Side:なのは


ある日の日曜日――今日も今日とて、翠屋は大繁盛!!
お手伝いとして、わたしとなたね、はやてちゃんとヴィータちゃん、アリサちゃんとすずかちゃんが出張ってるけど、其れでも手が足りそうにないの~~~!!

アルバイトとして勤めてるアミタさんとキリエさんも頑張ってくれてる上に、シグナムとズィルバとナハトヴァールも頑張ってくれてるけど、其れでもこの忙しさは半端じゃ
ないの!!幾ら、流行るのが良いとは言っても、此れじゃあ息つく暇もないの!!


「フルサイズになって手伝いますか?マイスターなのは?」

「大丈夫だよグルム……此れ位の事はやってのけないと、翠屋を継ぐ事なんて到底できないからね……此れは、未来に向けての修行だよ!!」

「そうなんですか?」


そうなんだよ、グルム。
それに、込んでる時の店内では、正確な情報処理能力が必要になるし、誰が何をオーダーしたかを覚えてる記憶力も必須!
更には、どのテーブルのオーダーが一番早かったも把握しておかないと、無駄にお客さんを待たせてしまう事にもなるから、其れも覚えておかないとなんだよ。


「ほえぇぇえ~~~……大変なんですね~~~。」

「でも、私達は、この忙しさは嫌いじゃないけどね♪」

忙しいって事は、其れだけ翠屋が人気の店だって言う証だからね。


因みに、グルムは今現在店のレジカウンターに、ちょこんと座ってマスコット状態。
どうしても店に出たいって言うから、問題のなさそうなマスコットになって貰ったけど、此れが予想以上に大当たり!!
動く事と喋る事については『グランツ博士が開発した、マスコットタイプのアンドロイド』だって言う事で、誰もが納得してくれたらね……恐るべき、グランツ博士だよ。

本気で、グランツ博士なら、この先どんな事をしても驚かないの。


さて、そろそろ昼休みだから、もう一頑張りだね♪













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天95
『Eine Beziehung und Band』












――カランカラン……


ふぅ……此れでピークは過ぎたね――ヤッパリお客さんが大入りになる土日のお手伝いは中々にハードだよね?流石に、もう慣れたけれどね。…大丈夫、なたね?


「まだまだなれない部分も有りますが、其れなりに業務には当たれているので、問題なしです姉さん。
 しかし、これ程までの客が訪れるとは、改めてこの翠屋が如何に素晴らしい店であるのかという事を実感できます――現実に、此処はとてもいい店ですから。」


うん、お母さんのシュークリームと、お父さんのコーヒーは無敵だからね♪
全国展開してる、チェーンの喫茶店とは比べ物にならないレベルだって言うのは間違いないと思うの――そうじゃなかったら、此処まで流行らないだろうからね♪

加えて最近は、シグナムが考案した新作も店頭に並ぶから、其れがまた人気を呼んでいるの可能性は、否定できないの。


見た目は、バリバリ剣士なのに、実は家事も完璧って、ある意味でシグナムってチートキャラだよね?……まぁ、そんな所も頼りにしてはいるんだけどね♪



――カランカラ~~ン♪



っと、ここで新たなお客さん!!いらっしゃいませ、ようこそ翠屋に!――――って、クイントさん!?


「どうも、こんにちはなのはさん♪それと、桃ちゃん先輩もこんにちは♪」

「あらあら、いらっしゃいクイントちゃん♪
 ――今日はまた、随分と大所帯ね?……その子達は、若しかしてクイントちゃんの……」

「はい、私の子供達です、桃ちゃん先輩♪」


子供って……6姉妹ですか!?
クイントさんに、こんなに子供が居たとは驚きですよ……あの青毛のショートヘアーの子と、赤毛のショートヘアーの子はティアナと同じくらいの歳かな?何となく、ティ
アナとは良い友達になれそうな感じがするね。

まぁ、其れは其れとして、今日は如何してこんな大所帯で?
って言うか、クイントさんは何時も人数分のスウィーツを買って行くのに……


「其れは……貴女のミッドでの演説を子供達に話したら、会ってみたいって聞かなくって。
 尤も、貴女の演説だけならこうはならなかったかも知れないんだけど、私の旦那があの事をまるで『英雄譚』みたいな感じで、この子達に何度も話してたから……」

「其れで大体察しましたクイントさん。」(汗)

一体ゲンヤさんは、あの時の事を如何言う風に伝えたのやら……私は、英雄なんかじゃないんだけどなぁ……?
其れでこの子達の目が妙にキラキラしてるって言うか……特にショートカットの子と、特徴的な赤毛の子はハンパじゃない感じなの――えっと~~~………


「お客さんも大分減って来たし、なのはとなたねとはやて、ヴィータちゃんとアリサちゃんとすずかちゃんは、もう上がってくれて大丈夫よ?
 後は、大人組だけで何とかなるから、ナカジマ家の子達の相手をしてあげなさいな?――特になのはは、物凄く期待されちゃってるみたいだからね?」

「お母さん、無駄にプレッシャーかけないで下さい。
 でも、そうなると……天気も良いし、テラスの方でお話ししようか?」

「O・HA・NA・SHIやと!?」

「……違うと思いますよ、はやて……」


違うよはやてちゃん。って言うか、発音がオカシイ上に、物凄く他意を感じるよ?
そんな事言ってると、はやてちゃんとO・HA・NA・SHIしたくなっちゃうんだけどなぁ~~~?如何しようかなぁ?


「堪忍して姉やん!マジすんませんでしたぁ!!」

「……何て言うか、この姉妹の力関係が良く分かるわね。」

「あはは……まぁ、なのはちゃんには誰も敵わない気はするんだけどね。」


まぁ、此れも姉妹のじゃれ合いだけどね。因みに、ある時からなたねははやてちゃんの事を『はやて姉さん』とは呼ばなくなったの。
何でもはやてちゃんが『姉やんの双子設定のなたねちゃんが、私の妹て色々オカシイやろ!?』とかなんとか言って、半ば無理矢理納得させたとか言ってたなぁ?
だからと言って、何が変わる訳じゃないんだけどね。



さてと、此処がテラス席。皆適当に座ってね?お母さんが、カフェオレとシュークリーム持って来てくれると思うから。


「「「「「「はい!」」」」」」

「あはは……そんなに緊張しなくて良いよ?皆とお友達になれたら嬉しいしね。
 えっと、それじゃあ先ずは自己紹介と行こうかな?……既に知ってるみたいだけど、改めまして高町なのはです。皆、宜しくね?」

「高町なたねです。なのは姉さんの双子の妹になります……以後お見知りおきを。」

「高町はやてや。みんな、宜しくなぁ♪」

「話は知ってるみてぇだから隠す事もねぇか……なのはの守護騎士、ヴォルケンリッターが紅の鉄騎・ヴィータだ。ま、宜しくな。」

「アタシは、アリサ・バニングス。なのはの親友って所ね。」

「月村すずかです。宜しくね♪」


それじゃあ、今度は貴女達の名前を教えてくれるかな?


「えと、長女のギンガ・ナカジマです。宜しくお願いします。」

「次女の、チンク・ナカジマと言います。お会いできて光栄です、高町なのはさん。」

「三女のディエチ・ナカジマです。……宜しく。」

「四女のスバル・ナカジマです!!宜しくお願いします!!」

「ノーヴェ・ナカジマです……スバルとは、双子です……その、宜しくお願いします!」

「んでもって、アタシが六女にして末っ子の、ウェンディ・ナカジマっす!!
 もうなんていうか超感激ッス!パパりんが話してくれた、超有名人とこうして会う事が出来ただなんて、それだけで我が人生一片の悔いなしッス!大興奮っす!」


あはは……個性的な姉妹なんだね。
って言うか、ウェンディちゃん此れからの人生の方が全然長いんだから、私に会えたくらいで一片の悔いなしとか言っちゃダメだよ?感激する事は、此れからもっとも
っと起こるかも知れないんだからね?


「うぃ、了解っす♪」

「うん、宜しい♪」



「はい、お待たせ。翠屋特製のシュークリームとカフェオレよ~~~♪
 折角だから、楽しんで行ってね?……クイントちゃんもね?」

「はい!……って言いたい所ですけど、子供は子供同士の方が良いと思うんで、もし良ければお店の方手伝いましょうか桃ちゃん先輩?」

「其れはそうかも知れないけど、良いのクイントちゃん?」

「勿論!こう見えて力は有りますし、主婦ですから、調理だろうと力仕事だろうと何でもござれですよ桃ちゃん先輩!」

「そう?……なら、お願いしちゃおうかしら?」

「お任せ下さい!!」



で、お母さんがシュークリームとカフェオレを持ってきて、クイントさんが臨時のアルバイトで翠屋のお手伝い――お父さんとお母さんの事だから、間違いなく律儀にバ
イト代を出すだろうね……まぁ、臨時でもアルバイトに変わりはないからね。

それじゃあ、翠屋特製のシュークリームを遠慮せずに召し上がれ♪


「「「「「「いただきま~~す!…………うっま~~~~~~~~!!!!!」」」」」」


ふふ、其れなら何よりだよ♪
まぁ、お母さんのシュークリームは天下無敵にして、日々進化を続けてる珠玉の逸品だからね――翠屋に来たら、シュークリームは必ず食すべしって言うのが、海鳴
での共通認識になって居ると言っても過言じゃないみたいだしね。


「此れは、このシュークリームならアタシとスバル姉ちゃんとギン姉なら、文字通り無限に食す事が出来るっす!!」

「偶にお母さんが買って来てくれるけど、食べる度に美味しさが増してる!!もう、本気で美味さのビックバンが止まらない~~~~!!!」


ふふ、其処まで気にってくれたのなら、店の娘としては嬉しい限りなの♪


……時にチンクちゃんは、右目を怪我でもしてるの?ずっと右目を閉じたままだけど?


「あ……此れは何と言うか、実に恥ずかしい話なのですが、幼稚園の頃に興味本位でハチの巣をつついて、蜂に右目を刺されてしまいまして。
 その際に、蜂の毒針のせいで右目が潰れてしまって、眼球の摘出手術を受けて右目は閉じたままになってしまったのです。」

「……ゴメン、嫌な事聞いちゃったね?」

「いえ、そんな事は有りません。特に不自由をしているわけでもありませんから。
 まぁ、悩みの種はこの右目を隠すための眼帯が医療用の物しかないと言う所ですね……流石に医療用はダサい事この上ないので、出来れば使いたくないので。」


そうなんだ?……でも、眼帯かぁ?
確か、街はずれの雑貨店にそんなのを売ってた記憶があるから、機会が有ったら覘いてみると良いんじゃないかな?若しかしたらいいのが見つかるかもだからね。


「其れは良い事を聞きました――早速、今度行ってみましょう!!」


いいのが見つかると良いね?



ん?あれは……おーい、フェイトちゃ~ん、アリシアちゃ~ん!!其れに、リニスさんとティアナも!!


「あ、なのは!!」

「良かったら、フェイトちゃん達も一緒にお茶しない?
 シュークリームとカフェオレ、準備しておくよ?」

「良いですね……其れでは是非とも。」


うん、参加してくれると嬉しいの。賑やかなのは大好きだし、スバル達とティアナは、きっと良いお友達になれると思うからね♪



でも、ある意味で此れって、凄い巡り合わせだよね?
お母さんの学生時代の後輩のクイントさんの子達が此処に来て、更にはリニスさんの妹のティアナが此処に来て、フェイトちゃんとアリシアちゃんまで此処に……此れ
が、前にお父さんが言ってた『縁を紡ぐ』って言う事なのかな?

人と人との絆は、偶然の様にして、本当に必要な絆は必然的に巡り合う事となる――其れが本当なら、此れだけのタイミングの良い出会いは必然だったのかもね。


「スバル……あんた、何で此処に!?」

「うわぁ~~~!偶然だねランスターさん!!こんな所で会えるだなんて、思ってなかったよ!!」

「う……ぐ、偶然よ偶然!
 偶々、姉さんやフェイトさんが『翠屋に行ってみようか?』って言う事で来ただけだから!!!――でもまぁ、此れも良い機会だし、此れからは敬称なしで良いわ。
 アンタの好みに任せるけど、ティナア、ティア――まぁ、好きなように呼んでくれていいわスバル……勿論、アンタの姉妹の人達もね。」

「本当に!?ありがとうティア~~~~!!!」

「だ~~~~!!くっつくんじゃないわよ鬱陶しい!!てか、過剰なスキンシップは程々にしなさいよね!!!」


にゃはは……此れはまた、知り合いだったとはね?
でも、口では言っても、これはティアナもスバルとは満更でもないのかな?――此れをきっかけに、良いお友達になれると良いね、ティナア、スバル?


「うん、頑張ります!!」

「友達って……まぁ、考えてみます。」


ふふ、ティアナは素直になれない子なのかな?
でも友達が居るって言うのは、思いのほか心強いからね――誰が何と言おうと、親友の存在は絶対に必要だよ?……其れだけは、絶対に忘れないでね?


「「「「「「「はい!!」」」」」」」

「はい、良く出来ました♪」

ホントに、出会いは必然なんだね。
スバルとティアナは友達になれたみたいだし、私自身ナカジマ六姉妹とは、仲良く出来そうだからね――ふふ、人と人の縁って言うのは、本当に不思議なモノなの♪








――――――








Side:スバル


はぁ~~~……まさか、お父さんが話してくれたなのはさんと会う事が出来たなんて、物凄く感激だよ~~~!
夜天の主なんて言うから、ドレだけ凄い人なのかと思ったけど、実は気さくで優しい人だったし、アタシとティアの縁も紡いでくれたし……本気で凄い人だなぁ~~。


「うん、思った以上に凄い人だった、なのはさん。」

「何て言うかこう……王者レベルのオーラを感じたッス――流石は、パパりんが絶賛した『夜天の主』っすね~~……マジで、カッコ良かったすよなのはさんは!!」


うん、カッコ良かった!!
アタシも、頑張ればあんな風に成れるのかな?もしそうなら、色々頑張らないとだよ!!――はぁ、本気で憧れちゃうなぁ、なのはさんには!!


何時かアタシも、なのはさんみたいな人になれるように、頑張らないとだね!!!!


高町なのはさん――アタシとノーヴェとウェンディの憧れの人……絶対に、貴女の高みにまで登って見せますから!!!


今日、翠屋に行ったのは大正解だったかもしれないのかもね♪








――――――








Side:なのは


「ふ~~~~、縁側でのお茶タイムは、何とも心が落ち着くねシグナム?夕日も綺麗で、見る甲斐も有るからね。」

「確かに、こう言った一服もまた良き事でしょう――其れに、こうして主なのはと、縁側で茶を楽しみながら、夕日を楽しむと言うのも悪くは有りませんからね。」


うん、私もシグナムと一緒にお茶を楽しめるなら言う事は何もないよ。
其れに今日は特別忙しかったから、翠屋のお仕事ご苦労様なの♪――ホント、良く頑張ってくれたよシグナム。


「そう言って頂けると、騎士冥利に尽きます、主なのは。」


うん、お疲れ様なの♪


そう言えば、私とシグナム達との縁も、特殊だけど特別なのかもしれないね?――若しかしたら、これ以上ない運命的な縁なのかもしれないよ……それこそ、偶然を
超えた必然だったのかも知れないね。

其れだけの縁で結ばれた、私と守護騎士――此の縁の絆が切れる事だけは、絶対に無いって言いきれるの。


「えぇ、此れだけ特殊な縁となれば、その縁が紡いだ絆は切れないでしょう?
 元より、我等守護騎士はその全てを主なのはに捧げた存在――貴女が我等を思ってくれてる以上は、此の絆は絶対です――其れを忘れないで下さい。」


うん、分かってるよシグナム。縁とは、人と人との絆の証――そう、お父さんから教わったからね。



縁と絆―――此れは若しかしたら、何よりも大事なモノなのかもしれないの。縁と絆を、繋いで繋ぎすぎるって言う事は無いのかも知れないね。


此れから先も、いろんな人と縁が繋がると良いね?


「繋がりますよ、貴女ならば――絶対に。」


うん、ありがとうシグナム♪頑張ってみるよ。











 To Be Continued…