3体のモンスターの魂を糧に現れた『掃滅』を超えた『葬滅神』。
 『この世の悪』を思わせる名を冠した異形のモンスターは、その力で遊星の前に立ちはだかっている。

 進化した魔龍の効果ですら効かない邪悪なる神。

 「カードを2枚伏せてターンエンド。」

 だが、其れを前にして尚、遊星の瞳からは闘気が消えず恐れも宿らない。
 恐れが宿るどころか、瞳に宿った闘気も、デュエリストのオーラも更に強くなっている。


 「…此れを前にして何故そんな顔が出来る?怖くないのか?」

 「怖くない…と言えば嘘になるが、俺は其れには屈しないし諦めない!
  お前がどんな戦術で来ようと、どんなモンスターを召喚しようと俺は其れを超える!」

 問う雪花にもガッツリ返す。
 恐れが無い訳では無いようだが、仲間が見守っている中で恐怖に屈するなどありえない。

 本より誰が相手でも諦めない遊星だ。
 たかだか強力なモンスターが出て来たからとて、そんなものはデュエルの1コマに過ぎないのだ。


 「吠える事…何時までそれが持つか楽しみだわ!私のターン!」


 遊星:SC10→11
 簪:SC3→4



 臨界点は未だ迎える事は無いようだ。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel87
 『The Advance Road』











 遊星:LP2600   SC11
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK6200
 ジャンク・ライダー:ATK2800



 簪:LP2700   SC4
 葬滅神−アンラ=マンユ:ATK10800




 「さてと…如何やって料理しようかしら?そうね…決めたわ!
  スピードスペル『Sp−死者への供物』!スピードカウンターが4つ以上ある時に発動できる。
  相手モンスター1体を破壊する!代わりに次の私のターンに私のスピードカウンターは増加しないけれどね。
  この効果で破壊するのは『ジャンク・ライダー』!」

 圧倒的な力を手にした雪花は既に思考が『どうやって遊星を沈めるか』にシフトしている。
 この状況がひっくり返されるとは微塵も思っていないのだろう。

 考えた結果、『遊星のモンスターを蹂躙し尽くして潰す』と言う事に決めたらしい。
 攻撃力の高いクリムゾン・ノヴァを狙わなかったのは効果で逃げられてしまうからだろう。

 だが、ジャンク・ライダーは逃げる事は出来ない。
 結果破壊効果をかわせず粉砕されてしまった。

 「く…ジャンク・ライダー…!」

 「さて…このターンで終りかしら?バトル!葬滅神でクリムゾン・ノヴァを攻撃!『天破滅殺獄葬撃』!!」

 「クリムゾン・ノヴァ・ドラゴンの効果発動!相手ターンに除外し、モンスターの攻撃を1度だけ無効にする!」

 「けれど、アンラ=マンユはバトルフェイズ中に2回攻撃できる!一撃目は防げても二撃目は避けられない!
  連続攻撃効果でプレイヤーにダイレクトアタック!『天破双滅殺獄葬撃』!!」

 クリムゾン・ノヴァの攻撃無効とアンラ=マンユの連続攻撃がぶつかる。
 一撃は防げたが、二撃目はクリムゾンの効果は使えない。

 「そうは行かない!トラップ発動『くず鉄のかかし』!此れで攻撃を無効にする!」

 が、其れすらもマタマタ防がれる。
 圧倒的な力を持つ葬滅神でも、遊星の防御を突破するのは簡単では無いようだ。



 思わず苛立ちが募る。
 一撃必殺の力を持つ葬滅神を従えても尚ライフが削りきれない。
 最初に1400ポイントのライフを削ってから1ポイントたりとも削れて居ない。
 もっと言うならそのダメージは効果ダメージであり、戦闘で削ったライフは0……攻撃は全て完封されているのだ。

 更に今の遊星の布陣…
 クリムゾン・ノヴァとくず鉄のかかしの2枚が有る限り葬滅神だけでは遊星のライフは削りきる事ができない。

 「…忌々しい、カードを2枚伏せてターンエンド。そして葬滅神の効果でライフが800回復する。」
 簪:LP2700→3500


 「同時にクリムゾン・ノヴァも俺のフィールドに帰還する。」
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK6200


 だが、遊星もまた少々今の状況を芳しくないとは思っている。
 攻撃を2回まで防げる手を用意したとは言え、圧倒的な葬滅神を攻略する手立て今は無い。
 このまま攻撃を防いでいてもジリ貧は確実だろう。


 ――如何するべきか…
 「俺のターン!」


 遊星:SC11→12
 簪:SC4→5



 「…よし!スピードスペル『Sp−貪欲な壺』を発動。
  スピードカウンターが4つ以上あるとき、墓地のモンスター5体を選択してデッキ戻してシャッフルし、カードを2枚ドローする。
  墓地の『キャノン・ウォリアー』『ニトロ・アヴェンジャー』『ジャンク・ライダー』『シューティング・スター・ドラゴン』『スターブライト・ドラゴン』の5体を戻しシャッフル。
  そして新たに2枚ドローする!…更に『スピードワールド2』の効果発動。
  スピードカウンターを7個取り除いてカードを1枚ドローする。」
 遊星:SC12→5


 そんな中で今ドローした『貪欲な壺』はありがたかっただろう。
 更に『スピードワールド2』の効果でもドローし打開策を得ようとする。

 そして、如何やら打開策を呼び込む事が出来たらしい。

 「トラップ発動『ロスト・スター・ディセント』。この効果で墓地の『スターダスト・ドラゴン』を守備表示で特殊召喚する!」
 スターダスト・ドラゴン:DEF2000→0   Lv8→7


 効果無効、守備0、レベル1つダウンで表示形式変更不可と多大な制限を受けた状態ながらスターダストが復活。
 だが、此れで良い。

 遊星の狙いはその先なのだ。

 「俺のフィールド上にスターダストが存在する場合、手札の『シュテル・ドラグーン』を特殊召喚出来る!」
 シュテル・ドラグーン:ATK0


 「シュテル・ドラグーンの効果発動。1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体のレベルを1つ上げる事ができる。
  俺はこの効果でスターダストのレベルを1つ上げる!」
 スターダスト・ドラゴン:Lv7→8


 「そして、チューナーモンスター『救世竜 セイヴァー・ドラゴン』を召喚!」
 救世竜 セイヴァー・ドラゴン:ATK0


 このシンクロ素材を揃える事が真の狙い。
 モンスター効果と罠を巧く使ってのシンクロの下準備完了。

 「そのシンクロ素材は…」

 「気付いたか?このモンスターなら葬滅神を倒せるかもしれないぞ!
  レベル8のスターダスト・ドラゴンと、レベル1のシュテル・ドラグーンに、レベル1のセイヴァー・ドラゴンをチューニング!
  集いし星の輝きが、新たな奇跡を照らし出す。光射す道となれ!シンクロ召喚、光来せよ『セイヴァー・スター・ドラゴン』!」

 そしてシンクロ。
 空を裂いて現れたのは、蒼銀の星龍――救世の使者だ。


 『クェェェェェ!!』
 セイヴァー・スター・ドラゴン:ATK3800




 「オォォォッシ!セイヴァー来たーーー!」

 「セイヴァー・スターとクリムゾン・ノヴァの布陣なら、葬滅神を倒せるわ!」

 この登場に観戦組も沸く。
 この悪辣な葬滅神を倒せれば、仮にこのターンでライフを削りきれなかったとしても遊星が一気に有利になるのだ。



 「セイヴァー・スターの効果発動!1ターンに1度、相手モンスターの効果を無効にしその効果を得る!『サプリメイション・ドレイン』!」

 葬滅神の力でも対抗できない『モンスター効果を無効にする効果』。
 モンスター効果さえ無効になれば、効果で上昇した攻撃力は元に戻り、クリムゾン・ノヴァでの突破が容易になる。
 更に、攻撃誘発系の罠が有ったとしても其れが発動したらしたで、セイヴァー・スターの効果で遊星が更に有利になるだけだ。

 だが、

 「そうはさせない。カウンタートラップ『葬滅の裁き』
  相手がカード効果を発動したとき、その発動と効果を無効にし、相手に1000ポイントのダメージを与える。」

 セイヴァー・スターで無効に出来ないカウンターでその効果を打消してきた。
 無効にするだけで破壊はしないので、セイヴァー・スターは無事だが、此れはキツイ。
 効果無効が出来なければ葬滅神は倒せない、倒せないどころかダメージを受ける結果にもなってしまった。


 遊星:LP2600→1600
 「く…カードを2枚伏せてターンエンド。
  エンドフェイズに、セイヴァー・スターはエクストラデッキに戻り、墓地からスターダストが復活する。
  更にシュテル・ドラグーンはドラゴン族のシンクロモンスターのシンクロ素材になったターンのエンドフェイズに手札に戻る。」
 セイヴァー・スター・ドラゴン:ATK3800
         ↓
 スターダスト・ドラゴン:DEF2000


 セイヴァー・スターも消え、スターダストが舞い戻る。
 自軍のモンスターは増えたが、依然として状況は遊星が不利だ。

 「私のターン!『Sp−死者への供物』の効果でこのターンのスタンバイフェイズに私のスピードカウンターは増加しない。」


 遊星:SC5→6
 簪:SC5



 「けれど、自然増加は無くともこのカードがある。『Sp−ハイパー・ブースト』
  スピードカウンターが4つ以上あるとき、私のスピードカウンターを12にする、但しエンドフェイズにカウンターは0になるけれどね。」
 簪:SC5→12


 スピードワールド2の効果でカウンターが増えないのならスピードスペルで。
 エンドフェイズにカウンターが0になるとは言え、このターン中、雪花は全てのスピードスペルが使えるようになったのだ。

 「更にスピードスペル『Sp−天よりの宝札』を発動。
  スピードカウンターが6個以上あるとき、互いに手札が6枚になるようにデッキからカードをドローする!
  …良いカードをドローしたわ、不動遊星このドローでドローしたカードがお前を敗北の冥府へ導く!」

 「なに?」

 「その第1幕!スピードスペル『Sp−ジ・エンド・オブ・ストーム』
  スピードカウンターが10個以上あるとき、フィールド上のモンスターを全て破壊する!
  そして互いのプレイヤーは破壊された自分のモンスター1体に付き300ポイントのダメージを受ける!」

 スピードカウンターの増加、手札の増強と来て3発目はモンスター全滅効果!
 しかもこの効果で葬滅神がフィールドから消えることは無い。
 遊星のモンスターのみが破壊されることになる。

 「此処でそのカードを使うか……だが、スターダストの効果はその上を行く!
  フィールド上のカードを破壊する効果が発動したとき、スターダストをリリースしてその効果を無効にし破壊する!『ヴィクティム・サンクチュアリ』!」

 だが、遊星のエースである星龍はこと『破壊』に対しては無敵とも言える効果を持ち合わせている。
 この効果もスターダストの前では無力なのだ。

 「そう来る事は予想済みよ!スターダストがフィールドから居なくなることが目的だった!スピードスペル『Sp−サンダー・ボルト』
  スピードカウンターが12個あるとき、相手フィールド上のモンスターを全て破壊する!」

 「その効果も通さない!クリムゾン・ノヴァを除外する!!」

 更なる破壊効果も、クリムゾン・ノヴァを除外することで回避。
 此れでこのターンもくず鉄のかかしと合わせて2回まで攻撃が無効に出来る事になった。

 なったが、雪花は何故か口元に不気味な笑みを浮かべていた。
 『全ては巧くいった』と言わんばかりに…

 「ふふふ…あははははは!流石よ不動遊星、此処までのディフェンド・タクティクスは賞賛に値するわ。
  けれど、全ては私の思惑通りに進んだ!」

 矢張り目的は別だった。
 恐らくは『遊星のフィールドからモンスターを消す』事が目的の1つだったのだろう。
 其れをする為に、2つの大量破壊カードを使ったのだ。
 『遊星ならば必ずモンスターを護る』と見込んで…

 「モンスターへの愛情が仇になったわね!このカードが敗北への最終章よ!
  トラップカード『葬滅神の勅命』!私の場に『葬滅神−アンラ=マンユ』が存在する時に発動できる。
  私の墓地から『掃滅』と名の付くモンスターを2体まで選択して特殊召喚する!」

 「なんだと!?」

 「葬滅神の下に蘇れ!『掃滅龍−ジェノサイド』『掃滅鬼−グレンデル』!!」

 『Gyyyaaaaaaa!!』
 掃滅龍−ジェノサイド:ATK3000


 『我亜亜亜亜亜!!』
 掃滅鬼−グレンデル:ATK3000



 そしてその上の目的……2体の掃滅モンスターの復活。
 恐るべき効果を持った2体のモンスターが墓地より蘇生し遊星を威嚇するように唸る。

 此れで雪花の場のモンスターは3体、攻撃回数は4回にもなる。
 遊星が無効に出来るのは2回まで……3体目以降の攻撃を無効にはできないのだ。

 「まさか1ターンで…」

 「ふふふ…絶望に打ちひしがれろ不動遊星!バトル、掃滅龍−ジェノサイドでダイレクトアタック!『滅殺暴虐波』!」

 遊星のライフを削りきらんと、第一波が放たれる!

 「クリムゾン・ノヴァの効果によりその攻撃を無効にする!『スカーレッド・シールド』!」

 最初の一撃はクリムゾン・ノヴァの効果で阻止。
 真紅の防御膜が攻撃を霧散させ遊星を護る。

 「ならばグレンデルでダイレクトアタック!『暴虐の鉄爪』!」

 「トラップ発動『くず鉄のかかし』!その攻撃を無効にする!」

 2度目の攻撃はかかしで防ぐ。
 だが、此れで攻撃を無効にする効果は2つとも使い切った事にもなる。

 「見事…けれど此れで攻撃を無効にする効果は使い果たしたわね!
  葬滅神−アンラ=マンユでダイレクトアタック!『天破滅殺獄葬撃』!!」

 10800もの攻撃力を持った葬滅神の攻撃が迫る。
 喰らえば敗北必須である上に、その威力でマシンがクラッシュすらしかねない。
 そうなれば遊星も無事ではすまないだろう。


 「「「「「「遊星!!」」」」」」


 観戦組も思わず声を上げる。
 其れほどまでに危険な一撃なのだ。

 「此れで終りね!!」

 雪花も勝ちを確信したようだ。
 だが…

 「…其れは如何かな?」

 「!?」

 「トラップ発動『トゥルース・リインフォース』!デッキからレベル2以下の戦士族モンスターを特殊召喚する!来い『マッシブ・ウォリアー』!」
 マッシブ・ウォリアー:DEF1200


 此処で特殊召喚系の罠!
 呼び出したのは戦闘にめっぽう強い『マッシブ・ウォリアー』だ。
 攻撃無効効果は使いきってもその更に先を持っていたのだ。

 「そのカードを…!」

 「マッシブ・ウォリアーは1ターンに1度だけ戦闘で破壊されず、戦闘を行うことによって発生する俺へのダメージも0になる!
  葬滅神の貫通効果でも俺のライフは削れないぞ!!」

 「ならば、そのモンスター滅するまでよ!やれアンラ=マンユ!!」

 それでも攻撃は止まらない。
 葬滅神の右拳がマッシブ・ウォリアーを殴り飛ばし、更に追撃の左拳で粉砕する。

 遊星にダメージは無いが又してもモンスターは0。
 エンドフェイズに2体の龍が戻ってるとは言え、苦しい状況だ。
 それでも、この攻撃を防ぎきったのは脱帽モノだろう。

 「今のを防ぐとは驚きよ不動遊星。
  けど…2体の龍が戻るとは言えこの状況を如何する心算?諦めなさい、お前に勝利は訪れない。」

 「断る!俺は諦めない!例え絶望的状況でも諦めなければ必ず道は開ける!」

 「…そう、じゃあ精々足掻くといいわ!葬滅神の効果でエンドフェイズにライフが回復する!ターンエンドよ!」
 簪:LP3500→4300   SC12→0


 「この瞬間にスターダストとクリムゾン・ノヴァは俺のフィールドに舞い戻る!」

 『クァァァァ…!』
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500


 『バオォォォォォォ!』
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK6200



 絶望的状況でも遊星に諦めの色は無い。
 2体の龍も舞い戻り、まだ諦める手は無いのだ。

 それでも状況不利には変わりないが…


 「俺のターン!」


 遊星:SC6→7
 簪:SC0→1


 ――
俺の手札…『Sp−死者蘇生』を使えば墓地の『フォーミュラ・シンクロン』を呼び出して『シューティング・スター・ドラゴン』を再度シンクロ出来る。
    だが、恐らく簪は其れも読んでいる…だが俺の手札にそれ以外の手は…!


 だから遊星も悩んでしまう。
 負ける気は無い、諦める気も無い、だが有効な手段が無いと言う現実。
 おまけに雪花のライフは初期値を上回るまでになっている。
 余りにも不利過ぎるのだ。


 「迷うんじゃねぇ遊星!!」

 そんな遊星に観客組の遊哉から檄が飛ぶ。(勿論拡声器使用)

 「緋渡?」

 「悩む必要なんざねぇだろ遊星!此れまでの戦術が通じそうにねぇんだったら新しい戦術使うまでだろうがよ!」

 遊哉の言っている事は有る意味正しい。
 今までの戦術がダメなら新たな戦術を試す…道理とも言えるがこの状況で如何しろと言うのか?


 「普通だったら無茶振りは理解してんぜ!けどな…俺達には出来るだろ!
  クリアマインドを会得した俺達だからできる進化の先!ブルーノが示してくれた可能性が!」

 「!!」

 言われて気付く。
 ディック戦でブルーノが見せてくれた新たなシンクロの可能性、究極のシンクロ召喚『デルタ・アクセルシンクロ』を。

 「理屈じゃねぇだろ遊星!俺達には其れが出来る!だからブルーノも見せてくれたんだぜ?だよな?

 「勿論だ。拡声器を貸してくれ。

 「はいよ。」

 「遊星!君と遊哉ならば必ずデルタの境地に至れると私は確信している!
  思い出すんだ、アクセルシンクロに開眼した時の事を!
  あの時も窮地の中で新たな力を掴み取ったはずだ!自分を、そして仲間の事を信じるんだ遊星!」


 加えてブルーノまでもが遊哉から拡声器を借りてのエールを送る。

 「緋渡…ブルーノ…そうだな!進化の道は己の意志でのみ切り開かれるんだったな!」

 其れは遊星にとって数万の援軍にも等しいものだった。
 状況の悪さによる迷いを一気に吹き飛ばしてしまったのだ。

 「俺は俺のデュエリストとしての力と、仲間との絆を信じる!チューナーモンスター『トラップ・ヴェーラー』を召喚!」
 『良し、頑張ろう♪』
 トラップ・ヴェーラー:DEF0



 「更に俺のフィールドにチューナーが存在する時、手札の『ブースト・ウォリアー』を特殊召喚出来る!」
 ブースト・ウォリアー:ATK300→600


 チューナーと素材を速攻で揃える。
 先刻、マッハ・シンクロンの効果で手札に戻した『ブースト・ウォリアー』が功をそうした様だ。

 「レベル1のブースト・ウォリアーに、レベル1のトラップ・ヴェーラーをチューニング!
  集いし意志が、更なる速度の境地を導く。光射す道となれ!シンクロ召喚、進化の礎『マッハ・ウォリアー』!」
 『ハァ!』
 マッハ・ウォリアー:DEF1200
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK6200→6500



 進化の前兆となる新たなシンクロ!
 新たな進化の胎動は既に高まっているのだ。

 「マッハ・ウォリアーのシンクロ召喚に成功したとき、墓地からチューナー1体を特殊召喚出来る!
  舞い戻れ『フォーミュラ・シンクロン』!」
 フォーミュラ・シンクロン:DEF1500
 クリムゾン・ノヴァ・ドラゴン:ATK6500→6200



 そして蘇るシンクロチューナー。


 此れで道は開けた。
 後は其処を駆け上がるだけだ!


 ――心を穏やかに保て…クリアマインドよりももっと…もっと………


 遊星も意識を集中する。
 其れに呼応するかのように室内であるにも拘らず風がざわめいているのは気のせいでは無いだろう。


 ――光……此れは…カード?………!!!


 ――ティン…


 「!!見えたぞ!進化の先が!!」

 水面に波紋が広がるイメージと共に、遊星の中で何かが弾けた。
 其れは新たなる進化そのものだ!

 「何だと!?」

 「デュエルには無限の可能性がある!!俺は其れを証明する!!」

 アクセル全開!
 遊星はスピードを一気に上げ、雪花をあっという間に引き離す。
 その心は『落ち着いた闘気』で満たされている。
 迷いなど、もう欠片もなくなっていた。


 「トップ・クリアマインド!!」


 「「「「「「行けぇぇぇ、遊星ーーーーー!!!」」」」」」


 仲間からのエール、風の唸りと共に『クリアマインド』の時とは比べ物にならない力が沸き起こる。
 止まる事の無い『デュエリストの進化』の力が!


 「レベル8のスターダスト・ドラゴンと、レベル2のマッハ・ウォリアーに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!
  集いし絆が一つになる時、進化の鼓動が未来を照らす!光射す道となれ!デルタ・アクセルシンクロォォォォォ!!」


 ――ゴォォォォォォ……シュイン!!


 光の粒子だけを残し、遊星は消える。
 雪花も、消える事は予想していたが矢張り探してしまう…何処に行ったかと。

 「消えたか…く、何処に行った!?」

 その答えは雪花の背後から示される。


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴ…バリィィィン!!


 音速の壁をブチ破り、光速すら凌駕した存在が光と共に現出!
 先ずは遊星が超光速のトンネルを抜け出し、続いて『何か』が飛び出す。

 「降誕せよ、『コズミック・クェーサー・ドラゴン』!!」

 『ショアァァァァァァァァァ!!』


 其れはドラゴン。
 眩い銀の体躯に8枚の巨大な翼、頭部の形状はスターダストに酷似しているが、顔はシューティング・スターに近い。

 だが、発せられる力はその2体を遥かに凌駕している存在。


 新たな進化の道は遊星によって開かれたのだった。













   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 Sp−死者への供物
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが4つ以上ある時に発動できる。
 相手モンスター1体を選択し、選択したモンスターを破壊する。
 このカードを破壊した次の自分のターン、自分のスピードカウンターは「スピードワールド」と名の付くフィールド魔法の効果では増加しない。
 自分のスピードカウンターが6個以上あるとき、このカードは速攻魔法として発動できる。



 Sp−ハイパー・ブースト
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが4つ以上ある時に発動できる。
 自分のスピードカウンターを12にする。
 エンドフェイズ、自分のスピードカウンターは0になる。



 Sp−ジ・エンド・オブ・ストーム
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが10個以上ある場合に発動する事ができる。
 フィールド上に存在する全てのモンスターを破壊する。
 この効果で破壊し墓地へ送られたモンスター1体につき、そのモンスターのコントローラーは、300ポイントのダメージを受ける。



 Sp−サンダー・ボルト
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが12個以上ある場合に発動する事ができる。
 相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。



 葬滅神の勅命
 通常罠
 自分フィールド上に「葬滅神−アンラ=マンユ」が表側存在する場合に発動できる。
 自分の墓地から「掃滅」と名の付くモンスターを2体まで選択し、選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。



 葬滅の裁き
 カウンター罠
 相手がカード効果を発動した時に発動できる。
 その効果を無効にし、相手に1000ポイントのダメージを与える。