遊哉から持ちかけられたデュエルは5戦全てが見応えのある最高のデュエルだった。
 全員が己の力を全て出し切った全力vs全力のぶつかり合い。

 仲間内でのデュエルのはずが何時の間にか客が増えMCまで出てくる始末。
 ソレほどまでに凄いデュエルだったのだ。

 そして、ソレを持ちかけた遊哉はこの面子を相手に3勝2分で無敗……素直に凄まじい結果だ。


 「其れでだ……お前等、此れから如何するんだ?」

 だが、興奮冷めやらぬ中で遊哉から投げかけられたこの一言。
 この一言が、チーム遊戯王全員の『未来』を問うている事は、確認するまでもなかった。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Last Duel
 『Endless Duel Road』











 「これから…」

 「決めてねえ…ってことは無いよな?
  俺達はWRG1を制覇した――お前等にも来てるんじゃねぇのか?プロからのオファーがよ。」

 つまりはそう言う事だった。
 遊哉の言う通り、チーム遊戯王の全員に各国のプロリーグからオファーが来ていたのだ。


 強豪ひしめくWRG1を制したチームのメンバーともなれば様々なリーグが欲しがるだろう。
 知名度もあり、そして腕も一流ならソレだけでリーグの集客力は上がるのだから。


 「だが、余にも数が多くて悩んでたんじゃねぇのか?」

 「…否定は出来ないな。」

 だが、余のオファーの数に悩んでいたのも事実。
 プロリーグは魅力的だが『何処に所属するか』も又重要な問題なのだ。

 「ったく……悩むこたぁねぇだろ?自分が何処のリーグに進むかは決めてんだろ?…踏ん切り付かなかっただけでよ。」

 「「「「「!!!」」」」」

 ズバリだった。
 自分が何処に進むかは殆ど決めていた…が、踏ん切りが付かなかったのだ。


 「けどよ…今は如何だ?…見えたんじゃねぇの、テメェの進む『道』って奴がよ!
  悩むくらいなら全力デュエルで悩みブッ飛ばしてみるのが一番だからな!如何よ!?」

 「…確かに、言えてるぜ。悩んでちゃ満足できねぇ!」

 デュエルを吹っかけた理由も此処に有ったらしい。
 要は、遊哉は仲間の悩みをブッ飛ばす効果も狙ってデュエルを吹っかけたのだ。
 勿論武者修行の成果の確認もあるが。


 「決めたぜ俺は台湾のリーグに進む。
  あそこは意外に強い連中が居るみたいだからな……満足できそうだ。」

 「台湾か…俺は東南アジアの方に参加しようと思ってる。
  あそこはデュエルは後進国だが、それだけにマダ見ぬ強敵が居るかもしれないからな。」

 「私はオーストラリアのリーグに行こうかと思ってるの。」

 「シェリーも?実は私もそっちに行こうと思ってたの。」

 「アキも?それじゃあタッグ部門で組んでみましょうか?」

 「良いわね♪」

 皆夫々が進むべき己の道を見つけたようだ。



 霧恵以外は。


 「で、オメェは決まってないってか?」

 「うん…て言うか踏ん切りがつかないっていうのかな?
  プロに行きたい気持ちと、童実野町に残りたい気持ちがどうしてもね…それに参加したいリーグも今一決まってないのよ…」

 悩んでいた。
 以前に遊哉がアメリカに渡ってから、霧恵は『童実野町のトップデュエリスト』として君臨してきた。

 自分を慕う者も多い……ソレを考えると踏み切れないで居るのだ。

 だが…


 「悩んでんなら俺と来ねぇか?」

 「遊哉?」

 此処で遊哉からのお誘い。
 決まってないなら一緒に来てほしいと言うのだ。

 「まぁ、気持ちは分るけどよ――何時までも『童実野町のリーダー』じゃしょうがねえだろ?
  飛び出そうぜ世界によ!!俺と一緒に南米のリーグに来てくれねぇか?」

 断る理由は無い。
 寧ろ遊哉となら大歓迎だが…迷いは消えない。


 「行ってきなよ霧恵。」

 「美咲!?それに氷雨と響も!!」

 其処に現れて霧恵に行って来いと言ったのは、親友の美咲、響、氷雨。
 彼女達もまたこのデュエルを観戦していたのだ。

 「もう霧恵は童実野町だけで納まる器じゃないよ。」

 「世界に羽ばたくデュエリストだよ……だから、行ってきなよ世界に!」

 「3人とも…」

 親友の3人娘は、或いは誰よりも霧恵を理解して居たのかもしれない。
 迷う霧恵の背中を、最後の最後で押してくれたのだ。

 「そっか…そうだよね。」

 「決まったか?」

 「えぇ、アンタとなら退屈だけはしないだろうし……行くわ遊哉、アンタと一緒に!!」

 「そう来なくちゃよ!
  けど、南米のライディングデュエルは荒っぽいことで有名だ、覚悟しとけよ?」

 「上等!」

 霧恵もどうやら踏ん切りがついたようだ。
 つまりは此れで全員が進む道を決めた事になる――が、ソレは同時に『チーム遊戯王』の事実上の解散を意味していた。


 進む道が異なれば、再びチームとして活動する事は難しい。
 また、4年後に再び開催されるWRG1でも再度同じチームが組めるかどうかも不明だ。


 だが、ソレで良いと誰もが思っていた。
 確かに激戦を勝ち抜いてきたこのチームが解散するとなれば思うところもある。

 だが、見方を変えればソレは同時に新たな仲間と、マダ見ぬデュエリストとチームを組める可能性とも言えるのだ。


 デュエリストの進化と成長に限りなど無い。
 頂点など無い。

 歩みを止めぬ限り無限に成長するのがデュエリストなのだ。


 「つー事で、俺達は此処からバラバラになっちまうが……俺達が仲間である事に変わりはねぇ!
  テメェの選んだ道進んで、何時か又会おうぜ!!」

 「離れ離れになっても俺達の絆は無くならない――俺はそう信じている!」

 遊哉と遊星の言葉は、きっと全員が思っているだろう。


 そして、全員で円陣を組んで手を重ね…

 「チーム遊戯王!!ファイ!」

 「「「「「おぉーーーーー!!!!」」」」」

 チーム遊戯王らしい締めとなった。








 ――――――








 数日後、霧恵は荷物を纏めて出発の準備を終えていた。
 既に遊星達は夫々が新たな戦いの場に旅立っている。

 そして遊哉と霧恵も今日、日本を発つ。


 「やっぱし感慨深い物があるよな……1年にも満たないってのに、随分長く此処に居た気がするぜ。」

 「濃密な時間だったからね。」

 遊哉もまた自分の荷物を纏めて此処に居た。

 今日を境にこのコンドミニアムには暫く戻っては来ないだろう。
 一応鍵は美咲達に渡してあるので留守中の管理に不安は無い。


 だが、如何しても感傷に浸ってしまうのは仕方ない。
 霧恵にとっては長年住んだ家であるし、遊哉にとっても日本に戻ってきてから過ごした場所なのだ。

 何よりチーム遊戯王として此処で過ごした日々はとても充実していたから。


 でも後悔は無い。
 思い出深い場所を離れるのは思うところがあるが、それでも遊哉も霧恵も新たな世界に踏み出す事を決めたのだ。

 それに永遠に此処に戻って来ないわけでもない。

 いつかは戻ってくるかもしれないのだから。

 「んじゃ、まぁ……行くか!!」

 「えぇ、行きましょう!」

 最後に玄関で一礼。
 『お世話になりました、又何時か』の意味を込めて。









 空港には見送りが居た。
 3人娘にレン、チームレックスとチームYAMATOの姿もある。

 「コイツは盛大な見送りだな?」

 「激戦繰り広げた好敵手を送ってやらないのは、ちょっと如何かと思うけど?」

 「成程…まぁ、態々ありがとよ。」

 「何、ワシ等が好きでやってることじゃ。」

 なんともさばさばサッパリした感じだ。
 尤も、見送りに来た2チームも近々欧州と北米のプロリーグの参加を決めている。
 便は違えど、彼等もまた今日、日本を発つのだ。

 「何処かで会うことも有るかもね。」

 「そうなったらその時は、又デュエルしようぜ美人さん!」

 「OK、でもその時までに腕を研いて来なさい。」

 そろそろ搭乗時間も迫っている。
 ゆっくりはしていられない。

 「じゃあ皆…行ってくるね!」

 「取り合えず南米プロリーグ最強になって来るぜ!」

 「「「いってらっしゃい!!」」」

 「偶には連絡おくれよ〜〜チーム遊戯王全員の世界での活躍を期待してるっさ!!」

 遊哉と霧恵はゲートを通って南米行きの便に。

 こうして、チーム遊戯王は全員が世界へと羽ばたいていった。










 鬼柳は、台湾に渡るや否や得意のハンドレスコンボで瞬く間にトップの座に着いた。
 少しダークな雰囲気と、『満足させてくれよ?』と言うデュエル前のセリフにファンも多い。



 シェリーとアキはオーストラリアのリーグで、押しも押されぬトップ2として君臨。
 リーグの1位と2位は(変動するとは言え)常に2人が独占。
 タッグ部門でも敵無しの強さを見せつけ『豪州の華』と呼ばれるようになる。



 遊星は矢張り東南地区で最強と言われるようになるのに時間は掛からなかった。
 多くのファンが出来たが、ソレだけでなく独自のデュエル講座を開くなどデュエリストの育成にも力を出している。



 そして、遊哉と霧恵。
 南米の荒っぽいライディングデュエルもこの2人にはなんのその。
 シングルでもタッグでも無敵にして最強状態だった。
 なお、南米においても遊哉の悪役ぶりは健在のようである。








 ――――――








 そして、4年が経ち…



 ――童実野中央スタジアム



 さぁ、4年に1度のデュエルの祭典WRG1も遂に決勝戦!!
  その決勝戦もいよいよ大将戦だ〜〜〜〜!!
  しかし、一体誰がこのチーム編成を予想しただろうか!?
  不動遊星、シェリー・ルブラン、十六夜アキ、鬼柳京介の
チーム遊戯王 レボリューション
  緋渡遊哉、緋渡霧恵、簪・J・雪花、フレディ・ゴーンの
チーム遊戯王 アドバンスド
  前回優勝チームが2つに分かれて最強の激突となるとは〜〜〜〜!!!



 WRG1の開催。
 今回も遊哉達は当然出場していた。

 だが、チーム編成は違う。
 遊星は鬼柳、アキ、シェリーと再びチームを組んだが、遊哉と霧恵は嘗ての『チームEXAL』の2人をチームメンバーに誘っての出場。

 当然この2チームは破竹の勢いで勝ち進み。
 レボリューションは準決勝でチームレックスと、アドバンスドは準決勝でチームYAMATOとの激戦を制しての決勝戦。

 その決勝戦もいよいよ大将戦。


 戦うのは当然、遊哉と遊星。
 第1デュエルは雪花とアキが戦い、接戦の末僅差で雪花が制した。
 続く第2デュエルは、即時ハンドレス状態に持ち込んだ鬼柳が、残りライフ僅かだった雪花を瞬殺。
 更に第3デュエルは、霧恵が猛攻するも鬼柳もハンドレスコンボ零式で対抗し激しいバトル。
 一瞬の隙を突いて勝負を決めに掛かった霧恵に、鬼柳も土壇場で踏みとどまって引き分けに。

 そしてこの大将戦だ。


 「お疲れ!後は任せときな!!」

 「お願いね!!」

 霧恵からバトンを受け取り、遊哉も発進スタンバイ。
 因みにこの2人、南米リーグで活躍中に結婚してたりする。


 「ゆどぅあんするぬぁ…相手はアノ不動遊星どぅぁからぬあぁ。」

 「頑張ってね?」

 「おうよ!!!」

 仲間からのエールを受け堂々発進!

 遊星もまた同様に自軍のピットから飛び出してくる。


 略同時にコースインし、そのまま並走状態に。

 「4年前の決着…今度は白黒はっきり付けようぜ!!」

 「望むところだ。今度は引き分けじゃ終われないからな。」

 デッドヒート。
 迫るファーストコーナーに突っ込む2台のDホイール。

 肉眼では殆ど同時。
 即刻カメラ判定が入り…

 ファーストコーナーは、僅かの差で緋渡遊哉が制した模様!
  これで先攻後攻が決定〜〜〜!!



 僅かの差で遊哉が制した。
 それでも更に2台はスピードを上げて加速。
 初手から全開と言う事なのだろう。


 それじゃあ行くぞ!WRG1決勝戦ファイナルデュエル!デュエル…

 「「「「「「「「「「スタートォォォォォォ!!」」」」」」」」」」


 「「デュエル!!」」


 遊哉:LP4000   SC8
 遊星:LP4000   SC9




 デュエルの道に終りは無い。
 デュエリストの進化と成長にも限りは無い。


 「燃え盛る紅蓮の双眸、そして灼熱の牙よ、全てを焼き払い此処に降臨せよ!シンクロ召喚!烈火の化神『炎龍皇−アグニ』!」

 『うむ…存分に暴れようではないか!!
 炎龍皇−アグニ:ATK2900


 「集いし願いが、新たに輝く星となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!!」

 『クァァァァァァ!!!』
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500




 「行くぜ?」

 「あぁ、来い!」


 そして彼等も、その果てない道をこれからも駆け抜けていくのだろう。
 デュエルモンスターズと言う、最高の相棒達と共に。
















   THE END









遊戯王デュエルモンスターズNew Generation




原作:遊戯王、遊戯王デュエルモンスターズ 遊戯王デュエルモンスターズGX 遊戯王5D's 遊戯王ZEXAL



企画・原案:吉良飛鳥



オリジナルカード設定:吉良飛鳥、kou、並びにオリカ投稿掲示板に投稿してくださった皆様



ストーリー構成:吉良飛鳥












Thank you For Reading




Presented By 自由気侭





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