睨み合う遊哉とダークネス。
 デュエリストの闘気と闇の瘴気がぶつかり合い、火花放電が起きている。

 「覚悟しろよ骨野郎…テメェは200回はぶちのめさねぇと気が済まねぇ!」

 「大きく出たな…出来るかな、お前に?」

 「やる!つーかヤルに決まってる!!霧恵は俺の嫁!其れを利用した罪は重い!
  普通に考えて死刑!量刑なら懲役1億5000万年!つーか寧ろ死ね、骨だけど死ね、ダシガラになって朽ち果てろ!」

 そして言いたい放題。
 何気に毒舌ながらもぶっちゃけている。


 「俺の嫁って…遊哉…あぅ…///

 「その辺にしとけ遊哉!霧恵のライフはもう0だ!!」

 「だが断る!!」

 ストレートに言われた霧恵は茹蛸状態でKOである。
 緋渡遊哉は、闇の化身であるダークネスを前にしても絶好調であった。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel90
 『ラストバトル開始!』











 溶けてる霧恵は兎も角として、世界の命運を決するであろうデュエルだ。
 何時もの姿勢は崩さなくとも、遊哉の表情は真剣其のもの。

 この眼光に射抜かれたら、並のデュエリストは戦意を喪失する勢いだ。


 其れを受けても平気なダークネスは一筋縄では行かない相手だろうが…


 「おい、骨野郎デュエルはどっちの形式で行うんだ?スタンディングか、ライディングか?」

 「お前の得意なライディングで相手をしてやろう。……神殿変形!」

 遊哉に問われれば、ダークネスは手を上げ神殿の――正確には神殿の最上部を変形させていく。

 それはチーム遊戯王にとって…否、世界中のDホイーラーにとっては見慣れたもの。



 ――ライディングデュエル用のサーキット。



 恐らく10人に訊けば10人がそう答えるだろう。
 変形した神殿の最上部はまさにそうだった。

 しかもコースは神殿上だけにあらず、最上部の大きさをはるかに上回っている――一部は海上にコースが迫出しているくらいだ。
 だが、其れに怯む遊哉では無い。

 「コースアウトしたら海か石の地面に真っ逆さまで命は無いってか?
  上等だぜオイ、仮にも神殿のラスボス戦だ――これ位じゃなきゃ面白くねぇ!」

 「生死を懸けた闇のライディングデュエルで、果たして何時までそんな口が叩けるか見物だな…」

 「幾らでも叩いてやらぁ!……つーかテメェDホイールは何処だ?変な力で空飛んでデュエルするとか言うなよ?」

 「そんな事は言わぬ…Dホイールなら此処に有る。」

 コースが出来ても、ダークネスにはDホイールが見当たらない。
 其れを指摘すれば、再び闇が集い、1台のDホイールが其の姿を現した。


 機体全体が艶の無い黒一色で塗り潰された3輪タイプの大型Dホイールだ。


 「…お世辞にもカッコイイとは言えないデザインね…」

 「えぇ、性能は凄いのかもしれないけれど…」

 迫力はあるがデザイン評価は今一つだった。


 「まぁ、デザインで勝負する訳じゃねぇから良いだろ。寧ろヘボいラスボスにはお似合いのデザインだぜ!
  さてと…んじゃ、まぁ――さっさと打ち倒してくるぜ!」

 だが、これで準備は全て完了。
 発進シグナルもレッドが点灯し、ダークネスは既にスタート地点に。
 あとは遊哉がスタート地点に着けば直ぐにでも始められるだろう。

 「あぁ、アイツにデュエリストの魂を見せ付けてやれ緋渡。」

 「本物の満足ってやつを教えてやれ!」

 「人の心を弄んだ報いを与えてやって!」

 「私達の思い…シティでモンスター達と戦ってるであろうデュエリスト達の思い、全て彼方に預けるわ。」

 「進化の限界を超えて、奴を倒せ遊哉!」


 仲間達からのエールを受けて気合も入る。
 が、霧恵は何にも言わない。

 「迦神?」

 「…『俺の嫁』発言で固まったわね。……霧恵!」

 「!!な、なに!?」

 如何やら完全にフリーズしていたようである。
 シェリーに呼びかけられてやっとこ再起動だ。

 「お〜〜、大丈夫か霧恵?つーか、何で固まってたんだお前?」

 「アンタが『俺の嫁』とか言うからよ!人前で言わないでよ恥ずかしいから///!」

 「いいじゃねぇか本当の事なんだから!」

 「本当の事とかじゃなくて!」

 再起動したらしたで遊哉と夫婦漫才(?)発動!
 人有らざる外道とのデュエルの前だと言うのに重苦しさも何もありはしない。


 「マッタク……ふぅ、遊哉!」

 「おう、何だ?」

 「ん…」


 ――ちゅ…


 「!!!」

 「……絶対に勝ちなさいよ?」

 「オウよ……ここまでしてもらって負けるとかありえねぇからな!ぜってー勝つ!!」

 霧恵から最大級のエールを受けて緋渡遊哉いざ出陣!
 デュエル闘気が5割増になってるのはきっと見間違いではないだろう。


 「……霧恵、貴女意外と大胆ね…///

 「私達も居るんだから少し、ね?じ、10秒もしてたわよ?///

 「へ?…あ…あぁぁぁぁぁぁぁぁ///!!!」(ボンッ!)

 なお、霧恵はどうやら勢いでしたらしく、アキ達の事はあの瞬間すっかり忘れていたらしい。
 遊哉に『人前で言うな』と言っておきながらなうえに、バッチリ見られていた事を知って爆発したようだ。


 「…これも青春かな?」

 「恋人を最大級のエールで送り出す…これで満足だ…

 「仲が良いな、あの2人は。」

 そして遊星は矢張りちょびっとずれていた。








 ――――――








 「待たせたな骨!」

 闘気充実状態で遊哉はスタート地点に。
 ダークネスは既にDホイールのエンジンをアイドリングしている。

 遊哉もエンジンを起動しているので機体そのものは温まっている。

 「恋人との別れを済ませたか…?」

 「あ゛?別れな筈ねぇだろ、このデュエルは俺が勝つんだからな!」

 再び闘気と闇がぶつかり合い、それに呼応するようにDホイールのエンジンも回転数が上がる。
 アクセルを踏み込めば一気に飛び出すだろう。


 「それに、御託はもう良いだろ――語るならデュエルで語れよな!」

 「良いだろう…貴様も闇に飲まれろ。」


 シグナルレッドの2つ目が点灯し、緊張が高まる。

 3つ目が点灯…そして…


 ――ピー!!


 シグナルグリーンが点灯!


 「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」

 同時に飛び出す2人。
 先行するのは遊哉、矢張りこのライディングテクニックは凄まじい。

 ファーストコーナーを目指してぐんぐん進んで行く。


 「流石の速さだが……ブースター起動。」

 ソレを見てダークネスは機体のボタンを押す。

 其の瞬間一気に加速し遊哉に追いついてしまった。




 「アレは…加速装置か!」

 「やる事がセコイわね……」

 観戦組にはソレがなんであるか分ったようだ。
 加速装置…Dホイールの加速力を爆発的に高める装置だが、バランスを壊すという事で搭載が禁止されているものだ。

 しかし、如何やらダークネスの機体にはソレが搭載されているらしい。

 遊哉に追いつき、そして追い越していく。


 「WRG1の時のデータでお前の機体のトップスピードは分っている。
  この加速装置は、ソレの倍のスピードが出るものだ…お前には追いつけない。」

 「ソレが如何したぁぁ!!」

 が、遊哉も負けじとそれに追いつく。
 最大スピードが倍もあるのに追いつくとは到底信じられないだろう。

 「馬鹿な!何故追いつける。」

 「あぁ?アホかテメェは!Dホイールの速度なんざ気合と根性で幾らでも上がるんだよボケナス!
  加速装置なんざ温い手使いやがって…そんなんで俺をぶっちぎろうなんざ1千万年はえぇんだ骸骨野郎!!」

 加速装置もなんのその!
 デュエリストオーラをエネルギーに遊哉はダークネスを再度追い越しそのままファーストコーナーを奪取。

 Dホイーラーとしての誇りが加速装置を超えた結果だ。


 「馬鹿な…!」

 「下らねぇ策労しやがって……覚悟しろよ腐れ!!」



 「「デュエル!!」」


 遊哉:LP4000   SC0
 ダークネス:LP4000   SC0



 そして遊哉の先攻でデュエルは開始だ。


 「俺のターン!…俺の墓地にモンスターが存在しない時、守護天使が降臨する!頼むぜ『ガーディアン・エアトス』!!」
 『はい、行きましょうマスター!
 ガーディアン・エアトス:ATK2500


 先攻である事を生かして先ずは守護天使を呼び出す。
 行き成りのレベル8最上級モンスター、大型モンスターの超速召喚は遊哉の十八番だ。

 勿論これでは終らない!

 「手札の『ジェム・ウィング』を墓地に送って『ヘブンズ・ドラグーン』を特殊召喚するぜ!」
 ヘブンズ・ドラグーン:ATK1900


 「更に、俺のフィールドに『ガーディアン・エアトス』が存在する時、手札のチューナー『慈愛の守護龍』を特殊召喚出来る!」
 慈愛の守護龍:ATK0


 あっという間に3体のモンスターがフィールドに現れる。
 しかもその内の1体はチューナーだ。

 「なんと言う早さだ…!」

 「この緋渡遊哉様を舐めんじゃねぇ!!大体な、霧恵から最大級のエール貰った俺は無敵だぜ!
  篤と拝みやがれ!レベル8のガーディアン・エアトスに、レベル1の慈愛の守護龍をチューニング!
  全ての命を守護する女神よ、その身の真なる力を今こそ解き放て!シンクロ召喚!舞い降りろ『守護女神−エアトス』!」

 『覚悟なさいダークネス!
 守護女神−エアトス:ATK3000


 そしてシンクロ。
 初手から攻撃力3000のお出ましだ。


 「エアトスのシンクロ召喚に成功したとき、俺はカードを2枚ドローする!
  でもって、俺がモンスターをシンクロ召喚したことで、手札の『ドラグ・シンクロン』が特殊召喚される!
  そしてこの方法でドラグを特殊召喚した場合、墓地のレベル4以下のモンスターを蘇生させる!こい『ジェム・ウィング』!」
 ドラグ・シンクロン:ATK500
 ジェム・ウィング:ATK1500



 更に手札を増強しながら2体のチューナーを呼び出す。

 「出番だぜアグニ!」

 『委細承知!愚物に我等が力を思い知らせてやろうではないか!

 「おうよ!!レベル4のヘブンズ・ドラグーンに、レベル4のジェム・ウィングをチューニング!
  燃え盛る紅蓮の双眸、そして灼熱の牙よ、全てを焼き払い此処に降臨せよ!シンクロ召喚!烈火の化神『炎龍皇−アグニ』!」

 『人の心を弄ぶ愚物が…我が炎で灰となれ!
 炎龍皇−アグニ:ATK2900


 現れたるは遊哉のエースモンスター、最強の炎の龍皇アグニ。
 燃え盛る真紅の炎はまるで留まる所を知らない。


 「ジェム・ウィングの効果でカードを2枚ドロー!
  手札の『クイン・ドラグーン』を墓地に捨て『ライジング・パワード・ドラゴン』を特殊召喚!」
 ライジング・パワード・ドラゴン:ATK2400


 「ぶっ潰す!!レベル7のライジング・パワード・ドラゴンに、レベル1のドラグ・シンクロンをチューニング!
  凍てつく氷の翼よ、絶対零度の力を纏いてこの地に降り立て!シンクロ召喚、氷河の化神『氷龍皇−ミヅチ』!」

 『我が吐息で凍てつくがいい!
 氷龍皇−ミヅチ:ATK2500


 僅か1ターン、僅か1ターンで最上級のシンクロモンスターが3体だ。
 エアトスを中心に、炎と氷の双璧の龍皇が並ぶ様は威厳と迫力が桁違いだ。

 「1ターンで3体の上級シンクロモンスターだと!?」

 「俺は勝つって言ったろうが!全力全壊は基本だタコ!カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 恐るべき展開力。
 先攻ゆえに攻撃こそ出来なかったが、これがもし後攻で攻撃可能だったらこれで終っていたかもしれないのだ。


 「私のターン…」


 遊哉:SC0→1
 ダークネス:SC0→1



 ソレに驚きながらも次はダークネスのターンだ。

 「相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、手札の『虚無−死の恐怖』を特殊召喚出来る。」
 虚無−死の恐怖:ATK1000


 ダークネスも負けじと行き成りレベル8のモンスターを展開してきた。
 攻撃力は僅かに1000だが特殊召喚してきたという事はその後の展開が有るのだろう。


 「更に私のフィールドに『虚無』と名の付くモンスターが存在する時、手札から『無限−偽りの預言者』を特殊召喚出来る!」
 無限−偽りの預言者:ATK0


 「未だだ…私の場にレベル8以上のモンスターが2体以上存在するとき、手札の『無限−果て無き増殖』を特殊召喚する!」
 無限−果て無き増殖:ATK1000


 これでダークネスの場にはレ得る8のモンスターが3体。
 シンクロを使わない状態でのレベル8が3体…狙いはエクシーズだろう。

 「ランク8のエクシーズか?上等だぜ、こいよ骨野郎!それで俺を倒せるならなぁ!」

 「消え去るがいい!
  私は3体のレベル8モンスターをオーバーレイ!
  オーバーレイネットワークを構築!……闇の支配者たる深淵の王よ、世界に裁きを!
  エクシーズ召喚、『虚無と無限の使徒』!」

 『ガァァァァァア!!』
 虚無と無限の使徒:ATK3500


 呼び出したのは3500という攻撃力を備えた使途。
 遊哉のモンスター全てを上回る力だ。


 「3体オーバーレイのランク8…」

 「驚いたか!バトル!虚無と無限の使徒で、氷龍皇−ミヅチに攻撃!『ダークスマッシャー』!」

 其の力で早速遊哉に攻撃!
 通れば大きくライフを削れるだろう。

 「んな単調な攻撃が通るかよ!カウンタートラップ『攻撃の無力化』
  これで其の攻撃を無効にしてバトルを終了するぜ!」

 だが、ソレは通らない。
 闇の一撃も無力化されては意味がないのだ。

 「むぅ…読んでいたのか?…カードを2枚伏せてターンエンド。」

 「テメェの戦術なんぞ遊星に比べれば温すぎるぜ!俺のターン!」


 遊哉:SC1→2
 ダークネス:SC1→2


 神殿でのラストデュエル。
 如何やらこのデュエルは、最大級の力がぶつかるデュエルになりそうだ。
















   To Be Continued… 






 *登場カード補足