Side:なのは


「後継機?」

「はい。私の代わりとなる、新たな融合騎を作った方が良いと思いまして。」


ある日の午後、リインフォースから提案されたのは、リインフォースの代わりとなる新たな融合騎を製作する案――でも、どうしてこんな事を提案したのリンフォース?
貴女は、夜天の管制融合騎だから、私との相性は抜群の筈なんだけど?


「確かに、私と我が主の融合適合率は98%と言う、破格の融合率ですが、私は貴女専用に開発された融合騎ではないので、2%の不適合率に歪が生じます。
 其れは、とても小さい物ですが、其れも積もり積もれば途轍もない悪影響を貴女に及ぼしかねません。
 故に、完全に貴女専用であり、尚且つ汎用性も備えた融合騎の開発は必要だと思うのです――ダメでしょうか?」


成程、リインフォースは夜天の主と高いレベルで融合できるけど、主専用じゃないから其処に歪が生じてって事だね?
確かに、その歪を其のままにして置いたら良くない事が起きそうだから、其れを踏まえると私専用の融合騎を開発した方が良いって言うのは分かるんだけど、貴女は
それでいいのリインフォース?

後継機を作ると言う事は、つまり貴女は二度と私とユニゾンする機会を失う事に成るんだよ?


「貴女の安全が最優先ですから、其れを考えれば、二度とユニゾンできなくなる事など些細な問題です。
 それに、ユニゾンする事が出来なくなっても、私が貴女の騎士である事に変わりは有りません――ですから、あまり気にしないで下さい。
 寧ろ、後継機が出来ると言うのは、私からすれば妹が出来るような物なので、其れは其れで楽しみなのですよ?……果たして、どんな妹が生まれるのかと。」


其処まで言われちゃ、拒否も否定も出来ないね。
だけど、確かにリインフォースの妹とも言える、私専用のユニゾンデバイスがどんな物に成るかは楽しみかも知れないの。

此れは、明日にでも早速グランツ研究所に行って、開発を打診しないとだね!













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天94
『誕生、二代目祝福の風』












――翌日


と言う訳で、私専用のユニゾンデバイスを作る事になったんですけど、開発は出来ますかグランツ博士?


「少しばかり難しいけど可能だよ。
 融合騎のデータはリインフォース君から抽出すれば良いし、そのデータとなのは君のデータを照らし合わせて調整すれば、専用ユニゾンデバイスは作れる筈だ。」


流石、速攻で開発プランを構築するとは、見事ですグランツ博士!――何て言うか、本気で頭脳チートレベルだよねグランツ博士って。


「まぁ、其れだけに頼りにはなるのではないですか主なのは?
 現実に、プロフェッサー・グランツが居たからこそ、我等のデバイスも強化が可能だった訳ですし、なたねのデバイスも開発出来た訳ですから。」

「確かに、頼りにはなるよね♪」

確かにグランツ博士に任せておけば万事安心だしね。
きっと今回の、私専用のユニゾンデバイスだって、グランツ博士だったら間違いなく最高性能のモノを作り出してくれる筈だって、確信してる部分があるのも事実だよ。

其れこそ、私との融合適合率100%だってあり得ない事じゃないの!


「いやぁ、其処まで期待されると困るんだけど、最大限期待には応えて見せるよ。
 僕自身、ユニゾンデバイスを開発するのは初めてだから、ワクワクしているしね?――僕の持てる技術を総動員して、なのは君の期待に沿える物を作る心算さ。」


にゃはは……如何やら、グランツ博士のスイッチを押しちゃったみたいだね此れは。

でも、其れだけにお任せしますグランツ博士!!思いっきりやっちゃってください!!


「勿論、そうさせて貰うよ。」


果てさて、リインフォースの後継機となる、私専用の汎用ユニゾンデバイスはどんな物に成るのか――如何にも期待が膨らんじゃうの♪








――――――








Side:グランツ


ふむふむ……リインフォース君から抽出したデータを、なのは君のデータと照らし合わせると――成程、得意とする魔導のタイプが異なるようだね?
なのは君は砲撃魔法を得意としているけど、リインフォース君は広域の殲滅魔法を得意としているから、此処が2%の差異となって居るんだろう――だが、逆を言うな
らば、その差異を埋めればなのは君との融合率は100%と行かずとも99.99%には出来る筈だね。

とは言え、単純に得意な魔導タイプを合わせれば良いってモノでもないのだけどね。
なのは君の魔導タイプ、魔導スタイル、魔力ランク、魔導師ランク、その他諸々を考えて調整を施さないと専用のユニゾンデバイスなど作る事は出来ないよ。

しかも、なのは君専用でありながら、場合によっては他の守護騎士や、アミタ達ともユニゾン可能な様に調整する必要がある訳だから、此れは中々に難しい仕事かも
しれないけれど、それだけに実にやりがいがあるよ!


「あら~~……パパってばすっかりやる気モードねん?」

「まぁ、ユニゾンデバイスを製作するのはお父さんも初めてでしょうから、やる気が出るのは分かるのですけれど……此れはまた、強制睡眠装置が必要ですかねぇ?」

「絶対必要よアミタ~~~。
 パパってば、のめり込むと没頭して、ほっといたら5徹位はふつ~~~~に、やっちゃうでしょ?」

「ですよねぇ?……父親が研究熱心だと、娘は苦労が絶えませんね~~~~。」


いや、流石にちゃんと休むよ僕だって?幾ら何でも強制的に眠らされるのは、もう懲り懲りだからね。

そうだ、丁度良いからアミタとキリエの意見も聞いておこうかな?
リインフォース君の後継機となるユニゾンデバイスなんだけど、容姿と専用デバイスはどんな物が良いと思う?どんな物でも良いから、アイディアが有れば言ってくれる
かい?僕以外の考えというのも大事なモノだからね。


「容姿とデバイスですか?
 ……そうですねぇ、リインフォースさんの後継機な訳ですから、容姿はリインフォースさんの色違いで、デバイスはシュベルトクロイツの色違いで如何でしょうか?」

「でも、其れだと同じような容姿の人間が3人に成っちゃうわよアミタ?
 だったらいっその事、見た目は子供のリインフォースさんにして、デバイスはアームドよりもストレージ……夜天の魔導書の色違いの魔導書とか如何かしら~~?」


ふむ……成程、其れは確かに良いね?
なら、2人のアイディアを取り入れて、見た目は子供のリインフォース君になのは君のイメージを混ぜ合わせ、デバイスはシュベルトクロイツをベースにしたアームドに
して、非ユニゾン状態でも単騎で戦えるように調整する方向でやってみようか。

ん?だけど、大きさは如何したモノかな?
普通の子供サイズで作る事は出来るけど、其れだとコストが大きくなるし、これ以上海聖に高町家の生徒を増やすのも如何かと思うしね?この間なたね君が加わったばかりだし。


――よし、それじゃあこの子は、基本サイズをぬいぐるみ程度にしておいて、必要に応じて人と同じ大きさのフルサイズに成る事が出来るようにしておこう。
其れなら、高町家も新たな部屋を用意する必要もないし、お出かけする際にも肩に乗せたり、バッグから顔を出したりと携帯できるからね。

髪型はリインフォース君基準で、色は……リインフォース君が銀で、ナハトヴァール君が金だから、この子は翡翠色にしようか。
性格の方は、確り者でありながらも子供らしさを残しておくのが良いね。勿論、なのは君の事を一番に考えながらも、従者兼友人と言う感じを残してね。

其れから矢張り、なのは君の専用な訳だから、集束能力も持たせた方が良いかもしれないね。


「アミタ……パパって、一歩間違ったらマッドサイエンティストになってたんじゃな~い?」

「否定は出来ませんね……と言うか、今現在でも味方なら頼もしい『正義のマッドサイエンティスト』な可能性がバリバリなんですけど……」


正義のマッドサイエンティストだなんて、其れは僕には過ぎた称号だよアミタ。
本物のマッドサイエンティストって言うのは、学生時代の友人だった『彼』以外には有り得ないだろうね?彼こそ、正真正銘の『正義のマッドサイエンティスト』だよ。


「其れって、ジェイルさんの事~~?……因みにどんな人だったの?」

「研究熱心で、探求心の塊と言った感じだったね彼は。だけど、感覚が少しばかり特殊だったのは覚えてるよ。
 何て言っても、僕が『君の夢は何だい?』って聞いたら、一切戸惑う事なく実に爽やかな笑顔で『決まってるだろう。世界征服だよグランツ!』って答えたからね。」

「爽やかな笑顔で?」

「この上なく爽やかな笑顔で。」

「それは……間違いなくマッドサイエンティストね~~~――尤も、実害とかは全く無い、世界一安全なマッドサイエンティストだろうけどね~~~。」


うん、彼は口では言っていても其れを実行するような人ではなかったからね。
其れに世界征服と言っても、征服する手段は多岐に渡っているから、力に頼らずとも技術力なんかで世界を支配する事は可能だから、彼はそっち方面での征服を考
えてたのかも知れないよ。


「矢張りマッドサイエンティストが友達に……此れは由々しき事態ですよキリエ?」

「逆に考えるのよアミタ――パパがマッドサイエンティストの友達なら、暴走を食い止める鍵を有してる可能性が高いわ――其れを信じるのが上策よ~~ん。」



此れは、思った以上に厳しい評価だね?
まぁ、彼は仲間である限りは頼りになる人物だって言うのは間違いないよ?――大学時代の成績は、僕よりもずっと上だったしね。


けど、其れに付いてはここまでにしておこうか?――突き詰めていくと、水掛け論になってしまうからね。


それじゃあ、改めて開発をするとしようかな?――なのは君の専用でありながら、汎用性も備えたユニゾンデバイスと言うのは、実に作り甲斐が有るからね!!








――――――








――3日後




Side:なのは



グランツ博士に、リインフォースの後継機となるユニゾンデバイスの製作を依頼してから3日後、博士から『完成した』って言う連絡を受けて、一同グランツ研究所に。
まぁ、博士なら1週間もあれば完成させるだろうとは思っていたけど、まさか僅か3日で完成とは、流石に驚きを隠せないよ……凄いよね、グランツ博士って。


其れで、グランツ博士……この子がそうなんですか?


「如何にも、彼女こそが君の新たなユニゾンデバイスに成る存在だよ。
 まぁ、人格設定なんかは君とリインフォース君を足して2で割ったような感じにして、所々になのは君達のテイストも取り入れているけどね。」


言われてみれば、確かに目元とかは私にそっくりかも知れません――良い仕事してますね博士……まぁ、其れは其れとして、この子に名前はあるんですか?


「その子には、まだ名前を付けていないよ?
 新たなる融合騎に、その名を送るのは夜天の主の為すべき仕事だと思うからね――其れに、君が名を付けてあげた方が、彼女だって喜ぶんじゃないかと思うよ。」


言われてみればさもありなんだね。


だけど、名前かぁ~~~……シグナムは、何かいいの思いつく?


「申し訳ありません主なのは……中々に妙案は思いつきそうにありません。」

「だよね。」

って言うか、そう簡単にアイディアが湧いて来たら、この世は天才的な芸術家で溢れかえっちゃうからね。
でも、だからと言って、この子の名前を蔑ろにして良い理由にはならないからね――リインフォースは、何かいい案は無いのかな?


「そうですね……此れは、私の我儘なのですが、新たに生まれる融合騎にも『祝福』の名を継いでほしいのです――主を守護するという意味から考えても。
 なので、私が『リインフォース・アインス』で、新たに生まれるその子が『リインフォース・ツヴァイ』で如何でしょうか?」

「却下。」

一番と二番って、其れは流石にないよリインフォース。若しかしなくても、リンフォースにはネーミングセンスが皆無なのかな?
其れに、リンフォースは生きてるのに、其れは無いよ――幾ら後継機であるとは言ってもね。


「ダメですか……ならば、どのような名を送る心算で?」

「そうだねぇ……貴女が『リインフォース・ズィルバ』、この子が『リンフォース・グルム』で如何かな?
 ズィルバはドイツ語で銀を、グルムはドイツ語で翠を意味する言葉なんだけど如何かな?2人の髪色からして、ピッタリだと思うんだけど?」

「ズィルバとグルム――確かに良き名ですね、気に入りました。」


其れなら良かったの♪

では、名は決まったので、起動準備をお願いできますかグランツ博士?


「勿論……さぁ、誕生の時だよ!」


――ガコン!!――ギュイィィィィィィィィン……


うん、良い感じに魔力が満ちて来たね?此れなら、直ぐにでも目覚めるかも知れないの。

だけど、その前に貴女に名を送らないとね。



「夜天の主、高町なのはの名の下に、新たな融合騎となる汝に名を送る。
 夜天の融合騎の望みを受け入れ、汝にもまた『祝福』の名を送る――故に、汝の名は『リインフォース・グルム』。蒼天にその力を発揮する、翡翠色の祝福の風也。」


――ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!


さて、巧く行ったかな?


「ん~~~~~……あふ……おはようございますマイスターなのは♪
 貴女の新たなユニゾンデバイス『リインフォース・グルム』です。これから、宜しくお願いしますマイスター♪」


如何やら成功みたいだね?

うん、此方こそ宜しくねグルム♪貴女の誕生を心から歓迎するよ。――何よりも、貴女はズィルバとナハトヴァールの妹とも言えるからね。
其れを言ったら、シグナムの妹でもあるのかも知れないけどね♪


「姉さん達の妹で、この容姿ならば私の妹でもあるのでしょうね……まぁ、姉妹が増えるのは悪い気分ではありませんのでアリでしょう。」

「宜しくなグルム。私がお姉ちゃんだぞ♪」

「リインもとい、ズィルバ姉さん、少し自重してくれ――其れでは只のシスコンだぞ?」

「なにぃ?妹は愛でるものだろう?異論は認めん!!!!」

「其処でハッチャケルな!!其れでは『残念な姉』一直線だぞ姉さん!!」

「だが、止まらぬ!!」


あはは……何て言うか、アレな感じだねズィルバとナハトヴァールは。
だけど、私専用でありながら汎用性も備えたユニゾンデバイス『リインフォース・グルム』は有り難い存在なの♪私も、常に全力が出せるように成る訳だしね。


改めて、ようこそこの世界に!
祝福の名を継いだ融合騎――期待してるよ、グルム♪


「はい!頑張ります、マイスターなのは!」


祝福の名を継いだ、翡翠色の蒼天の融合騎『リインフォース・グルム』――貴女もまた、大事な私の騎士だよ。
此れから色々と世話になるだろうけど、その時は宜しくね!!


「はいです♪」



「彼女の加入で、夜天の陣営は更に強くなったようですね姉さん?」


否定はしないよなたね。
寧ろ、此れくらい強くないと敵襲に耐える事は出来ないからね――此れ位の護りは、ある意味で当然の事だよ。……これ以上、他の何かの好きにはさせないから!

地上げだろうとなんだろうと、私達は屈さない!
何時どんな時でも、決して退かないのが夜天の主だからね――チンピラ風情が相手でも怯まないの!!!私は、何が有っても退かない!夜天の主の誓いなの!!








――――――








Side:???


夜天専用のユニゾンデバイスとを作り上げるとは、流石は我が友だ――実に見事だよ。
だが、今回の事で少なからず、最高評議会にデータが流れたのは間違いないだろうね……まぁ、生き汚い脳味噌共が其れをどうこう出来るとは思わないけれどね。

だが、此れは良い起爆剤になったはずだ――精々怯えているが良いさ脳味噌が。

彼女達が本気を出せば、君達如きは瞬殺なのだからね――精々落ちるが良い!!少なくとも10年以内に、君達の居場所は無くなるだろう。
だから、今の内から畏怖し、恐れ慄くが良いさ――夜天の主が持つ、最強にして最高のカリスマ性と言うモノにね!!














 To Be Continued…