「デルタアクセルシンクロだと!?」
ブルーノが見せた新たな戦術。
それは3体のシンクロモンスターで行う究極のシンクロ召喚『デルタアクセルシンクロ』。
光の中での進化を体得した者が、更なる限界を超えた場合にのみ辿り着ける境地だ。
「デュエリストの成長と可能性に限界は無い。歩みを止めない限りな!」
「流石だなブルーノ。」
「良い事言うぜ!」
ブルーノが加速し、遊哉と遊星も其れに続く。
其れに合わせる様に、白い機械戦士はカメラアイを光らせ、手にしたライフルを罪の根源たる悪魔に向ける。
攻撃力では相手の方が上だが、モンスターの迫力では此方がずっと上。
因縁のデュエルはいよいよ最終章だ。
遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel83
『鮮烈なる因縁清算!』
ブルーノ:LP3000 SC6
TG フリーダム・ストライカー:ATK4000
TG ハイパー・ライブラリアン:ATK2400
ディック:LP2800 SC6
Zero Hell's The Original Sin:ATK6300
セブンヘルズトークン(星4・闇・悪魔):ATK&DEF1000×2(守備表示)
ライフポイントは略互角。
モンスターの攻撃力では勝るディックだが、ブルーノのデルタアクセルで呼び出されたモンスターもその力は不明。
「ハイパー・ライブラリアンの効果でカードを1枚ドローする。」
先ずはライブラリアンでの1ドロー。
此れの為に残しておいたのだ……良い判断といえる。
「行くぞディック!フリーダム・ストライカーの効果発動!
1ターンに1度、相手モンスター1体を選択し、エンドフェイズまで選択したモンスターの効果を無効にし攻撃力を500ポイントダウンさせる。
私はこの効果でThe Original Sinの効果を無効にし、攻撃力をダウンさせる!『シャープショット』!」
明かされた効果は中々に強力なもの。
フリーダムのライフルからビームが放たれ、Original Sinを打ち抜いてその効果を無効にして攻撃力を下げる。
如何に強力といえど、自身の効果で攻撃力が上がっている以上その効果を無効にされれば攻撃力は戻ってしまう。
おまけに攻撃力まで下げられたとなってはたまらない。
「おのれ…」
Zero Hell's The Original Sin:ATK6300→4000→3500
此れで攻撃力は逆転。
一気に攻め込む事ができるようになった。
「此れで原罪の悪魔を倒す事ができる。
バトル!TG フリーダム・ストライカーで、Zero Hell's The Original Sinに攻撃!『ハイマット・フルバースト』!!」
両腰部のレールガン、両手のビームライフル、そして肩の2門のプラズマキャノンが一斉に火を噴き罪の根源に向かう。
合計6本ものビーム攻撃を受けたらひとたまりも無いだろう。
「小癪な…トラップ発動『カウンターバーン』!相手の攻撃宣言時に発動できる。
相手モンスターの攻撃対象になったモンスターの攻撃力を1000ポイントアップする。
そしてこのカードは墓地に送られた場合、2ターン後のスタンバイフェイズに再びセットされるのだ。」
Zero Hell's The Original Sin:ATK3500→4500
が、ディックは攻撃モンスター迎撃用の罠を発動する。
攻撃力を1000ポイントもアップさせる効果で、再びフリーダム・ストライカーを上回る。
6本の光線に対して極太ビームを放つが、しかし押し切れない。
「悪くない戦術だ。…だが残念だったな、其のカードの発動が逆にフリーダムを強化する事になる!」
「なに?」
「フリーダム・ストライカーはバトルフェイズ中にカード効果が発動するたびに攻撃力が800ポイントアップする。
更に、通常の攻撃に加えカード効果が発動した数まで攻撃する事が出来る!」
「なんだと!?」
TG フリーダム・ストライカー:ATK4000→4800
ディックの迎撃もなんのその。
其のカード発動をも自身の強化に繋げる効果で再度フリーダムの方が上に立つ。
3体ものシンクロモンスターによって呼び出された究極のシンクロモンスターの力は伊達ではない。
6本の光線が極太ビームを押し返し、そのままOriginal Sinを焼殺!
3体のモンスターをリリースして召喚された切り札級のモンスターをいとも簡単に葬り去ったのだ。
ディック:LP2800→2500
「むおぉぉぉぉ!…ぐぬ…おのれぇ…!」
折角召喚した最上級モンスターがアッサリ倒されディックも悔しそうだ。
だが、此れが正に『今』のブルーノとディックの差であるといえる。
因縁に決着を付けて未来へ進もうとするブルーノと、最早雪花の操り人形に成り下がったディック。
其の差はあまりにも大きい。
ライフの差は僅かとは言え、ブルーノのライフ減少はカードコストのみで実質無傷と言う事からも其れが見て取れるだろう。
「追撃だ、フリーダム・ストライカーとハイパー・ライブラリアンで2体のセブンヘルズトークンに攻撃!『ハイパー・バースト』!」
キッチリとトークンも破壊しフィールドアドバンテージも取り戻す。
「どうやら、何時の間にか私とお前には大きな力の差が出来てしまったようだ…カードを2枚伏せターンエンド。」
TG フリーダム・ストライカー:ATK4800→4000
操られているせいだろうがディックのデュエルタクティクスは本来よりも低くなっているらしい。
尤も、ブルーノは勿論、遊哉も遊星もディックが操られているなどは露程も知らない。
だが、それでも1度は戦った事があるだけに(遊哉はディックが操っていたデュエルロイドだが)、明らかに『弱くなっている』と感じていた。
「死に損ないが…私のターン!!」
ブルーノ:SC6→7
ディック:SC6→7
「力の差だと…?吠えるな!最終的に勝てば良いのだ!手札からスピードスペル『Sp−異界融合』を発動!
スピードスペルが7個以上あるとき、フィールド又は墓地から融合素材モンスターを除外して闇属性の融合モンスターを融合召喚する!
私は墓地に存在する7体の『セブンヘルズ』を除外融合!!」
実力差が有りすぎる――ハッキリと言われたディックは大凡操られているとは思えないほどに怒りを顕にしている。
そんな状態で切った戦術は『融合』。
除外融合で7体のモンスターを素材に融合召喚を行ってきたのだ。
「7体融合…」
「まぁ、俺が既にやってるけどな。」
「あぁ、余り驚かないな。」
しかし、チームYAMATO戦で既に遊哉が7体融合を見せているために余り驚かない様子。
ただ、『とんでもないのが出てくる』と言うのは感じているが。
「7つの罪を宿した邪神よ、其の罪を撒き散らし世界を滅ぼせ!融合召喚『大罪龍 ニルヴァーナ』!!」
『Gwaaaaaaaaaaa!!!』
大罪龍 ニルヴァーナ:ATK5000
呼び出されたのは攻撃力5000の超大型融合モンスター。
闇色の身体を持った巨大で強大なドラゴンだ。
「大罪龍 ニルヴァーナは『セブンヘルズ』と名の付いたモンスターを含む悪魔族モンスター5体以上を融合素材としなければならない。
このカードの効果は無効にすることは出来ぬが、其の真髄はセブンヘルズ7体を素材とした場合に発揮される!
7体のセブンヘルズを素材として融合召喚されたこのカードは相手のカード効果を受け付けない!」
そして其の効果は強烈。
7体のセブンヘルズを融合した事で一切のカード効果が効かない無敵モンスターとなったのだ。
「更にニルヴァーナが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、相手に2000ポイントのダメージを与える。
この攻撃で貴様は終わりだブルーノ!死に損ないめが…今度はキッチリ冥獄へ送ってくれる…!
バトル!大罪龍 ニルヴァーナで、TG フリーダム・ストライカーに攻撃!『ギルティ・スクライド』!!」
放たれる闇色のブレス。
この戦闘が成立すれば、戦闘ダメージとニルヴァーナの効果でブルーノのライフは0になってしまう。
だが、一撃必殺ともなる攻撃が放たれてもブルーノも遊哉も遊星も焦りは無かった。
「戦術がアメェ…つーか単調にも程がアンだろ?」
「あぁ、幾らなんでも考えが無さ過ぎだな。」
「だよなぁ……つー事で、殺っちまえブルーノ!」
「無論だ!矢張りお前はファントムとして非合法な活動をするうちにデュエリストとしての力を鈍らせたようだなディック!」
焦るどころか余裕そのもの。
ディックは当然其れが何故かが分らない。
この攻撃が通れば終わりだと言うのに…
「『分らない』と言う顔だな?ならば見せてやろう、トラップ発動『TG−P+1000』!
私の場の『TG』と名の付くモンスターはエンドフェイズまで攻撃力が1000ポイントアップする!
そしてフリーダム・ストライカーは自身の効果で更に攻撃力が800ポイントアップする!」
TG フリーダム・ストライカー:ATK4000→5000→5800
TG ハイパー・ライブラリアン:ATK2400→3400
「更にトラップ発動『シンクロン・デストラクター』!
このターンシンクロモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、相手に破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!
加えて、新たなカードが発動したことでフリーダム・ストライカーの攻撃力は更に800ポイントアップする!」
『…………!』
TG フリーダム・ストライカー:ATK5800→6600
トラップコンボでニルヴァーナを上回った。
しかもシンクロン・デストラクターでバーンダメージも発生する。
ディックのフィールドに戦闘を中止できるカードはない。
「ば、馬鹿な…!」
「野望に身を落とし、デュエリストの魂を曇らせたお前では私に勝つ事など出来ない!
返り討ちにしろTG フリーダム・ストライカー!『ハイマット・フルバースト』!」
反撃として放たれた6本の光線は闇色のブレスを切り裂き、其の勢いのままニルヴァーナを貫く。
「ぐおぉぉぉぉ!!」
ディック:LP2500→900
「更にシンクロン・デストラクターの効果でニルヴァーナの攻撃力分のダメージを受けてもらうぞ!」
止めの一撃。
爆散したニルヴァーナの爆風がディックを襲い、残ったライフをも消し飛ばす。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」
ディック:LP900→0
決着!
因縁清算のデュエルは終ってみればブルーノの『完勝』としか言えない内容だった。
しかも只勝つだけではなく、遊哉と遊星にアクセルシンクロの更なる進化を見せての勝利――見事と言うに尽きるだろう。
「やったなブルーノ!」
「流石だぜ!完全勝利ってやつだな!」
「あぁ、此れで私も過去を清算できた。」
観戦者だった2人が勝利を称え、ブルーノも其れに応える。
此れで先に進めると言うものだ。
「ぐ…ぐあぁぁあ!!ぐぅ…おのれ雪花…操るのみならず…私を生贄に…ぬおわぁぁぁぁ!!!」
「「「!!!」」」
だが、負けたディックは突然苦しみだし――そのまま消滅してしまった。
恐らく負けたショックで雪花の洗脳が解けたのだろうが…遅かった。
今頃は玉座の新たなクリスタルとなっている事だろう。
「消えちまった…負けたら消滅ってか!?冗談きついぜ流石によぉ…!」
「確かにな…だが操るとは…まさかアイツは…」
「如何やらファントムの実質リーダーである簪の操り人形と化していたようだ…」
「洗脳!?ふざけやがって…」
「あぁ、許す事はできないな。」
如何に敵とは言え、自らの仲間を操って手駒にしようなど許せるはずも無い。
更には敗北したら生贄……これらの事がこの3人のデュエリストの魂に『怒りの炎』を燃やす結果となった。
「行くぜ遊星、ブルーノ!仲間をゴミクズみてぇに扱うクソッタレをブッ飛ばしてやらぁ!!」
「あぁ、奴を倒して全てを終らせよう!!」
「最上階へ急ぐとしよう。」
Dホイールを噴かし、一行はこのだだっ広い屋内サーキットを後にする。
そしてこの部屋も他の2部屋同様、3人が離脱した直後に崩れ去ったのだった。
――――――
「あぁ…遂にお前まで…もう止まらないの?私は……もう…」
玉座では雪花がもうどうしようもない状態になっていた。
新たに現れたディックを内部に納めたクリスタルと新たなカード。
意識のみを覚醒させられ、身体の自由を奪われている雪花には只見ている事しか出来ない。
「こんな…こんな事を……どうして…!遊哉、遊星…お願いだ、私を…止めて…」
『ふふ…こんなところか…良い感じで力が漲ったな…』
「!!止めろ…私は…もう…やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
『貴様の役目は終わりだ…精々我が糧となるが良い。』
「あ…あぁぁぁぁぁ!!!」
邪悪な雪花が表れたかと思うと、雪花は悲鳴を上げそのまま倒れる。
意識が飛んだのだろか?
いや、そうではない。
「くくく…此れで準備は万全だ。後は不動遊星とこいつがデュエルをすれば復活の準備は整う。
そして其の後で緋渡遊哉を打ち倒して龍皇の力を吸収したとき私は絶対の存在となる。」
もう1つの意識が雪花を押し込め元に戻ったのだ。
邪悪な意志は黒い瘴気となり、自らのデッキに纏わり付く。
「さぁ、始めよう劇の最終章を!闇が支配する世界の幕開けを!」
狂った革命家のような雪花。
其の雪花に纏わり付く黒い瘴気。
其の瘴気の中には今までよりもはっきりと『ローブを纏った山羊の骸骨』が現れていた…
To Be Continued… 
*登場カード補足
Sp−異界融合
スピードスペル
自分のスピードカウンターが7個以上ある時に発動できる。
自分フィールド上又は墓地から融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し
闇属性の融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする。)
TGP−+1000
通常罠
エンドフェイズまで自分フィールド上に表側表示で存在する「TG」と名の付くモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。
エンドフェイズ、この効果を受けたモンスターは守備表示となり、次の自分のターンまで守備力が半分になる。
カウンターバーン
永続罠
自分のモンスターが相手モンスターに攻撃される時に発動できる。
相手の攻撃対象になったモンスターの攻撃力を1000ポイントアップする。
このカードは墓地に送られてから(自分のターンで数えて)2ターン後のスタンバイフェイズに自分フィールド上にセットされる。