「遊哉?」
自分を呼ぶ声に、遊哉は振り向いた。
「霧恵!」
自分を呼んだ少女を、確認しその名を呼ぶ。
「久し振りじゃない。何時帰ってきたのよ?」
「ん?今さっきな。」
如何やらこの2人俗に言う幼馴染のようだ。
遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel2
『街のリーダー』
「今さっきって…あたし何も聞いてないんだけど?」
「だろうな、言ってねぇもん。」
「まったく…相変わらずね?」
「霧恵もな。」
先程のデュエルの時とは違って、遊哉の表情も柔らかい。
「ねぇ、霧恵の知り合い?」
「誰?」
「紹介してよ。」
話に割り込んできたのは、先程霧恵と一緒に居た3人の少女。
遊哉の事が気になるらしい。
当然、遊哉も彼女達に気付く。
「霧恵の…友達か?」
「そ、…えっと…」
「緋渡遊哉だ。宜しくな。」
霧恵が、どちらから紹介しようか迷っていたのを感じたのだろう、遊哉は自ら、彼女達に自己紹介をした。
其れを聞いた彼女達も、それぞれが自己紹介をする。
「あたしは岡島響。」
「財前美咲、宜しく。」
「私は、中西氷雨。宜しくね。」
と、そんな会話をしている中、大会の会場は何やら騒がしい。
ハンター・Kを取り囲んでるように見える。
「?何かあったのかな?」
「…あいつのイカサマがばれたみたいだな。」
「「「「イカサマ!?」」」」
「…ハモるなよ。あいつ、ドローする時にデッキからカードをドローする振りしてリストバンドに隠してたカードを
手札に加えてたみたいだぜ。随分巧妙にやってたが、俺の目はごまかせない。」
遊哉の言っていることが真実であることを示すように、ハンターは会場から追い出された。
恐らく、此の街のデュエル大会には二度と出場できないだろう。
「ところで、大会はどうなるんだ?俺は正式な出場者じゃないからな…あの野郎をボコしただけだし。」
「さぁ?最初からやり直しじゃない?イカサマで勝ったのなんて無しでしょ?」
大会主催者と、参加者達との話し合いが続く。
時折、主催者が頷いてるのを見ると、大会はやり直しの方向へ向かっているようだ。
「…やっぱ、あたしも参加しようかな。」
「え?出るの?」
「うん。遊哉のデュエル見てたら、火が点いたみたい。
それに、街のリーダー的存在であるあたしが出たほうが盛り上がるでしょ?」
霧恵の言葉に反対する者は居ない。
遊哉も、『出れば?』的な目で見ている。
「じゃ、早速参加者登録してくるわ!」
霧恵は大会主催者の方へと向かっていった。
――――――
「…強いな。」
「ホント、相変わらず。」
「相手だって、それなりに強い奴なのに。」
「全然勝負になってないわね。」
此れは霧恵のデュエルを見た感想。
上から遊哉、氷雨、響、美咲である。
以上の4人だけでなく、大会を観戦していたギャラリーは皆、異口同音に同じことを思っていることだろう。
霧恵のデュエルは其れほどまでに、圧倒的だったのだ。
「くっそ…ビッグシールド・ガードナーを守備表示。」
ビッグシールド・ガードナー:DEF2600
「ターン・エンドだ…」
「あたしのターン、ドロー。(よし!)魔法カード『ディメンション・マジック』発動!
自分の場に魔法使い族が存在するとき、場のモンスター1体をリリースし手札の魔法使い族を特殊召喚する!」
霧恵の場には魔法使い族である、『マジシャンズ・ヴァルキリア』が存在している。
発動条件はOKだ。
「マジシャンズ・ヴァルキリアをリリースし…出番よ、ブラック・マジシャン・ガール!」
ブラック・マジシャン・ガール:ATK2000
「更に、ディメンション・マジックの効果。フェイールド上のモンスター1体を破壊する!
対象は当然、ビッグシールド・ガードナー!」
ガァァン!
壁モンスターを破壊された相手のフィールドには伏せカードも無い。
正にがら空きの状態だ。
「此れで終わりね!ブラック・マジシャン・ガールでダイレクトアタック!『黒・魔・導・爆・裂・波』!」
―ズシャァァァ!
「のわぁぁぁぁ!!!」
LP700→0
「あたしの勝ちね!」
全くの余裕。
ライフは無傷ではないが、全て魔法とモンスター効果のコストとして払った物ばかりだ。
流石は街のリーダーと呼ばれているだけの事はある。
ついでに言うなら、このデュエルは準決勝。
次は決勝戦だ。
「次は決勝だな。」
「頑張ってね!」
遊哉と美咲の言葉に、霧恵は軽く頷いて聞いた。
「処で決勝の相手、誰?」
それに女子3人は互いに顔を見ながら苦笑いを浮かべある方向を指差した。
「「?」」
遊哉と霧恵も其れに習い、その方向を向くと…
「いよっしゃー!決勝進出!!霧恵ちゃんとデュエルだー!!!今日こそ振り向いてもらうからね霧恵ちゃ~ん♪」
…変態が居た。
「…なんだありゃ?霧恵の…追っかけか何かか?」
「どっちかと言えば、ストーカーね。」
「どの道、変態か。」
何げにひどいことを言っているが、事実なのでしょうがない。
「…本気でぶちのめして良いかしら?」
「「「「…了承!」」」」
4人の承諾を得てストーカーはぶちのめされる方向で決定した。
――――――
「「デュエル!!」」
霧恵:LP4000
須藤:LP4000
そして始まった決勝戦。
開始前のシャッフル時に、ストーカー(須藤と言うらしい)が何やら余計なことを言って、
霧恵を切れさせた以外は特に問題無し。
決勝戦は始まってしまった。
「あたしのターン、ドロー。魔導剣士イオスを攻撃表示で召喚。」
魔導剣士イオス:ATK1800
「カードを2枚セットし、ターンエンド。」
攻撃力1800、レベル4としては上級の攻撃力だ。
相手は如何出るのか?
「僕のターン。儀式魔法『高等儀式術』発動!デッキからスパークマンとクレイマンを墓地へ送り…
出でよ、カオス・ソルジャー!」
カオス・ソルジャー:ATK3000
「更に魔法カード『ダーク・コーリング』。墓地のクレイマンとスパークマンを除外し、
E-HEROライトニング・ゴーレム召喚!!」
E-HEROライトニング・ゴーレム:ATK2400
行き成り、上級モンスターが2体。
尤も霧恵は焦ってはいないが。
「ライトニング・ゴーレムの効果。1ターンに1度相手モンスター1体を破壊する!やれ、ライトニング・ゴーレム!」
「甘い!トラップ発動『天罰』!手札1枚を墓地に捨て、モンスター効果の発動を無効にし破壊する!」
ガシャァァン!
天罰によって、ライトニング・ゴーレムは無効となり破壊されてしまった。
「でも、まだカオス・ソルジャーが居る!カオス・ソルジャーでイオスを攻撃!『カオス・ブレード』!」
「残念でした。リバース・カードオープン、『ドレイン・シールド』。
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、その攻撃力分ライフを回復する。」
霧恵:LP4000→7000
完全なまでに霧恵のペース、まるで勝負になっていない。
「ち、カードを1枚伏せ、ターンエンドだ。」
「…圧倒的だな。」
「攻撃力3000のカオス・ソルジャーも問題にならないわね。」
「こりゃ、霧恵の圧勝かな?」
「でも、変態ストーカーだから何してくるかわかんないよ?」
遊哉及び女子3人の中で須藤はストーカーで定着しているらしい。
「さて、ストーカー君は如何出るかな?」
「あたしのターン。魔導剣士イオスの効果。このカードは魔法カードが発動するたびに魔力カウンターを1つ乗せる。
そして、自分のターンに魔力カウンターを任意の数取り除くことで、取り除いた魔力カウンター1つに付き
1体『魔剣士トークン』を特殊召喚する。」
「そ、そんな…!」
「さっき、あんたは『高等儀式術』と『ダーク・コーリング』を使った。よってイオスの魔力カウンターは2つ。
この2つのカウンターを取り除き、2体の魔剣士トークンを特殊召喚する!」
魔剣士トークン:ATK300(×2)
「手札より、魔法カード『魔術師の練成術』発動。場の魔法使い族をゲームから除外し、デッキから2枚ドローする。
コストはトークンでもかまわないからね、魔剣士トークン1体を除外するわ。」
霧恵のコンボはまだまだ続く。
「此れにより、イオスに新たな魔力カウンターが加わった。その効果でトークンを召喚!」
魔剣士トークン:ATK300
「いくよ、魔剣士トークン2体をリリースし、ブラック・マジシャンをアドバンス召喚!」
「ハァ!」
ブラック・マジシャン:ATK2500
魔法使いの代表とも言えるモンスターの登場だ。
ギャラリーも盛り上がっている。
「へへ、でも僕のカオス・ソルジャーにはブラック・マジシャンじゃ勝てないよ?」
「そうかしら?装備魔法『魔術の呪文書』をブラック・マジシャンに装備!此れにより攻撃力700ポイントアップ!」
ブラック・マジシャン:ATK3200
「こ、攻撃力3200ぅ!?」
「行くわよ…ブラック・マジシャンで、カオス・ソルジャーを攻撃!黒・魔・導!!」
「くっそ…(この伏せカードは破壊されなきゃ意味が無い…!)」
須藤:LP4000→3800
「更にイオスのダイレクト・アタック!魔導一閃斬!!」
「ぬわぁぁぁ!!」
須藤:LP3800→2000
一気に須藤のライフを削り取る猛攻。
最早勝負は決したように見える。
「流石にきついけど…僕のライフはまだ残ってる。次のターンで…」
「次は無いわよ?」
霧恵はキッパリと言い放った。
状況は確かに絶対有利だが、須藤のライフポイントはまだ残っている。
何か秘策があるようだ。
「名に言ってんだい、霧恵ちゃん。君のモンスターは全部攻撃を終了したじゃないか。」
「残念だけど、あたしのバトルフェイズはまだ終わってないわ!」
「へ?」
「速効魔法『魔法の学園』発動!場のモンスター1体をリリースし手札かデッキから魔法使い族を特殊召喚する!」
「そ、そんな…!」
「魔導剣士イオスをリリースして、デッキから水霊魔導師-エリアを特殊召喚!」
水霊魔導師-エリア:ATK2500
「そして、魔法の学園の効果で特殊召喚された魔法使いはレベルが2つ上がり攻撃力が500ポイントアップする。」
水霊魔導師-エリア:ATK3000
攻撃力3000で攻撃の権利が残っているモンスター。
須藤に壁モンスターはない。
勝負は決した。
「エリアでダイレクトアタック!スプラッシュ・パニッシャー!!!」
「にえぇぇぇ!霧恵ちゅわ~ん!!」
須藤:LP2000→0
なんとも気持ちの悪い声を出しながら吹っ飛ばされた。
この声にはギャラリー全員が引いていた。
「くっそー!1回戦からこの戦術で勝ってきたのに…」
如何やら、相当悔しいようだ。
「1回戦からその戦術だから負けたのよ。いくら、強力でも同じ戦術だけじゃ対策の1つや2つ思いつくわよ?」
図星だったのだろうか?
須藤は言われたまま固まってしまった。
あ…灰になってる。
優勝を決めた霧恵は、遊哉達に向かって手を振る。
当然彼等も其れに答える。
一騒動あったが、今回のデュエル大会は、迦神霧恵の優勝で幕を閉じた。
…………
………
……
…
――同刻
ヴゥゥゥゥゥ…!!
1台のバイクが童実野町の方向へ疾走していた。
燃え盛る炎のような、真紅の機体。
ドライバーは、その瞳に強い力を宿し、1直線に童美野町へ向かっていった…
To Be Continued… 