ダークネスの攻撃をアクセルシンクロでかわし、現れた真嵐龍皇。
 暴風を其の身に纏い、吹き荒れる力は全てを吹き飛ばさんばかりだ。

 「ミナギの攻撃力は3300…まぁ、テメェのエクシーズなら倒せるかも知れねぇぜ?」

 「く…其れをすればカグヅチの効果を使うだろうが…小賢しい…!」

 「反則効果使いまくりのテメェにゃ小賢しいとか言われたかねぇな!
  と、俺の墓地のシンクロが増えた事でエアトスの攻撃力がアップするぜ!」

 『神と同格ですか…頑張りますね。
 守護女神−エアトス:ATK3600→4000


 デュエルタクティクスも舌戦も遊哉のほうが相当上手であるらしい。
 既に周回遅れのダークネスを又も追い越しぶっちぎる。

 「愚かな…所詮進化などは淘汰の一つに過ぎん…弱き者を切り捨てる手段だ。」

 「あぁ?馬鹿かテメェは!進化は死と戦うための手段だボケ!
  徹底的に自然の淘汰に抗った奴が進化するんだ……デュエルだって同じだぜ!!
  あらゆるデッキが群雄割拠する今の環境で、自己研鑽を怠らずかつテメェのデッキを信じた奴だけがデュエリストとして進化できるんだ!
  極端な反則カード頼りのテメェなんざ、既にデュエリストですらねぇんだよ白骨死体!」

 果たして緋渡遊哉と言う男の毒舌と悪態に限界はあるのだろうか?……多分無いだろう。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel92
 『ゼロ・インフィニティ』











 「さて…如何する骸骨野郎?」
 遊哉:LP4000   SC3
 真炎龍皇−カグヅチ:ATK3700
 真嵐龍皇−ミナギ:ATK3300
 邪龍皇−ヴァリアス:ATK2800

 守護女神−エアトス:ATK4000


 「むぅ…」
 ダークネス:LP7400    SC3
 虚無と無限の使徒:ATK3500
 無限と虚無の蛇龍:ATK3000


 正直言ってダークネスに攻めの手は無くなった。
 どんな攻撃でも倒せるモンスターは居ない。

 使途で攻撃すればカグヅチの効果が発動される。
 更に2撃目に蛇龍でヴァリアスを狙ったとしても、ミナギの存在が邪魔だ。

 アクセルシンクロモンスターならば『相手の攻撃を無効にする』効果を持っているはずなのだ。


 「バトルフェイズを終了。メインフェイズ2でカードを2枚伏せてターンエンドだ。」

 攻められないなら、返しのターンに備えてリバースは当然だ。
 尤もこの2枚で遊哉を牽制出来るかと問われると其れは『?』だが…

 「攻撃できねぇならリバースか?…んなもんで俺を止められるとか思ってねぇよな?…俺のターン!!」


 遊哉:SC3→4
 ダークネス:SC3→4



 「さぁてと…其の邪魔クセェ2枚の永続トラップをぶっ壊すとするか!!
  真嵐龍皇−ミナギの効果発動!
  手札のドラゴン1枚を捨て、相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊し、破壊した表側表示のカード1枚に付き300ポイントのダメージを与える。
  虚無も無限もぶっ飛びやがれ!!『カイザー・テンペスト』!!」

 『消え去れ…!

 矢張り2枚のリバースも遊哉の攻撃の手を止めるには至らない。
 それどころか、進化した嵐の龍皇の効果で伏せカード諸共、ダークネスの魔法と罠を一掃するつもりだ。

 少なくとも虚無と無限の2枚が無くなればダークネスの戦術も大きく崩れるのだ。

 「矢張り破壊を狙ってきたか…だが、無駄な事。
  永続トラップ『無限の防壁』、永続トラップ『虚無の幻想』を発動!」

 其れに対し、ダークネスは更なる永続罠カードを発動。



 …破壊されるのに?
 いや、そうでは無い。

 「永続トラップ『無限の防壁』は表側表示で存在する時、このカード以外の永続罠の破壊を無効にする。
  そして『虚無の幻想』はフィールド上に表側表示で存在するこのカード以外の魔法・罠カード1枚の破壊を無効にする。」

 「んだと!?…つー事は…!!」

 「その通り!無限の防壁が他の3枚の永続トラップを護り、無限の防壁は虚無の幻想によって護られる。
  この4枚が揃った時、私のフィールドは何者にも侵されない虚無と無限の聖域となるのだ。」

 狙いは此れ。
 4枚もの永続トラップを使っての『パーフェクトフィールド』の完成にあったのだ。

 確かにこれならば、戦術の要である2枚の永続トラップ『虚無の深淵』と『無限の回廊』は破壊されない。
 そしてそれらが破壊されなければ、ダークネスは毎ターン手札の補充とライフゲインが可能になる。
 トンでもないフィールドを完成させてきたのだ。

 「うっわ〜〜…卑怯クセー!つーかセコ!メッチャセコ!信念とかそんなもの欠片も感じねぇセコイ戦術だなオイ!
  なに?安全な絶対フィールドがないとデュエルできねぇのかテメェは?骨だけに脳味噌は入ってねぇなこりゃ。」

 でも、遊哉は相変わらず毒吐き絶好調!
 このフィールドを完成させたダークネスに悪態付きまくりだ。

 「なんだと?」

 「わからねぇか?確かに其の4枚は脅威だ…が、4枚も埋めちまったからテメェが伏せられるカードは1ターンに1枚だけだろ。
  しかもスピードスペルの発動考えりゃ永続トラップは置く事もできねぇ。
  テメェは自ら戦術の幅狭くしてんだよボケンダラ!このターンだって俺の攻撃に対しての対抗手段はねぇしな!!」

 どうにも遊哉にはフィールドを埋め尽くしたカードが『戦術狭窄』と映ったらしい。
 確かに1ターンに出せるリバースが1枚では複雑なカードコンボによるカウンターは無いと見ていい。
 対攻撃反応迎撃型にさえ細心の注意をすれば其処まで恐れることも無い。

 更にその攻撃反応型も永続罠である呪縛系は先ずありえない。
 戦術の幅は、成程狭くなったと言えるだろう。

 「其の程度の温い戦術で俺を如何にかできると思ってんなら其の頭蓋骨の中身入れ替えてきやがれ!
  俺はユニオンモンスター『マキシム・スピリッツ』を召喚!」
 マキシム・スピリッツ:ATK500


 「マキシム・スピリッツは1ターンに1度、俺のフィールド上のモンスター1体に装備カードとして装備できる。
  そしてこのカードを装備したモンスターの効果は無効になり、攻守が1000ポイントアップする!
  コイツをヴァリアスに装備するぜ!!」

 『ほう…力のみが純粋に強くなったか…!
 邪龍皇−ヴァリアス:ATK2800→3800(マキシム・スピリッツ装備)


 攻撃が確実に通るこの状況で攻め込まない選択肢など遊哉には無い。
 先ずはヴァリアスの強化。
 効果が無効になるとは言え攻守共に1000ポイントもアップするのは非常に大きい。

 「ミナギの第2の効果発動!1ターンに1度、デッキの上からカード5枚を確認し、
  エンドフェイズまで俺のフィールド上のシンクロモンスターの攻撃力を其の中のドラゴン族モンスター×200ポイントアップする!
  デッキの上から5枚を確認!……5枚の中にドラゴンは3体!よって攻撃力は600ポイントアップ!!」


 真炎龍皇−カグヅチ:ATK3700→4300
 真嵐龍皇−ミナギ:ATK3300→3900
 邪龍皇−ヴァリアス:ATK3800→4400
 守護女神−エアトス:ATK4000→4600



 更に全体強化――が、此れだけでは終わらない。

 「カグヅチの効果!手札のドラゴンを墓地に送り、其の攻撃力を己に宿す!
  俺は『ウィンド・バルディッシュ』を墓地に捨て、カグヅチの攻撃力を1200ポイントアップする!」

 『譲り受けるぞ其の力!
 真炎龍皇−カグヅチ:ATK4300→5500


 あっという間にこの攻撃力は『攻撃力馬鹿』の面目躍如といった所か?
 兎に角、此れだけの攻撃力をもってすればダークネスのライフも大きく削れるだろう。

 「バトルだ!真嵐龍皇−ミナギで無限と虚無の蛇龍に攻撃!『エアロショット・ブレイカー』!!」

 『風の力で吹き飛ぶが良い…!


 先ずは強大な風の一撃!
 戦闘破壊されないこの状況では攻撃力がフィールドで一番低いモンスターは戦闘の的になる。

 「ぐ!!」
 ダークネス:LP7400→6500


 「2発目!邪龍皇−ヴァリアスで蛇龍に攻撃!『エグザス・ダーク・フォース』!!」

 『真なる闇を知るが良い。


 ――ゴォォオ!!


 「むおぉぉ…!」
 ダークネス:LP6500→5100


 追撃は闇のブレス。
 更に今度は…

 「頼むぞエアトス!蛇龍に一発かましてやれ!『聖剣のロンド』!!」

 『お任せを。其の力…払う!!

 エアトスの一撃が蛇龍を打ち据える。
 守護女神の一撃の衝撃は凄まじくダークネスのDホイールは大きくスピンして後退。

 「ぐぅうぅぅ…!」
 ダークネス:LP5100→3700


 「まだまだぁ!打ちかますぜカグヅチ!」

 『承知!!全力で行こうぞ!!

 「行くぜぇ!!意味の分らねぇ蛇野郎を丸焼きだ『バーン・オブ・ディストラクション』!」

 『丸焼きに成るが良い!!


 ――ゴォォォォォォ!!!


 「むおぉぉぉぉ!!」
 ダークネス:LP3700→1200


 連続攻撃の〆はカグヅチからの灼熱の一撃。
 7000以上有ったライフがあっという間にこの有様だ。

 「運が良かったな骨、俺の手札に攻撃力2400以上のドラゴンがあったら、テメェ此処で終りだったぜ?
  まぁ、今ので分ったろ?手札増強でもライフゲインでも好きなだけやりゃいい。
  俺は回復量を上回る攻撃力でテメェのライフを文字通り焼き切ってやっからよ!!」

 「ぐぬ…貴様…!!」

 「カードを1枚伏せてターンエンドだ。」
 真炎龍皇−カグヅチ:ATK5500→3700
 真嵐龍皇−ミナギ:ATK3900→3300
 邪龍皇−ヴァリアス:ATK4400→3800
 守護女神−エアトス:ATK4600→4000



 攻撃力が元に戻ったとは言え、フィールドは遊哉の方が有利。
 シンクロを守るエアトスに、全体強化の出来るミナギ、ユニオン装備で1度だけ破壊を防げるヴァリアス。
 そして一気に爆発的に攻撃力を高められるカグヅチ。
 此れに加えて攻撃を無効にする効果も使えるのだ――ダークネスからしたら厄介だろう。

 「私のターン。」


 遊哉:SC4→5
 ダークネス:SC4→5


 「虚無と無限の使途の効果で、墓地の嘲う弁舌者と果て無き呪術師をオーバーレイユニットとして吸収する。」
 虚無と無限の使途:ORY0→2


 が、ダークネスにも無限と虚無のパーフェクトフィールドがある。
 限定状況下を駆使すれば状況をひっくり返す事は難しいことでもないだろう。

 「虚無と無限の使途の効果、オーバーレイユニットを取り除き同数の虚無か無限をデッキから特殊召喚する!
  オーバーレイユニットを2つ消費し…現れよ『無限−天啓の先駆者』『虚無−忘却の衛兵』!」
 虚無と無限の使途:ORY2→0
 無限−天啓の先駆者:ATK2200
 虚無−忘却の衛兵:ATK1900



 限定状況下の大量展開。
 正直この効果は厄介極まりない。

 「そしてスピードスペル『Sp−スピード・フュージョン』を発動。
  スピードカウンターが5個以上あるとき、融合モンスターを融合召喚する。
  私はフィールドの天啓の先駆者と忘却の衛兵と手札の『無限−終りなき絶望』を融合!
  始まりの闇、そして終りなき闇…それらが世界を黒に染める。融合召喚、『無限と虚無の堕天使』!」
 無限と虚無の堕天使:ATK3000


 「無限と虚無の堕天使の融合召喚に成功したとき、私はカードを2枚ドローする。
  そして無限の回廊の効果で1200ポイントのライフを回復する!」
 ダークネス:LP1200→2400


 「ま〜〜たライフゲインかよ?懲りねぇなテメェも…」

 又してものダークネスの戦術にあきれ返ってしまう。
 殆どやってることが変わらないのだ。

 「精々ほざけ。無限と虚無の堕天使もまた、虚無の深淵と無限の回廊が存在する場合に発動できる効果がある。
  この2枚が存在する場合、1ターンに1度デッキからカード1枚を選択して手札に加える。
  私はこの効果で、デッキからスピードスペル『Sp−ソニック・リチュアル』を手札に加える。」

 そしてこの反則としか言えない効果。
 如何に限定条件下とは言え無条件サーチは極悪すぎるだろう。

 「反則効果のオンパレードだな全身カルシウム!今度は儀式召喚でも狙うつもりか?」

 「如何にも!スピードスペル『Sp−ソニック・リチュアル』を発動!
  スピードカウンターが5個以上あるときモンスターを儀式召喚する!
  私は手札の『虚無の使者』『無限の欲望』『虚無なる無限』をリリース。
  無限は終わり無く、そして何時しか虚無となる。儀式召喚『虚無と無限の幻獣』!」
 虚無と無限の幻獣:ATK3200


 其処に更なるモンスター。
 今度は儀式召喚されたモンスターで矢張り少々嫌悪感を覚える不気味な容姿だ。


 「虚無と無限の幻獣は儀式召喚成立時に私のライフを1000ポイント回復する。
  そして、虚無の深淵と無限の回廊がある場合、私のターンのエンドフェイズ毎にライフを1000ポイント回復する。」
 ダークネス:2400→3400


 更に儀式召喚!
 あっという間にモンスターの数は同等に。

 とは言ってもステータスは遊哉のモンスターの方が上だ。
 だがそれでも出してきたという事は更なる手があるのだろう。


 「同数のモンスターだと?俺はシンクロオンリーで、テメェはシンクロ、融合、儀式、エクシーズを1体ずつか?
  上等だぜ!つーかせめて此れくらいやってもらわなきゃ面白くねぇ!!」

 それでもマッタクもって遊哉は怯まない。
 或いは遊哉はデュエル中は『闘志』以外の感情が完璧に麻痺しているのかもしれない。

 「では、もっと面白いものを見せてやろう!
  私はフィールド上の虚無と無限の使徒、無限と虚無の蛇龍、無限と虚無の堕天使、虚無と無限の幻獣の4体をリリース!」

 そしてこの状況下で4体ものモンスターをリリース。
 一体何を考えているのか?


 其の答えはとんでもない事だった。


 「虚無は無限なりて無限の先には虚無が待つ。出でよ…『虚無の神皇−エンドレス』!!」

 『グアァァァァァァァ…!』
 虚無の神皇−エンドレス:ATK5500


 4体のモンスターをリリースして現れたのは虚無でありながら無限・永遠の名を冠したモンスター。


 漆黒の瘴気を纏い、額には第三の目、腕は4本で下半身は蜘蛛。
 虚無と無限の2柱――其の1柱『虚無』の支配者がフィールドの其の姿を示現させたのだった…
















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 Sp−ソニック・リチュアル
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが5個以上ある時に発動できる。
 自分の手札かフィールドからモンスターを、儀式召喚するモンスターのレベル以上になるようにリリースし、
 儀式モンスターを特殊召喚する。(この特殊召喚は儀式召喚扱いとする。)



 虚無の幻想(制限)
 永続罠
 このカードが表側表示で存在する限り、自分フィールド上のこのカード以外の表側表示で存在する永続罠は破壊されない。
 また「虚無の深淵」と「無限の回廊」が表側で存在する場合、このカードの発動は無効にされない。



 無限の防壁(制限)
 永続罠
 このカードが表側表示で存在する限り、自分フィールド上のこのカード以外の表側表示で存在する魔法・罠1枚は破壊されない。
 また「虚無の深淵」と「無限の回廊」が表側で存在する場合、このカードの発動は無効にされない。