Side:なのは
さてと、此れは何とも無粋で物騒な招待状で、更には受け取り拒否が出来ないって言う代物なんだけど、如何言う形で受け取るのが良いと思う、シグナム?
「其れは勿論……叩きのめすのが一番でしょう?
あの白衣の男の真意は分かりませんが、此処まで明確な敵対の意思を示されて黙って居る等と言う事は有り得ないでしょう主なのは?
其れに、あの男も招待状と称してコイツ等を召喚して来た以上、此の魔導師達は所詮取るに足らない雑兵――いえ、それ以下の存在でしかないのは明白。
まぁ、相手のレベルは良くてAA+程度なので、元より我等が負ける事は無いとは思いますがね。」
「やっぱり、全力全壊でやるのが一番って事だね?
なら迷う事は無いの!!相手が誰であろうとも、人の平穏を壊しに来る輩に手加減は不要だよ!!」
まして、皆で楽しく遊んでたのを邪魔するなんて言語道断!
加えて、シグナムは仕事途中で抜ける羽目になった訳だから、迷惑千万の滅殺確定なの!!
「そうよねぇ……折角の日曜日を潰されたんだから、相応の報いを与え中やダメよねこのズべ公どもには……」
「けっけっけ……空気読まんと出て来た事を後悔させたるわ、此のダボハゼ未満の三流以下が……」
「それじゃあ、なのはちゃん、テンションが上がる号令をお願いね?」
えぇ?私が!?……まさかそう来るとは思わなかったけど、振られたら応えないといけないよね?
それじゃあ……夜天の主、高町なのはの名に於いて命じる。
烈火の将と、我が友達よ、我等に仇なさんと現れた愚かな兵に鉄槌を下し、此れを制圧せよ!!一切の手加減なしの、全力全壊でね!!
「「「「「了解!!」」」よ!」や!!」
「Jawohl Meister NANOHA.」
相手が一体何者なのかは分からないけど、取り敢えずはこの仮面の魔導師を全て倒さない事には、何も出来ないだろうから――全力全壊で撃滅しないとね!
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天87
『突然の襲撃と得られた情報』
Side:シグナム
ふむ……此の『招待状』は思った以上に出来るようだな?
主なのはの『アクセルシューター・アラウンドシフト』で一網打尽に出来るかと思ったが、全方位発射の魔力弾を躱し、更に私の陣風までも抜けるとは思っても居
なかったぞ?……其れだけならば、相当な使い手とも思えるのだが、コイツ等の動きは如何にもおかしい感じがしてならない。
確かに此方の攻撃に対処はしているが……何て言うのか、全ての動きがパターン化して居る気がしてならない。
言うなれば、咄嗟に何かを閃いた的なモノを感じる事が出来んのだ――そう、コイツ等は言ってしまえば、非常によく出来た機械人形と言う感じがしてならない。
仮にそうだとするならば、このパターン化された動きにも納得できるんだが……此処は、少しばかり踏み込んでみる必要があるかも知れんな。
「「「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
そしてまた、タイミングよく来てくれたものだな?
丁度良いから、貴様等で私の仮説が正しいかどうかを確かめさせて貰おうか?………レヴァンティン、非殺傷設定を解除だ。
『Ya.』
此れで、肉体に直接ダメージを与える事が出来るようになったな……相手は3人だが、その程度の動きは恭也殿の体捌きと比べれば遅い、止まって見える!
その程度で、私や主なのはに挑むなど、無謀を超えた愚行と知れ!!
――シュン!!……バババ!!
「ヴォルケンリッター筆頭騎士が、烈火の将の力、思い知るが良い。」
――キン!ズバァァァァァァァァァァァァァァァッァァ!!!!
「「「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」
3人とも腕を切り落としてやったが――此れはビンゴだな。
斬り落とした腕も、コイツ等本体の切断面からも機械のフレームが火花を散らしている……主なのは、コイツ等は人の皮を被った意思なき機械人形の様です!
「人の皮を被ったロボット!?」
「何処のターミネーターよ其れ!?」
「謝れ、シュワちゃんとキャメロン監督に超謝らんかい!!」
「は、はやて論点がずれてるよ!?」
何やら論点がずれ掛けましたが、要はコイツ等に非殺傷による攻撃など不要という言う事になります。
相手が心ある『人間』や、使役されているだけの猛獣の類であるならば非殺傷による迎撃で終わらせる事も必要かも知れませんが、意思なき機械人形相手に
その様な加減をする必要もない――一気に撃滅してしまいましょう、主なのは。
「相手が命令に従うだけのロボットなら、手加減なんて要らないよね確かに。
そう言う事なら、全力全壊の一撃で終わらせるだけだよ!レイジングハート!!!」
『All right Master.出来損ないの殺人サイボーグの分際で、Masterに盾突いた愚かさを教えて差し上げましょう。寧ろ滅んでしまいなさい。』
「アクセルシューター・アラウンドシフトフルパワー!貫けーーーーー!!!」
――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
主もやる気全開のようだな?
プレシア女史が絶賛した、徹甲魔力弾での全方位射撃で、機械人形の魔導師を着実に撃ち抜いて行く。其れも正確に頭部を撃ち貫いて。
確かに、この手の相手はメインコンピュータであるAIが搭載されているだろう頭部を破壊するのが一番手っ取り早いからな?主も其れを理解しているのだろう。
だが、この弾幕すら躱して主に接近する奴も居るか?
恐らくは、此方の戦闘データやら何やらはインプットされて居るだろうから、其れ位はしても不思議ではないが、夜天の下に集いし騎士と仲間達を忘れるなよ?
「此処からは通行止めだよ!」
「此処で終わり……!」
「真っ黒な炭になりたいのアンタ等?」
「其れとも、極寒の洗礼がお望みなのかな?」
「取り敢えず、ぶった切って粗大ごみやな。……纏めて鉄屑屋さんに引き取って貰おか?」
テスタロッサ姉妹が強烈な電撃で機体をショートさせ、バニングスは超高音の炎でケーブルなんかを焼き、月村は逆に超低温で動作不良を誘発し、はやて嬢は
問答無用に縦に一刀両断と来たか……まるで相手にならんな。
だが、其れでもまだ5体居るか……コイツ等は私が纏めて始末して見せよう。
「良く出来た機械人形だとは思うが、目障りなのでな……斬り捨てさせてもらう!!破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……龍牙一閃!!」
――シャキィィィィィィィン!!
ふぅぅぅぅぅぅ………此れで散れ。
――キン
――バガァァァァァァッァァァァァァァン!!!!
「凄い!居合の一撃で、5体もの相手を倒すなんて!」
「居合と斬撃波の複合攻撃です。此れならば、己の最速の剣を持ってして、間合いの離れた相手を攻撃する事も出来ますからね。
無論、居合その物の破壊力も保証しますよ。」
ともあれ、此れで敵勢力は殲滅しましたが……奴等は一体何者なのでしょうか?
あの白衣の男も、招待状などと称してコイツ等を呼んだだけで、素性は一切不明と来ていますから――一体相手が何者であるのかを、知る必要がありますね。
尤も、其れを知るのは簡単ではないと思いますが……
――ヴォン
『やぁ、無事かな皆……って、聞くだけ野暮だね。』
プロフェッサーグランツ?如何なされました、通信など……
『ちょっと、君達にラボに来て欲しんだ。
君達が出撃した直後に、僕宛に奇妙なメールが来てね?……如何にも此れは、君達にも伝えておくべきだろうと思ったんだ――今直ぐ来れるかな?』
「大丈夫ですよ、博士。直ぐに皆で向かいますね♪」
『そうかい?それじゃあ、待っているよ。』
プロフェッサー宛に奇妙なメール?
確かに其れは気になるが、果たしてそれは今回の襲撃と関係ある事なのだろうか?……主なのはが、即断したのならば、その可能性は高いだろうがな。
――――――
Side:なのは
そんな訳でやってきました、グランツ研究所。
それで、グランツ博士、其のメールって言うのは一体……?
「うん、此れがメールの本文だよ、見てくれるかな。」
挨拶もそこそこに、私達は博士のラボでパソコンに映し出された、件のメールを読んでいた。――此れは確かに、見ておいた方が良かったも知れないね?
だってメールには
『高町なのは君を狙う者達が、良からぬ事を考えているようだから用心しておく事をお勧めしよう。
彼等の狙いは、高町なのは君の力を利用する事にある……故に、野望成就の為ならば如何なる犠牲をも厭わないだろうからね?
何れにしても、彼等の思い通りに事を進めたら大事になるだろうから、今の内に鎮圧するのが最もベターだろう。
信じる信じないは君達の判断に任せるが、取り敢えずは敵の本拠地の場所だけは別途添付しておこう。――頑張ってくれたまえよ?
J.S』
こう記されていたからね。
確かに無視できない内容だけど、此れってメールの送り主が敵勢力の誰かって言う事は考えられませんかグランツ博士?
「確かにそう考えるのが普通だろうけど、僕にはこの送り主の『J.S』に心当たりがあるんだよ。
もしも此の『J.S』が僕の予想通りの人物だとしたら、こんなメールを送りつけて来たのも納得が行くんだ。――彼は、こう言う演出が大好きだったからね。」
「博士、誰なん其の人は?」
「……ジェイル・スカリエッティ。僕の学生時代の親友であり悪友でもある稀代の天才科学者さ。
僕やプレシア女史などは、彼の前では霞んでしまう程の、正真正銘の大天才だよ。」
そ、そんなに凄い人なんですか!?
って言うか、博士やプレシアさんが霞むほどって、ドンだけの超天才なんですか其の人って!?……そっちの方が気になってきた感じなの。
「少なくとも、僕が構築した魔法理論も、彼ならば僕よりも5年は早く構築していただろうね。
まぁ、天才故に性格の歪みも大きかったが、イタズラっぽい悪さはするけど、人の道を外れた外道な事だけはしなかったから、基本的に正義感は強い人だよ。
そんな彼が、こうしてメールを送って来たのだから、このメールの内容は信ずるに値するモノだと思った――ただ、其れだけの事さ。」
成程ね……だけど、このメールの内容が真実だとして、如何して私が狙われるの?
私の力を利用するって言う事だけど、生憎と夜天の主である私は、洗脳とかそう言った類の物は極端に効き辛くなってるんだよ?……其れなのに――
「連中の目的は、貴女の力を『兵器』として使う事よ。
だからこそ、替えの効く機械人形を寄越したのよ――最悪の場合は、自爆する事も念頭に置いてね。」
プレシアさん!
如何して此処に!?
「私の所にも同じメールが来たのよ。
ジェイルとは、一時期共同研究をしていた時期もあるしね……其れだけに、メールの内容は信憑性が高いわ。
しかも、ご丁寧に、私のメールには相手の本拠地の座標までもが表記されていたわ――相変わらず、何が目的が分からないわねジェイルの奴は……」
プレシアさんの下にもメールが?……以外と世間は狭いんだね。
其れは其れとして、私を兵器として利用するって、一体如何言う事なんですか!?
「詳細は分からないわね、残念ながら。
だけど、世界を滅ぼしかねないロストロギアの事件に2度も関わって、そして其れ等の事件を解決に導いた夜天の主の力を欲する者が居ても不思議はないわ。
貴女ほどの一騎当千を絵に描いた様な魔導師の力を喉から手が出るほどに欲しがっている輩が居ても何ら不思議はないわよ?
ネームバリューの先行と言えるかもしれないけど、貴女は其れだけの力を秘めているのよ、高町なのはさん?」
そう言う事ですか……何とも気分が悪くなる話ですよ、私の力を兵器として利用しようだなんて!!
私の力は――夜天の力は、大事な人を護る為にある。それを、兵器として利用しようとするなんて絶対に認められないの!!――何があろうとも絶対に!!!
「良い気迫だわ。
だけど、其れで如何する心算なの?」
「プレシアさん、さっき言ってましたよね?メールに敵の本拠地の場所が記されていたって……なら、其処にこっちから赴いて其れを潰せば良いだけの事です!」
「其れもそうね……相手が誰だかは知らないけど、トンでもない相手に喧嘩を売ったモノだわ。
いいわ、敵勢力の本拠地のデータを送ってあげる―――だけど、くれぐれも気を付けなさい?貴女達に何かあったら、悲しむ人達が大勢居る事を忘れないで。」
分かってます!!私だって、家族を悲しませるような事はしたくありませんからね!
だからこそどんな困難だって超える事が出来る!!
――取り敢えず、相手の本拠地は分かってる訳だから、機を見て突入するのがベストだろうね?
私の力を兵器として利用しようだなんて、絶対に認める事は出来ない。
此の力は私だけの物だし、誰かに譲渡する気も更々ない……私達を敵に回した事を後悔させてやるの!!――――精々、楽しみに待ってると良いよ……!!
――――――
Side:???
「?」
此処は一体何処なのでしょうか?私は、高町なのはと烈火の剣騎士との戦いに敗れ、霧散した筈なのですが……しかも此れは生身の肉体の感覚と来ている。
そう、今までの様なプログラム生命体とは違う、生きた肉体の感覚……此れは一体?
「!!?」
成程、目を開けて納得しました。
よもや、部屋を埋め尽くすほどの培養ポッドの中に居たのが、全て高町なのはであるとは、予想すらしていませんでしたよ。
恐らくは、バイオコントロールで生み出した高町なのはの複製でしょうが、其の内の一体に私が宿った……つまりはそう言う事なのでしょうね。
それにしても………
「何が目的かは存じませんが、愚かなモノですね。
高町なのはの力は、高町なのはだからこそ発揮できる――姿形を複製しただけのクローンでは、その力の1割も発揮できないでしょうに……真に愚かです。」
そして、確信できます。
此れを行った愚者には、夜天の主か、或はその仲間か守護騎士が直々に天誅を喰らわすであろうと言う事が。
私は、時が来るまでは大人しくして居ましょう。
そして時が来るまで、精々仮初の成功に浮かれていると良いでしょう……夜天の主と、その仲間達が此処に来たその時に、貴方の命運は尽きるのですからね。
時が来たその時には、精々己の身の程を知り、そして後悔するが良いでしょう――自分がドレだけ愚かな事をしてしまったのかをね……
ですが、その時には貴女ともう一度相見える事が出来るかも知れませんね、最後の夜天の主、高町なのは――
To Be Continued… 
|