Side:なのは
夏真っ盛りのある日、いよいよグランツ博士が魔法を世界に公開する日がやって来たの!
学術的な論文は出来上がっているし、プレシアさんと共に完成させた魔法理論にも一分の隙が存在しない――何よりも博士は、この技術を公開する事による、自分の
利益なんかは度外視して、本当に心の底から『世界に魔法を知って欲しい』って思ってるからね……きっと巧く行くはずだよ!!
「巧く行くに決まってんでしょ?なんの為に、アタシ達が此処にいると思ってるのよ?」
「博士の魔法理論が、机上の空論じゃないって言う事を証明する為に、私達は此処に来てる……そうでしょ、なのはちゃん?」
うん――そうだよね!!
博士の理論には穴も何もないから、後は魔法の存在を知らしめるためのデモンストレーションを、どれだけ私達が効果的に、そして強烈なインパクトを持って行えるか
が、最大の鍵になると言っても過言じゃないの。
物凄い大役だけど……でも、はやてちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん、そしてなたねが一緒なら、きっと巧く行くと思うよ!!
緊張してない訳じゃないけど、皆と一緒ならきっと大丈夫!
世界に魔法の存在を知らしめる、此の一大イベントは、きっと―――ううん、間違いなく大成功する筈!!行くよ、皆!!!
「「「おーーーーーー!!!」」」
「おーーーーー。」
……せめて、気合を入れる時くらいは、もっと声に力を込めて欲しい感じだよなたね……
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天98
『魔法が世界に知られる時』
Side:グランツ
いやぁ、此れはまた、予想以上に人が集まった物だねぇ?
流石に魔法なんて言うのは御伽噺の世界の物だから、僕としては10人も集まれば上出来だと思ったんだけど、まさか研究所の外にまでマスコミが押しかけて来るな
んて事は、思っても見なかったよ。
「まぁ、普通なら『世迷い事』と一蹴されるでしょうけれど、ロボット工学その他で、高い実績を残しているお父さんだからこそ、期待してる人が居るのでは?」
「その可能性は十分あるわね~~~?
無自覚かもしれないけど、パパって人望に厚くて、研究所の人達からも物凄く慕われてるでしょ?……そんな人格者の発表ともなれば当然じゃな~い?」
そう言うモノなのかな?……って、僕はそんなに大層な人間じゃないと思うんだけどねぇ……
でもまぁ、こうなった以上は肚を括るしかないか。
元よりやましい研究をしていたわけじゃな無い訳だし、此れまでの僕の研究成果を、余すところなく世間に伝えるとしようかな!!
「お~~~……その意気よパパ!!一切手加減しないでやっちゃって!!」
「お父さんの研究の成果を、今こそ世に公開する時です!!!いっその事、思い切りやっちゃってください!!寧ろ、やっちゃうべきです、地球の未来の為にも!!」
そ、其処までなのかな?……だけど、アミタとキリエの言う通り、僕の研究の成果を全て出しきらないと、魔法を世間に認知させる事は出来ないのかも知れないから、
僕の発表と、なのは君達の魔法のデモンストレーションで、やり切って見せるさ。
さてと、其れじゃあ先ずはエントランスでの記者会見だね。
しかし外の様子から予想はしてたけどエントランスもマスコミ及び報道関係者で埋め尽くされているね……N○Kから民放、各種新聞社までとは、相当に期待があるっ
て言う事なんだろうね……何割かは、話題目的のパパラッチも居るみたいだけれどね。
だがまぁ、パパラッチ諸君も実際に魔法を目にしたら、驚きで捏造記事が書けなくなるだろうし、そもそも書かせる心算はないよ。
「さて、良くお集まりくださいました皆さん、僕がこの研究所の所長であるグランツ・フローリアンです。」
――パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!!
す、凄いフラッシュだねぇ此れは?……何となく、芸能人の気持ちが分かる気がするよ。……まぁ、此れ位で気圧される事もないけれどね。
「フローリアン博士、御伽噺や空想の世界でしか存在して居なかった『魔法』を発見したと言うのは本当ですか!?」
「もしも本当ならば、世界の化学の常識は覆るモノになると思うのですが、そもそもなぜ魔法の研究を!?魔法とは、全ての人が使えるような物なのでしょうか!?」
うん、気持ちは分かるけれど、取り敢えず落ち着いてくれるかな?質問にはちゃんと答えて行くからね。
先ず、魔法を発見したのは本当の事だけれど、発見したと言うのは語弊があるかな?――魔法と言うモノは、古来より存在して居たモノではあるけれど、今に至るまで
誰1人として、その存在を科学的かつ物理的に証明できなかっただけの事であり、僕は其れを証明しただけに過ぎないよ。
其れも、僕一人ではなくて、この場には居ない協力者がいてこそでもあるしね。
「その協力者の方は?」
「生憎と、彼女はこう言う場は好きじゃないらしいから、発表は僕に一任するとの事らしい。
序に『9割は貴方が独学で完成させたものなんだから、貴方が発表しなさい』と言われてしまってねぇ……そんな訳で、僕一人で発表させて貰う事になった訳さ。」
さて、其れは本筋にあまり関係ないから、話を元に戻そうか。
魔法の存在が世界の化学の常識を覆す事になるのは、恐らく間違いないかも知れないけれど、根底から書き換える訳じゃないって言う事だけは言っておくよ。
確かに魔法と言うモノは、今の科学では説明できない事、再現できない現象を起こしてしまうモノだけれど、魔法の構築に用いられているのは現在の科学でも使われ
るような数式を更に複雑化したような物である事も分かったからね。尤も、手間を省くために、それらの数式を特殊な『呪文』なんかに置き換える訳だけども。
「魔法の呪文には、そんな科学的な秘密が隠されていたなんて……此れは、良く聞く魔法の呪文も馬鹿には出来ないかもしれないですね。」
「御伽噺の魔法の呪文に、どんな数式が隠されているかを想像するのも楽しいかもしれませんね。」
そう言う事になるかな。
まぁ、卓越した魔導師ともなると、呪文を必要とせずに、使用する魔法の名前を呼称するだけで発動する事すら可能になるんだけれどもね。
そして、魔法は誰にでも使えるのかと言う事だけれど――残念ながら、その答えは『否』だね。
魔法を使うには『リンカーコア』と言う物が必要になるんだよ……レントゲンやMRI、CTスキャンでも見つける事の出来ない、エネルギー体の器官がね。
現実に、魔法の存在を証明した僕ではあるけれど、僕にはリンカーコアがないから魔法は使えない。
だけど、僕の2人の娘にはリンカーコアがあるから魔法を使う事が出来る――と、魔法を使えるかどうかは、遺伝ですらなく、完全に個人の適正に因る所が大きいね。
だからこそ、歴史を紐解いた場合『魔女』や『魔術師』と言った存在は、極めて数が少ないのかも知れないね。
「誰にでも使える訳ではないとの事ですが、フローリアン博士は、御自身の娘さんの他にも魔法を使える人を見つけているのでしょうか?」
「勿論……と言うよりも、彼女達の存在があったからこそ、魔法の存在に確信が持てたとも言えるかな?
今現在、この海鳴だけでも魔法を使える人は20人存在していて、その全てが僕の知り合いでもある――世界規模で探せば、相当居るんじゃないかと思ってるよ。」
「世界規模で探せばまだ居るのか?」
「海鳴だけで20人も居るんだ、日本全国を探せば100人くらいは居るのかも知れない……其れを踏まえれば全世界規模ともなれば……」
「リアル魔法少女がザックザクだと?……コイツは燃えて来たぜ…!!」
流石に会場がざわついて来たね。
確かに、世界規模で探せばリンカーコアを持った人間はまだまだ居るだろうけど、果たしてなのは君達をも超える魔導師に巡り合えるかと問われれば、其れは難しい
と言わざるを得ないかなぁ?
皆が物凄い魔導師であるのは勿論として、なのは君とヴォルケンリッターの面々――『夜天の主従』はその中でも更に凄い面々だからね?
そしてその中でも、主であるなのは君と、騎士の将であるシグナム君の力は群を抜いている……リンディ提督をして『なのはさんとシグナムさんには、管理局のAランク
魔導師が束になって掛かっても敵わない』って言ったくらいだからねぇ……
「た、確かに凄い話だとは思いますが、その魔法は如何なるものなのですか?
配布された資料には博士の研究論文が添付されていて、其れを見る限りでは『魔法は存在する』と思えるのですが、此れだけでは机上の空論なのでは?」
ふむ……キリエの予想通り、やっぱりこの手の質問は来るか……まぁ、来て然りだからね。
確かに、会見前にスタッフがお配りした資料だけでは、魔法の存在を信じるには足りないでしょう――だから、此れから皆さんには、実際に『魔法』をその目で見て頂く
としましょう。
己の目で見たモノならば、信じざるを得ないと思うからね。
其れでは、先ずは場所を移すとしようかな?
魔法を実際に見て貰うには、此処はそぐわないし、何よりも彼女達が本気を出せないからね……此方の、魔導訓練施設にどうぞ。
まぁ、流石に外からガラス越しで見る事にはなって貰うけれど、なのは君達のデモンストレーションを見れば、魔法の存在は認めざるを得ないと思うね。
「此処は、此処で一体何が?」
「此れから皆さんには、魔法を用いた模擬戦闘をご覧頂こうと思います。
人知を超えた、ハイスピードの魔導バトル……此れを見て頂ければ、魔法の存在を疑う事も無くなると思いますので。」
「其れは……とても楽しみですね!!」
うん、予想通り喰いついて来たか……なら、8割までは成功したと言っても良いね。
つまりは此処が、一番大事な部分となる訳で――残りの2割は頼むよ、なのは君、皆!!君達の魔導模擬戦闘で、魔法の存在を、世に知らしめてやってくれ!!
内部の強度はMAXまで上げてあるから手加減は不要!!思い切りやってしまってくれるかな!!
――――――
Side:なのは
訓練場の外には、随分と人が集まって来たね……思った以上に、魔法への関心は高かったのかなぁ?……多少の冷やかしは居たのかも知れないけど、博士の話を
聞いたら、冷やかす気すら失せるのかも知れないよ。
だって、博士はずっと真剣に魔法を研究して来た訳だからね。
その研究のおかげで、ズィルバは消えずに済んだし、私達のデバイスだって初期の頃よりもずっと強化されてる訳だし、今も現在進行形で博士にはお世話になってる
から、その恩を返す意味でも、此処は最高のパフォーマンスを魅せないとだね!!
「勿論魅せてやろうじゃない!!
模擬戦のラストこそ、なのはの直射砲と、すずかの氷結砲が撃ち合いの末に引き分けって事になってるけど、それ以外は好きにやって良いんでしょ?
なら、アタシ達のバトルでマスコミ共を魅了してやろうじゃない!!」
「祭りは始まりが肝心やから、弩派手な花火をブチかましたろやなのは姉やん!!
仮に、大怪我してもシャマルが治してくれるし、其れは其れで魔法の存在を後押しする事になるやろからな♪」
其れは確かにそうかもね。
シャマルの癒しの魔法は、粉々に砕けちゃった骨や、ズタズタに切り裂かれた神経や筋肉ですら略100%元通りに直す事が出来るからねぇ……凄いよねシャマル。
さてと、其れじゃあ始めようかって言いたい所なんだけど……流石に私1人で、アリサちゃん達4人を相手にするのはキツイ物があるね。
まぁ、博士も『此れ』を考えてもマッチメイクだったんだろうけど、なら博士の予想通りに私の助っ人を呼ぶとしようかな?――さぁ、出番だよ誇り高き烈火の将よ!!
――パチンッ
――シュン……!
『な、あの子が指を鳴らした瞬間、人が現れたぞ!?』
『アレも魔法なのか!?……信じられん…!』
外とはマイクが繋がってるらしいけど、流石にマスコミの皆さんも驚くよね?――だって、私が指を鳴らした瞬間に、私の前には黒衣の剣聖が跪いていたんだから。
「……お呼びですか、主なのは?」
「うん、呼んだよ、ヴォルケンリッターの筆頭騎士、烈火の将シグナム。
此れから私は、アリサちゃん達と模擬戦を行うんだけど、私の方の戦力は圧倒的に不利だから、貴女の力を貸して貰っても良いかな?」
「ふ……何を言うかと思えば、その様な事ならば拒む事もありません。
元より、我等は貴女に魂から忠誠を誓った存在故に、道を踏み外したモノでない限り、貴女の命に逆らう事は有りません――我等が魂は、常に貴女と共にですよ。」
――ちゅ……
って~~~~!!!此処で、手の甲に口付けって、流石にやり過ぎだよシグナム!!いや、嫌じゃないけどね!?
「演出も大事だとの事だったので、騎士として主への忠誠を現してみたのですが、拙かったでしょうか?」
「其れに関しては大丈夫だ問題ないの。ちょ~~~~と、行き成り過ぎて驚いただけだからね。」
『え~と、仲の良い所申し訳ないけど、そろそろ模擬戦を始めても良いかな皆?』
あ、大丈夫ですよグランツ博士。
こっちは何時でも準備万端整って居ますし、何よりも私とシグナムが組む以上は模擬戦であっても敗北は皆無だから、精々弩派手にブチかましてやるだけなの!!
『其れは頼もしいね――其れじゃあ、模擬戦を開始するとしようか!!
This is gonna be a match to remember(何時の日か、この戦いを思い出す時が来るだろう)――模擬戦スタートだ!!思い切りやってくれたまえ!!』
勿論なの!!
コンビネーションは、シグナムがトップ、私がバックで行くよ……幾ら模擬戦とは言え、負けるのは嫌だから、全力で勝ちに行くよシグナム!!!
「御意に!!勝ちましょう、主なのは!!
参ります……!!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……飛竜一閃!!」
「受けて立ちます、ブラストファイヤー。」
開幕を飾るのは、シグナムとなたねの炎熱砲!!
さぁ、始めようか?最初で最後の、私達の弩派手にして最強の、魔法を世に知らしめるためのバトルって言うモノをね!!――行くよ、レイジングハート!!
『All right Master.模擬戦とはいえ、やってしまいましょう。――マスターの歩む道に、必要外の敗北は有り得ませんからね。』
だよね♪
でも、そう言う事なら、手加減は不要!!――デモンストレーションの模擬戦でも、全力全壊でやってやるの!!……其れが私の流儀だからね!!
――――――
Side:???
ククク………このタイミングで公表するとは、相変わらず間の取り方が巧いなグランツ?……其れでこそ私の友だと言うべきかもしれんがね。
しかし、グランツの研究結果が世界に浸透したら、其れは其れで私にとっては有り難い事だけれどね。
さて、君達は世間の凡人にどんな道を示す心算だい?――精々、世間を圧倒するような事をしてくれる事をしでかしてくれることを楽しみにしているよ。
ククク、此れは実に面白い事になって来たみたいだね――頑張りたまえよグランツ!!そして、次世代を担う若者たちよ!!
私も、精々鑑賞させて貰うとするからね!!最高のショーを見せてくれたまえよ!!
To Be Continued… 
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