童実野町のスタジアム。
一般にも貸し出され、ライディングデュエルが出来るこの場所には何時に間にか多くのギャラリーが集まっていた。
「お、オイこれ凄くねぇか?やっと2順目だよな?」
「タクティクスが半端ねぇよ…どうなるんだこのタッグライディング!?」
ギャラリーが注目するのも無理は無い。
最初は興味本位で見ていた者も、すっかりこのデュエルに魅せられている。
高レベルのモンスターが犇くデュエルレーンにギャラリーの熱気は高まっていた。
遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel26
『結成、チーム遊戯王』
「今度はこっちから行くわ!アキ、準備は良い?」
「勿論よ。」
「さぁ、反撃といきましょうか?」
「力の限りぶっ飛ばす!!」
霧恵&アキ:LP4900
聖霊魔導師−アリオス:ATK3000
火霊魔導師−ヒータ:ATK3300
ブラック・ローズ・ドラゴン:ATK2400
「来るわよ。」
「そう来なくちゃな。もっともっと、俺達を満足させてくれよ!」
鬼柳&シェリー:LP4000
インフェルニティ・デス・フェニックス:ATK3000
フルール・ド・シュヴァリエ:ATK2700
フィールドを埋め尽くす高レベルモンスター達。
デュエルは霧恵の2ターン目…つまり漸く2順目なのだ。
それなのにこのフィールド…否が応でも戦っているデュエリストのタクティクスの高さが伺える。
「先ずはアリオスの効果発動。エンドフェイズまで相手モンスター1体の効果を無効にする。対象はインフェルニティ・デス・フェニックス!
相手ターンのメインフェイズでも発動できる厄介なコピー能力は封殺させてもらうわ!『スキル・ブレイク』!」
「ち、読んでたか…」
「ガーディアンの効果をコピーされたら厄介極まりないしね。バトル、火霊魔導師−ヒータでインフェルニティ・デス・フェニックスに攻撃!」
「残念だけどそうは行かないわ。ゲームから除外されてる『聖騎士の幻術師』の効果を発動。
デュエル中に1度だけゲームから除外されてるこのカードをデッキの1番下に戻す事で1度だけ戦闘を行うモンスターは私が選択できる。」
「戦闘の強制変更!?それにその効果…そっか只インフェルニティの効果発動の為に手札を除外したわけじゃないって事ね?」
予想外のカウンター。
そしてこのカウンターはシェリーと鬼柳のタッグの完成度の高さを物語っても居る。
つまり、シェリーは自分のカードを生かしつつ、ハンドレスの状態を崩さない戦い方を心得ているのだ。
「京介とのタッグは結構多いのよ、ハンドレスとタッグを組む場合の戦い方は誰よりも知っている。
聖騎士の幻術師の効果でバトルモンスターをアリオスとフェニックスに変更!」
アリオスとデス・フェニックスの攻撃力は互角…つまり相打ちとなるが…
「くぅ…でもアリオスが破壊された時デッキか手札から霊魔導師と名の付くモンスターを特殊召喚できる。
あたしはデッキから『光霊魔導師−ライナ』を特殊召喚!更に墓地に魔法使いが増えたことでヒータの攻撃力がアップ!」」
「えへへ〜惨状…じゃなくて参上〜!」
光霊魔導師−ライナ:ATK2500
「今のアタシは…以下同文!」
火霊魔導師−ヒータ:ATK3300→3500
すぐさま新たなモンスターを呼び込む。
「恐るべき展開力ね。ならば私も除外されている『聖騎士の幻想師』の効果発動。
デュエル中に1度だけ除外されているこのカードをデッキの1番下に戻し、このターン破壊されたモンスターを特殊召喚する。
深淵より舞い戻れ『インフェルニティ・デス・フェニックス』!」
「ギョアァァァ!」
インフェルニティ・デス・フェニックス:DEF3000
それに対し負けじとモンスターを蘇生させ戦線を維持する。
「霧恵…強いわね、彼等は。」
「そうだね。でも負ける気は無いけど!攻撃を強制中断されたヒータはまだ攻撃の権利が残ってる!
今度こそヒータでデス・フェニックスを攻撃!『ヘブンズ・イグニッション』!」
「おらぁ、燃えつきやがれ鳥野郎!!」
放たれた紅蓮の炎が黒き不死鳥を焼き尽くし爆散させる。
「更にヒータの効果、戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
「そうはさせないわ。トラップ発動『リフレクト・ペイン』。私たちが受ける効果ダメージを相手に打ち返す!」
3000の効果ダメージはそのまま霧恵達に打ち返される。
「くぅ…流石に簡単には決めさせてくれないか…」
霧恵&アキ:LP4900→1900
「でも効果ダメージを受けたことでトラップ発動『痛みに呼ばれし薔薇』。自分フィールド上にブラック・ローズ・ドラゴンが存在する場合に効果ダメージを受けたときに発動。
このターン、ブラック・ローズ・ドラゴンの攻撃を封じる代わりにデッキか手札から受けた効果ダメージ以下の攻撃力の植物族モンスター1体を特殊召喚する。
さぁ、美しく咲き誇りなさい!現れよ『煌天使ローズ・プリンセス』!」
「はぁぁぁ!」
煌天使ローズ・プリンセス:ATK2800
大幅なダメージを受けたもののアキが伏せカードで立て直す。
タッグならではの絶妙な戦術に勿論霧恵も追撃を敢行する。
「さっすがアキ!此れで追撃できるわ。ブラック・ローズで攻撃出来なくてもプリンセスでの攻撃は可能。
煌天使ローズ・プリンセスでフルール・ド・シュヴァリエに攻撃『薔薇の一閃』!」
手にした長剣でフルール・ド・シュヴァリエを一刀両断。
無傷だったライフを漸く100ポイントだけ削ることが出来た。
「やるな…来いよ、もっと楽しもうぜ!」
鬼柳&シェリー:LP4000→3900
そして鬼柳達のフィールドのモンスターは此れで全滅したが霧恵達にはもう1体攻撃可能なモンスターが残されている。
「光霊魔導師−ライナでダイレクトアタック!『シャイニング・オーバーレイ』!」
「ピッカピカに吹っ飛んじゃえ♪」
「く…」
鬼柳&シェリー:LP3900→1400
ライフは再び差が無くなる。
一進一退の攻防はどちらが勝ってもおかしくは無い。
「カードを2枚伏せてターンエンド。」
「俺のターン。」
霧恵&アキ:SC4→5
鬼柳&シェリー:SC4→5
――――――
「やっふぁみふぇんふぁんふぇんふるな(やっぱ二転三転するな)」」
「「「「「は?」」」」」
一方の観客席では何時の間に買ったのか50個以上のホットドックを食いながら遊哉がデュエルの感想を言っていた。
「わふぁら、みふぇんふぁんふぇんふぅるって(だから、二転三転するって)」
「食べながら喋るな!」
「(ゴックン)」
「ちゃんと噛め!」
美咲の突っ込みは今日も冴え渡る。
「大丈夫、碌に噛まなくても消化出来るから!でだ、まだまだ二転三転するぜこのデュエル。」
「そうかもしれないな。鬼柳とシェリーは前よりも強くなってるがアキと迦神もまるで引けをとらない。
こうなって来ると一瞬の駆け引きがそのまま勝敗に直結してくる。」
「ほっほう〜…ソレは楽しみっさ!」
遊哉の言った事に遊星とレンは納得。
3人娘も結末を見届けようとフィールドに注目していた。
――――――
「『Sp−エンジェル・バトン』を発動。スピードカウンターが2つ以上あるときデッキからカードを2枚ドローしその内1枚を墓地へ送る。
俺は『インフェルニティ・サクリファー』を墓地へ送る。更に手札が0の状態でインフェルニティ・デーモンをドローした事でこのカードを特殊召喚する。」
インフェルニティ・デーモン:ATK1800
「インフェルニティ・デーモンが手札0の状態で特殊召喚された時デッキからインフェルニティと名の付くカード1枚を手札に加える事ができる。
俺はデッキから『インフェルニティ・ミラージュ』を手札に加え…『インフェルニティ・ミラージュ』を召喚!」
インフェルニティ・ミラージュ:ATK0
「インフェルニティ・ミラージュの効果発動。手札が0の時このカードをリリースして墓地のインフェルニティモンスターを2体まで特殊召喚できる。
蘇れ『インフェルニティ・デス・フェニックス』『インフェルニティ・サクリファー』!」
インフェルニティ・デス・フェニックス:ATK3000
インフェルニティ・サクリファー:ATK1500
「手札0からなんて展開力なの…流石だわ。」
「しかもシンクロの素材が揃ってる。…鬼柳、彼方の言葉をそのまま返させてもらうわ!もっとあたし達を満足させて!」
「セリフを取られちまったか…良いぜ、満足しようぜ!レベル4のインフェルニティ・デーモンにレベル4のインフェルニティ・サクリファーをチューニング。
死者と生者、ゼロにて交わりし混沌の時、終わりなき戦場に魔の戦士が降り立つ。シンクロ召喚、現れろ『インフェルニティ・カオス・ウォリアー』!」
「ウォォォォォォ!」
インフェルニティ・カオス・ウォリアー:ATK3000
…普通無手札から此処までの展開が出来るだろうか?
幾ら此れが『インフェルニティ』の特徴とは言え、こうも完璧にハンドレスを使いこなせるのは鬼柳以外には居ないだろう。
「インフェルニティ・カオス・ウォリアーは手札が0の時バトルフェイズ中のみ攻撃力が2倍になる。
そしてインフェルニティ・デス・フェニックスの効果で墓地のインフェルニティ・ガーディアンの効果をコピーする。」
「無敵モード…まぁそう来るわよね。」
「バトル!インフェルニティ・カオス・ウォリアーで火霊魔導師−ヒータを攻撃!」
インフェルニティ・カオス・ウォリアー:ATK3000→6000
この攻撃が通れば霧恵達のライフは0。
そう、通れば…
「そうは行かないって!トラップ発動『幻想霊魔術』!あたしの場に『霊魔導師』と名の付くモンスターが存在し、尚且つ霊魔導師が攻撃対象になった時に発動できる。
墓地から『霊魔導師』と名の付くモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚し、攻撃対象をその霊魔導師に変更する!蘇れ、『地霊魔導師−アウス』!」
「任せて。」
地霊魔導師−アウス:ATK2500
霧恵の巧さが光る。
アウスなら効果により戦闘ダメージは0になり1度だけ破壊されないのだ。
「ち、ならインフェルニティ・デス・フェニックスでブラック・ローズ・ドラゴンに攻撃『オーバー・デッド・フレア』!」
「迎撃させてもらうわ。手札から『アサルト・ローズ』の効果を発動。このカードを手札から捨てることでブック・ローズ・ドラゴンの攻撃力を1200ポイントアップさせる!」
ブラック・ローズ・ドラゴン:ATK2400→3600
今度はアキのカウンターが炸裂。
戦闘破壊されないとは言え、ライフが残り1000を切ってしまうのは痛い。
だが、勿論やられるだけではすまない。
鬼柳&シェリー:LP1400→800
「迎撃策も弄してるとは恐れ入るわ。なら私もゲームから除外されてる『聖騎士の呪術師』の効果を発動。
ゲームから除外されているこのカードをデッキの一番下に戻す事で、このターン私たちが受けたダメージの倍のダメージを相手に与える。」
「この…!案外トリッキーな戦法使うじゃない…」
霧恵&アキ:LP1900→700
再びライフが並ぶ。
更にはライディング・デュエルに於けるセーフティラインを超えた1000以下。
いよいよこのデュエルも佳境に入ってきた。
「俺の手札は0…此れでターンエンドだ。」
「私のターン。」
霧恵&アキ:SC5→6
鬼柳&シェリー:SC5→6
「手札より『Sp−天よりの宝札』を発動。スピードカウンターが6つ以上有る時、全てのプレイヤーは手札が6枚になるようにデッキからカードをドローする。」
此処で手札増強。
此れによりハンドレスは無効となる。
「これでインフェルニティの効果は無効になるわ。」
「考えたわね。でも礼を言うわね。貴女が手札強化をしてくれたおかげで私は更なるモンスターを呼ぶことが出来る。」
「何ですって?」
「『聖騎士の侍女』が通常のドロー以外で手札に加わった時、このカードと手札のモンスターをゲームから除外する事でモンスターをシンクロ召喚する。」
「また、相手ターンでシンクロ…」
「レベル5の聖騎士リヴァイスにレベル3の聖騎士の侍女をゲームから除外してチューニング。
光速を越えし魂よ、闘いの時は来たれり、祝福を我が手に!シンクロ召喚、『ホーリー・ヴァルキュリア』!」
「はぁぁぁぁ!」
ホーリー・ヴァルキュリア:ATK2700
「(この局面でレベル8のシンクロモンスター…でも何故攻撃表示?ヒータの攻撃が通ったら其処で…。
…!まさか天よりの宝札で増強した手札にはオネストのような効果を持ったカードが!?でも…)」
迷うアキは霧恵を見やる。
その霧恵は、アキに対して僅かに笑ってみせる。
それでアキは全てを察した…霧恵のもう1枚の伏せカードの事も。
故に勝負に出る。
「チューナーモンスター『黒薔薇の従者』を召喚。」
黒薔薇の従者:ATK100
「レベル8のローズ・プリンセスにレベル1の黒薔薇の従者をチューニング。
魔性の薔薇が全てを包み込む、その力で世界を覆いつくせ!シンクロ召喚、天上界より現れよ『魔天使−ローズ・ヴァルキリー』!」
「ふ、はぁ!」
魔天使−ローズ・ヴァルキリー:ATK3200
「更に『Sp−スピード・フュージョン』を発動。スピード・カウンターが5つ以上あるときモンスターを融合召喚する。
私はブラック・ローズ・ドラゴンとローズ・ヴァルキリーを融合!咲き乱れよ、融合召喚!『ブラック・ローズ・アテナ』!」
「ふぅぅぅ!」
ブラック・ローズ・アテナ:ATK3800
此処に来て攻撃力3800!
アテナでの攻撃が通れば、例えどのモンスターを攻撃しても勝ちが確定だ。
「(私に出来るのは此処まで…頼むわよ霧恵!)ブラック・ローズ・アテナでインフェルニティ・デス・フェニックスに攻撃『ブラックローズ・ドライブ』!」
最大の一撃が放たれる。
「へ、頼んだぜシェリー。」
「任せて。手札から『聖騎士の鍛錬者』の効果発動。
私達のシンクロモンスターが戦闘を行う時このカードを手札から捨て、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分攻撃力をアップする!」
インフェルニティ・デス・フェニックス:ATK3000→6800
「やっぱり持っていたのね。…霧恵頼むわ!」
「流石だねアキ!その読みの鋭さには敬意を表するよ!トラップ発動『霊魔術−剛』を発動!
あたしのフィールドに霊魔導師が2体以上存在するとき、フィールド上のモンスター1体の攻撃力をフィールド上の霊魔導師の元々の攻撃力の合計分アップさせる!
あたしのフィールドの霊魔導師は3体。そしてその攻撃力の合計値7500がブラック・ローズ・アテナに上乗せされる!」
ブラック・ローズ・アテナ:3800→11300
「そんな…!」
「攻撃力11300だと!?」
裏の裏のその又裏までをも読みきった。
防ぐ手段は、もう無い。
――ゴバァァァァ!
「あぁぁぁぁ!」
「うおわぁぁ!」
鬼柳&シェリー:LP800→0
決着…だが、その内容は正に全力全開。
4人全てが、持てる力を出し切った気持ちの良いデュエルだ。
其れを示す様に、見ていたギャラリーから誰とも無く拍手が起こる。
「負けちまったか…だが、久々の気持ちの良いデュエルだった。此れで満足だぜ。」
「本当にね…此れならチームを組むに充分だわ。」
「あなた達も強かったわ。」
「流石遊哉がアメリカ時代に組んでただけあるって!」
其処に遊哉達も降りてくる。
「如何よ京介、霧恵と十六夜は?」
「彼女達の実力は分ったんじゃないか?」
「まぁな…彼女達の実力なら満足できるぜ!」
鬼柳のこの一言で全ては決まった。
其れにレンが同調する。
「にゃはは。チーム遊戯王の結成だねっ!」
「「「「「「チーム遊戯王?」」」」」」
「ん?君達のチームの名前さ!如何かなっ?」
全員でちょいと考える。
で、
「そうだな、悪くねぇ。」
「ほんじゃ決まりだねっ!辰美財閥は全力で君達のサポートに当たるから頼りにしとくれっ!」
「すまないな、頼りにしてる。」
恐らくWRG1で大旋風を巻き起こすであろうチームが誕生した。
そして、チーム遊戯王が誕生した頃1台のヘリが童実野町に向かってフライトを続けていた。
「ペガサス会長、間も無く童美野町です。」
「OK。そのまま遊哉ボーイ達の家までフライトを続けてくださイ。」
「了解しました。」
To Be Continued… 