Side:???


「全ては順調だな?管理局に補足されたのは、あらかじめこちらで用意しておいた『失敗作のクローン』を捨て置いた、ダミーの研究所だからな。
 高町なのはのクローニングも、オリジナルと比べれば劣るのは否めないが、AAAランク級の魔導師が此れだけ居れば兵器としては申し分ないだろう。
 後は、私自らが戦って人を殺し、この特殊なバトルスーツを通してクローンに『トリガーデータ』をインストールすれば、『生体兵器・高町なのは』の完成だ!!」


ふむ……この男の目的は、高町なのはのコピーを大量に作り、其れを兵器として利用する事ですか……何とも救い難く愚かで、そして怒りを覚える所業ですね。
私のオリジナルだからというだけでなく、命ある生者から自我を奪って兵器とするなど、そんな事が許せるはずも有りません。

まして彼女は、闇の呪いを討ち滅ぼした『真の夜天の王』たる存在。其れを兵器として使おう等とは、身の程を知るべきでしょう。
ですが、果たして兵器として起動に成功したとして、彼女のコピー達がニアSランク級の力を発揮できるかどうかは、甚だ疑問が残りますね?――と言うか、先ず
間違いなく発揮される事は無く、精々AA-の力が出せれば上出来ではないでしょうか?

確か高町なのはは魔力ランクS+、魔導師ランクAAA+と言う稀代の魔導師ですが、その力は彼女の『不屈の心』と『仲間との絆』があるからこそ真価を発揮する。
其れが無いコピーでは『管理局の並の魔導師よりも強い』程度にしかならないのは火を見るより明らかだと思うのですけれどね、私は。


まぁ、この愚か者には然るべき鉄槌が下るでしょうから、其れは其れとして――私は果たしてどうしたモノでしょう?
私と言う『自我』が宿って居る以上は、この身体が『トリガーデータ』とやらに浸食される事は先ず無いでしょう。私の意思で拒む事が出来ますからね。

また、私の力も100%発揮できるので、此れを破壊して外に出る事も可能でしょう……尤も今それをやるのは上策ではありませんが。


隙を見てこの培養ポッドから脱出し、行方を晦ますのが上策ですね――可能ならば、地球に行き、高町なのはに会いたいものです。



「む?誰か外に………ククク、此れは此れは、よもや夜天の主が騎士と仲間を引き連れて乗り込んでくるとはな……此れは面白くなって来た。」


!!……恐らくは外の様子を映し出しているのでしょうが、男の前のモニターには高町なのはと守護騎士と、そして彼女の仲間達が――
若しかして、自分が兵器として利用されようとしてると言う事を知って乗り込んできたのでしょうか?……もしそうだとしたら、完全に詰みましたねこの大馬鹿者は。

精々後悔するのですね、自分が一体『誰に手を出してしまった』のかと言う事を。
そして、知ると良いでしょう――『夜天の王の力』は、例え神であっても己の支配下に置く事は出来ぬ絶対的なモノであると言う事をね……













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天88
『Zerstoren Sie einen Feind』












Side:なのは


プレシアさんに送られてきたメールに記載されてた座標の近くに転送して貰ったら、なんと其処にはクロノ君も来てたとは驚きだったよ。
如何やら、クロノ君はクロノ君で『違法研究』を行ってる組織を追ってたらしくて、その本拠地がこの世界に在るって事らしいの……此処は共同戦線を張ろうか?


「其れに関しては此方から申し入れたいくらいだ。君達ほどの魔導師や騎士が仲間ならば頼もしいからな。
 しかし、君達は如何して此処に?此処の調査結果如何では、君達に連絡を入れる心算だったんだが、其れよりも前に此処に来るとは……」

「えっと……謎の相手に襲撃されたんだよ私達。
 それで、グランツ博士とプレシアさんの所にJSって言う人からメールが来て、私の事を兵器として使おうと考えてる人が居るって言う事を知ったの。
 加えて、プレシアさんのメールには此処の座標が記されていて、其れで此処に来たんだよ、グランツ博士が開発した転送装置を使ってね。」

「そう言う事だったのか……だが、君を兵器としてと言うのは間違いではないかもしれないな。」


ほえ?クロノ君もその手の証拠か何かを掴んでるのかな?


「あぁ……君にとっては耐え難い事かも知れないが、僕が追ってる違法研究のグループは、君のクローンを大量に作り出していたんだ。」


「な、主なのはの……!!」

「クローンですって!?」



私のクローン!?……若しかして、私自身じゃなくて、私のコピーを兵器として使う心算なの!?
そんな……そんな事は絶対に認められないよ!!命は、何にだって一つなの!だから此の命は私だけの物……それを複製して兵器として使おうなんて事は、絶
対に許せない!!夜天の主として、そして高町なのはとして、犯人には鉄槌を下してやるの!!

良いよねクロノ君!!


「相手が生きて居れば何をしてもOKだ……艦長も今回の事は相当に許す事は出来ないらしい……否、エイミィを含めたアースラスタッフ全員、果ては公聴会に参
 加していた局員全てがと言っても過言じゃないだろうと思う。其れだけ『高町なのは』は管理局でも大きな存在みたいだからな。
 其れに僕も、執務官として、そして君の友人として此れを許す事は出来そうにないんだ……此処で犯人を叩きのめしたい、力を貸してくれるか?」

「是非もない……主なのはを兵器として利用しようと言うだけでも許せないのに、更には複製だと?……ふざけるのも大概にしろと言う所だ!」

「っつーか、なのはのクローンてアホなの犯人は?
 幾らなのはをコピーしたところで、なのはの力はなのはじゃないと発揮できないでしょうが!そんな事も分からないなんて、始まる前からある意味詰んでるわ。」


シグナム、アリサちゃん……まぁ、確かにふざけてるし、私は私だからこの力を発揮できるわけだからね。

兎に角、勿論私達も力を貸すよクロノ君!
夜天の主とその守護騎士、そして仲間達と管理局最年少執務官のチームなら兆に一つも負けもしくじりもないでしょ?――此処は全力全壊で行くべきだと思う!


「そうだな……なら、力を合わせて頑張ろう。協力に感謝する。」


当然の事だよクロノ君。

だけど、どうやって入ろうか?
如何にもな建物の前には、警備兵と思しきロボットが目視出来るだけで5~6体は居るし、アレを倒してもあの頑丈そうな扉は多分パスワード的な物を入力しない
と開かないと思うの。――私の直射砲で破るのは簡単だけど、其れをやったら警報とか鳴りそうだからね?

シャマル、旅の鏡で施設内部まで移動する事は可能かな?


「其れは無理みたいだわなのはちゃん。
 あの施設の周囲には特殊な魔力ジャミングが展開されてて、内部に転移魔法で入る事が出来なくなってるみたいなの。
 私も、旅の鏡で入る事が出来ないかと思って試してみたんだけど、出口を展開できるのは入り口付近までなの……ゴメンね……」

「うぅん、そう言う事なら仕方ないよ。転移は出来なくても、シャマルのサポートは戦闘になったら絶対に必要だし、作戦参謀としても頼りにしてるからね?
 其れで、内部に転移不可能って言う事が分かった所で、如何やって行くのが良いと思うかな、シャマル作戦参謀?」

「ハッ!内部に転移できない以上は正面突破が最善かと。
 恐らくは警備のロボット兵を倒した時点で、施設内にはエマージェンシーが発生すると思われるので、いっそ強行突入するのが一番だと思われます。
 と言うか、この戦力ならば普通に正面から押して全く問題はないと思われます、高町なのは大隊長殿!」

「何で、軍隊風やねん……」


にゃはは、何となくだよはやてちゃん。って言うか割とノリが良いねシャマル♪
けど、その策は悪くないと思うけど、守護騎士を束ねる将は如何考えるかなシグナム?


「其れが上策でしょう。此れだけの戦力が集えば、相手の方が数が多かろうとも、そんな事はハンデにすらなりませんよ主なのは。
 寧ろ、数だけの有象無象の烏合の衆など相手にすらならないのではありませんか?我等を敵に回した時点で、相手の命運は尽きている…チェックメイトです。」

「成程ね……なら、旅の鏡で近くまで転移して、其の後は各個撃破!
 その後、扉のパスワードを解析するなり、扉を吹き飛ばすなりして内部に突撃して主犯を確保。抵抗してきた場合には、一発喰らわせて黙らせてから確保!!
 そして、この施設の完全破壊!!――こんな所で良いかなクロノ君?」

「ケチのつけようもない位にパーフェクトだ。――矢張り、君には生来の指揮官・リーダーとしての資質が備わっているのかも知れないな?
 確かに、其れが一番面倒がなくて巧く行くだろうと思う……なら、始めようか?」


そうだね――シャマル、お願い!!


「はい!!旅の鏡……ゲート接続!!」


――ヴォン!


OK!此れを通って……施設の前に速攻転移だよ!!


『『『『『『『フシンシャカクニン。フシンシャカクニン。コレヨリハイジョコウドウニハイル。』』』』』』』


で、予想通り警備兵のロボットが襲って来たけど、高々ロボット程度が私達を如何にか出来ると思ってるなら、其れは大きな間違いだよ?



――ガキィィィィン!!



「プログラムされただけの単純な動きじゃ、私達は倒せないよ?」

「貴様等程度が、我等の行く手を遮ろうなど片腹痛い。」


襲って来たロボットの一撃を、私はレイジングハート(エクセリオンモード)で、シグナムはヤマトフォームのレヴァンティンで受け止めて、其のまま叩き伏せる。
ドレだけ高性能であっても、プログラムされた動きと、送信された命令にしか従わない相手は恐れるに足らないモノだよ?単調な動きって言うのは、読みやすい!


『消え去りなさいこのポンコツ。アナタ方がMy Masterに触れようなど烏滸がましいにも程がありますよ?
 と言うか、Masterを襲うなどいい度胸してやがりますねこのポンコツ共が……纏めてぶちのめして差し上げましょう。寧ろ死ね。Kill you!!』


――ドッゴォォォォォォォォォォォォン!!!



にゃはは……まぁ、こうなるとは思ったけど、レイジングハートもやる気満々だね?


「なのはを複製して兵器として利用しようだなんて……」

「ぜってー許さねぇ!!纏めてスクラップにしてやるぜ!!!」

「絶対零度の洗礼を受けたい奴は……」

「どうぞご自由に……私とクロノ君の『極寒コンビ』が、貴方達を氷漬けにするから。」

「其れ以前に精密機械は電気に弱いから――

「私とフェイトのコンビで完封余裕だよ!!」


ううん、レイジングハートだけじゃなく、皆もやる気充分!!
警備兵のロボット如き、私達の相手じゃない――纏めてスクラップにしてやるの!貫け、一撃必殺全力全壊、ディバイィィン……バスターァァァァァァァ!











――只今雑魚敵殲滅中なの。











「此の心は砕けないよ。」

「瞬刃烈火、迷いはない。」


予想通り、門番を倒したら増援が来たけど、意思なき機械兵は私達の敵にすらならないよ。
現に増援兵は、私のシュベルトクロイツの一閃と、シグナムの超神速の一閃で、一撃の下にスクラップにしてやったモン――この位じゃ、準備運動にもならないの。


だけど、不気味なのは警備兵を撃滅したって言うのに、施設内の警報とかが鳴ってないって言う事だよ。
警備兵が倒された時点でセキュリティが発動するモノだと思ってたけど、そうじゃなかったのかな?……其れとも、此の警備兵は倒される事が前提だったのかな?



――ヴィン



『此れは此れは、実に見事!!流石は夜天の主と称賛しておこう高町なのは。』



!!此れは、行き成り私達の前に現れた光学ディスプレイに映し出されたのは、褐色肌に銀髪、そして肩に羽根飾りのついたロングコートを纏ってる男の人。
確認するまでも無く、この人が黒幕だよね?……貴方は一体誰なの?


『私はクリザリッド……この施設の最高責任者だ。
 君達が此処に来た事は、把握して居たよ――まぁ、此れ位の事は予想して居たがな……君達を歓迎しよう、どうぞ中に進んでくれたまえ。』


最高責任者!!……つまりは全ての元凶って言うところかな。
立体ホログラムで現れて、挑発めいた事を言ってくれるとは上等だよ……私達を安易に招き入れた事を後悔させてやるの!!


「内部に招き入れて如何にかしようって言う魂胆なんでしょうけど、そう簡単に行くとは思わない方が良いわよ?
 ラストステージに辿り着いたその暁に、骨の髄まで其れを叩き込んでやるわ!!って言うか、アタシ達の友達に手を出そうだなんて100年早いわ!!」

「今の内に遺書を用意しておいた方が良いんじゃないのか?」


『そんなモノ必要ない……貴様等は所詮は私に殺されるのだ、計画を最終段階へと進めるためにな。
 精々殺されるために足掻くと良い――君達が私の下に辿り着く事を楽しみに待っているとしよう!』



……なら、逆に貴方の事をブッ飛ばすだけだよ。
貴方は、私達に盛大に喧嘩を売ったんだから、其れを買われた時の事くらいは考えてるでしょ?
……夜天の逆鱗に触れた者には火傷じゃ済まない鉄槌が下されるモノだからね?――精々私達が其処に辿り着くまでの間だけでも粋がってると良いの!!

シグナム、リインフォース!!!


「「御意に。」」

「行くよ、ユニゾン・イン!!!」



――ゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!



融合完了!夜天の祝福、今此処に!!


「我が剣に、一寸の迷いなし!!」


私はリインフォースとユニゾンして、シグナムは調停者モードに!――こうなった以上、私達が戦闘で負ける事は先ず無いよ。
兎に角、態々向こうから誘って来たんだから、其れには応えてなんぼでしょ?このまま突撃するよ、其れが一番効果的だろうからね!!


「ではその様に……道を開けろ雑魚共!!」

「開けなかったら開けなかったで、スクラップにしてくず鉄屋さんに回収して貰うけどなぁ!!――取り敢えず、ぶっ飛べやぁぁぁぁぁあっぁ粗大ごみ共!!!」



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で、群がる雑兵を蹴散らしながら進んで辿り着いたのは、巨大な『G』一文字が書かれた巨大な扉……此れは、中ボスクラスが居るかも知れないね。



だとしたら一筋縄でいく相手じゃないだろうけど、私達は絶対に負けない!!負けられないからね――先ずは、此処を突破させて貰うよ!!!


「フン!」


――シャキィィン!!………ズバァァァァァァァァァァァァァ!!!


そして、目の前の扉はシグナムが一刀両断してくれたから、此れで中に―――――って、何此れ?


――ぴろぴろぴっぴろ~~ん。ドガガアガガガアガア。昇龍~~~~拳!!



扉を切り裂いて部屋に突入しようとした瞬間に、目に飛び込んできた光景には、本気で頭が痛くなったよ。



飛び交う電子音と、無数のディスプレイ付の筐体――私達の前に現れたのは、超巨大なゲームセンターだったんだからね……
















 To Be Continued…