Side:なのは(夜天)
スターライト・アンリミテッド・ブレイカーを喰らって、更にディアーチェちゃんの最大の一撃を喰らったU-Dは、恐らくもう大丈夫だろうね。
多分、あの光の中で、ディアーチェちゃんとU-Dが語っているのは容易に想像が付くよ?……そして、ディアーチェちゃんがU-Dに新たな名を贈るのもね。
統夜君(コラボ編参照)が来た事で、U-D=ユーリだとは思ってるから、恐らくあの子の名前もまた『ユーリ・エーベルヴァイン』になるのは間違いないよ。
「だけど、其れは其れとして、見過ごせない事も有るんだけどね……」
――ガキィィィィィン!!
「……御無事ですか、主なのは?」
にゃはは……シグナムのおかげで無事だよ。
流石に、背後からの奇襲には対処しきれなかったって事なんだろうけど、其れもまたシグナムが居たおかげで攻撃を受けずに済んだからね。
だけど、私を襲った相手が貴方だとはね……大体の予想はしていたけれど、其れが現実となると、流石に私でも驚きは隠せないよ?
――夜天の魔導書を、闇の書と呼ばせるに至った、後付けの防衛プログラム……リヒティ・ガルード!!
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天81
『The Gears Of Destiny…』
スターライト・アンリミテッド・ブレイカーで吹き飛ばした筈なのに……如何して、貴方が此処に居るの?
若しかして、あの一撃じゃ貴方を消すには足りなかった!?……だとしたら、トンでもないチート能力なんだけど、其れを貴方からは感じる事が出来ない。
でも、だからと言って捨て置いて良いかと問われれば其れは絶対に否!此れを野放しにしたら――
「そう警戒しないでくれるかな?
U-Dには多大な迷惑をかけてしまったが、もう僕が誰かを乗っ取る事は無いよ……君達に、完膚なきまでに叩きのめされたからね…見事な完敗だ。」
って……話す事が出来たのリヒティ!?
此れは流石に予想外すぎるの……まさか、リヒティが人語を理解して話してくるとは思わなかったからね…
それで、背後から奇襲を掛けてまで何の用なのリヒティ?
私としては、貴方の顔はあまり見たくない――リインフォースをずっと苦しめて来た相手に対して、情けをかける何て言う事は出来そうにないんだけど?
「其れで良いさ……僕は滅ぶべき存在だからね。奇襲を掛けたのは……こうでもしないと、気付いて貰えないと思ったからさ。
僕が、此処に現れたのは、単純に君達に礼を言っておきたかったんだ……君達のお蔭で、僕もまた解放されるみたいだからね。」
え?……其れって如何言う事?
「何処かの馬鹿が、夜天の力を独り占めしようとして開発したのが僕だ……結局実験は失敗に終わってしまたけれどね。
だが、失敗にも拘らず僕の機能は暴走し、その力を持ってして、管制人格を押さえつけていた――いずれ来る終わりの時を待つかのようにね。
信じて貰えないかもしれないけれど、僕は好き好んで、寄生した相手を苦しめて居た訳じゃないんだ――其れしか、僕には出来る事がなかったんだ。」
それは、何とも辛いことじゃないかな?
つまり、リインフォースが暴走したのは、貴方の意思で行われた事じゃないと言う事なんだよね?
「此れまでの暴走は、持ち主の心の持ちようが暴走を引き起こした……言い訳かも知れないけどね。
そして、今回は――ヴォクシーとか言う馬鹿が居なかったら、書は正しい覚醒をなし、僕も自然消滅する予定だったんだけど、アイツはやり過ぎた。
何も考えずに闇の書を暴走させ……後は知ってるだろう?」
その結果、聖夜の一大決戦が行われる事になった――思った以上に、背景には大きな事情って言う物がありそうな感じがバリバリだよ。
だけど、貴女は特別リインフォースを苦しめる心算はなかった……だけど、其れしか知らなかったんだから、其れはもう仕方ないよ……生きる為だもん。
だから、貴女の意思を聞いた今、貴女を糾弾するなんて事はしない――あの異常な書から切り離されたんなら、もう貴女の好きなように……
「好きなようにか……考えた事もなかったな。
だが、其れも良いかもしれない、叶わぬ事だがね――しかし、僅かな時間だけでも話が出来て良かったよ……思いの外、会話と言うのも楽しかった。」
――シュゥゥゥゥゥゥ……
リヒティ、身体が……もう、其処が限界だったんだね――うん、お疲れ様でした!!
貴女のした事は許される事じゃないかもしれないけど、貴女だって好き好んで破壊を行ってた訳じゃない……せめて、あの世では安らかに眠っててね。
――シュゥゥゥン……
「主なのは……宜しかったので?」
「敵対の意思は感じなかったからね………其れに、彼女は『死に場所』を求めて居たから、彼是詮索をするよりも、夜天の空に散る方が良いでしょう?」
「確かに。」
「其れよりも、リヒティが『僕っ子』だった事に驚いたわ!」
にゃはは、確かに――其れよりも今は、ディアーチェちゃんとU-D……ユーリの安否の確認が最優先だよ!
この途轍もなく強烈な魔力の渦を突破しない事には―――
――パリィィィィン!!
って、行き成り空間が砕けた?――あ、ディアーチェちゃん!其れにU-D!!
良かった、無事だったんだ!!ディアーチェちゃんにお姫様抱っこされてるU-Dの幸せそうなこと……U-Dは、ユーリは助け出されたんだね……お見事!
「うむ、雁首揃えての出迎えご苦労であった!
これこの通り、今は気絶しているが、こやつの中にあった危険物やら何やらは完全にその機能を停止しているらしい……作戦が巧く嵌った証拠よ。
まぁ、夜天の小鴉の二番煎じのような方法であったのが些か不満と言えば不満であるが、全てが巧く行ったが故に、其れは不問にしておこう。」
相変わらず偉そうだなぁディアーチェちゃんは……まぁ、そっちの方がらしいとは思うけどね。
「我は王だからな、常に王としての立ち振る舞いを忘れぬだけの事よ。
時に、コイツの事だが、此れからはコイツの事をU-D等と無粋な名で呼ぶなよ?心して聞け、コイツの真なる名は――」
「ユーリ・エーベルヴァインだよね?」
「!!!貴様、何故その名を知っている!?」
さて、何でだろうね♪
でも、その名前はディアーチェちゃんが付けてあげたモノなんでしょ?ユーリ・エーベルヴァイン……私は、とっても良い名前だと思うよ?
「むぅ……微妙に違うのだが、まぁ説明もめんどくさいのでそう言う事にしてこう。だが、何故その名を知っていたのかはキッチリ白状して貰うからな!!」
――時に、何処か休める場所はないか?こやつも眠っておるし、流石の我も少々疲れた故、身体を休める場所が欲しのだが?」
其れならグランツ研究所に行こうか?
あそこは広いし、所員の人達が利用するカフェテラスは一般開放もされてるからゆっくり休む事が出来ると思うよ?
「ならば其処で良い……マッタク、蘇ったモノの次元移動してまでの大事件に係わる事になるとは思っても居なかったわ。」
かも知れないけど、こうして無事に終わらせる事が出来たんだし『終わり良ければ全て善し』だよ。
リヒティも、己の意思で完全に消える事が出来たみたいだし――きっと、此れで全てが丸く収まったって言う事なんじゃないかなぁ?
――私は、そう思ってるよ。
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そして、グランツ研究所に戻った後は色々あった。
何時の間にやらはやてちゃんがお母さんに連絡入れてて、全員分のシュークリーム用意して貰ってたり、未来から来た子達が思いっきりへばってたり、
トーマがやたらと夜天のはやてちゃんに怯えてたり、ヴィヴィオちゃんが私ともう一人の私にやたらと懐いて来たり、兎に角色々あった。
因みに、もう一人の私達はグランツ博士が座標計算をしてくれたおかげで、無事に元の世界に戻れるみたいです……うん、安定の頭脳チートなの。
だけど、もう一人の私達の記憶は、もう一人のアミタさん達の手で改変が施されるみたいだね?
なんでも『未来の事を知るのは良くない』って事だったかな?私達は、直接影響はないから記憶の改変は行われないみたいだけどね。
そうそう、それから消えちゃったシュテルとレヴィもちゃんと戻って来る事が出来たんだ。
何でもユーリが元に戻ったから、自分達も復活する事が出来たとかなんとか――ともあれ、無事に戻って来る事が出来たなら良かったの。
因みに、ディアーチェちゃん達はアミタさん達と一緒にエルトリアに行くみたい。口では好き勝手言ってたけど、エルトリアの復興を手伝いたいんだろうね。
そして――今日は、別れの時。
「お世話になりました皆さん!!」
「気にしないでください、当然の事をしたまでですから♪」
「烈火の将は、つまりは守護騎士の筆頭であると言う事を忘れるな――主の事を、何があっても護り通せ。
例え無様でも、泥に塗れ、生き汚いと後ろ指を指されても生きて主を護り抜け!其れが、真の守護騎士の務めだ。」
「……肝に銘じておこう。」
皆がそれぞれ別れの挨拶をしてる。
シグナムは、もう一人のシグナムに『真の守護騎士とは何であるか』を伝えてるみたい――ふふ、流石は夜天の筆頭騎士様、言う事が違うよ。
もう一人のシグナムにも其れは伝わったみたいだし、夜天のはやてちゃんの守護騎士の結束は、今よりも強くなるかも知れないね。
さてと――
「あっという間だったけど、此れでお別れだねもう一人の私?」
「うん……ちょっと、寂しい気もするけどね……」
其れはそうかも知れないけど、私と貴女達は同じ世界では生きられない。
貴女も私も『高町なのは』ではあるけれど、其れは似て非なる存在だから、貴女は貴女の世界で生きて、そして未来を歩まなくちゃいけない……でしょ?
「其れは分かってるんだけど……アミタさん達の記憶改変で、私はもう一人の私の事も忘れちゃう……そんなのは嫌……忘れたくないよぉ……!!」
其れは仕方ない事だよ、今回の事はあり得ない事だったんだから。
私達は兎も角、貴女達は今回の事を詳細に覚えていた事が問題となりかねないから、記憶の改変はある意味で仕方のない事なんだよ。
「分かってる…分かってるけど、私は――――!!」
――ギュ……
「ふぇ?」
大丈夫だよ……例え表層意識で忘れてしまったとしても、深層意識では今回の事は覚えているから、私達の事は根底からは消える事がないんだよ。
貴女がこの事件の事を忘れない限り、私達の事も貴女の中から消える事は無い――だから、最低限の事を忘れなければ良いんだよ。
此の別れは、きっと今生の別れになるだろうけど、だからと言って紡がれた絆がなかった事になるかって言われたら、其れは絶対に否だよ。
ユーリを助けるために集った皆が紡いだ絆は次元を超えても切れる事はないって言う事が出来るからね。
私には私の道が、貴女には貴女の道がある――其れを、一歩ずつ確実に踏みしめて行こうよ?その先には、きっと良い未来が待って居る筈だから。
「うん……頑張ってみるよ、もう一人の私。」
「アカン……夜天のなのはちゃんは、ホンマに聖母様や!!――此れはホンマに惚れてまうで、冗談抜きで!!」
「なのは……カッコ良すぎる……我が人生に、一片の悔いなし――!!」
「フェイトちゃーん!?逝ったらアカン!戻ってきてぇぇ!!」
で、もう突っ込むのが徒労であろうカオス空間が発生!
って言うか、あっちのフェイトちゃんはとっとともう一人の私に告白したらどうなのかな?多分両思いだと思うよ――あくまでも私の予想だけどね。
だけど、何て言うか向こうのフェイトちゃんは『残念なイケメン女子』のオーラがバリバリだね……と、取り敢えず頑張って!!
「うん!」
その意気やよし!貴女なら、きっと一流の魔導師になれるよ。
……さてと、そろそろ本当にお別れの時――
「お〜〜い、ちょっと待ってもらえないかな?」
と思ったら、グランツ博士?何かあったんですか?
「いや〜〜、ギリギリで間に合ったよ。
元の世界に戻る前に、向こうのリインフォース君に此れを渡しておこうかと思ってね。」
「――此れは、このワクチンプログラムは!!」
「僕が独自に開発をした物だけれど、性能の方は折り紙付きだから、好きなように使ってくれて構わない。
少なくとも、此れをインストールすれば、君の身体の不具合は治るし、崩壊も止まる筈だからね……貰ってくれると嬉しいなぁ?」
「……ならば、有り難く拝領します。」
リインフォース用のワクチンプログラム!
其れを渡すのが目的だったんだ……此れで、もう一人のリインフォースも消える事は無くなった――其れを考えると、世界が交わったのは良かったよ。
グランツ博士が開発したワクチンを使えば、もう一人のリインフォースだって消える事はなくなるからね。
夜天のはやてちゃんの道も、此処からがきっとスタートラインだと思うから、頑張ってね?
「勿論やで、夜天のなのはちゃん!
私は、夜天の主に恥じない人になって見せる――うぅん、必ずなる!!
せやから、夜天のなのはちゃんも夜天の主に恥じない人になってな?――此れは次元を超えた約束やで?」
うん、分かってる!
私は私なりの『夜天の主』としての道を踏みしめて行く心算だから、夜天のはやてちゃんも、挫けずに未来を見て、前に進み続けてね?
「言われなくともや!!
せやけど、夜天のなのはちゃん――貴女と出会えてよかったで?……僅かな時間の中で、学ぶ事が多かったからなぁ……正に僥倖や。
夜天のなのはちゃんこそ、道を踏み誤らずに前に進んでや?――其れが私の願いや!」
うん、迷わずに前に進んで行くよ!!その覚悟はとっくにできているからね。
――ギュゥゥゥゥン……!
そして、如何やらタイムリミットみたいだね――時空の穴が口を広げているから。
「此れが本当のお別れかも知れないけど、私達は彼方地の事を絶対に忘れないから……其れだけは忘れないでね!!」
「うん……了解したで夜天のなのはちゃん!!ほな、また何時か機会が有ればな!!!」
――ギュゥゥゥゥン……シュゥゥン!!
消えちゃった……きっと、夫々が元の世界に戻ったんだろうね。――そっちの世界でも頑張ってね、夜天のはやてちゃんともう一人の私!
「此れにて、全て決着ですね、主なのは?」
「そうだね……皆のおかげで万事が巧く行ったの♪」
「……勿体なきお言葉――我等は我等の成すべき事をしたに過ぎません。
ですが――その結果として、一般市民が護られたのは良き事であったと思います。――きっと、別次元の私も、そう思って居ると思いますがね。
……我等の主は、貴女ただ一人なのです『高町なのは』――其れを、忘れないで居て下さい。」
分かってるよシグナム、私は私の責務を果たすだけなの。
夜天の主『高町なのは』は、絶対に退かない、折れない、屈さない!!其れが私の『夜天の主』としての覚悟だよシグナム。
「その覚悟、確かに受け取りました主なのは。
我等『守護騎士ヴォルケンリッター』は、その覚悟の下に貴女に改めて忠誠を誓いますよ主なのは――矢張り、貴女は最高の主だ。」
最高の主………そう成れるように頑張るよ。
だけど、其れは其れとして、平行世界まで巻き込んだ一件は、此れにて一見落着だね♪
皆、お疲れ様でしたなの♪
To Be Continued… 
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