Side:なのは
ゲーム対決の大将戦、対戦格闘での勝負って言う事は確定してたんだけど、まさか『キング・オブ・ウォリアーズ』で対戦する事になるとは思ってなかったよ。
しかも、操作キャラクターとしてシグナムと、そして自分の部下をゲーム内に転送するなんてね……
「フフフ……夜天の主でも、自分の部下をゲームの操作キャラクターにするというのは、少しばかり面食らったかな?」
「うん、少しだけ驚いたよ?本当に、すこ~~~~~~しだけね。
だけど、部下って言うのは訂正してくれないかな?――シグナムは部下なんかじゃなくて、ヴォルケンリッターの筆頭騎士にして、私の大切なパートナーだから。」
「……其れは失礼。
だが、所詮プログラム生命体に過ぎない彼女を大切なパートナーとは、夜天の主は中々に酔狂な方みたいだ……守護騎士など、所詮は道具に過ぎないのに。」
……ふぅ~~ん?そう言う事言うんだ……そのセリフ、完全に私の逆鱗に触れたよ?
守護騎士が道具?寝言は寝て言え、戯言はラリッてから言えなの!!――私の騎士達を侮辱した罪は、万死に値しますよ久良持さん!!
「僕は事実を述べただけだけどねぇ?……まぁ良いや、何を如何言おうとも、此のゲームで僕に勝つ事が出来なければ、君達は此処でゲームオーバーだからなぁ?
まぁ、精々僕をこのゲームで楽しませてよ?」
「決着はゲームで……それが此処のルールですからね。
でも、寧ろ上等です!!オンラインで負けなしの99連勝で、連勝数、勝率共に世界ランキング1位の私に、此のゲームで挑んだ事を後悔させてあげますよ!!」
まして、シグナムが操作キャラクターになってるんだから、絶対に負けられない!!――ううん、負ける筈がない!!
夜天の主と筆頭騎士を相手にした事を、後悔させてやるの!!
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天90
『夜天と烈火の絆は無敵!』
No Side
ゲーム対決の大将戦に選ばれたゲームは、対戦型格闘ゲームの『キング・オブ・ウォリアーズ』。通称『KOW』。
全世界で100万本を売り上げた、オンライン対戦を実装した対戦格闘で、細かく作り込まれた30人のキャラクターと弩派手な演出で爆発的な人気となっている。
アーケードと家庭版の互換性もあり、何方のデータも世界ランキングに反映されると言うのも大きな特長だろう。
また、熟練者から初心者まで楽しめるように作り込まれたゲームシステムも見逃せない点であり、概ね格闘ゲーム初心者でも手の出しやすいゲームだと言える。
因みにゲームは4ボタン式で、アーケードのボタン配置だと
A:弱パンチ B:弱キック C:強パンチ D:強キック
となっている。
また、特殊操作として
A+B:緊急回避 レバー後ろ+A+B:緊急回避(後転) C+D:ブッ飛ばし攻撃 A+B+C:パワーMAX解放(パワーゲージ1つ消費)
となっている。まぁ、他にも操作はあるのだが、其れは後程説明する事にしよう。
さて、このゲームで対戦する事になった訳だが、先ずはキャラクターセレクトで、自キャラを選択しなければそもそもゲームに成らない。
「私は……迷う事なんて無いよね!」
先ず、シグナム扮するは、自身がモデルとなった主人公『蓮杖紅』。
飛び道具こそ持たないが、各種必殺技を駆使したラッシュが強力であり、飛び道具を超えられる必殺技や、足元が無敵になる突進技など接近手段が豊富である。
また、追加入力で派生する技が多く、派生技も含めると全キャラ中最大となる15個以上の必殺技を装備しているのもこのキャラの特徴だろう。
序に、真紅のポニーテールと、良い感じに破れたダメージジーンズに六分丈のTシャツ(要はヘソ出し)のコスチュームで人気が全キャラ中ぶっちぎりの1位。
一方、ジャアク扮するは、紅のライバルで男主人公とも呼ばれている『神楽大和』。
信頼できる無敵技が無いなど、防御面での不安が残るが、其れを補って有り余る攻撃能力を有し、特に相手を画面端に追い込んだ際には無類の強さを発揮する。
オールバックに纏めた金髪と、黒のライダースーツのイケメンキャラだが、キャラ人気としては2位ではある物の、1位の紅とは相当に得票差がある悲しいキャラ。
そして、キャラクターセレクトが終わったら次は『潜在能力』を夫々選択する。
潜在能力タイプは『攻撃型』『防御型』『スピード型』『ギリギリ限界パワー』の4つの内から選択でき、なのはは限界ギリギリを、久良持は攻撃型を選択。
夫々がどのような効果を持つのかは、ゲームが始まってから説明するとしよう。
「それじゃあ、大将戦の始まりだ。オンライン99連勝の実力、見せて貰おうかな?」
「篤と、ご覧に入れるよ!」
そしていざゲーム開始。なのはも、画面の中のシグナムもやる気は充分!
――Are You Ready……Go Fight!!
第1ラウンド開始と同時に仕掛けたのはなのは。
『こっちだ。』
久良持の飛び込みを予測していたかのように、紅の必殺技『鬼落とし』(大きく弧を描く軌道から放つ飛び蹴り)を繰り出し、空中で飛び込み潰し!
これにより、ファーストアタックボーナスで紅のパワーゲージが1本ストックされ、行き成りなのはが有利な展開となったが、久良持もゲーマーを自称するプレイヤーで
あるが故に、そう簡単にはやられない。
『舐めんなオラ!!』
追撃して来た紅の攻撃を、大和の『当て身スロウ』(構え中に打撃攻撃を受けると投げで反撃する当て身技)でカウンターして仕切り直す。
其処からは互いに一歩も退かない、正に上級者同士の一進一退の攻防が続く。
其れこそ、一瞬の判断ミスが勝敗に直結する程の戦いだ。――見ている側からは分からないだろうが、恐らくは高度な読み合いが行われているのは間違いない。
そう、対戦ゲームでも大事なのは相手の先鋒を読む事であり、読んだ上で如何攻めるかが重要になるのだ。
此の第1ラウンドで、先にその『読み』を誤ったのは久良持の方であった。
互いに体力が半分を切った頃、大和の放った『波動ボンバー』(飛び道具)を、紅はジャンプで躱す。
当然、硬直が解けたと同時に、対空技である『昇龍アッパーカット』を繰り出して迎撃せんとするが……
『焦りは禁物だ。』
前方ジャンプ途中だった紅が、突然真下に急降下!
そう、なのはは敢えて飛び道具をジャンプで避け、対空技を誘った上で紅の『幻影・落月』(ジャンプ中に真下に効果。落下点のみ攻撃判定あり。)を繰り出し、対空
技を空振りさせる。
大きく飛び上がる対空技は、空振った時の隙が大きく反撃は確定!
当然このケースでも御多分に漏れず、大和が着地すると同時に、紅が屈B→立ちCと繋いで、キャンセル強『焔昇り』(二段蹴り。強で出した場合は追い打ち可)。
更に浮いた相手に、追撃で弱の『虎討ち』(出掛かりに無敵時間のある炎のアッパー。弱はヒット後追撃可)で追い打ちし……
『吹き飛べ!!』
連続技の締めは『火炎風車』(炎を纏ったサマーソルトキック。無敵対空技)!!
――KO!Wiener is Kurenai!
『お前では、燻りすらしないな……』
華麗なる連続技で、先ずはなのははが1ラウンド奪取!流石はオンライン99連勝は伊達ではなく、大人のゲーマーを相手にしてもマッタク隙は無かったようだ。
しかし、後がなくなった久良持はまるで慌てる素振りはない。
其れどころか、まるで『久しぶりに良いゲームが出来そうだ』とばかりの笑みを浮かべている――恐らく今のラウンドで、なのはの実力を認識したのだろう。
「いやはや実に見事……流石は99連勝のゲーマーと言ったところだよ。
其れに僕を罠に嵌めるとはね……そのお礼に、次のラウンドでは僕のゲーマーとしての力を存分に見せるとしよう。」
「是非とも見せて下さい久良持さん……それを粉砕して見せますから!」
――This is gonna be a match to remember!Fight!!
そして始まった第2ラウンド。
『シャラー!!』
今度は久良持が先に仕掛けて来た。ラウンド開始と同時に『烈風キック』(移動距離の長い飛び蹴り。出掛かりにガードポイントあり)で奇襲!
勿論、なのはは慌てる事なくガードを固めて、技後の硬直に反撃を狙っていたのだが――
――バキィィィン!!
「んな!?クイック解放!?」
此処で久良持は高等テクニックとされる『クイックMAX解放』(一般にはクイック解放と言われる)を発動。
通常のMAX解放はパワーゲージを1つ消費するが、クイック解放は2つ消費することで必殺技のモーション中等の『行動中の解放』を行うテクニックだ。
其れだけならば如何と言う事は無いが、久良持の選択した潜在能力タイプ『攻撃型』はMAX解放中は、超必殺技以外の全ての技が、全てのモーション中にキャンセ
ルが可能になる『どこキャンモード』に成るのだ。
つまり、何処でもキャンセルが可能になると言う事は、なのはの狙っていた技後の硬直すらなくなると言う事で、其れを利用して必殺技の超絶猛ラッシュ!!!
如何にガードしていると言え、必殺技では削りダメージを受けるし、何よりもガードを続けていたら何れはガードクラッシュを起こして大ダメージが確定だ。
――ガードゲージはあと2つ……このままじゃジリ貧は確定だね。
だったら次の攻撃に長い無敵時間のある、強の『虎討ち』を合わせる!仮に相討ちになっても、こっちの方が先に動けるから、仕切り直しが出来るの!
即座に反撃策を構築し、相討ち覚悟で技を繰り出す!!
――フッ
「!!」
だが、反撃の一手を放ったその瞬間に、大和はスウェーバックで反撃を躱す。
……どこキャンモードを利用し、必殺技のモーションをキャンセルして緊急回避(後転)を行ったのだ久良持は。――紅の無防備を誘う事が目的で。
「さっきのお返しだ。」
技を空振りした紅に対し、大和は立ちAから特殊技の『デストロイ武人拳』(4ヒット技。ヒット後は追撃可)に繋ぎ――
『死にやがれクソッ垂れがぁぁぁ!!』
追い打ちに超必殺技の『レイジング山嵐』(両手を地面に叩き付けて気の柱を発生させる。無敵時間あり)をブチかまして、紅の体力を0にしてKO!!
――KO!Wiener is Yamato!Perfect!!
『最強ってのは俺の事だぜ。』
何とパーフェクト勝利で、久良持が第2ラウンドを奪取し、イーブンに持ち込んできた。
いやはや、ゲーマーを自称する実力は伊達ではないのだろう……決着は最終ラウンドに持ち越される事にったのだ。
――――――
Side:なのは
まさか、パーフェクト負けを喰らうなんてね……ゲーマーを自称する、その実力は大したモノだと思うよ?……パーフェクト負けなんて、此のゲームでは初めてだよ。
だけど、今のラウンドで貴方の手の内は見せて貰いました――ファイナルラウンドは、互いに手の内を分かった上での削り合いですね。
「そう成るね?……だけど、君は僕には勝てないよ?……僕はあらゆるゲームに精通してるんだからね!」
「貴方こそ、私に勝つ事は出来ませんよ?
私の操作が全てとは言え、実際に痛い思いをして戦ってるのはシグナムなんです!!――だったら、私が折れるなんて言う事は絶対に在り得ませんから!!」
其れに、シグナムは私を信じてくれてる……だったら、尚の事負ける事なんて出来ないの!!
「そう来ないとね……さぁ、運命の第3ラウンドだ!!」
――Final Round!!Go For Broken!Fight!!
泣いても笑っても此れが最終ラウンド!!……その技は隙が大きい!!ファーストアタックボーナスは貰うよ!!
『ボディが、甘い!!』
――ガスゥゥゥゥ!!
よし、此れで私のパワーゲージは満タンになった!……後は、少しシグナムに頑張って貰わないとだね。
其れは其れとして、私も久良持さんも、互いの手の内を分かってるから体力の削り合いみたいな戦いになってるのは否めない――互いに決定打が無いからね。
だからって負ける気は毛頭ないの!!
――ガガガガガガガガガガガガ!!!
一進一退……どっちも退かない展開だけど……なら先に仕掛けるだけなの!
拮抗している状態を崩さんと飛び込んできた相手に、対空迎撃の『火炎風車』だよ!!
「甘い!!」
『コイツを見切れるか?』
!!しまった……大和の必殺技『ドリームキック』(空中で後方回転してから繰り出す蹴り技)でタイミングを外された!!
「紅の着地に合わせて、屈B→立ちCからキャンセル『アインナックル』(アッパーカット。ヒット後は追い打ち可)と繋ぎ…追い打ちの『昇龍カノン』(超必殺技)!!」
――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
「相手の着地タイミングをずらしてからの連続技!?此れって、1ラウンド目になのはが見せた……!!」
「そうだ!自分がやったのと同じ連続技を喰った気分は如何だ?
此れでお前の体力は残り1!起き上がりに、飛び道具を重ねれば、其れでゲームセットだ!!」
……其れは如何かな?
『遊びは終わりだ!』
――バキィィィィン!!
「な!?なんだ此れは!?」
「忘れたの?私が選んだ潜在能力タイプ『ギリギリ限界パワー』は、残り体力が1/4以下で、パワーゲージが3つある時に超必殺技をも超える『究極奥義』が発動可
能に成る、一発逆転の可能性を秘めたスタイルだって言う事を!!
そして、私が選んだ紅の究極奥義は、技が出来るまで無敵時間が持続する突進乱舞技『紅蓮竜虎乱れ舞い』!!此れで終わりだよ!!」
『私から逃げる事は出来ないと知れ!!』
計10発の拳と蹴りを叩き込み……この技のカッコいい所は、最後の一撃なんだよね!
――バリィィン!!
『此れで決まりだぁぁぁぁ!!』
――バキィィィ!!
トドメの一撃を放つ際に、もう一度画面が暗転して、トドメを放つ拳が光るからね!
『ごおはぁ!?…このままでは終わらんぞ~~~~!!!』
『……此れで、満足したか大和?』
――KO!Wiener is Kurenai!Excellent!!
――バシュン!!
画面から何か……シグナム!!
「はぁ、はぁ……マッタク無茶をして下さる……本気で死ぬかと思いましたよ。」
ごめんね、シグナム。
だけど、シグナムなら絶対に堪えらえると思ったからね――シグナム以外じゃ、こんな事は出来なかったよ……ごめんねシグナム、其れでありがとうだよ。
「此れもまた騎士の務めですよ主なのは。
確かに死ぬかとも思いましたが、其れが全て貴女の思惑通りだったというのならば何も言いますまい……寧ろ、貴女と共に戦えた事を光栄と思いますよ。」
私の方こそ光栄だよ……夜天の筆頭騎士と共に戦えたんだからね。
「そっか、久良持の連続技は態と喰らったのね?近距離での必殺技を誘う為に!!」
うん、少し空気読んでほしい所だけど、其の通りだよアリサちゃん。
少し危険だったけど、シグナムなら絶対に耐える事が出来ると思ったから、危険極まりない博打を打つ事が出来たんだよ――約束通り、次に進ませて貰うの!!
「僕が負けた?……そんな馬鹿な……だけど、僕は…そうだ、もっと研究をして……」
「あの、久良持さん?」
「ダメだこりゃ、アンタに負けた事で、完全に自分の殻に閉じ凝っちまったな……本気で、ガチ引き籠りの廃人ゲーマーって所か。
まぁ、此処での勝負に勝ったのはアンタ達だからな、次に繋がる扉は開けてやるよ……ま、精々頑張るんだな。」
ハレルヤさん!!……ありがとうございます!!
「ま、敗北者には口無しってな……ま、頑張んな。」
はい!!
新たに開いた扉の先は何も見えないけど、この先に間違いなく黒幕が居る……!!思い切りぶちかましてやるの!!
「えぇ、貴女の力を利用しようとした愚者に、夜天の鉄槌を下してやりましょう……我が剣は、貴女に仇なす者を斬り捨てるために有るのですから。」
「ハッ!碌でもねぇ事を考えてるクソッ垂れは、アタシのアイゼンの頑固な汚れにしてやるぜ!!」
頼りにしてるよ皆!それじゃあ、此のまま――
――ガクン……
!?……な、なに?行き成り床が抜けて……ま、まさか此れって『落とし穴』!?――こんな古典的な罠が張られてるとは思わなかったよ!!
「「「なのは!!」」」
「主なのは!!」
「姉やん!!」
飛行は……間に合わない!!
こんな古典的な罠に嵌るだなんて………!!あ…うあ…きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
――――――
Side:シグナム
まさか、此処で落とし穴の罠とは……成す術もなく、主なのはは奈落の底に……いや、余計な事は考えるな――主なのはは絶対に生きておられる筈だ!!
並の人間ならば、落下の衝撃でお陀仏かも知れんが、主なのはは我等の主であると同時に、類稀な魔力を持つ魔導師なのだ……生きているに決まっている!!
「だけど、其れで如何するんだよシグナム!!」
「主なのはは生きている…ならば、施設内での再会も可能だから、今は黒幕を最優先にする!!――夜天の力に手を出した愚者に相応の裁きを与えてくれる!」
「確かに、其れが上策やな……落とし穴如きで、姉やんが如何にかなる筈がないからな!!
此処は姉やんの無事を信じて、黒幕を撃滅!抹殺!!大虐殺!!!してやるんが上策や!!寧ろ姉やんを利用した奴なんぞぶち殺したるわぁ!!」
「気持ちわかるけど、落ち着きなさいはやて!アンタ、目の色が反転してるわよ!?」
「此れくらいやらないと、満足出来ないで……?」
「闇堕ち~~~!?取り敢えず戻って来い、はやて~~~~~~~~~!!!」
しかし、再びのカオス空間とはな……だが、主なのはに手を出した貴様等を許さないのは私達の総意ゆえに覚悟しておけ……『死の宣告』は既に下されたからな!
だが、まさかあんな事に成るとは、流石に予想できなかったよ。
嘗て主なのはと共に戦って、漸く打ち破る事が出来た、『彼女』とあのような形で再会する事に成るなんて言う事は――な……
To Be Continued… 
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