Side:闇の書の意思
心地よいな…今までに感じた事の無い感覚だ。
浄化された純粋な魔力と、我が主を思う者達の穢れない魔力……ソレがこれ程までに安らかなものだとはな。
今までとは違う優しい魔力…それだけに暴走する気配も今はない。
此れならば或いは、今回は主を喰らい殺さずに済むかも知れないな。
「…あれ?此処は…」
「ふふ、またお会いしまたね、我が主。」
再び会う事は叶わないと思っていたのですが…また会えた事は嬉しく思いますよ。
「ソレは、私もかな?また、貴女に会えた事は嬉しいの♪」
「そう言っていただけると光栄です。」
微睡みの時は余り長くは続きませんが、今この時は貴女との触れ合いを大事にしたい。
時間が許す限り、話をしましょうか…
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天9
『不穏なる影の予兆』
「話…そういえば、貴女の名前は?マダ聞いていなかったよね?」
「名前ですか?…私個人を特定する名はありません。
ですので、管制ユニットとでも呼んでいただければ…」
「ダウト。」
はい?
「名前が無いなんてそんなのダメだよ!名前は大事なものだから!
私だってお父さんとお母さんが付けてくれた『なのは』って名前があるから私個人を特定できるの!
貴女に名前が無いなんてそんなの絶対ダメだよ!!」
そう言う物でしょうか?
ですがダメと言われても、ソレが私ですので…
「なら私が貴女の名前を考える。
今すぐには無理だけど、貴女に必ず名前を送るから!」
「名前を…はい、楽しみにしています。」
私自身が主から名を賜わるとはな…だが、それだけに楽しみだ。
願わくば、その時が真に訪れる事を…
さぁ、そろそろ時間です。
もしも、また会う事が出来たならば、その時は僅かな時間でもこうして話をしましょう。
「うん…またね…」
「はい、何れまた…」
何時になるかは分りませんが…
ふふ、名前を楽しみにしていますよ…真にその時が訪れたならば、ね。
――――――
Side:なのは
「よっしゃ〜〜!其処だ、行けーーーー!!!!」
「せや、ナイスクリアやで!!」
今日は日曜日。
河原のグラウンドで、お父さんがコーチを勤めてる『翠屋FC』の試合の観戦中。
「おし!追加点!!」
「なによ、圧倒的じゃない!」
追加点が決まってこれで3−1。
後半も残り10分切ってるから此れは決まりかな?
「でしょうね……しかし、圧倒的と言うか何と言うか…。
先制は許したものの、以降は一方的な展開では?」
「ん〜〜…先制された直後のヴィータちゃんの一喝が効いたのかも。」
あの一発以降、キーパーの子の動きが目に見えてよくなったしね。
勿論他の子もだけど。
でもそれ以上に、ヴィータちゃんの応援の凄さに相手が気後れしてるんじゃないかなぁ?
此れだけ凄い応援されたら、相手だって吃驚しちゃうよ…(汗)
「確かに…ヴィータは熱くなる所が…「ホラ其処よ!攻めて攻めて!はい追加点〜〜♪」…シャマルもあるようです…」
「まぁ、こういった応援と言うのも良いものだろう?ならば問題はない。」
まぁね。
プロサッカーとかだともっと応援凄いからね。
――ピピ〜〜!!!
此処で試合終了!
終了間際にもう1点加えて、終ってみれば5−1の圧勝!
この後は翠屋で打ち上げ、勝ったから祝勝会だね。
此れだけの圧勝だとお母さんが張り切るだろうなぁ〜〜…シュークリームの山かも。
「ソレは本当ですか主なのは!!あのシュークリームが!?」
「た、多分…。きっと一杯作ってくれると思うの…」
「ソレは何とも…あの至高の一品が……」
にゃはは…シグナムは甘いものに目がないなぁ…特にお母さんのシュークリームは大好物だもんね。
普段はキリッとした騎士様だけど、こう言う所は女の子らしくて良いのかな?
良いよね、このギャップも魅力だから♪
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と言う訳で、店内借り切っての祝勝会〜〜♪
予想通り、シュークリームが山盛りです!シュークリームの富士山です!
「翠屋といえば此れよね、やっぱり。」
「シュークリームとショートケーキが美味しい洋菓子屋さんはハズレが無いって言うけど、正にそうだね♪」
お母さんのシュークリームは天下無敵だから!
そうだよね、シグナム?
「勿論です!桃子殿のシュークリーム以上のシュークリームは無いと断言出来ます!」
「びが、むめぇ!!」
コラコラ、ヴィータちゃん口に詰めすぎなの…
「ばっべ、うめぇんばもん!!」
「…大凡騎士の姿や無いね…やけど可愛いから無問題や!!」
「…果たしてソレで良いのだろうか…?」
ヴィータちゃんは良いの♪
ほら、ザフィーラも遠慮しないで♪
「はぁ…遠慮はして居ませんが……うむ、美味。」
だよね〜〜♪
――ヒィン…
「「「「!!!!」」」」
「「「「!!!!」」」」
此れは!!この感じは…!!
「「「「「「「「ジュエルシード!?」」」」」」」」
ソレも凄く近い…!
けど、博士からの発動信号は来てないから本格的な発動はしてないって所かな?
でも間違いなく近くに…
「あの少年から…!彼からジュエルシードの臭いが…!」
「ザフィーラ?…あの子って…ゴールキーパーの!」
なんかマネージャーの子と話してるけど…まさか!
マネージャーの子にジュエルシードをプレゼントする心算なの!?
確かに見た目は綺麗な宝石だけど…でもソレは…!!
ど、如何しよう?
無理に取り上げるのも良くないし、だからって本当のこと言っても信じてもらえないだろうし…
「其処はシャマル先生にお任せ!
なのはちゃん、魔力が空になったジュエルシードある?」
「え?有るけど…はい、これ。」
でもソレを如何するの?
「ソレを……え〜〜と…捕まえた!それで此れと交換して……はい、回収完了です♪」
「「「「おぉ〜〜〜…」」」」
成程〜〜、旅の鏡を使って魔力を蒐集したジュエルシードと入れ替えたんだ?
確かに此れなら安全に回収できるね。
「うん。しかも此れはマダ完全発動には至ってない。此れなら封印と蒐集も楽にできるはずだよ。」
「ソレは良いわね。ナイスよシャマル!」
「流石です♪」
「見事なもんや♪」
「お褒めに預かり、光栄です♪」
「僕を無視しないで!?」
『黙りなさい駄フェレット!』
「ガーン…」
ユーノ君…にゃはは、何時も通りなの♪
祝勝会が終ったら、封印してソレで蒐集だね。
「あう…なんで僕はこんなに扱いが酷いんだろう?」
さぁ?……最初のアレが全ての要因じゃないかな?かな?
「レイジングハートの馬鹿ーーー!!」
『滅殺されなかっただけでも感謝しなさい。』
…レイジングハートとユーノ君はある意味名コンビかもね♪
取り敢えず未然に防げたのは良かったね♪
――――――
Side:シグナム
と、主なのはも我々もそう思って居たのだが…
「直ぐ近くにもう1つあったとはな…」
グランツ博士からの緊急連絡できてみれば何とやらだ。
ギリギリでシャマルの結界が間に合ったから良かったが…そうでなければ海鳴は大惨事だったな…
「こんな近くにもう1つ有ったなんて…!」
「てかなに此れ?木?まさか樹木の願いに呼応したとでも言うの!?」
有り得んとは言いきれんな…相手はロストロギアだ、何があってもおかしくない。
マッタク、何を如何願ったら、此れだけ巨大な樹木になるのやら…
「こんな…どうして気付けなかったんだろう…!」
「何らかの原因で極端に魔力が小さくなってたのよ…此れじゃあ発動まで気付く事は出来ないわ…!」
そして発動した以上は我等で叩くしかない。
はやて嬢と月村とキリエは蒐集されたばかりで戦えないが…だが、それでも我等に負けはない!
「戦闘開始…宜しいですね、主なのは?」
「うん!…皆でアレを止める!」
了解しました!
恐らくコアであるジュエルシードは樹の中心部にあるはず。
ソレを露出して、主の砲撃で封印する!
合わせろバニングス!相手が樹であるならば、炎属性の私とお前なら相性的に有利だ。
「言われなくとも…やるわよフレイムアイズ!」
『おうよ!派手に燃やすぜ!』
その意気だが…私達も負けられんなレヴァンティン?
『無論…!』
では行くか!飛竜…一閃!!!
「アイントリガー!繋いで…セカンドシュート!!」
――ゴォォォ!!
うむ、矢張り効果が大きいな。
む…枝を伸ばして攻撃か!?ヴィータ、ザフィーラ!!
「わーってらぁ!うざってぇ…樹だったら大人しくしてやがれ!!」
「此処から先は通さぬ…!」
防いだか……ちぃ、数が多い!レヴァンティン!
『Ja. Schlangebeissen.』
纏めて切り捨てる!陣風!!
――バババババ!!
「燃え尽きろってのよ…フレイムウィップ!!」
『Fire!!』
良い反応だバニングス!
よし、ジュエルシードが見えた…主なのは、今です!
「OK!行くよレイジングハート!」
『はい、ぶちかましましょう!』
「全力全開!ディバイン…バスター!!!」
『Divine Buster.』
――キィィン…ドゴォォォォォォォン!!!
……相変わらず凄まじい…いや、日々の練習もあって威力は上がっている。
此れが魔導を手にしてホンの半月と言って果たして誰が信じるか…
ともあれ無事封印できた…取り敢えずは安心ですね、主なのは。
「…………」
「主?」
「…なんで、もっと早く気付けなかったんだろう。」
え…?
「シャマルの結界がギリギリで間に合ったから良かったけど、そうじゃなかったら大惨事だった。
博士の感知器に頼るだけじゃなくて、ある程度距離があっても感知できるように、私達も訓練しないと…!」
主なのは……そうかも知れませんね。
如何に彼が優秀とは言え、彼の発明だけに頼るのは良くない…己ももっと鍛えねば…。
何らかの原因で極端に小さくなった魔力でも感知出来るようにしておく必要は、確かにありますね。
「うん!!」
「そうよね…アタシ達ももっと鋭くなんなきゃダメね!」
早速明日から訓練か…まぁ、今日はこれで良しとしておきましょう。
だが……気のせいか?
誰かがこちらを見ていた様な気がするのだが…誰も居ないな?
魔力や気配も感じない、か……まぁ良い、今はこれで帰るとしよう。
――――――
Side:???
あの女剣士…完璧に気配を消した自分に気付いたのか?…侮れぬ。
いや、あの砲撃少女と炎熱少女に鉄槌の少女も凄い。
巨躯の男も相当な手練と見て取れるし、結界魔導師の能力も高い…此れは一筋縄では行かぬな。
「だが自分は、主君の為に与えられた仕事をこなすのみ…
どんな手段でもそのジュエルシードは必ず貰い受ける…自分の誇りに懸けて…!」
今日は実力を見るため故に介入はしなかったが、次はこうは行かぬ。
次に発動したときは、ソレは自分が貰い受ける。
戦いに発展した場合には…精々運が悪かったと思ってくれ…
自分は何が何でもアレを集める必要が有るのでな…
To Be Continued… 
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