スタジアムでのタッグデュエルを終えた霧恵達は居住しているコンドミニアムへと戻ってきていたのだが…
「あんだ、あのヘリは?」
「I2の文字が見えるな…ペガサスか?」
コンドミニアムの略真上の上空にホバリングしているヘリが嫌でも目に入る。
それ以前に音が凄いので誰でも気付くだろう。
「まぁ、取り合えずだ…」
ヘリを見ながら、遊哉は何処からか拡声器を取り出し…
「おら゛ぁぁ!!んなとこでホバリングしでっど、周辺住民に迷惑゛だからざっざと降りでごいやぁペガザスゥゥゥ!!」(音割れ)
思いっきり叫んだ。
尚、遊哉を良く知る霧恵と遊星、鬼柳とシェリーは拡声器が出た時点で耳を塞いでいたが、アキと3人娘とレンは確りとダメージをうけていた。
遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel27
『与えられた力』
「適当な゛ヘリボートに止めてこっち来いや゛!!」(音割れ)
「えぇい!あんたの方がよっぽど騒音公害だ!!」
「少しは考えなさい!!」
尚も拡声器で叫ぶ遊哉に、美咲のハリセンとアキのサイコパワーによる突込みが入った。
だが勿論そんな突っ込みに怯む遊哉ではない。
「あぁ!?あんな低空でバリバリホバリングしでっ方が騒音公害だろうが!」(音割れ)
「あんたの声の方が万倍大きいわ!てかこの至近距離で拡声器使うな、あたし等の鼓膜破る気か!?」
「この位、お前等なら平気だろ?」
「んな訳有るか〜〜!」
「まぁいざとなったら俺の主人公補正でなんとでもなる!」
「挙句の果てにメタ発言かい!」
「尤も補正無くても遊星は激強だと思うんだが如何だろう!?」
「其れについては全面的に賛成するわ!」
開き直り&メタ発言な遊哉に突っ込みを入れまくる美咲。
幼馴染兼彼女である霧恵でも対処しきれないのに…なんと言うか凄い。
「…色々満足してるみてぇだな…」
「財前の突込みが緋渡を増長している気がしなくも無いが…」
「霧恵、あれはいいのかしら?」
「良いの。幼馴染とか彼女とかじゃなくて、スイッチ入った遊哉は最早美咲じゃないと突っ込みも何もままならないから。」
「にゃはは〜それはすっごいね〜〜♪」
霧恵もその辺は既に諦めているらしい。
それでも彼女でいるとは…
「結局の所何が言いたいのかってーと、蟹から海老に主人公バトンが渡された事が最大の問題であって!
誰が何をどうしようと、シンクロ最強説が覆る事はないと思うわけですよ美咲さぁぁん!」
「えぇい、もう意味がわかんねぇぇぇ!!」
毎度突っ込みご苦労様である…
――――――
「で、一体何のようなわけだペガサス。」
「態々此処まで来るのには理由があるんだろう?」
一通り色々と終えた一行はコンドミニアムの中へ。
ペガサスも近くのヘリポートにヘリを泊めこの場に居る。
因みに美咲は突っ込み疲れて真っ白に燃え尽きていた。
ホントにご苦労様…
其れはさておき遊哉と遊星の問いにペガサスは逆に問う。
「理由ですカ…貴方達は『ファントム』の事は知っていますカ?」
思いがけず出て来た『ファントム』の名。
無論知ってはいる。
否、知っているどころか…
「知ってるぜ。てか昨日戦ったばっかりだ。」
今度はペガサスが驚く。
間違いなく知っているとは思ったが、まさか既にデュエルをしていたとは思わなかったのだろう。
「既に戦っていましたカ…それで、如何でした?」
「男子永遠の憧れである『機皇帝』とか言う巨大合体ロボなモンスターを使っていたぜ。
シンクロキラーとかほざいてたから必殺の攻撃力9000で沈めてやったけどな。
まぁ俺や遊星達が負ける事なんぞ先ず無いだろうが、一般デュエリストが狙われたら結構やばいんじゃねぇか?」
「機皇帝…矢張りですカ…」
この言葉に反応したのは遊星。
まるで何かを知っているようなペガサスを不審に思ったのだろう。
「ペガサス、何か知っているのか?」
「ファントムの正体を知っている訳ではありませ〜ン。ですが『機皇帝』の存在は知っていまス。」
「あんだと?如何言うこった?」
「『機皇帝』は元々、私が新たに考えたカテゴリーモンスター1種類なので〜ス。
ですが、実は『闘いの王国』の直後、I2社のデータバンクから『機皇帝』のカードデータが何者かに盗まれてしまったのでス。」
「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」
この言葉に全員が驚く。
I2社のセキュリティの厳重さは半端ではない。
其れこそKCコーポレーションと共同開発した二重三重の強固なセキュリティ。
其れが突破されたと言うだけでファントムが只者ではないと思わせる。
「更に言うならば機皇帝には遊哉ボーイが言った『シンクロキラー』なる能力は備えられていませン。
恐らくファントムがデータを改竄し、自分達に有利になるようにしたのでしょう。」
「でも、何でシンクロを?」
霧恵の疑問は尤もだ。
何故シンクロをピンポイントで狙うような能力を持っているのかが解せない。
「簡単な答えです。私が生み出したモンスターは色々ありま〜ス。其の中で特殊な方法を必要とする儀式、融合、エクシーズ、そしてシンクロ。
これらは夫々が非常に強力な力を秘めていますが、貴方達が使うシンクロは其の中でも特出した力を持っていまス。
ファントムは其れを警戒し、『シンクロキラー』と言った効果を付加したのでしょう。」
此れには納得。
確かにシンクロが持つ力は凄まじい。
遊哉の『龍皇』や遊星の『スターダスト・ドラゴン』等は其の筆頭と言えるだろう。
「彼等は間違いなくWRG1に参戦してくると考えていま〜ス。貴方達には彼等を止めて欲しいので〜ス。」
「あたし達にって…唐突過ぎない?大体にしてあたし達がチーム結成はおろか、参戦しないつもりだったらどうしてたわけ?」
ご尤も。
霧恵の言う様な事態に成っていた場合一体どうしていたのだろうか?
「其れは始めから考えていませン。『闘いの王国』の決勝トーナメントで激戦を繰り広げた貴方達がWRG1に不参加など考えられませんしネ。
と成れば当然チームを組むことも予想はしていましタ。尤もミス・シェリーとミスター・鬼柳が加入したのは予想外…嬉しい誤算でしたガ…」
つまりは己の感を信じたと言う事。
そして凄まじいまでの予見眼&洞察力である。
「ですが流石に其の2人の事は予想できなかったので、用意する事はできなかったのですが…」
「…此れは?」
テーブルに置かれた金属製の鞄に遊星が疑問を投げかける。
鍵の掛かった其れは、如何見ても重要な物にしか見えない。
「ファントムに対抗する新たな力…貴方達のエースモンスターの進化した姿デ〜ス。」
開けられた鞄に入っていたのは4枚のカード。
『極炎龍皇−グレイス』『スターダスト・ライジング・ドラゴン』『天霊魔導師−アイシス』『ピュアホワイト・ローズ・ドラゴン』
シンクロモンスターでこそ無いが、遊哉達のエースモンスターが進化した姿であるのは間違いない。
「へぇ…こりゃ凄ぇな。カードの持つ力がガンガン伝わってくるぜ!」
「あぁ、確かに。」
遊哉、遊星共にこのカードの持つ力を感じ取っている。
無論霧恵とアキも。
「シンクロモンスターでない其のカードならば『機皇帝』の効果を受けることはありません。
そして遊哉ボーイと遊星ボーイには此れとは別に渡しておくものがありま〜す。」
「「このカードの他にも!?」」
新たに置かれた金属製の鞄に驚く。
今渡されたカードだけでも強力だと言うのにこれ以上に何を?
其の疑問は鞄を開けようとした瞬間に解かれた…
――――――
「此処は…成程、そう言うことかよ。しかも今回は遊星も一緒か?」
『闘いの王国』の最中に訪れた世界。
その意味を遊哉は知っていた。
そして今回はこの場所に遊星もいる。
「緋渡、此処は…?」
「あの鞄に中に居る奴等が居る場所だ。そうだろ?嵐龍皇、鋼龍皇!」
何も無い空間に向かって叫ぶ。
程なくして返事は返される。
「如何にも。漸く合えたな我等が主よ。」
「我等龍皇の中でも最強の力を持つ炎龍皇が仕えていると言うのが納得出来たというもの。
我等をこの世に顕現させたペガサスには感謝せねばなるまい。」
目の前には2体の『龍皇』
そして、
「お前は、俺の新たな仲間なのか…?」
遊星に頭を垂れている真紅のドラゴン。
さながら『悪魔』を思わせる其の風貌からは圧倒的な破壊力が伝わってくる。
「グルル…」
「そうか…分った。力を貸してくれ『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」
「お前等の力も存分に使わせてもらうぜ『嵐龍皇−ルドラ』『鋼龍皇−グラン』!」
「「御意!!」」
――――――
「如何しましタ?」
鞄に手をかけたまま動かなくなった遊哉と遊星にペガサスは問うが、
「いや、大丈夫だぜペガサス。」
「あぁ、俺達の新たな仲間と会って来た。」
「まさか…会って来たというのですか、カードの精霊達に…!」
驚くペガサスを余所に遊哉は鞄に手をかける。
「ったりめーだ!こいつ等が持つ波動を感じ取る事ができずに龍皇を従えられるかよ!」
言いながら鞄を開けると其処には先程会ったドラゴン達が…!
「見事でス…。緋渡遊哉、不動遊星…矢張り貴方達は私の想像を超えたデュエリストのようで〜ス。
ですが、安心しましタ。貴方達が居るこのチームならばファントムを止めてくれることでしょう。
頼みましたよ『チーム遊戯王』!」
「「「「「「任せとけ!!」」」」」」
――――――
「ふぅむ…ペガサス、あくまで我等の邪魔をするか…」
「良いじゃない好きにさせとけば?あたし等が負ける事は無いんだ。其れに新たな『機皇帝』が出来たんでしょ?」
「うむ…」
童実野町に有る、しかし誰も知らない地下室。
暗い室内で繰り広げられる会話は何とも不気味である。
「此れはお前のカードだ…」
「あらん嬉しいわぁ♪……うふ、うふふふ…待っててねぇん遊星ちゃん〜。」
カードを渡された者は身体をくねらせながら部屋の置くへと消える。
其のセリフだけを聞けば遊星に思いを寄せる乙女…と、取れなくも無いが、生憎其の人物は間違いなく男。
付け加えるなら身長2m近いマッチョの大男……。
「ねぇ一つ聞いていい?」
「何だ…?」
「何でアイツをファントムに入れたの?何で居るの?」
「デュエルの腕は間違いない。」
「だとしてもそれ以外にも考えようよ……はっきり言って気持ち悪い。敵である筈の不動遊星に同情するくらい!」
「……まぁ、大丈夫だろう。」
「あたし、アイツが問題起こしても責任取らないからな…」
ファントムはファントムで色々大変な事もあるらしい…
To Be Continued… 