っても冷静さを失わないタイプのようだ。
 そうなると逆に厄介なのだが…其れはそれでだ。

 冷静さを失わずに来たら今度は真正面からぶちのめすのが遊哉だ。

 尤も、こんな挑発は完全に『敵』と認識した相手にしかしないのだが…

 「エンドレスの効果発動。
  特殊召喚に成功した時、自分の墓地からシンクロ、エクシーズ、融合、儀式モンスターを1体ずつ特殊召喚出来る。
  ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効になり、攻撃は出来んがな。」

 其のダークネスが使ったエンドレスの効果は『大量展開』。
 効果も無効になって攻撃不可とは制限は大きいが、この展開力は恐ろしいだろう。

 「虚無の神皇の命により、墓地から蘇れ『虚無と無限の使徒』『無限と虚無の蛇龍』『無限と虚無の堕天使』『虚無と無限の幻獣』!」
 虚無と無限の使徒:ATK3500
 無限と虚無の蛇龍:ATK3000
 無限と虚無の堕天使:ATK3000
 虚無と無限の幻獣:ATK3200



 再び現れた4体の虚無と無限の住人。
 だが、此れだけでは遊哉のモンスターには及ばない。
 攻撃もないのでは、結局エンドレスで攻撃してもカグヅチの効果で無効にされるだけだろう。

 「4体のモンスター…けど効果無効で攻撃も出来ねぇんじゃ如何しようもねぇ。
  其のチートトラップの効果で手札増やして何引くかの運試しでもしてみるか?」

 「無論『虚無の深淵』の効果を発動する。
  手札を全て消費しているので6枚ドローし、さらに『無限の回廊』の効果で3600ポイント回復する!」
 ダークネス:LP3400→7000


 其処でドロー強化。
 更にはライフも回復し、遊哉の猛ラッシュで削られたライフを一気に回復してしまった。

 「此れで私の手札は6枚となった。
  さて、ではエンドレスの第2の効果を発動しようか?」

 「あ?第2の効果だと?」

 「如何にも。エンドレスは私のターンに1度だけフィールド上のモンスターの攻撃力の合計値分私のライフを回復できる。」

 「ま〜〜たライフゲインかよ!…つーかちょっと待て、『フィールド上』?」

 「その通り…この効果はお前のモンスターも巻き込んで発動するのだ!」

 第2の効果は極悪とも言うべきライフゲイン効果。
 自ターンに1度とはつまり、毎自ターンでの発動が可能と言う事。
 フィールドの全てのモンスターの攻撃力の合計分の回復とは凄まじい。

 「ふはははは、貴様に削られたライフもこの通りだ。」
 ダークネス:LP7000→34500


 1200ポイントまで削られたライフがあっという間に3万を超えてしまった。
 しかも此れで終わりでは無い。

 「エンドレスの第3の効果発動!
  1ターンに1度、デッキからカード1枚を選択して手札に加える事が出来る!」

 「待てこらぁ!!無差別サーチとか卑怯クセェにも程があんだろ、この反則骸骨が!!」

 正にである。
 毎ターン毎ターン、欲しいカードを手札に加えられるなど反則にも程がある。
 つまりダークネスは、以降毎ターン自分の最高の戦術ができると言う事なのだ。


 「ドローの概念無視しやがって…毎ターンサーチって舐めてんのかテメェ!!」

 「ふふふふ…最終的に勝てばいいのだ――私はこの効果で、デッキからカードを1枚手札に加える。」

 果たして何のカードを手札に加えたのだろうか?
 少なくとも平凡な力のカードでは無いだろう。


 「『何を加えた』と思って居るな?…見せてやろうその姿を!
  私は再び使徒、蛇龍、堕天使、幻獣の4体のモンスターをリリース。」

 「又4体リリースだと?」

 「そうだ…このモンスターもまた、シンクロ、エクシーズ、融合、儀式が必要なモンスターだ。
  4つの大いなる魂を今此処に捧げる。無限は何時しか虚無を生み、世界は闇に沈む。現れよ『無限の神帝−エンプティ』!」

 『ウガァァァァァ…!!』
 無限の神帝−エンプティ:ATK5500



 そう、呼び込んだのは無限の支配者。
 無限でありながら零・空虚の名を冠したモンスター。
 エンドレス同様に黒い闇の瘴気を纏い、上半身は女性で下半身は蛇、背からは蜘蛛の足のようなものが生えている。
 虚無と無限――不気味な外見をした二柱の超大型モンスターが揃ったのだ。

 「人と蛇と蟲かよ……マジ悪趣味だなテメェは…ゲテモノ展覧会は余所でやれよ。」

 「口が減らぬ奴だ…だが、このターンで何時までそんな口が利けるかな?
  エンプティの効果発動、特殊召喚時に相手モンスターを全て破壊し、破壊したモンスター1体に付き1000ポイントのダメージを与える!」

 「無駄だつってんだろ!エアトスの効果でシンクロモンスターは1ターンに1度だけ相手のモンスター効果を受けねぇ!」

 特殊召喚時の強力な誘発効果も守護の女神の前には其の力を霧散させる。
 遊哉のモンスターはつまり無事なわけだが、攻撃力は相手の方が圧倒的に上回った状態だ。

 「ふむ…ならばエンプティの第2の効果を発動。
  1ターンに1度相手モンスターを2体までゲームから除外できる。
  そしてこの効果に対してのモンスター効果は発動できん……散れ、真炎龍皇と真嵐龍皇!」

 「させるかよ!カウンタートラップ『守護された財宝』
  相手のカード効果の発動と効果を無効にし、互いにカードを1枚ドローする。」

 「ほう…私にドローさせてライフも回復してくれるか…」
 ダークネス:LP34500→35100


 「今更テメェのライフが600増えたからって其の程度は微々たるモンだろ?
  それに…其のライフは俺が完璧に焼ききるからな!」

 ライフこそ回復させる結果になったが矢張りモンスターは護る。
 だが、其れを見てダークネスは(凄く分り辛いのだが)笑みを浮かべていた。(様に見える…骨なので詳細が分らない)

 「…成程な、矢張りモンスターは護るか…」

 「あん?」

 「『悪』を名乗るにしては情の厚い事だが……ならば人情派の貴様はこんなカードには如何対応するかな?
  スピードスペル『Sp−虚無と絶望の連鎖』
  私のスピードカウンターが5個以上あり、尚且つ『虚無』『無限』と名の付くモンスターが2体以上存在する時に発動できる。
  相手のライフに私の場に存在する『虚無』『無限』と名の付くモンスターの攻撃力の合計分のダメージを与える!!」

 其の不気味な笑み(?)から発動したのは極悪なバーンカード。
 ダークネスのモンスターの攻撃力の合計は11000。
 決まれば一撃だ。

 「このカードで貴様のライフは燃え尽きるが……安心しろ、貴様の選択如何によっては生き残る事が出来るぞ?」

 「あぁ、んだと?」

 「このカードのバーンダメージは特大クラスだが、相手は己のモンスターを任意の数リリースする事で、
  リリースしたモンスターの攻撃力の合計分のダメージを軽減できるのだ。」

 だが、流石に軽減手段を内蔵はしていた。
 していたが、此れは最悪とも言える選択を突きつけた形だろう。

 「俺のモンスターを…!」

 「そうだ、そうしなければ貴様は死ぬ。
  さぁ、如何する?自分の命の為に仲間を生贄にするか、それとも仲間を護って自分が犠牲となるか…選ぶが良い。」

 「…クソ野郎が…!」

 モンスターをリリースしなければ遊哉のライフは0になる。
 自分か仲間かの二択…究極の選択だろう。

 が!

 「…なぁんて言うとでも思ったかタコ!
  俺か仲間かだと?舐めんなボケ!俺も龍皇もエアトスも、一緒に戦うって決めた時から覚悟は出来てんだ!
  ライフが残ってりゃ、仲間を蘇生するこたぁ何ぼでも可能だぜ!
  カグヅチ、ミナギ、ヴァリアス……すまねぇがお前等の事を生き残るためにリリースさせてもらうぜ!」

 『構わぬ!生き残って奴を必ず倒せ!

 「応!!」

 遊哉には迷いはなかった。
 精霊達との絆は、ダークネスが思っていた以上に深く、そして強いのだ。

 リリースしてしまっても、遊哉のライフが残っていれば蘇生もできる。
 其れに、フィールドから居なくなってもその存在が消滅するわけでは無いのだ。

 「貴様…!」

 「俺に迷いを与えようってか?調子こいてんじゃねぇぞコラ!
  デュエルにおいて、テメェのカードをリリースするなんざ日常茶飯事だろが。
  如何に精霊が宿ってるからって其れを戸惑うか……俺に言わせりゃ『否』だぜ!
  犠牲にする覚悟、犠牲になる覚悟……んなモンはとっくに出来てるんだよ。俺も、カード達もな!
  俺は3体の龍皇をリリースし、9800ポイントのダメージを軽減する!」
 遊哉:LP4000→2800
 守護女神−エアトス:ATK4000→4600



 3体の龍皇をリリースし、受けるダメージを1200ポイントまで減らし、更にエアトスの攻撃力も上昇。
 ダメージは与えたものの、ダークネスの仕掛けた心理戦は物の見事に大ハズレだった。

 微塵も闘気は揺るがない――どころか更に強くなっている。
 リリースした3体の龍皇が乗り移ったかと思うくらいに。

 「おのれ…ならばスピードスペル『Sp−虚無限の命』を発動!
  このカードはスピードカウンターに関係なく発動でき、発動時の自分のスピードカウンターの数だけ私のライフを倍加する。
  私のスピードカウンターは5個、よってライフを5倍にする!!」
 ダークネス:LP35100→175500


 「そして、もう1枚『Sp−虚無限の命』を発動し、ライフは更に5倍となる!!」
 ダークネス:LP877500


 それに歯噛み(?)しながらもライフを異常なまでに増やす。
 倍化の倍化でライフは90万近くにまで上昇し、普通だったら削りきれない数値だ。

 「如何に貴様でもこのライフは削りきれまい。
  しかも攻撃力が上昇したとは言え、フィールドのモンスターは守護女神1体のみ!
  お前の勝利は最早ありえぬ……バトル!無限の神帝−エンプティで、守護女神−エアトスに攻撃!『無限の連鎖』!」

 圧倒的にライフで有利に立ち、そしてバトルに。
 虚無の深淵の効果で戦闘破壊はされなくともダメージは受けてしまう。

 「エンプティの効果!モンスターを攻撃したことで発生する相手への戦闘ダメージは2倍になる。
  発生する戦闘ダメージは900――其の2倍、1800ポイントのダメージを受けてもらうぞ!」

 「お〜〜…反則効果も此処まで来ると呆れるしかねぇな。
  ちぃとばかしきついかもしんねぇが、此処は耐えてくれエアトス。」

 『大丈夫です、この程度蚊程も感じませんので。


 遊哉:LP2800→1000


 加えてダメージ倍化の効果。
 それでも全然揺るぎはしない。

 「続いてエンドレスでエアトスを攻撃する!『虚無の絶望』!!」

 休まずに追撃。
 再びエアトスを闇の波動が襲うが、キッチリ耐える。
 無論遊哉のライフは危険域まで減らされてしまうが…


 遊哉:LP1000→100
 「ちぃっとばかし残ったか……つーかミスしたな三流ホラー。」

 「ミスだと?」

 「明らかにミスだろうが。お前はこのターンで俺を倒す事も出来たんだぜ?
  ライフ回復を行わないでスピードワールド2の効果を使ってればな!」

 「!!」

 逆に遊哉はダークネスのミスを指摘するくらいに余裕だった。

 そう、ライフ回復のカードを使わずに、スピードワールド2のバーン効果を使っていたらこのターンで遊哉は負けてたのだ。
 明らかな戦術ミス、ライフ回復に固執した結果だ。

 「まぁ、残り4枚の手札にスピードスペルがあれば話は別だけどな?」

 「ぐぬ……カードを1枚伏せてターンエンド。」

 如何やらスピードスペルは無かったようだ。
 だがそれでもダークネスのライフは遊哉の8000倍以上もある。
 此れを削るのは至難の業だろう。

 「ハッ、無かったのかよ…ガチでつまんねー奴だぜ。
  まぁ、人の心の闇とやらに巣食って、其の心を食い物にするような下衆じゃ其の程度だろうな。
  雪花の分と、雪花を操って傷つけた連中の分…俺が纏めてテメェに返してやる!俺のターン!!」


 遊哉:SC5→6
 ダークネス:SC5→6



 「手札からスピードスペル『Sp−ドラゴニック・エンゲイジ』を発動!
  スピードカウンターが5個以上あり、俺のライフが相手より1000ポイント以上低い時に発動!
  デッキと墓地から1体ずつドラゴンを特殊召喚出来る!来い『フォーミュラ・ドラゴン』『ドラクリボー』!」
 フォーミュラ・ドラゴン:DEF1200
 ドラクリボー:DEF200
 守護女神−エアトス:ATK4600→4400



 此処は自分のライフが低い事を利用しての展開。
 だが、態々レベルの低いモンスターを出したのには当然理由があるのだろう。

 「進化の道に限りはねぇ!!本日3発目の大盤振る舞い!ぶっちぎるぜぇ…クリアマインドォォォ!!」

 シンクロチューナーを蘇生させたのは矢張りこのため。
 しかも今度の進化対象はエアトスだろう。

 『行きましょうマスター。

 「オウよ!レベル9の守護女神−エアトスに、レベル2のフォーミュラ・ドラゴンをチューニング!
  守護の光を宿した女神よ、其の力を昇華し、聖なる輝きと共に現れろ!アクセルシンクロォォォ!!!」


 ――ガシュゥゥン!!


 「降臨せよ『聖女神−エアトス』!」

 『この力で闇を…貴方を浄化しますダークネス!
 聖女神−エアトス:ATK3000


 更なる進化を成した女神は、其の力も増している。
 8枚の白銀の翼は聖なる力を宿し、手にした聖剣は金とも銀とも取れる不思議な輝きを放っている。

 「3度目の進化…だと?」

 「デュエリストの闘気と戦術と進化に上限なんざねぇんだよ!
  エアトスの効果!シンクロ召喚成功時、自分の墓地から魔法カードを1枚選択して手札に加える事が出来る。
  俺は墓地から『Sp−ドラゴニック・エンゲイジ』を手札に加える。
  そして聖女神となったエアトスは自分の墓地のシンクロモンスター1体に付き攻撃力が300ポイントアップする!
  俺の墓地のシンクロモンスターは9体!よって攻撃力は5700!!」

 『気高き魂よ、私に力を…!
 聖女神−エアトス:ATK3000→5700


 逆境からでも速攻で虚無と無限の2体を超えるモンスターを呼び出してきた。
 いや、ライフが100だろうと遊哉は自分がピンチだとは微塵も思っていないのかもしれないが…

 「マダマダ行くぜ!エアトスの効果発動!
  1ターンに1度、俺の墓地のシンクロモンスターを効果を無効にして特殊召喚出来る。
  俺はこの効果で墓地のアグニを蘇生させる!…頼むぜエアトス!」

 『お任せ下さい。蘇れ、猛き炎の龍皇よ!

 『うむ…礼を言うぞ!!
 炎龍皇−アグニ:ATK2900
 聖女神−エアトス;ATK5700→5400


 エアトスの効果で呼び出したのは…何故かアグニ。
 効果が無効になるのならばステータスの高いカグヅチを呼び出したほうが良いように思えるが…?

 「アグニ?…ミスをしたか?」

 「アホ、テメェと一緒にすんな、ミスな訳ねぇだろ!スピードスペル『Sp−ドラゴニック・エンゲイジ』
  コイツで墓地から『フォーミュラ・ドラゴン』、デッキからチューナーの『キッズ・ドラゴン』を特殊召喚する!」
 フォーミュラ・ドラゴン:DEF1200
 キッズ・ドラゴン:DEF400
 聖女神−エアトス:ATK5400→5100



 だが、如何やらミスをした訳では無いらしくフィールドは5体のモンスターで埋め尽くされる。
 一体何をしようというのだろうか?

 「コイツで揃った!レベル1のドラクリボーに、レベル1のキッズ・ドラゴンをチューニング!
  気高き龍の誇りが集い、更なる力で未来を開く!シンクロ召喚、進化の担い手、シンクロチューナー『龍姫リティア』!!」

 『さぁ、行きましょう!』
 龍姫リティア:DEF300



 新たに呼び出したのは何とシンクロチューナー。
 此れには観戦組も驚く。






 「シンクロチューナーだと?」

 「馬鹿な、此れではデルタアクセルシンクロは出来ないぞ!」

 遊星が先程の雪花戦で見せたデルタアクセルシンクロ。
 遊哉が揃えたモンスターから、誰もが遊哉もデルタを行うものだとばかり思っていた。


 遊星と霧恵を除いては。


 「遊星、デルタアクセルシンクロって3体のシンクロモンスターをシンクロさせるのよね?」

 「あぁ。俺とブルーノはシンクロチューナーを2体のシンクロモンスターにチューニングしたが…」

 「うん、遊哉は別の方法を狙ってる。……ヒントは私かな?」

 「だろうな。」


 この2人だけは遊哉が何を狙っているのか分っているようだった。






 「シンクロチューナーが2体?…今度こそミスしたな、それでは不動遊星が行った『デルタアクセル』とやらも出来まい!」

 一方、サーキット上ではダークネスが又も遊哉にミスを指摘していた。
 まぁ、先の遊星vs雪花を、雪花を通して見ていたダークネスからすれば、デルタアクセルを警戒はする。
 だが、2体のシンクロチューナーでは其れは出来ないとタカを括ったのだろう。

 「まぁ、確かに此れじゃあ遊星やブルーノがやったデルタアクセルは出来ねぇ。
  けどよぉ…テメェ何か勘違いしてねぇか?」

 「む?」

 「3体のシンクロモンスターをシンクロさせるのが『デルタアクセルシンクロ』だ。
  遊星とブルーノは1体のシンクロチューナーを2体のシンクロモンスターにチューニングしてた。
  だが、遊星とブルーノ、そして霧恵が俺にマッタク新しいシンクロ方法を教えてくれたぜ!
  3体のシンクロモンスターを使うってんなら2体のシンクロチューナーをシンクロモンスター1体にチューニングするのもアリだよな?」

 考えていたのはトンでもない戦術だった。
 自身のアクセルシンクロと、霧恵のダブルチューニングを融合したシンクロを行おうというのだ。

 「何だと!?…そんなことが…!」

 「出来るんだよなぁ此れが!!
  言っただろ、デュエリストの戦術に上限は無いってな!
  龍姫リティアの効果発動!シンクロ召喚成立時に、リティア以外のドラゴンが存在する場合、カードを2枚ドロー出来る!
  更に、ドラゴン・キッズはドラゴン族のシンクロモンスターのシンクロ召喚に使用した場合カードを1枚ドローする!
  リティアとキッズの効果で、俺は3枚ドローする!」

 先ずは手札の補充。
 遊哉の手札が少ないわけでは無いが、鬼柳のハンドレスのような特異なデッキを除けば手札は多いほうが有利なのだ。


 そして…

 「デュエリストってのはな、好敵手や仲間が居るからこそ何処までも強くなれるんだぜ?
  そいつ等の戦術をヒントに、新たな戦術を見つけることだって出来るんだからな!
  だから、テメェは俺には絶対勝てないぜ化石の出来損ない!
  テメェは人の心を食い物にして操る事しかできねぇんだからな!!」

 「貴様…!」

 遊哉の闘気は一気に燃え上がり、其れが真紅の炎となって具現化する。
 こうなってはもう止まらないだろう。

 「最高のダチと彼女が俺に最強至極の戦術を授けてくれたぜ!!行くぜ…バーニング・クリアマインドォォォォ!!」


 ――轟!!


 其の闘気が弾け、金色を帯びた真紅のフィールドを作り出す。
 未だ嘗て無い、遊哉だけの進化の道が開けたのだ。

 「レベル2のシンクロチューナー、フォーミュラ・ドラゴンと龍姫リティアを、レベル8シンクロモンスター、炎龍皇−アグニにデュアルチューニング!!」


 2体のシンクロチューナーが独特のシンクロフィールドを作り上げ、遊哉ごとアグニを包み込む。


 「灼熱の炎の爪牙が、滾る闘気に火を点ける。猛る炎よ、今こそこの地に降り立て!トライアクセルシンクロォォォォォォ!!」


 ――キィィィン…ゴォォォォォォンッ!!


 轟音と共に遊哉達が消え、そして…


 「光来せよ、極炎の化神紅天炎龍皇(こうてんえんりゅうおう)紅蓮迦具土(ぐれんかぐづち)!!」

 『見事だ、我が主よ…!さぁ、覚悟は良いな、人の心を食い荒らす愚物よ!!


 弾けた光と共に、圧倒的な力を持った龍皇が降臨。
 腕を組んで威風堂々と佇む其の姿は正に『支配者』。


 遊哉vsダークネス。
 このデュエルもソロソロ最終章の幕が上がるようだ…
















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 Sp−ドラゴニック・エンゲイジ
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが5個以上あり、相手よりもライフが1000ポイント以上低い場合に発動出来る。
 自分のデッキと墓地から、ドラゴン族モンスターを1体ずつ選択して特殊召喚する。



 Sp−虚無と絶望の連鎖
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが5個以上あり、自分フィールド上に「虚無」「無限」と名の付くモンスターが2体以上存在する時に発動できる。
 相手に、自分フィールド上に表側表示で存在する「虚無」「無限」と名の付くモンスターの元々の攻撃力の合計値分のダメージを与える。
 相手はこの効果に対して、自分フィールド上のモンスターを任意の数リリースする事で、
 リリースしたモンスターの元々の攻撃力の合計値分だけ受けるダメージを減らす事ができる。



 Sp−虚無限の命
 スピードスペル
 自分のライフポイントをこのカードを発動した時点での自分のSCの数だけ倍加する。



 守護された財宝
 カウンター罠
 相手がカード効果を発動した時に発動できる。
 其の効果の発動と効果を無効にし、互いのプレイヤーはカードを1枚ドローする。