――第77管理外世界



Side:クロノ


管理外世界に逃げたのは悪くないが、其処で此れだけの施設を建造したのは拙かったな?
此処は管理外世界故に、管理局の法が及ばない場所だが、其処に逃げ込んだ管理世界の犯罪者が相手ならばその限りでじゃない――覚悟は良いな?

正直言って、お前達の違法研究を含めた犯罪行為は目に余り過ぎるからな――平和に暮らす人々の為にも此処で散れ!!!


「ククク……最早此処までか。
 だが、私は所詮末端に過ぎんから、私を逮捕したところで意味は無い――組織の黒幕は私も知らないのでね!!精々、頑張って捜査する事だ!!
 しかしながら、研究は大成功だったとだけ言っておこう!!……クローニングは成功したのだから、後は此れを兵器として完成させれば、其れで――!!」

「……取り敢えず、詳しい事は局の方で聞かせて貰おうか?デュランダル!!」

『Eternal Coffin.』


――ガキィィン!!!



本局での取り調べが始まるまでの間、暫し氷の中で頭を冷やしていろ。取り敢えず、お前達が一体何をやっていたのかを、明らかにさせて貰うからな。


――ギィィィィィ


扉の奥にあったのは……此処は何かの培養施設か何かか?――巨大な試験官が何本もあるが……其れが何とも不気味だな。
だが、一体何を培養して居たんだ?――一体何を―――って、此れは!!

そんな、まさか……まさか……コイツ等は『彼女』をクローン培養しようとしていたのか!?


「…………………………」

「高町なのは……!!」

無数にある巨大試験管の中の一つには、身体の6割までが完成している、今代の夜天の主である『高町なのは』のクローンが居るなんて言うのは、ドレだけ
の悪夢だ?……悪い夢ならば、今直ぐ覚めて欲しいと思った僕は、異常ではない筈だ……

なのはのクローンを作るとは――如何やら、此の一件は只の『違法研究摘発』では済まないかもしれないな――













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天86
『Der neue Kapitel-Anfang』












Side:なのは


おっと、中々やるねアリサちゃん?
だけど、其の技は攻撃後の硬直が凄く長くて、ヒットした場合でも五分……其れをガードしたら、結果は分かり切ってるよね?此れで終わりだよ!!!


『見せてやる……紅蓮の拳を!』


――ドォン!!ドドドドドド!!ガッ、ガガガ!!!ドゴガァァァァァァァァァァァァァン!!!


――RUSH15HIT


『KO!Wiener is Kurenai!!』

『貴様では、満足出来んな。』



うっが~~~~!!!また負けた~~~~!!!強過ぎるわよなのは!!」

「ふっふっふ、自慢じゃないけど、私は此のゲームでオンライン99連勝中の常勝街道まっしぐらなんだよ?
 早々簡単に勝てるとは思わない方が身の為だよアリサちゃん。まして、私の持ちキャラである『蓮杖 紅』に勝とうなんて100年早いよ?」

「オンラインで99勝中ってドンだけよアンタ!!
 本気でなのはって、対戦格闘ゲームでは無類の強さを誇るわよね……」


得意ジャンルですので♪



さて、ある日の日曜日、私達は何時ものメンバーで集まって、ゲームに興じていた。
遊ぶゲームはオンライン対戦も出来て、世界中で大人気の対戦型格闘ゲーム。――まぁ、私の一人勝ち状態だけど、其れには当然理由があるんだよ。

私は元々対戦格闘ゲームは得意だったんだけど、此のゲームにおける私の持ちキャラである、主人公の『蓮杖 紅』って、実はシグナムがモデルになってて、
そのせいもあって如何にも負ける事が出来ないんだよねぇ?――シグナムは、守護騎士最強の騎士で、私の最高のパートナーだからね♪


「はいはい御馳走様。ホントに、アンタとシグナムって仲良いわよねぇ?
 それにしても、此のゲームの開発者が偶々翠屋に来てて、後はアフレコすればOKだったこのゲームが土壇場で主人公の容姿がダメだしされて悩んでたと
 ころでシグナムを見て、速攻で何かを感じ取って主人公のモデル依頼とかドンだけのミラクルよ?」

「ホント、驚きだよね?
 でも、良くシグナムさんがOK出したね?こう言うのって、あんまり好きな事じゃないと思うんだけど?」

「其処はほら、『此れも人助けだから』って言う事を言ったら、悩みはしたけどOKしてくれたんだよ。
 シグナムは困ってる人の頼みを無碍にするような事はしないし、実の所はシグナムも自分がゲームの主人公のモデルになるのは興味があったんだって。」

「そうなんだ……意外だね。」


人は見かけによらないモノだよフェイトちゃん♪
戦場では無敵の騎士様も、普段は翠屋のトップウェイトレス兼サブパティシエールだし、私生活では甘いもの好きなスウィーツ女子だからね?
そう言う意味では、ヴォルケンリッターの中で、最も個性が強いのはシグナムかも知れないよ?有事と平時の時では、結構ギャップがあるから。


「……確かに、凛とした表情で剣を振るう騎士様と、クールな微笑を見せるウェイトレスさんではギャップがハンパ無いわぁ~~~?
 何も知らん人に、戦闘中と接客中の2つのシグナムの写真見せたら、果たして何人が同一人物思うんやろね……かな~~~り、謎やわ此れ。」


にゃはは……確かにね。
因みに、この紅って言うキャラクターの声はシグナム自身が演じた――なんて言う事はなくて『清○香里』さんて言う声優さんが演じてるんだけど、まさか、此処
まで完璧にシグナムボイスを演じきるとは……流石、プロは侮れないの。


さてと、もう少しやる?やるなら相手になるよ――私の連勝記録が伸びるだけだけどね?


「言ってくれるじゃない……アンタの連勝記録は此処で終わりにさせて貰うわ!!」

「やれるモノならやってみろなのアリサちゃん!オンラインランキングで勝率100%のぶっちぎりトップを誇る私に勝つのは、並大抵の事じゃないから――





――キィィィィン………





!!……此れは、魔力反応!!皆も感じたよね!?


「確認不要でしょ!こんなデカい魔力反応に気付かない筈がないわ!!」

「此れは結界かな?……何れにしても、無視は出来なさそうだよ。」

「しかも術式は……近代ベルカとミッドのハイブリッドだと?……並大抵の相手じゃなさそうだぜ、なのは?」

「聞くまでも無いと思うけど、ドナイするんや姉やん?」


決まってるよ、取り敢えず此の魔力反応が何なのかを調べる――そして、何か危険なモノだったら、相応の対応をする。
行き成りの事だけど、フェイトちゃんとアリシアちゃんも其れで良いよね?


「「勿論!!!」」


シグナム達も気付いただろうし、行くよ!!!








――――――








――なのは達がゲームに興じていたのと同時刻



Side:シグナム


今日も今日とて、翠屋は大盛況だな。――尤も、今日は何時のも日曜日と比べれば、割かし余裕のある方ではあるがな。
其れでも忙しい事に変わりはないが、この忙しさは嫌いではないな……翠屋が繁盛している証だし、平和な忙しさならば寧ろ好ましいとすら思うからな。


「それじゃあ、全部で4800円になるわね、クイントちゃん?」

「この歳で『ちゃん』は止めて下さいよ、桃ちゃん先輩。」

「あら?そっちだってそう呼ぶじゃない?」

「先輩の場合は、何て言うか渾名みたいな物ですから。」


で、如何やら桃子殿の知り合いが来店をしていたらしい――桃ちゃん先輩か、此れはまた何とも可愛らしいニックネームではあるかな。


「けど、驚きましたよ――まさか桃ちゃん先輩の娘さんが『夜天の主』だったなんて。」

「「「「「!!!!」」」」」


な!!コイツ、如何して其れを知っている!?

主なのはが夜天の主だと言う事は、管理局員でなければ知る者は極僅かだと言うのに――コイツは一体……


「なんで、其れを知ってるのかしらクイントちゃん?」

「実は、私の旦那が管理局に務めてまして、この間の公聴会に出てたらしくて『高町なのはって嬢ちゃんは大したモンだ……あの子こそ真の夜天の主だぜ』
 ってな事を言ってまして、高町なんて名字は早々あるモノじゃないので、先輩の娘さんじゃないかと思ったんですけど、どうやら大当たりみたいですね?
 あ、因みに私の旦那は『ゲンヤ・ナカジマ』って言います。」


ゲンヤ・ナカジマ……確か、主なのはの演説に、真っ先に拍手を送って啖呵を切った御仁だったな?……成程、彼の妻と言うならば知っていて当然か。



世間は狭いと言うが、正にそうかも知れないな。
よもや好漢を絵に描いた様な彼の妻が、桃子殿の後輩であったとは、流石に予想も出来なかったよ。

だが、其れならば彼女は警戒すべき相手ではないだろうな……何よりも、彼女からは何かを企んでいるような気配は感じられないからな?――純粋に、この
店を楽しみ、その序の世間話だったのだろう。警戒のし過ぎは、かえって無礼だな。


「そうだったの?其れは流石に驚いたわ~~!!
 でも、なのはが言うには、ゲンヤさんの後押しがあったから巧く行ったって言ってたから、此方こそ感謝よクイントちゃん?」

「いえ、其れも全てはなのはさんの意思と覚悟が起こした事ですから。
 大体にして、桃ちゃん先輩って、自分が『こうだ』って決めた事には絶対に妥協しないじゃないですか?――なのはさんの意思の強さに、其れを感じました!
 誰が何をわなくとも、彼女はきっと立派な夜天の主になると思いますよ桃ちゃん先輩?」


主を褒められると言うのは、矢張り嬉しいモノだ――守護騎士の冥利に尽きる。
若しかしたら、我等の幾星霜の年月は、主なのはと出会う為の物だったのかもしれないな……そう考えると、より主なのはが愛しく感じてしまうかな?


1000年以上を持ってして、漸く巡り会えた真の夜天の主………我が身は、何時如何なる場合でも貴女と共に――





――ヒィィィィン!!!





――
と、此れは魔力反応だと!?

こんな街中で一体誰が……いや、其れを考えるのは後回しだ!!
此れだけの魔力反応ならば、主なのはとて気付いた筈だ――と言う事は、もう出動していると見て良いだろう………桃子どの!!


「はい、行ってらっしゃい……くれぐれも気を付けてね?」

「Jawohl.(了解です!!)」

そうだ、姉さん達は此処に残っていてくれ、翠屋のスタッフが居なくなったら店が回らなくなるし、この程度ならば、私一人で充分なのでな。



「そう言うと思ったよシグナム……此方は私達に任せて、精々大暴れしてこい。――我が主の事を、頼んだぞ?」


言われるまでも無いさ。
恐らくは、主なのはも気付いていらっしゃるだろうから、出撃して居る筈だ――ならば、ヴォルケンリッターの筆頭騎士が遅れる事は出来んな。

――そう言う訳で、暫し店を空けさせて頂いても構いませんか桃子殿?


「是非もないでしょ?……寧ろ、思いきりやってきなさいシグナム。
 彼方達が感じた力がどれ程かは分からないけど、筆頭騎士様が直々に出向くなんて言うのは相当な事なのでしょう?……なのは達の事、お願いね?」

「其れこそ是非もない。
 我が剣は、如何なる時でも主の進む道を切り開くために有る――我が剣に一片の曇りは無い!!」

故に、私は迷わない!!!
例え茨の道であろうとも、主なのはがその道を突き進むと言うならば、私は騎士として、せめて茨の蔓を斬り捨てて道を切り開く心算で居るからな……この覚
悟は、何があろうとも絶対に揺るがん!!――それが、ヴォルケンリッターの筆頭騎士にして烈火の将たる私の務めだからな!!


「あら、言うわねシグナム?――で、そんな騎士とかの理屈は抜きにすると……」

「私は主なのはを愛していますので、主の行くところには何処までも付いて行きます!!――って、何を言わせますか桃子殿ーーーーーー!!」

「うん、やっぱりなのはとシグナムはラブラブね♪――だけど、真なる愛は歳の差も性別も超越するものよ?
 貴女が、なのはの事を心から愛しているなら、何があろうと大丈夫よ。――なのはの母親として言うわ……重ねて、あの子の事、お願いね?」

「桃ちゃん先輩が言うと、凄く説得力がありますね。」


確かにな。
だが、桃子殿から直々に頼まれたのだ………其れに応えない訳には行かないな?

「言われるまでも無い事ですよ、桃子殿……主なのはのパートナーとして、私は私の務めを果たします!――私達に、敗北だけは有り得ませんからね?
 ヴォルケンリッターが烈火の将、シグナム………推して参る!!」

「はい、行ってらっしゃい!」


行ってきます。




さてと……この結界を造りだしたのは、一体何処のどいつなのだ?
平穏な日常を送るこの街に、厄災の火種を放り込むと言うのならば容赦はせん―――その時は、レヴァンティンの錆にしてやるから覚悟を決めておくんだな!








――――――








Side:なのは


結界に向かう途中でシグナムと、そしてアミタさんと合流して、其のまま結界の中に突入したんだけど、此れはまた何とも不気味な結界だね?
普通、封鎖結界って言ったら、結界内部が明るめのセピアカラーで統一されるんだけど、この結界の内部は一面灰色のモノクロの世界って言う、物凄く不気味
な空間……まるで某S○S団の団長が発生させる『閉鎖空間』みたいな感じだよ……

だけど、この結界内には、私達の他に誰かが居るようには思えないんだけど……如何かな、シグナム?


「……巧妙に気配を隠していますが、我等以外にも誰かいます。
 可成りの水準で気配を隠しているので、主なのは達が分からないのも仕方ありませんが、私に言わせれば気配を消していても殺気は消しきれて居ない状態
 ですので、隠れるだけ無駄な事――出てこい、下賤な賊が!!飛竜一閃ーーーー!!!


――ドゴォォォォォォォォォォン!!!


「………此れは此れは…私の僅かな殺気に気付いておられたとは、流石は闇の書の守護騎士を束ねる将たる御方だ……実に見事!!」


言うが早いか、シグナムが一閃した炎熱砲で空間を焼き、其処から一人の人物が現れた……何とも、胡散臭さマックスの白衣の人がね。


「だが、この結界は始まりに過ぎない……私の壮大なるパーティのね!
 君達には当然参加して貰う事になるが、其れに先だって、先ずは招待状をプレゼントするとしよう――精々、楽しんでくれたまえ!!!」


――ヴィン!!


消えた?……ううん、転移したんだ!
其れだけど、結界は維持したまま……中々に魔導の運用に長けてるのかもしれないけど――招待状って言うのは此れの事かな?


「十中八九、間違いないでしょうね……」

「もっと、真面な招待状が良かったかな……」


その直後に現れたのは、仮面で顔を覆った20人近い魔導師達――先ずは此れを倒せって事なんだろうね?






だけど、その程度は私達には余裕だよ?
この仮面魔導師がどれだけの力を有してるかは知らないけど、其れでも私達が負けるなんて言う事は絶対に無い!あり得ない!!


彼方達が誰で、何が目的かは知らないけど、平和に暮らす海鳴の街に襲撃をかけてきた事は到底許せる事じゃないから――覚悟は出来てるよね、当然?


――轟!!


私が魔力を解放すれば、シグナムも調停者としての力を解放してやる気は充分だね?


其れじゃあ行こうか?――私達に牙を剥いた事を、後悔させてやるの!!!


「無論です、主なのは!!」

「何処の誰かは知らんけど、私等を襲撃したのを、心の底から悔いると良いわ、此のダボがぁ!!!!」


平和を乱す者に、情けも容赦も必要ない!!――夜天の主の務めとして、そして海鳴の一市民として、彼方達には此処から強制的に退場をお願いするよ!



私の持てる全ての力を持ってしての全力全壊でね!!!















 To Be Continued…