「起動効果により手札から現れよ『甲殻剣騎クラブ・キャバリー』!!」
 『フゥーッ、ハァァァァァ!!』
 甲殻剣騎クラブ・キャバリー:ATK2300



 ジコチューかつ独り善がりなデュエルを進めていたレジーナ。
 水城はそれを利用して、大量ドローした状態でターンを迎えていく。
 そうして蟹の意匠のある鎧を纏いし騎士が現れ、デュエルは次の段階へ進もうとしていた。


 「でた!水城君の主力、クラブ・キャバリー!」

 「あのカードはカッコいいし、結構強力よね」

 「それだけじゃねぇ…リリースした2体のモンスターはいずれも水属性の効果コストとなると効果を発揮できる奴じゃねぇか」

 「一気にいくのか…?」

 周りのクラスメイト達はモンスターを掃滅しつつも、このデュエルの行方を見守っていた。










 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation×ドキドキ!プリキュア f1-2
 『黒と白の連携』










 水城:LP2000
 甲殻剣騎クラブ・キャバリー:ATK2300


 レジーナ:LP3400
 No.40 ギミック・パペット−ヘブンズ・ストリングス:ATK3000
 ギミック・パペット−ネクロ・ドール:DEF0




 甲殻の鎧を纏いし者と、片翼の機械人形の2体の剣士が互いを睨み合う。
 なお、この時点でストリングスカウンターが乗っていたハードシェル・クラブが墓地へ送られたためにヘブンズ・ストリングスの効果は不発が確定した。


 「だけどその攻撃力ではアタシのヘブンズ・ストリングスには届かないわ」

 「今のままではね。ここで水属性の効果のコストとしてリリースされたライン・ペンシルとハードシェル・クラブ、そしてこの効果で特殊召喚されたクラブ・キャバリーの順にチェーンを組んで効果を発動!逆順処理によりまずはクラブ・キャバリーの効果で墓地からレベル3以下の魚族モンスター、釣られアングラーを手札に加えます」


 レジーナの苦言を意味深に返しつつ、チェーンを組む形で効果処理をして3つの効果を連鎖させる。
 クラブ・キャバリーの効果で損失を軽減しつつ、ほかの2体の効果も発動させているのは大きい。
 なお、ハードシェル・クラブのサーチ効果は墓地で発動するため、フィールド上で効果が1度無効になっていたとしても発動するのである。


 「続いて水属性の効果のコストとなったハードシェル・クラブの効果により水属性の魚族かつレベル3のモンスター、2体目のコロソマ・ソルジャーを手札に加えまして…最後に水属性の効果コストで手札から墓地へ送られたライン・ペンシルは自身の効果により蘇生されます。チューナーモンスター『ライン・ペンシル』を墓地から特殊召喚!」
 ライン・ペンシル:DEF900


 「何よ…大型のモンスターを展開してるのに手札が減ってないじゃない、ずるい!」

 こうして損失を無くすどころか結果的に得までして上級モンスターを展開することに成功したのを見てレジーナは正直な感想を口にする。
 ただし、ギミック・パペットの特性上は似たような事をレジーナ自身もやっているので自分の事を棚に上げている形になってしまうのがいかにもジコチューといったところか。


 「ずるい?あなたも十分似たような事やっていたでしょう?それにまだまだこんなものではありません。続いて『コロソマ・ソルジャー』を通常召喚!」
 コロソマ・ソルジャー:ATK1300


 「この効果はご存じですよね…召喚時に手札から釣られアングラーを墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドロー…さらに、釣られアングラーが水属性の効果コストに使用され墓地へ送られた事で、デッキから3体目の『釣られアングラー』を特殊召喚します」
 釣られアングラー:DEF1200


 最初のターンでも使用したコンボで手札の消費を1枚に抑えつつも2体のモンスターをさらに展開しこれでライン・ペンシルを含めるとレベル3モンスターが3体となった。
 もっとも、ライン・ペンシルはエクシーズ召喚には使用できないのだが。


 「ふんっ、今度は最初のターンで使ったコンボじゃないの…」

 「見映えはあまりよくありませんが、使いまわしている以上はつきものですので。さて、レベル3のコロソマ・ソルジャーと釣られアングラーをオーバーレイ!」

 最初のターンと同じモンスター2体が水色の球体となり赤い渦に入り込む。

 「2体の水属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築し、エクシーズ召喚!現れよ…渦潮を巻き起こし、巻き込まれし獲物を捕らえる牙『渦潮のアントリオン』!!」
 『キシャァァァァァ!』
 渦潮のアントリオン:ATK1900



 現れたのは灰がかった色で一見これといった特徴を持たない蟻地獄のようなモンスターだ。
 クラブ・キャバリーと比較するとだいぶ小さいものの、それでも普通の蟻地獄と比べればだいぶ迫力のある大きさである。

 「また地味なモンスターが出てきたわね、結局ヘブンズ・ストリングスには…」

 「だったら届かせるまでです。ここで墓地よりレベル3以下の魚族モンスター、コロソマ・ソルジャーを除外してクラブ・キャバリーの効果を発動!発動ターン、このカードでの直接攻撃を封じる代わりに、このカードの攻撃力を800ポイントアップ。よって攻撃力はヘブンズ・ストリングスを上回ります」
 甲殻剣騎クラブ・キャバリー:ATK2300→3100


 「そんな…ヘブンズ・ストリングスの攻撃力を上回られたの?」
 ―なぁんちゃってね、このまま攻撃してくれればこの伏せカードでイチコロよ♪前のターンの言葉、そのまま返してあげる!

 攻撃力を上回られたことにレジーナは一見焦るそぶりを見せているが、心の底ではよからぬ事を考えている模様だ。
 水城は、そういうことはお構いなしに戦闘態勢に入る。

 「バトル、クラブ・キャバリーでヘブンズ・ストリングスに攻撃!」

 すると、クラブ・キャバリーが機械人形に近づきにかかる。
 その瞬間、レジーナがニッと笑う。

 「思い通りね、まんまと引っ掛かってくれちゃった♪この瞬間、罠発動『オーバーレイ・リフレクト』!エクシーズモンスターが攻撃対象となった時、そのモンスターのオーバーレイ・ユニットを使い、攻撃モンスターを破壊してその攻撃力分のダメージを与えるの。これで終いにしてあげる!」
 No.40 ギミック・パペット−ヘブンズ・ストリングス:ORU1→0


 「……」


 ――ズドォォォォォォォン!!


 クラブ・キャリバーの剣による攻撃が紫色の球体から発生した半透明の壁のようなものに阻まれると、その壁は大きな爆発を起こして周りに爆煙が舞う。
 
 「そんな…や、やられちゃったの…?」
 
 「…確かに普通ならやられていると思うよね」

 六花の言うとおり、まともにこのカードの効果を受けてしまったら水城のライフは0となってしまう。
 しかしながら、マナも他の皆も悲観的なそぶりはない。


 「だけど水城君がアレを忘れない限り、それはありえないよ」

 「「「「「会長に同じく」」」」」

 「…え?」


 マナがそれはあり得ないと断言すると、六花を除くクラスメイトはそれに賛同する。
 水城を知るデュエリストであるかそうでないかの差が現れている形だ。
 そうしているうちに爆煙が晴れていく。


 「さて、こいつを片付けたことだし…」

 「そのように思っているのなら、そうなのでしょう…あなたの中だけではね」

 「は…どういうことよ?見たところ伏せカードも使ってないじゃない!」


 甲殻剣騎クラブ・キャバリー:ATK3100


 そこにいたのは無傷で生還していたクラブ・キャバリーであった。
 確実に仕留めたと思っていただけにレジーナは驚愕を隠せない。
 しかも残っていた1枚の伏せカードはまだ使われていないままである。

 「あの効果にチェーンする形で墓地から『水龍防護壁』を除外し、その効果を発動させてもらったよ。自分のターンにのみ使用可能なこの効果で水属性のレベル5以上のモンスターであるクラブ・キャバリーに1度きりの効果破壊耐性を付加させて破壊から守ったわけさ」

 「墓地からの罠!?」
 
 そう、水城は墓地の罠を利用した戦術で見事破壊を回避したのだ。
 レジーナにとってはまたしても思い通りにいかなかった結果となる。


「よってクラブ・キャバリーの攻撃は成立!喰らえ、悪を斬り裂く必殺剣『水流甲牙閃』!!」


 ――スバッシャァァァァァ!!


 ヘブンズ・ストリングスは水流を纏ったクラブ・キャバリーの剣により頭部から真っ二つに斬り裂かれ、爆発四散した。

 「うぅ…!」
 レジーナ:LP3400→3300


 「さらに追撃です。罠カード『緊急同調』を発動!このカードによりバトルフェイズ中にシンクロ召喚を行います。レベル5のクラブ・キャバリーにレベル3のライン・ペンシルをチューニングし、シンクロ召喚!超越した力を蓄えし未知なる鎧をその身に纏い、新たな脅威をも殴り倒せ!荒波を巻き起こし、ここに現れろ『シェルアーマー・ドラゴン』!!」
 『フン、ヌゥゥゥゥゥゥン!!』
 シェルアーマー・ドラゴン:ATK2600



 その姿とは裏腹に人間の男のような野太い声を咆哮させ、掃滅戦の時にも活躍した強靭な甲殻類のような殻を身に纏ったドラゴンがここに現れる。
 

 「デュエルを始める前に提示したモンスターじゃない…改めてみると、すごい迫力ね」

 「当然です。さて、シェルアーマー・ドラゴンはシンクロ召喚に成功した時、墓地の水属性エクシーズ1体を装備します。ここでハードシェル・クラブを装備!」

 すると、先ほどクラブ・キャバリーの特殊召喚にリリースされたハードシェル・クラブを模した鎧をシェルアーマー・ドラゴンが纏った。
 ステータスは変化していないものの、何か意味があるのだろう。

 「すごいじゃない、水城君。これでレジーナに大ダメージを与えられそうよ!」

 デュエルをしていない六花でもこれらの攻撃がうまく通れば大ダメージが与えられる事は理解できるようである。
 しかしながら、一方のマナは実体化したモンスターを次々と倒しつつも無言の状態だ。


 「装備したところで何よ…打点が上がらないのに」

 「ふふ、いずれわかるでしょう。シェルアーマー・ドラゴンでネクロ・ドールに攻撃!この一撃を喰らえ『スプラッシュ・ハンマー』!!」
 『フゥーッ…トゥォォォォォォ!』


 ――ドガァァァァ!!


 流水を纏ったシェルアーマーの大きな腕のハサミの一撃でネクロ・ドールは成す術もなく殴り倒される。

 「さらに、シェルアーマーが破壊したモンスターは墓地へ送られずに持ち主のデッキに戻されます。墓地でこそ輝くモンスターには刺さる一撃だよ」

 「けど、それくらい何?まだネクロ・ドールは墓地に2体いるのよ?」

 「確かにそうですね。それでも少しでも墓地コストを減らせたと思えば悪くはないでしょう」

 シェルアーマーの一撃で倒されたネクロ・ドールは墓地に送られずにデッキに流された。
 しかしながらレジーナの墓地にはまだネクロ・ドールが2体存在するため、この状況でのこの効果はあまり効果的ではなさそうだ。

 そして、ここでマナがある事に気が付いたようだ。

 「あ…これは手加減してるかもね」

 「え?どういうこと、マナ?」

 「水城君のデッキなら増殖するGの効果でここまでドローして伏せ除去が来てないとも考えにくいだろうし、墓地にはアレがあるはずだからその気になれば多分決着はつけられたはずなのよ…まぁ、水城君が考えてると思われる事も理解できなくはないけどね」
 ―これはトランプ王国からの使者との初めてのデュエル。もしかしたらまた闘う時が来るかもしれないから、余裕がある限り少しでも特徴をつかんでおきたいのがあるだろうね。


 とはいえ、これでレジーナの場のモンスターはなし。アントリオンの攻撃が通ればライフ差は逆転することになる。

 「続いて、渦潮のアントリオンでレジーナにダイレクトアタック!『シザース・ファング』!!」

 アントリオンが渦からレジーナに向かって飛び出していき、大顎で挟みに向かう。


 「ヤダよ。罠発動『ガード・アブソーブ』!手札からトルク・ドールを除外してこのバトルでのダメージを0にするわ」

 そうして喰らいつこうとした途端、レジーナは手札のカードを障壁に変換しそれにより衝撃が吸収されて弾かれてしまう。

 「そして、カードを2枚ドローするわ」

 さらにカードを2枚ドローして損失を回復していく。
 いわゆるガード・ブロックの相互互換のようなカードであろう。


 「やりますね、そうこなくては。カードを2枚伏せてターン終了します」

 ダイレクトアタックが止められても驚きはなく寧ろ嬉々とした表情でターンエンドする。
 デュエルを楽しんでいるその様はとても体調不良気味とは思えないほどだ。


 「その顔むかつくわね、余裕ぶっこいてられるのも今のうちよ!アタシのターン、ドロー!まずは墓地のネクロ・ドールの効果発動よ。墓地からロール・バインダーを除外し、蘇生するわ!」

 まずはネクロ・ドールを蘇生して準備を整えようとし、棺桶が現れる。
 しかし、水城はそれを待っていたかのように表情を変える。


 「ここでエクシーズを装備した意味を明かしましょうか!レベル8のネクロ・ドールの効果の発動時、シェルアーマー・ドラゴンの効果発動!自身の効果で装備したハードシェル・クラブを墓地へ送る事でレベル8以下のモンスター効果の発動を無効にする!力を解き放て『アーマー・バースト』!」
 『ヌォォォォォォォォ!!』

 シェルアーマー・ドラゴンが野太い咆哮とともにハードシェル・クラブを模したアーマーを解き放つと、その余波でネクロ・ドールの棺桶が消し飛ばされる。
 

 「むぅ、よくもやってくれたわね…このターンはもう蘇生できないことに付け込んで!」

 「そういうこと。さらに、水属性モンスターのコストに使用された事でハードシェル・クラブの効果を再び発動!今度はデッキからカラツキウオを手札に加えます」
 ―止めたとはいえ、相手はまだ何か手があるはず…ぼくの場にはエクストラデッキから展開したモンスターの動きを制限する渦潮のアントリオンもいるけど、どう来る?

 ハードシェル・クラブは例え装備カード扱いでも、水属性モンスターのコストになれば効果は発動されるようだ。
 シェルアーマーの効果で装備していたこれが墓地へ送られたことでその効果も起動し、水城の手札がさらに潤う。
 まさしくシェルアーマー・ドラゴンはシンクロモンスターにしては珍しく、エクシーズモンスターと連動する事で真価を発揮するモンスターといえよう。
 一方で水城にはレジーナがこれで止まるはずがないと確信していた。
 今回の止めたのはあくまでも次のターンへ布石を打つのが主な目的だろう。

 「だけど、ネクロ・ドールはただの囮よ。相手フィールド上にのみモンスターが存在する場合、レベル8のこのカードをリリースなしで召喚できるの。来なさい『ギミック・パペット−ブリキ・ナイト』!」
 ギミック・パペット−ブリキ・ナイト:ATK1200


 現れたのは騎士のような姿のブリキ人形みたいなものである。
 ただし、頭部は例によって不気味だ。

 ―出てきたのは低打点の最上級モンスターか…何を仕掛けてくる?

 「ブリキ・ナイトは召喚に成功した時、このターン中、ギミック・パペット以外のモンスターを特殊召喚できなくする代わりに除外されたギミック・パペット1体を守備表示で特殊召喚する。ここでガード・アブソーブのコストで除外したチューナーモンスター『ギミック・パペット−トルク・ドール』を特殊召喚よ」
 ギミック・パペット−トルク・ドール:DEF500


 呼び戻されたのは、いわゆる地球ゴマに人形の頭や手足がついたようなモンスターであった。
 これでレジーナの場のモンスターの合計レベルは11もの高レベルとなる。

 ―成る程、チューナーとそれ以外のモンスターを揃えてきたため恐らく狙いはシンクロ召喚。後はこのアントリオンをどのように乗り越えてくるかが問題か。

 水城の方は別の妨害を仕掛けているものの、どのように突破されるかを焦点においているようだ。
周りのクラスメイトたちも実体化したモンスターを掃討しつつも固唾を飲んで見守っていた。


 「アタシはレベル8のブリキ・ナイトにレベル3のトルク・ドールをチューニング。道なき大地をも自己中に蹂躙する鋼鉄の悪魔たちよ、周囲を巻き込み無慈悲な巨人となり愚鈍な者どもを冷酷な瞳で見下ろせ!シンクロ召喚!『ギミック・パペット−ロコモ・ギガ』!!」
 ――ガタッゴトウィィィィンガチャン!
 『グォッフォッフォッフォ!』
 ギミック・パペット−ロコモ・ギガ:ATK3200


 シンクロ召喚特有の光が収まると、どこかでみたことあるような不気味な人面のような顔が正面についたそれぞれ水色、赤、黄緑を基調とした3台の機関車が現れ、それらが巨大なロボットのようなものに変形合体する。
 

 「うわぁ、これはひどい」
 ―より不気味な気がするけど、児童層に大人気な某有名機関車のパチモンでしょこれ…

 その姿を見た水城は冷や汗が出るほどドン引きするのであった。
 不気味な顔と高い打点だけではなく、色々な意味で危険を感じ取ったためである。

 「そんなこといわないでよ、結構カッコイイでしょ?ロコモ・ギガはシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地か相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を装備カード扱いとして装備できるの。対象はもちろんシェルアーマー・ドラゴン♪」

 水城とレジーナの美的感覚はすれ違っているようだ。
 とはいえ、この攻撃力の高さにもかかわらずヴァイロン・ディシグマや機皇帝を髣髴とさせる吸収による除去という恐ろしい効果を持っているため非常に性質が悪い。


 「しかも中々えげつない効果とはね…だけど、ここで渦潮のアントリオンの効果発動!相手モンスターがエクストラデッキから特殊召喚された時、オーバーレイ・ユニットを1つ使う事でその相手モンスターの表示形式を変更し、効果をも無効化させてもらうよ!『メイルストローム・カレント』!」
 渦潮のアントリオン:ORU2→1


 するとアントリオンが水中に潜みつつロコモ・ギガの足元に渦潮を発生させ、その足を大顎で捕らえようとするが…

 「いいとこなのに邪魔しないでよ、手札から速攻魔法『スキルクラッシュ』を発動」

 「っ!?」

 「アタシのメインフェイズ中に発動した相手の効果モンスター1体の効果の発動を無効にさせてもらうわ。アントリオンとかいう奴、さっさと退いてよ」
 
 するとロコモ・ギガがアントリオンごと発生した渦潮を殴り、水城の場まで吹き飛ばしたことでその効果は阻止されてしまう。


 「よくもやってくれましたね…いかにもジコチューな効果のようで」
 ―羨ましいな、あのカード…正直ぼくも欲しいです。

 「だってジコチューだもん。とにかくこれで効果は成立ね、シェルアーマーを取り込むのよ!」


 すると、ロコモ・ギガはいったん分離し、そこで発生した強力な重力場がシェルアーマー・ドラゴンを引き込み、それを巻き込んで合体してしまった。

 「結局シェルアーマーが吸収されてしまいましたか…」

 「どう?頼みのエースが奪われる気分は。まだまだいくよ、手札から魔法カード『ジャンク・パペット』を発動!アタシの墓地のギミック・パペット1体を蘇生するカードよ。これにより再び起動よ『No.40 ギミック・パペット−ヘブンズ・ストリングス』!」
 『フォッフォッフォッ』
 No.40 ギミック・パペット−ヘブンズ・ストリングス:ATK3000



 さらに追い打ちをかけるように強力な攻撃力を持つランク8エクシーズをも蘇生させてきた。
 素材がないため効果は使えないものの、攻撃の制限はない。
 アントリオンが退かされた後でどちらかのダイレクトアタックが通ってしまえば、そこで水城は負けてしまう事になる。

 「バトル!ロコモ・ギガで渦潮のアントリオンに攻撃し、あのふざけた女にトドメよ!『ロコモーション・デストロイヤー』!」

 「!?」

 レジーナがロコモ・ギガにトドメを刺すように宣言したところ、水城に動揺が走る。
 ただし…水城が男子の制服を着用しているのにもかかわらず、ふざけた女だと言ったためというのが大きいようであるが。

 ―げっ、バレてる!?…それはいいとして、ここでトドメの宣言と?だったら…
 「しょっ、しょっきょう、げふ…速攻魔法発動『サイクロン』!これで装備カード扱いのシェルアーマーを破壊し、返してもらうよ!」

 「「「「「ここでサイクロン!?」」」」」

 「な…?」

 どうやら図星のようであるが、それはともかく。
 水城は動揺のあまり台詞を噛んでしまう醜態をさらしてしまうものの、このままならこの一撃では削りきれないのにもかかわらずトドメと宣言したことに反応し、すぐに的確な一手を撃ったようである。


 ――ドカァァッ!


 「うっ、あうぅ…!!」
 水城:LP2000→700


 竜巻に乗じてロコモ・ギガに巻き込まれていたシェルアーマー・ドラゴンが解放されるものの、ロコモ・ギガのパン チは止められずアントリオンは呆気なく倒されてしまう。

 「あーやっぱり、握ってたね…目的が目的とはいえ、手加減してたみたい」
 ―それとやっぱり水城君は女の子だったか、あの動揺具合から見ると。

 「ああ、伏せが1枚になった時にサイクロンを撃って、アントリオンでネクロ・ドールを殴った後でシェルアーマーに墓地の波状水龍撃の効果を使って打点を上げていれば勝てていたはずだからな…あいつは相手の手を少しでも多く見て俺たちにも対策を練ってほしいとでも思っているんだろうけど無茶しすぎだぜ、まったくよ」

 マナと二階堂は伏せの1枚がサイクロンだと判明したことで、水城の手加減を確信できたようだ。
 マナは別の事も悟り、二階堂は呆れつつも感心しているようである。


 「おいおい、あいつまさか動揺してプレイングミスしたんじゃないか?」

 「いや、待って…あの子の様子がおかしいわ」

 一方で他のクラスメイト達は一見理解できないプレイングに疑問が走っていたが、様子がおかしいことに気付く者もいた。

 そう、この一撃で倒しきれなかったレジーナにも動揺が走っていたのだ。


 「嘘…どうしてロコモ・ギガの効果に気付けたの?まさか知って…」

 「いやいや、知らなかったよ…でも、ある程度は予想できていた。確信が持てたのはあなたがダメージ超過分が足りてないのにもかかわらずあの攻撃で『トドメ』と口走った時だよ。迂闊だったんじゃないかな」

 「で…でも、まだアタシにはヘブンズ・ストリングスの攻撃が残ってる!今度こそトドメよ『ヘブンズ・ブレード』!!」

 そう、ロコモ・ギガにはモンスターが装備されているときにあの状況下で水城にトドメを刺すことのできる何らかの効果を持っていたようだ。
 自らの不注意で水城にロコモ・ギガの更なる効果が気付かれてしまったことにどもるほど動揺しつつも、今度こそトドメとばかりにヘブンズ・ストリングスに攻撃の命令を出す。しかし…


 「それは通しません!相手のダイレクトアタック時、手札誘発によりこいつを特殊召喚させてもらうよ!来て『イージス・キャンサー』!」
 イージス・キャンサー:DEF1600


 盾のような重厚なハサミを持つ蟹が水城を守るように現れる。
 ヘブンズ・ストリングスはそれに阻まれ、仕方なくそのイージス・キャンサーを斬り裂いて攻撃が終わってしまう。

 「そんな、また阻まれちゃったわけ…?カードを1枚伏せてターンエンド…」

 決定的な攻撃をも躱されてしまい、動揺が続く中ここでレジーナはターンを終える。


 ―ここまで見せて頂きましたが、そろそろ決めに行かないと拙そうですね。
 「ぼくのターン、ドロー。手札から魔法カード『サルベージ』を発動!墓地の攻撃力1500以下の水属性の2体…ここはイージス・キャンサーとライン・ペンシルを手札に戻します」

 「う、また手札を増やしてばかりじゃない…」

 ここでサルベージを使って手札を増やしていく。
 レジーナにとっては続々と増えていく水城の手札と自らの手札の数の差に苛立ちを募らせ絶望感をも感じているようだ。
 もっとも、これは増殖するGの効果が発動されていたのにもかかわらず大量展開をし続けたのが大半の原因であるため、自業自得な感はぬぐえない。


 「続いて『カラツキウオ』を通常召喚!」
 カラツキウオ:ATK900


 先ほどのハードシェル・クラブの効果で手札に加えていた、甲殻類の殻を纏ったような魚が現れる。

 「そして手札から水属性のカープ・ドラゴンを捨ててカラツキウオの効果発動!効果は無効になるけど、墓地から蘇れ!『シェルアーマー・ドラゴン』!!」
 『ヌゥゥゥゥゥゥゥン!!』
 シェルアーマー・ドラゴン:ATK2600



 ここで先ほどのサイクロンで破壊されたシェルアーマーが蘇る。
 あの時にこれを手札に加えていたのはシェルアーマーが処理された場合を見越しての事だったようだ。

 「また、シェルアーマー…しぶといわね。でも、アタシの場には攻撃力3000以上のモンスターが2体いるわ。それでどうするわけよ?」

 確かに墓地を考慮しなければあの2体には届かない。
 しかし、当然ながら水城の展開はまだまだ止まらない。


 「まずはこうします。フィールド上のカラツキウオと手札のライン・ペンシルを1体ずつリリース!鋼鉄をも断ち切る卓越した剣技を誇り、甲殻類の如き鎧を纏いし剣豪がここに現れる!起動効果により手札から現れよ『甲殻剣豪スピニー・ブレード』!!」
 『フッ…!』
 甲殻剣豪スピニー・ブレード:ATK2200



 少し前に出ていたクラブ・キャバリーと同じ起動効果により現れたのはイセエビを髣髴とさせる刺々しい紅き鎧を纏い、大ぶりの刀状の武器を構えた剣士のような最上級モンスターだ。
 鎧の下に隠された瞳は目の前の敵を見据えている。


 「手札から水属性の効果により墓地へ送られたライン・ペンシルの効果を発動し、それにチェーンして自身の効果により特殊召喚したスピニー・ブレードの効果を墓地からレベル3以下の魚族モンスター、釣られアングラー1体をゲームから除外して発動!この効果により相手フィールド上の表側表示で存在するカード1枚を破壊する!ロコモ・ギガをぶった斬れ!『水神波動斬』!」


 ――ズバァァァァ!ドガアアアン!


 スピニー・ブレードは構えていた刀状のものを振り下ろして水流の衝撃波を発生させ、それを躱すことができずにまともに受けたロコモ・ギガは縦に一刀両断され、爆発四散した。

 「アタシのロコモ・ギガがこんなあっさり倒されちゃうなんて…」

 「いくら攻撃力が高くても破壊耐性さえ持たないモンスターを撃破するのはわけないよ。続いてチューナーモンスター『ライン・ペンシル』を自身の効果により墓地から特殊召喚!」
 ライン・ペンシル:DEF900

 さらにチューナーが展開されていく。
 この状況だとランク8のエクシーズ召喚もレベル11のシンクロ召喚も行えるが、水城が選択したのは…


 「ここで、ぼくの更なるエースをお披露目致しましょう。レベル8のシェルアーマー・ドラゴンとスピニー・ブレードをオーバーレイ!」
 『トゥォォォォォォォ!!』
 『ハァァァァァァ!!』


 ランク8のエクシーズの方であった。
 2体のモンスターが野太い叫び声を上げつつ、水色に輝く球体となって赤い渦に入り込んでいく。


 「ああっ、もう!折角の大型をエクシーズの素材に…いったい何を考えているわけ!?」

 「あたしには水城君がやろうとしてる戦術が予想できたよ。もっともそれを実行することがあるのかまではわからないけどね…どっちにしろ、このターンでほぼ勝敗が決まると見ていいんじゃないかな」

 大型モンスターを2体も消費してまで何を考えているのか理解できない六花であったが、一方のマナにはすぐに理解できたようだ。


 「2体の水属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築し、エクシーズ召喚!遠い昔の海を支配した頂点捕食者が現世に舞い戻る!括目しろ、力強き雄大なこの姿を!降誕せよ『古代甲殻獣メガロ・ゴートゥス』!!」
 『グォォォォォォォォ!!』
 古代甲殻獣メガロ・ゴートゥス:ATK2600



 現れたのはシルル期の海を制していたとされる巨大な節足動物、ウミサソリを髣髴とさせる刺々しく超弩級のモンスターだ。
 その容姿はある人がみれば格好いいと思えるかもしれないし、別の人からみれば嫌悪感が湧いてくるかもしれない程度のものである。
 しかしながら、その攻撃力は素材となったシェルアーマー・ドラゴンと同じであるとはいえレベル8かつ水属性を2体要求するモンスターだ。
 何か強力なものを秘めているはずである。


 「うっ…あの2体を使ってこれ?信じられない!あんなの使ってる水城君って、Gもそうだけど趣味悪い!」

 「そうかな?あたしにはロマンとかそういうものが感じられて結構好みだけどね」

 「恐竜とかもそうだけど、ああいう昔生きてたとされる生物って何かカッコいいよね」

 と、このように賛否両論ということがおわかりいただけただろうか。


 「さ、流石にこれは無いと思わない?それに折角のランク8といってもシェルアーマー・ドラゴンと攻撃力が変わらないんじゃねぇ…」

 それとどうやらレジーナは後者の捉え方だったらしい。


 ―う…やっぱり引いてる人多いけど気にしちゃダメ。
 「…古代生物のロマンを理解できていないみたいなのが残念ですが、進めます。場のライン・ペンシルをリリースし、墓地のカープ・ドラゴンの効果を発動!デュエル中1度だけ発動できるこの効果で自身を墓地から特殊召喚するよ!険しき滝を上りし魚が登龍門をくぐり、今こそ龍と成る!『登龍カープ・ドラゴン』!!」
 『ゴォォォォォォォ!』
 登龍カープ・ドラゴン:ATK2000


 登竜門を登り、魚から龍へと成ったものをイメージしたモンスターをも展開する。


 「これで準備はできました。バトル!メガロ・ゴートゥスでヘブンズ・ストリングスに攻撃!」

 「アハハ、トチ狂って自滅しにきたわけ?その程度の攻撃力じゃヘブンズ・ストリングスにも敵わないのに!返り討ちよ!」


 レジーナは必死に強がりつつもそう言い放つ。
 確かにこのままでは返り討ちだろう。
 もっとも、周りのクラスメイトは効果を知っているためかそうは思わない。

 「ここで、メガロ・ゴートゥスの効果を発動!オーバーレイ・ユニットを1つ使い、相手の墓地のモンスター1体をゲームから除外します!メガロ・ゴートゥスの糧となれ、ロコモ・ギガ!」
 古代甲殻獣メガロ・ゴートゥス:ORU2→1


 ――バキィバリッバリ!


 水色の球体のうち1つが弾けると、先ほど一刀両断されたロコモ・ギガが墓地から引きずり出され、メガロ・ゴートゥスはそれを破砕しながら捕食し、ただでさえ大きい身体がみるみると巨大化していった。
 傍から見ると中々エグイ光景ではある。
 今は元々気味の悪かった無機物が犠牲になっているために絵面的にはまだマシな部類ではあるとはいえ、仮にこれがブラック・マジシャン・ガールのような美少女モンスターだったならばブーイングは必至だろう。

 また、レジーナもその光景から必死に目をそらそうとしていた。

 「…ひぃっ!?」

 「そして除外したロコモ・ギガの攻撃力の半分の数値分、つまり1600だけメガロ・ゴートゥスの攻撃力はエンドフェイズまで上昇し、これによりヘブンズ・ストリングスの攻撃力を上回りました!」
 古代甲殻獣メガロ・ゴートゥス:ATK2600→4200


 ヘブンズ・ストリングスでは処理しきれないほどの圧倒的な巨体となったメガロ・ゴートゥスが腕のハサミでヘブンズ・ストリングスを捕獲すると、水色に発光している尾の部分を突き刺す。

 「や、やめて…」

 「可哀想ですが容赦は致しません。メガロ・ゴートゥス、その力でヘブンズ・ストリングスを消し去ってしまえ!その身に刻め『零・水圧波動砲』!!」


 ――シュゥゥゥドゴォォォォン!


 零距離の状態で尾から放出される水圧ビーム砲により、ヘブンズ・ストリングスは木端微塵に破壊され、跡形もなく消え去った。

 「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 レジーナ:LP3300→2100

 そして、その余波がレジーナのライフを削る。


 「続いて、カープ・ドラゴンでダイレクトアタック!」

 「で、でもこの攻撃を受けてもアタシのライフはギリギリ残るわ」

 確かにこのままではライフが残ってしまうだろう。
 しかし少し前に二階堂が指摘した通り、水城の墓地には墓地から発動できる罠カードがある。

 「届かなければ強引にでも届かせるだけ!ダメージステップ時…墓地の罠カード『波状水龍撃』を除外し、効果発動!自分のターンのみに使用できるこの効果でレベル5以上の水属性モンスター、カープ・ドラゴンの攻撃力は1000ポイントアップ!」
 登龍カープ・ドラゴン:ATK2000→3000


 そう、ハードシェル・クラブによる反撃を演じた波状水龍撃は墓地からは水属性の上級モンスターに対する攻撃力増加効果として働くカードでもあったのだ。
 これにより、カープ・ドラゴンの攻撃力はレジーナのライフを削りきれる攻撃力に達した。

 「これを躱せるものなら躱してみせてもらいましょうか!『龍口波動弾』!」

 カープ・ドラゴンがその大きな口から強化された水の砲弾を放つ。
 しかし命中するその刹那、一瞬レジーナの口元がニッとひきあがったようにも見える。
 そうして命中したその衝撃でレジーナが見えなくなるほどの砂煙が上がっていった。


 「やったか?」

 「これで水城君の勝ちかしら?」

 まるでこの攻撃で水城の勝利を確信したかのように感じているクラスメイト達。
 とはいえ、砂煙で状況が見えないため勝敗まではわからない。


 「だけど、これだけでは終わらないかも…勝負はお互いの伏せカードにあるからね」

 一方でマナはこれで勝敗が着くとは思ってはいないようである。
 レジーナの一瞬見せた顔が気がかりなのかもしれない。


 「……」

 水城も無言でその顛末を見守る。
 そうして砂煙が薄くなり、この攻撃でいったいどうなったのかが明かされる。






 『ウケケケケケケ』
 ギミック・ボックス:ATK3000

 レジーナ:LP2100



 「悔しいところですが、躱されてしまったみたいですね。」

 どうやらこの一撃は躱されてしまったようである。
 レジーナを守るように立ちふさがるのは内部のメカが見える台形のような箱を倒したような不気味なものである。

 「残念、戦闘ダメージを受ける直前にアタシは永続罠『ギミック・ボックス』を発動していたの。このカードによりこの戦闘で発生したアタシへの戦闘ダメージを無効にし、無効にした数値分の攻撃力を持つモンスターとして特殊召喚されるの」


 そのモンスターの正体は永続罠の効果で生み出された罠モンスターであった。
 さらには3000もの打点のモンスターと化したことで、一見水城は盤面的にはやや不利になったように見える。
 次のターン、このギミック・ボックスのカープ・ドラゴンへの攻撃が通ってしまえば、それで終わりだからだ。
 一方、この状況に立たされた水城の表情は読み取れない。


 「そんな、攻撃が躱された上にまた大型のモンスターが出てきちゃった…正直良い気味よ、うふふ

 「これでこの決闘の決着もついたも同然かな…六花、後でかわいがってあげる

 メガロ・ゴートゥスやGのせいで水城への印象を悪くした六花にとって、主に目が病み気味になりながらもそう呟くのであった。
 マナの方は淡々としながらもこれで勝敗を確信した模様だ。


 「もう攻撃できるモンスターはいないよね…それに、アタシの場には攻撃力3000のモンスターがいるわ。あきらめて、さっさとターン渡してよ」

 場が有利になった上に、水城の攻撃できるモンスターが現時点ではいない事でターン終了を要求するレジーナであったが…肝心なことを忘れていることに気付いていない。



 「ぼくの場には攻撃できるモンスターがいないからターンを渡せと?…こんな時にこう言うのがお約束です。それはどうかな?」

 「え…何をトチ狂って」

 ここで水城は不敵に笑い、勝利を確信した表情に切り替わる。
 この時点でレジーナはそれがあることを見落としていたのだが、水城の場の1枚の伏せカード…それが勝負を決めるカギであった。


 「あなたには悪いですがこの勝負、もらったよ!罠発動『超越した進化の証』!ぼくの場のランク8エクシーズ、メガロ・ゴートゥスをリリース!そして墓地からレベル8シンクロモンスター1体を蘇生させる!三度現れろ『シェルアーマー・ドラゴン』!!」
 『フゥーッ…ハァァァァァァァ!!』
 シェルアーマー・ドラゴン:ATK2600


 相変わらず竜らしくない野太い声とともに、水城のエースモンスターであるシェルアーマーが再び現れる。
 今回3度目の登場ながらも疲れは感じられず、気合は十分…それどころか闘気がより増大しているようにも見える。


 「またシェルアーマー・ドラゴンなの?ほんと、しつこいわね。だけど、攻撃力が足りないのにいったい何が…」

 「甘いよ、レジーナ!この罠の効果はこんなものじゃない。さらにこの効果で蘇生した後、相手の表側表示のカード1枚を破壊します!消え去れ、ギミック・ボックス!『ノクターン・ブレイカー』!」
 『ハァァァァァァ!!』


 蘇生したばかりのシェルアーマー・ドラゴンが充満した闘気を開放させ、その衝撃がギミック・ボックスを襲い、木端微塵に粉砕した。
 そう、これでレジーナの場を守るものは誰もいなくなった。

 「そしてメガロ・ゴートゥスがフィールド上から墓地へ送られた場合、自分フィールド上の水属性1体の攻撃力を自分のエンドフェイズ時まで1000ポイントアップします!対象はシェルアーマー・ドラゴン!」
 シェルアーマー・ドラゴン:ATK2600→3600

 「あ、あ…!」


 シェルアーマーはメガロ・ゴートゥスの力を受け継ぎ、圧縮した水を纏ったハサミ状の腕を構え、一方で身を守るものがなくなったレジーナは怯えながら後ずさりする。

 「これで決めましょう!シェルアーマー・ドラゴンでダイレクトアタック!受けてみろ、渾身の力『ハイドロプレス・ストライク』!!」
 『フゥゥンッ…トゥォォォォォォォォ!!』




 ――ズドォォォォォォン!


 「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
 レジーナ:LP2100→0



 圧縮した水を纏ったシェルアーマーの腕による殴打が決まり、成す術もなくレジーナが吹き飛ばされここで決着。
 少し前に勝てたターンをあえて流し、余裕を見せつけつつも水城が勝利を果たすのであった。

 「流石は水城君ね…少し遊び過ぎてた感もあり嫌なものを見せつけられてしまいましたが、まぁいいでしょう」

 「ククク、あいつは良かれと思ってこうしたんだろうけどなぁ?勝てたからいいが、俺たちの置かれた状況も少しは考えろや!」

 「というわけで早く掃滅戦に戻っていただけるとありがたいのです」

 「レジーナには色々聞きたいことがあるけど、まずはこの掃滅戦を落ち着かせよう?」

 一部のクラスメイトからはこのデュエルは不評のようである。
 主に掃滅戦関連や先ほどのエグイ光景での愚痴があるのだろう。
 ちなみにこのデュエルでとんでもないことが判明した気がするのだが、既に風化している模様だ。
 また、マナにとっては彼女から聞きたいことがあるようだが、後回しにするつもりらしい。

 「その、ごめん…あの、大丈夫ですか?でも、これで大人しくキュアハートとのデュエルは諦めて」


 「…ニヒッ、クックックッ」

 「…!?」


 一方でこの勝負に勝った水城はレジーナを説得しようと近づくが、当のレジーナの様子がおかしいことに気が付いた。

 「レジーナ…?」

 「…まさか、さっき飛ばされた衝撃で頭でも打っておかしくなったの?」


 「…何それ?アタシを倒したくらいでいい気にならないでよ…すぐにもう一人、ものすごいのが来るんだから。本当はキュアハートと遊びたかったのだけど、ここを離れないように時間を稼ぐだけで十分だったの」

 「「「「「「なっ!?」」」」」」

 水城が声をかけようとしたところ、レジーナは狂気を帯びた形相になってそう言い放つ。
 どうやら彼女はあくまでも時間を稼ぐための捨て駒にすぎなかったということらしい。


 「おいおい、もっととんでもねぇ奴が来んのかよ?ただでさえ、掃滅戦で忙しいときによ!」

 「これ以上は、流石に厳しいのではないかと…」


 「…!?」

 レジーナだけではなく、もう一人とんでもないとされる者が来るとなるともう持ちきれない危険性が出てくると考えるクラスメイトもいるようだ。
 すると突如としてマナの様子がおかしくなり、こう言い放った。

 「これは…!みんな、逃げて!!

 「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」

 マナはとてつもなく恐ろしい何かを感じたようであり、皆に逃げるように言うのだが…

 「もう、遅いよ」

 レジーナが何らかの力で空中に浮き、そうぽつりと呟いた瞬間…





 ――ドォォォォォォォォォォン!



 「「「「「「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」」」」」



 爆音とともに突如としてこの場全体に大きな衝撃波が発生し、マナたちは逃げる間もなく成す術もなく喰らってしまう。
 また、この衝撃で実体化したモンスターも殆ど消え去っていった。


 「うぅっ…みんな、大丈夫?」

 「ダメ…モンスターが見当たらないのが幸いだけど、今ので足が…」

 「くそっ、まともに動けるの相田と菱川くらいみたいだな…イテテ」


 プリキュアに変身してために僅かなダメージで済んだマナと六花以外の皆はどこか負傷してしまっており、まともに動けない。
 ここで更なるモンスターが大量に襲い掛かってくれば、マナと六花だけでは捌ききれず、最悪の事態も十分あり得る絶体絶命の危機に陥ってしまうということだ。
 重体な者などはいない模様なのが幸いだ。



 ――キィィィィィィン…



 するとどこからかエンジン音が聞こえ、とあるD・ホイールがこの場に姿を現していく。


 「あれは…?」

 「珍しい形してるけど、D・ホイールだよな?」

 「なっ!?どういう…ことだ…?」

 それは白を基調とした一輪の車輪のようなD・ホイールであり、マナには見覚えのある代物であった。
 その謎のD・ホイールに騎乗していた男がこの地に降り、被っていたヘルメットを外して姿を見せた。
 白を基調としたライダースーツを身に纏い、逆立った金髪に長いもみあげが目立ち、耳に『A』の文字をかたどったピアスを身に着けた190cm程の長身の青年だ。
 マナたちの方へ向かい歩いていくその青年の威圧感はレジーナの比ではない。

 「待たせたな、俺がキングだ!」

 「遅かったじゃない、ジャック」


 ジャックと呼ばれしその青年は傲慢にもこの場で自らを王者だと宣言する…レジーナと知り合いであることから、先ほど彼女の語ったとんでもない存在なのだろう。


 ―信じたくはないけど、あいつは夢で襲い掛かってきたD・ホイーラーそのものじゃないか!駄目だ、どうしてかあいつに勝てるビジョンが見えないよ…

 そしていつになく委縮したマナは彼を垣間見た瞬間に理解できてしまった…その青年と自らとの格の違いというものを。










  続く 










 登場カード補足



 甲殻剣騎クラブ・キャバリー
 効果モンスター
 星5/水属性/水族/攻2300/守1900
 このカードはエクシーズ素材にできない。
 自分のメインフェイズ時、このカード以外の手札及び自分フィールド上の
 水属性モンスターを1体ずつリリースして発動できる。
 このカードを手札から特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚に成功した時、自分の墓地の
 魚族・レベル3以下のモンスター1体を手札に加える事ができる。
 また、このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、
 自分の墓地の魚族・レベル3以下のモンスター1体をゲームから除外して発動できる。
 このターンこのカードは攻撃力が800ポイントアップし、相手プレイヤーに直接攻撃できない。



 ライン・ペンシル
 チューナー(効果モンスター)
 星3/水属性/魚族/攻 400/守 900
 このカードはエクシーズ素材にできない。
 このカードをシンクロ素材とする場合、水属性モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。
 このカードが水属性モンスターの効果を発動するために
 手札から墓地へ送られた場合、このカードを墓地から特殊召喚できる。
 「ライン・ペンシル」の効果は1ターンに1度しか使用できない。



 渦潮のアントリオン
 エクシーズ・効果モンスター
 ランク3/水属性/昆虫族/攻1900/守1600
 水属性レベル3モンスター×2
 相手フィールド上にモンスターがエクストラデッキから特殊召喚された時、
 このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、
 その特殊召喚されたモンスターの表示形式を変更し、その効果を無効にする。
 この効果は1ターンに1度しか使用できない。



 オーバーレイ・リフレクト
 通常罠
 自分フィールド上のエクシーズモンスターが攻撃対象となった時、
 そのモンスターのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
 その攻撃モンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。



 ガード・アブソーブ
 通常罠
 相手ターンの戦闘ダメージ計算時、手札を1枚ゲームから除外して発動できる。
 その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、デッキからカードを2枚ドローする。



 ギミック・パペット−ブリキ・ナイト
 効果モンスター
 星8/闇属性/機械族/攻1200/守2000
 相手フィールド上にモンスターが存在し、
 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードはリリースなしで召喚できる。
 このカードが召喚に成功した時、ゲームから除外されている自分の「ギミック・パペット」と名の付いた
 モンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚できる。
 この効果を発動するターン、自分は「ギミック・パペット」と名のついた
 モンスター以外のモンスターを特殊召喚できない。



 ギミック・パペット−トルク・ドール
 チューナー(効果モンスター)
 星3/闇属性/機械族/攻 500/守 500
 相手フィールド上にモンスターが存在し、
 自分フィールド上に存在するモンスターが「ギミック・パペット−トルク・ドール」以外の
 「ギミック・パペット」と名のついたモンスター1体のみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
 1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動できる。
 このカードのレベルをエンドフェイズ時まで5つ上げる。



 ギミック・パペット−ロコモ・ギガ
 シンクロ・効果モンスター
 星11/地属性/機械族/攻3200/守2100
 機械族チューナー+チューナー以外の機械族レベル8モンスター1体
 このカードがシンクロ召喚に成功した時、
 自分の墓地または相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を
 選択して装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。
 このカードが、この効果で装備したモンスターカードと
 同じ属性のモンスターと戦闘を行うダメージステップの間、
 このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。



 スキルクラッシュ
 速攻魔法
 自分のメインフェイズ時、相手が効果モンスターの効果を発動した時に発動できる。
 その発動を無効にする。



 イージス・キャンサー
 効果モンスター
 星3/水属性/水族/攻1100/守1600
 相手モンスターの直接攻撃宣言時、このカードを手札から特殊召喚できる。
 また、手札の水属性モンスター1体を捨てて発動できる。
 このターン、このカードは戦闘では破壊されない。
 この効果は相手ターンでも発動できる。
 「イージス・キャンサー」のこの効果はデュエル中1度しか使用できない。



 カラツキウオ
 効果モンスター
 星3/水属性/魚族/攻 900/守1600
 自分のメインフェイズ時、手札から水属性モンスター1体を捨てて発動できる。
 自分の墓地の「シェルアーマー・ドラゴン」1体を選択して特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
 「カラツキウオ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。



 甲殻剣豪スピニー・ブレード
 効果モンスター
 星8/水属性/水族/攻2200/守2000
 自分のメインフェイズ時、このカード以外の手札及び自分フィールド上の
 水属性モンスターを1体ずつリリースして発動できる。
 このカードを手札から特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚に成功した時、
 自分の墓地の魚族・レベル3以下のモンスター1体をゲームから除外する事で、
 相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して破壊する。
 このターン、このカードは攻撃できない。
 このカードが水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた時、
 デッキからカードを1枚ドローする。
 「甲殻剣豪スピニー・ブレード」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。



 古代甲殻獣メガロ・ゴートゥス
 エクシーズ・効果モンスター
 ランク8/水属性/昆虫族/攻2600/守2500
 水属性レベル8モンスター×2
 1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、
 相手の墓地のモンスター1体を選択して発動できる。
 選択したモンスターをゲームから除外し、このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで
 この効果で除外したモンスターの攻撃力の半分の数値分アップする。
 この効果は相手ターンでも発動できる。
 また、フィールド上のこのカードが墓地へ送られた場合、
 自分フィールド上の水属性モンスター1体を選択して発動できる。
 選択したモンスターの攻撃力は自分のエンドフェイズ時まで1000ポイントアップする。



 登龍カープ・ドラゴン
 効果モンスター
 星8/水属性/ドラゴン族/攻2000/守1600
 相手フィールド上にモンスターが存在し、
 自分フィールド上に水属性のシンクロモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
 この方法による「登龍カープ・ドラゴン」の特殊召喚は1ターンに1度しかできない。
 このカードが墓地に存在する場合、自分フィールド上の魚族モンスター1体を墓地へ送って発動できる。
 このカードを墓地から特殊召喚する。
 「登龍カープ・ドラゴン」のこの効果はデュエル中1度しか使用できない。



 ギミック・ボックス
 永続罠
 プレイヤーへの戦闘ダメージが発生した時に発動できる。
 その戦闘ダメージを無効にする。
 発動後、このカードはモンスターカード(機械族・闇・星8・攻/守0)となり、
 自分のモンスターカードゾーンに特殊召喚する。
 このカードの攻撃力は無効にした戦闘ダメージの数値となる。
 このカードは罠カードとしても扱う。



 超越した進化の証
 通常罠
 自分フィールド上のランク8のエクシーズモンスター1体をリリースし、
 自分の墓地のレベル8のシンクロモンスター1体を選択して発動できる。
 選択したモンスターを特殊召喚する。
 その後、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して破壊できる。