――ヴィィィィィ…
夜の街を失踪する真紅のバイク・Dホイール。
ドライバーは、モニターを確認しながら目的地へ…
「…童実野町はどっちだ?」
…訂正。如何やら、ナビの故障で迷ってしまったらしい。
「…そのうち着くか。」
D・ホイールは更にスピードを上げて夜の街を駆け抜けていった。
遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel3
『シンクロ覚醒』
「「「「不動遊星?」」」」
「あぁ、俺がアメリカに居たときに会ったデュエリストでな、かなり強かったぜ。」
此処は童実野町に有る、とあるカフェ。
遊哉と霧恵、響、美咲、氷雨の5人の話題は、あるデュエリストについての事のようだ。
「で、その人は今何やってるの?」
「さぁ?俺が日本に帰るとき、『その内、俺も日本に戻る。』なんて言ってたけどな。」
「じゃあ、日本に来てるかもしれないんだ?」
「もしかしたらな。さて、そろそろ出ようぜ?長居は無用だろ?」
「そうね。」
5人は席を立つと街へと繰り出していった。
因みに会計は遊哉持ちだったらしい。
――――――
――童実野町・某所
「…漸く付いたか。後でナビの修理をしないといけないな。」
バイクを降りた青年……不動遊星は呟いた。
「活気のある街だ。緋渡も此処にいるのか?」
如何やら遊星は遊哉に用があってきたらしい。
「まぁ、いずれ会えるか……ん?」
遊星が視線を向けた先には、デュエルをする少年と…マスクの大男。
「終わりだ、小僧!マグネット・ヴァルキリオンの攻撃!マグネット・セイバー!!」
「うわぁぁぁ!!」
LP1500→0
少年のライフが0になりデュエル終了。
マスクの男は少年に近づきそのデッキを取り上げてしまった。
「!何するんだよ!」
「るせぇ!俺様が勝ったんだからな、此のデッキは俺様の物よ。」
「何だと?そんなの聞いてないぞ!」
「へ、負け犬が吼えるんじゃねぇ。悔しかったらデュエルで取り返してみろよ。尤もデッキが無いんじゃ無理だろうがな!」
男の言葉に口をつぐんでしまう少年。
彼のデッキは此の1つのみ。
取られてしまったらデュエルは出来ない。
「が〜はっはっは、やはり俺様は最強よ…ってうお!?」
突如大男の身体が転がった。
背後から遊星が足を払ったのだ。
「って〜。コノヤロウ!イキナリ何しやがる!」
「…デッキをその子に返せ。」
「あんだって?」
「デッキをその子に返せ。デュエリストが自ら組んだデッキには使用者の魂が宿る。
そのデッキを他人が勝手に奪って良いはずが無い。」
遊星は鋭い視線を男に向けるが男の方は全く意にかえしていない。
「知るかよ。負けたそいつが悪いのさ。悔しかったら勝ってみろってんだ!」
「貴様…!」
「そいつには何を言っても無駄だぜ。デュエルでイカサマ働くような似非デュエリストにはな。」
遊星に声を掛けたのは…
「緋渡…」
「久し振りだな、遊星。それと、まだ街に居やがったのか、ハンター!」
遊哉の言葉に僅かに震えた大男は、平静を装って対する。
「ハンター?しらねぇな。俺様はマスクド・キラーよ!」
「(センスのねぇ名前)阿呆かお前は?声と体格でバレバレだ!」
「お前が誰だろうと関係ない。どうしても返さないというなら、そのデッキを賭けて俺とデュエルしろよ。」
遊星は、静かに、しかし確実な怒りが篭った声で言い放った。
「何だって?」
「お前が勝ったら、好きにしろ。だが、俺が勝ったらそのデッキは持ち主に返してもらう。」
「フン…良いだろう。」
聊か急展開だが、少年のデッキを掛けたデュエルが決定した。
――――――
「「デュエル!!」」
遊星:LP4000 マスクド・キラー:LP4000
「大丈夫なのかな…?」
「遊星が負けることは無いだろうな。」
遊哉はそれだけ言うとデュエルに目を向ける。
実際に戦ったことがあるだけに、遊星の強さを知っているようだ。
「俺のターン、シールド・ウォリアーを守備表示で召喚。」
シールド・ウォリアー:DEF1600
「ターン・エンド。」
「俺様のターン、ドロー!ギルガースを攻撃表示で召喚!」
ギルガース:ATK1800
「ギルガースで、シールド・ウォリアーを攻撃!」
ギルガースの攻撃力は、シールド・ウォリアーの守備力よりも高い。
その攻撃でシールド・ウォリアーが消滅する。
「ターン・エンドだ。」
「俺のターン。スピード・ウォリアーを攻撃表示で召喚。」
スピード・ウォリアー:ATK900
「更に魔法カード『フォース』を発動。相手モンスター1体の攻撃力を半分にし、
その数値分自分のモンスターの攻撃力をアップさせる。」
スピード・ウォリアーATK:900→1800 ギルガース:ATK1800→900
「く、この。」
「更にスピード・ウォリアーの効果、召喚したターンのバトルフェイズのみ、元々の攻撃力が2倍になる。」
スピード・ウォリアー:ATK1800→2700
「スピード・ウォリアーでギルガースを攻撃!『ソニック・エッジ』!!」
――バァァン!
「ち、猪口才な…」
マスクド・キラー:LP4000→2200
「だが、此の瞬間手札のファントム・デビルの効果発動!
自分が戦闘ダメージを受けたとき、墓地のモンスター1体をゲームから除外しこいつを特殊召喚する!」
ファントム・デビル:ATK2500
「カードを1枚伏せ、ターンエンド。」
「俺のターンだ。ユニオンモンスター、ファントム・ケルベロスを召喚!」
ファントム・ケルベロス:ATK300
ユニオンモンスター…特定のモンスターの装備カードとなり、攻撃力の上昇や特殊効果を付与するモンスター。
レベルは低いが、自身を犠牲に装備モンスターを破壊から護る効果も持っている。
「行くぞ!ファントム・デビルにファントム・ケルベロスを合体!
此れによりファントム・デビルはバトルフェイズ中2回攻撃が可能となった!」
「…2500の2回攻撃…」
「更に魔法カード『暗黒の商法』を発動。テメェの墓地のカードを除外する!
俺が除外するのは、『シールド・ウォリアー』!そいつは墓地に存在すると厄介だからな!」
『シールド・ウォリアー』は墓地に存在する此のカード除外することでモンスターを戦闘での破壊から護る。
あらかじめ除外されてしまっては意味が無い。
「だが、このカードを使用した場合相手は1枚ドロー出来る。」
「……」
「まだまだぁ!装備魔法『ルシフェルの剣』を発動!装備モンスターの攻撃力を700ポイントアップする!」
ファントム・デビル:ATK2500→3200
「バトルだ!ファントム・デビルでスピード・ウォリアーを攻撃!『濃霧の惨劇』!」
――ドシャァァ!
「く…トラップ発動『ガード・ブロック』!戦闘ダメージを無効にし、デッキからカードを1枚ドローする。」
「フン…だが、ファントム・デビルの効果発動!
相手モンスターを戦闘で破壊したとき、相手に500ポイントのダメージを与える!」
「ぬぁ…!」
遊星:LP4000→3500
「装備したファントム・ケルベロスの効果により、追加攻撃!『濃霧の惨劇ぃ』!」
――ギシャァァ!
「うぁぁぁぁぁぁ!」
遊星:LP3500→300
「更に手札より速効魔法『無常なる破壊』発動!悪魔族モンスターが相手に戦闘ダメージを与えたとき
そのモンスターのレベル分相手の手札を墓地に捨てる!但しお前は次のターンのドローフェイズに2枚ドロー出来るがな。
ファントム・デビルのレベルは8、お前の手札は5枚。手札を全て捨ててもらおうか!」
「く…!」
「ケケケ…ターンエンドだ。」
「…これ、やばくない?」
「伏せカードも手札も壁モンスターも居ない。幾ら此のターン2枚ドロー出来ても…」
「…大丈夫だ。」
戦況を見て、不安になっている響と美咲に遊哉は告げた。
遊哉には遊星が負けるとは思えないらしい。
「あいつは真のデュエリストだ。デッキが応えてくれるはずさ。」
その言葉に霧恵が同意するように頷き、デュエル観戦に戻った。
「俺のターン!此のターン『無常なる破壊』の効果で2枚ドロー。(!…来たか)」
「あん?何笑ってやがんだ?気でも振れたか?」
圧倒的不利な状況にもかかわらず、笑みを浮かべる遊星に対してキラーは訝しげな視線を送る。
「ま、如何足掻いたって此のデュエルはもう終わりだろうけどなぁ!はぁーっはっはっは!!」
「確かに此のデュエルは、もう終わりだ。…貴様の敗北でな!」
「何だと!?」
「俺は、バスター・ウォーリアーを攻撃表示で特殊召喚!」
バスター・ウォリアー:ATK2100
「バスター・ウォリアーは、相手フィールド上にのみモンスターが存在する場合に特殊召喚できる。」
「ち、運のいい奴が…」
「更に、バスター・ウォリアーの効果、特殊召喚されたときライフを半分払い、
デッキからレベル2以下のモンスターを1体特殊召喚する。来い!チューナーモンスター、パワー・シンクロン!」
パワー・シンクロン:ATK1400
「!チューナーだと?まさか!!?」
「バスター・ウォリアーに、パワー・シンクロンをチューニング。」
――キィィィィ
「集いし星が、新たな力を呼び起こす…光指す道となれ!シンクロ召喚、パワー・ウォリアー!!」
パワー・ウォリアー:ATK2500
「パワー・ウォリアーの効果発動!此のカードのシンクロ召喚に成功した時、
相手フィールド上の最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力を半分にしその攻撃力を吸収する!」
パワー・ウォリアー:ATK2500→4100 ファントム・デビル:ATK3200→1600
「此れで終焉だ!パワー・ウォリアー、ファントム・デビルに攻撃!『ノーザンライト・パワークラッシュ』!」
――ドガシャァァァン!
「ぎぇぇぇぇぇぇ!!!」
マスクド・キラー:LP2200→0
「…な?言ったとおりだろ。」
「凄い本当に勝っちゃった…」
「唯の運…じゃないよね…」
あの状況からの逆転に遊哉と霧恵以外は驚いているようだ。
まぁ、彼女達の場合何時も霧恵の圧倒的デュエルばかり見ていたのだから仕方ないだろうが…
「…約束だ。デッキは返してもらう。」
「ち、分かったよ!こんな屑デッキ返してやらぁ!!」
デッキを投げつけるように渡し、キラーは去っていってしまった。
「屑デッキ…」
デッキの持ち主たる少年は、そう呟きうつむいてしまった。
自分が作ったデッキが『屑』呼ばわりされたショックが大きいのだろう。
「…君のデッキは屑なんかじゃない。」
そう言って遊星は少年にデッキを渡す。
「どんなデッキでも、構築したデュエリストの魂が宿る。其れが屑であるはずがない。
デッキを信じていれば、いつか必ずデッキは応えてくれる。だから、自信を持つんだ。」
「遊星の言うとおりだぜ。あんな奴の言うことなんか気にすんな。己のデッキを信じてやんな。」
遊哉も遊星に続く。
「…うん!分かった。此のデッキで頑張ってみるよ。」
少年は笑顔に成り、一礼するとその場を去っていった。
その後姿を見ながら、遊哉と遊星、そして霧恵達も軽く笑っていた。
しかし、此の光景…先ほどのデュエルからの事を物陰から見ていた人物が居ることに、誰も気付いてはいなかった…
To Be Continued… 