Side:なのは


車椅子を卒業して5ヶ月、その後もリハビリを頑張って続けた結果、取り敢えず杖なしで人並みに運動する事も出来るようになりました♪
流石に激しい運動はまだ無理だけど、普通に走ったり跳んだりする分には全く問題ないって、石田先生のお墨付きを貰ったから、今年は初めて参加できそ
うだよ、秋の体育祭に♪まぁ、出場できる種目は限られるけど、今までは見てるだけだった事を考えれば、参加できるだけでも嬉しい事なの♪

で、今日の学級会では、夫々の参加種目を決める事になってる。――因みに、進行役はアリサちゃんとはやてちゃんね。


「ほな、残るは学年別リレーのアンカーだけやな?誰か立候補する人はおらへんか?」

「立候補がなければ推薦でも良いけど、誰かいない?」


大体の参加種目は決まったけど、学年別リレーのアンカーが決まってないんだよねまだ。
まぁ、学年別リレーは得点に大きく作用する種目だから、そのアンカー何て大役を進んでやりたいなんて人は早々居ないとは思うよ?幾ら花形とは言えね。

因みに、全員参加の綱引きや玉入れなんか以外で私が出場するのは『借り物競争』と『女子騎馬戦』――まぁ、私が出場するには妥当な競技だね。


はい!俺は、なのはを推薦します!!!」

「へ?」

なんて事を考えてたら、学年別リレーのアンカーに私が推薦されてる!?

ちょ、ちょっと待って!私は歩けるようになったばかりだから、幾ら何でもそんなの無理だよ!?


「かも知れないけど、アンカー前まではこのクラスのスプリンターが揃ってるんだぜ?
 アンカーにバトンが回るまでに2位との差が20m以上あれば、なのはがアンカーでも逃げきる事が出来る筈だ!
 このクラスの最強のアイドルが、最大に盛り上がる競技に参加しないなんて事はありえねえ!!お前こそアンカーに相応しんだよ、高町なのは!!!」


何を自信満々に言ってるの!?色々オカシイよ!!!

……まぁ、そんな風に言われたら断る事なんて出来ないけど……だけど、ビリになっちゃっても文句は言わないでね?其れが条件だよ。


「「「「「「「「「「「「絶対言わない!!」」」」」」」」」」」」


はぁ……トンでもない大役を務める事になっちゃったなぁ……まぁ、私に出来る範囲で頑張りますか!!













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天85
『爆裂!天下無敵の体育祭!』












そんなこんなで体育祭当日。
海聖は結構大きな学校で、一学年5クラスが基本だから、体育祭での組み分けも5チームになる訳で、今年の私達は『青組』になるみたいだね。

人生初の体育祭だから、何とも気合が入ってきちゃうね――お母さん達が見に来てくれてるから余計にそうなのかもしれないけど、何れにしても狙うは、優
勝只一つだよ――全力全壊で頑張ろうね、皆?


「勿論だぜなのは!優勝以外に狙うもんはねぇ……全力でやってやろうじゃねぇか!」

「姉やんが競技にも参加できるとなれば、此れはもう優勝は頂きや♪ま、結果は兎も角として、思い切り楽しむのが一番やで姉やん♪」

「だけど、楽しんだ上で勝てれば、其れが最高だから――絶対に勝つわよ!!」


そうだね……楽しんで勝てれば、其れは最高だね!
それじゃあ、思い切り楽しんで、そして優勝をもぎ取っちゃおう♪―――いくよ~~~、青組優勝!!


「「「「「「「「「「「「「ファイ、オーーーーーーーーーーー!!!」」」」」」」」」」」」」


なはは……流石の結束力だねこのクラスは。
人生初参加になる体育祭、思い切り楽しむのは勿論だけど、やっぱり勝ちたいから……出来る範囲で、全力全壊で臨むのが一番!!――頑張ります!!








――――――








No Side



さて、こうして始まった体育祭。
開会式の選手宣誓は、毎年5年生が行う事になっており、今年はなのは達のクラスから、アリサとヴィータが選ばれ、溢れ出る元気に満ち満ちた選手宣誓
は、来賓や児童の家族達、そしてもちろん全校生徒から大きな拍手が沸き起こって、体育祭の開会を盛り上げてくれた。


因みに、海聖は結構大きな学校であり、1学年平均5クラスである。
その為、5チームに分かれて競うという、小学校では最大規模とも言える体育祭なのだ。因みになのは達5-3は『青組』である。


では、なのは達の活躍を、種目別に見て行くとしよう。




・5年生200m走


此れに参加するのは、5-3からはすずかとフェイトを筆頭にした、クラスのスプリンター達。
主に陸上クラブに所属する子達で、足の速さには自信のある子達だ。――尤も、すずかもフェイトも余裕で、その子達をぶっちぎる事が出来るのだが。

とは言え、そう言う足自慢のスプリンターが出て来るのは何処のクラスも同じなのもまた然り。

現在第3走者まで終わって、5-3は最高順位が2位と言う状態だ。尤も、此れまでの3人が全員3位以内に入っているのは凄い事ではあるのだが。

だが、ここらでそろそろスカッと1位を取りたい所だろう。


そんな所で、第4走者として現れたのがフェイト。此れは、期待出来るかも知れない。
因みに本日のフェイトの髪型は、何時ものツインテールではなく、運動の邪魔にならない様に後ろで1本に束ねている。(Forceの髪型のイメージ)

其れが新たな魅力を引き出し、男子共のハートを撃ち抜いているのだが、其れは知らぬが何とやらだろう――まぁ、其れは如何でも良い事であり、今は競
技に注目するべき時である。


「位置に付いて!よ~~~い……」


――パァン!!


出発の合図と共に、一斉にスタート!


が、フェイトの速さは次元が異なっていた。
まるでスタート直後からトップスピードに乗ったかの様な、圧倒的な加速力と、伸びのある滑らかな走りは他の走者とは一線を画している。
雷光の少女は、魔法が無くとも速さを極めているらしく、2位以下に6m以上の大差を付けての余裕の1位であった。



そして次の走者はすずかだ。


――パァン!!!


すずかもまた、フェイト程ではないがスタート直後にトップに躍り出る。




が、すずかは此処からが凄かった。
目に見えて、グングンと後続を引き剥がしていくのだ。フェイトの様な圧倒的な速さで一気に差を付けるのではなく、少しずつだが確実に引き離していく……
気が付けば、2位以下とは5m以上の差が開き、これまた余裕で1位を奪取!


第4走者と、第5走者の連続トップで、青組は一気に順位を1位に上げる事になった。











・5年生借り物競争


なのはが出場するこの競技は、足の速さよりも、寧ろ如何に早くお題の借りものを入手するかがカギとなる。
なのは以外ではアリサとヴィータが出場しているのだが……


「借り物は『黒板消し』って、ふざけんじゃねぇ!!教室まで取りに行けってのかよコンチクショウがーーーーー!!!!」


如何やらこの借り物競争、トンでもない『借り物』が紛れ込んでいるらしい。
そしてヴィータが引いたのは、そのトンでもない物であり、教室まで取りに行くとなればタイムラグは絶大!!!

ちょいと反則してカートリッジで能力を底上げして最速で行って来たヴィータだったが、頑張りも虚しく結果は4位……無茶振りを相手に健闘したと言えよう。



そして、続く走者はアリサ。

大体2番目くらいで借り物の札を手にしたのだが、其処に掛かれていた借りものは………




『ピンク』




適当にも程があるだろう。
固有名詞でない上に、やろうと思えばどんな物でも持ってこれると言う、簡単だけど難しい借り物なのは火を見るより明らかだ。


「ピンク……なら迷う事は無いわ!」


だがしかし、アリサは迷う事なく観客席に向かい、


「キリエ、一緒に来て!!」

「私?」

「キリエ以外には居ないのよ、この借り物は!!」


速攻でキリエを呼び出す――成程、確かに『ピンク』の条件は満たしているだろう。
ピンクと聞いて、速攻でキリエを思い浮かべる辺りが何ともアレだが、そのお蔭でアリサは見事1位でゴールイン!

因みにキリエは、自分が借りものになった事に付いては一応納得していた。ピンクな自覚はあったらしい。



そしてアリサの次の走者はなのは。
流石に、足は速くないので、借り物札を手にしたのは一番最後だったが、なのはの引いた借り物札は、アリサ以上に無茶振り全開だった――普通ならば。

だが、この借り物はなのはにとっては無茶振りではない――何故か?




『熱血』




其れがなのはの借り物だったからだ。

此れを見たなのはは、迷わずに


「アミタさん、一緒に来てください!!」

「はい!任せて下さい!!!」


客席に行って、アミタを借りる。熱血ならば、これ以上は無い『借り物』だろう。

だが、如何に最速で借り物をゲットしたとは言え、より簡単な借り物をゲットした生徒に先を越されるのは道理であり、このままでは1位は取れないが――


熱血ーーーー!!!

「ほえ?アミタさん!?」


アミタがなのはを抱きかかえると、凄まじいスピードでゴールまで突撃!寧ろ特攻!!
幾ら足の速い小学生でも、高校生の足には勝てる筈もなく、借り物であるアミタの奮闘で、見事1位に!!若干反則かもだが、まぁ此れもアリだろう。






・5年生女子騎馬戦



これまたなのはが出場する種目で、当然ながらなのはは騎馬に騎乗する騎士の役目だ。
そしてなのはの騎馬を務めるのははやて、アリサ、すずかの3名。――此れはもう間違いなく最強の騎馬兵だろう。


其れは間違いではなく、なのはのチームは凄まじい勢いで、相手の鉢巻をもぎ取って行く。
なのはが的確に状況を見極め、はやて達が其れに応え、圧倒的な強さで持って相手の騎馬を撃滅していく――夜天の主の力は此処でも発揮された様だ。


加えて、ヴィータが騎兵を務める騎馬が、なのはに次ぐ大活躍を見せ、女子騎馬戦は5-3の圧倒的勝利で幕を下ろしたのだった。



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そんなこんなで、体育祭もいよいよ大詰め。
なのは達の所属する5-3が凄まじい活躍を見せてくれたが、他の学年はそうでもなかった事も有って、青組は現在3位と言う状況。

優勝するには、1位の得点が倍になるこのリレーで勝つしかない。


全6人の走者で構成されるこのリレーは、各クラスが最も力を入れていると言っても良い目玉種目だ。

5-3も、アンカーのなのは以外にはフェイトとすずかを筆頭とするスプリンターが揃っている――此れは逆転は充分に可能な布陣だろう。



――パァン!



そして始まったリレー。
5-3は好調なスタートを切り、第1走者から1位に躍り出る。


その勢いは其のままに、第2走者も疾走し、1位を維持したまま第3走者にバトンタッチ!!!

第3走者も、其のまま飛び出すが――此処でアクシデントが起きた。


――ドシャァァァ!


バトンを受け継いだ直後に、第3走者が転倒し、その隙に後続にドンドン追い抜かれ、青組は一点最下位に陥ってしまったのだ。

だが、転倒した選手は其処で諦めずに、懸命に走って第4走者であるすずかにバトンタッチ!


「お願いね、フェイトちゃん?」

「任せて!!!」


そして、そのバトンを受けたすずかは、圧倒的な運動能力を全開にして、前を行く走者を抜く、抜く!文字通りのごぼう抜きだ。

このすずかの活躍で、青組は一気に順位を2位に上げた状態で、第5走者のフェイトにバトンタッチ!


「この勝負、負けられない!!」


すずからバトンを託されたフェイトは、己の持てる力を全開にして、1位の走者を猛烈な勢いで追走し、追い抜き、そして引き離していく。


そして――


「なのは!」

「うん、任せてフェイトちゃん!」



アンカーであるなのはにバトンタッチ!
この時、2位との差は10mと、想定の半分しかなかったが、バトンを受け取ったなのはは、懸命に走る。今の自分に出来る、最大の力で走り切る。


その間に、2位のクラスが差を詰めて来るが、其れを振り切るようになのはは走る。



そして――



――パァン!!




最後はタッチの差でなのはがゴールテープを切るに至った。


これで、青組には1位の得点+ボーナス特典が入り、逆転優勝が確定したのだった。








――――――








Side:なのは


最後のリレーを頑張ったおかげで、如何やら逆転優勝は確定したみたいだね……頑張った甲斐があったよ。


で、残るは閉会式前のフォークダンス。


全校生徒が参加しての舞踏だけど、此のフォークダンスは二曲目こそが真髄なんだよね。


一曲目は、無難に終わらせたけど……二曲目は――


『続いて二曲目!今度は、来賓や観客、どなたでも参加可能!
 児童の皆さんは、踊りたい相手を是非選んでください!!体育祭の最後は盛り上がっていきましょう!』



踊る相手を自分で選ぶ事が出来る。

皆思い思いにダンスパートナーを選んでる……まぁ、多くは友達だったり家族だったりなんだけど、私のパートナーは1人しか居ないよ。




「Wurden Sie tanzen Signum?(踊って貰えるかな、シグナム?)」

「Naturlich Meister Nanoha.(勿論です、主なのは。)」


手を差し伸べれば、シグナムは跪いてその手を取ってくれた。


だけどシグナム、誘っておいて何だけど、私はダンスの経験なんて無いから、無粋なダンスでも容赦してね?


「それは、私もですよ。
 ヴォルケンリッターの筆頭騎士とは言え、私は戦う事しか出来なかった故に、こう言う事は経験が有りません――互いにダンスは経験不足でしょう?
 ですが……真似事であっても、貴女とこうして踊る事が出来ると言うのは嬉しい事ですよ、主なのは――今はこの舞踏を楽しむとしましょう。」


互いに経験不足の無粋なダンスとはね……だけど、此れは世界一素敵なダンスだよ?
だって、目を閉じれば、其処は私とシグナムだけのダンスパーティになるんだから。――ダンスの経験がないなんて事は気にもならないよ。


ワルツのリズムに乗ってダンスの真似事……ふふ、楽しいねシグナム?


「えぇ……とても。」


なら良かったよ。

なら、もっと楽しもう?Kommandant des aufgebrachten Feuers, das mehr tanzt?(もっと一緒に踊ってくれるかな、烈火の将様?)


「Natürlich ist es die Prinzessin des nachtlichen Himmels.(勿論ですよ、夜天の姫君。)」


再び手を取って、私達は踊る。




パートナーを変える事なく、二曲目を躍りきった私とシグナムは、盛大な拍手を受ける事になったんだけど、此れもまた良い思い出だね。





人生初の体育祭――心の底から楽しませて貰ったよ♪





因みに、私とシグナムのダンスが、週明けの学校新聞の一面を飾った事は、ある意味で当然の事!――だったのかなぁ?まぁ、良いけどね。












 To Be Continued…