Side:シグナム(夜天)


「ようこそ、私の世界へ。」


封鎖結界が破られる土壇場で、此れの発動に踏み切るとは、随分と思い切った決断をしたモノですね主なのは?
統夜(コラボ参照)から、疑似固有結界は『世界を浸食して別の世界に書き換える魔法』との事で、滅多に使わないように言われていたと思うのですが?


「確かに言われたけど、だけど今がその『滅多な事』じゃないかな?
 2人のシャマルの封鎖結界すら破壊しかねないU-Dの暴走……ううん、リヒトの浸食を抑え込めるのは、この疑似固有結界しかないからね。」

「言われてみれば……確かにその通りですね。
 しかし、リヒティガルードの歪みが、時空を超えてU-Dに寄生するとは……此れもまた、闇の書の呪いの残滓であるのかもしれませんね……」



――ミシ……ミシ……メリィィィィィィィ!!



「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


「U-D!!」


「姿が……変わった……!!」


ちぃ……リヒティガルードめ、ダメージを受けたのを幸いとばかりにU-Dを乗っ取ったか!!
赤く輝く目に、アッシュブロンドの髪、鈍色の肌に……何よりも、腰より下が異形の怪物に――まるで神話に出て来る『ベヒーモス』その物になって居る…

此れは…この醜悪な姿は『闇の書の闇』そのものだ!……リイン姉さんとナハト姉さんのみならず、今度はU-Dまで苦しめる気かリヒティガルード!!

そんな事は認められん……もう一度、そして今度こそ完全に砕いてくれる!!
何よりも、此処は主なのはの『絶対空間』――戦場が此処で有る限り、私と主なのはには万に一つも負けは無い!精々祈りの言葉でも考えておけ!!













魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天80
『悪しき光の終焉の時』












Side:はやて(GOD)


2人のシャマルの封鎖結界が砕かれる寸前で、夜天のなのはちゃんが呪文を詠唱して構築した新たな結界……何やねん『疑似固有結界』って?
なんや『世界を浸食して別の世界に書き換える魔法』って事みたいやけど、其れってドンだけやねん!!

しかもU-Dが、何か滅茶苦茶不気味に変化しとるし、もう何が何やらや!!

てかな、この結界は一体何!?
夜天の空は兎も角として、その下のこの丘に刺さっとる数えるのも面倒になる位の刀剣類は何!?刀に、西洋剣に、大剣に……ドンだけあんねん!!


「さぁ?其れは私にも分からないかな。
 だけど、此処に有る刀剣類は模造品とは言え、全てが歴史や神話、世界各地の伝承に登場する名の有る刀剣類だって事だけは言っておくよ。
 例えば、この刀は『長曾根虎徹』――かの新撰組局長・近藤勇が使っていた刀として有名だよね?
 更にこっちは『エクスカリバー』……こっちは、アーサー王の伝説として知られてる聖剣――他にも『妖刀・村正』や『草薙の剣』なんかも存在してるよ。」


刀剣マニアは垂涎の品揃えやな?……まさか、神話や伝承の中でのみ語られとる刀剣類まであるとは驚きやで!?
てか、それらの刀剣に囲まれて佇む夜天のなのはちゃんの迫力と言うか、威厳てのはハンパ無いわ……これは、正しく『支配者』の佇まいやないか!!


「そうかな?……まぁ、夜天の主としての自覚は持ってるけどね。
 けど、今は其れは良いとして、この『夜天の剣製』は、只伝説的な刀剣を無数に再現した強固な結界ってだけじゃない。
 この結界の内部では、夜天の主とその仲間の能力は倍化し、魔導の行使によって消費する魔力は通常時の半分になる――威力はそのままでね!」


はぁ!?なんやねん、その弩チート上等な追加効果は!!
能力倍化で、消費魔力半分て、それって単純計算で4倍強化に匹敵するんやないの!?……幾ら何でも、やり過ぎやで夜天のなのはちゃん!!


「そう?……だけど、この結界の恩赦は、夜天のはやてちゃんと、もう一人の私達にも適応されるって事を忘れちゃダメだよ?
 如何に平行世界の存在であっても、夜天のはやてちゃんは『夜天の主』で、もう一人の私達が『夜天の主の友』である事に変わりはないんだから。
 更に言うと、私と夜天のはやてちゃんが揃ってる事で、効果は互いに乗算されて……単純計算で16倍強化だよ。」


強化し過ぎや弩アホ!
何やねん、その某戦闘民族的なインフレバリバリな強化は!いや、この状況下に於いて強化するんはかめへんけどね!?
其れにしたって、16倍強化って相当やろ……カートリッジでの底上げが涙目やで?


「この状態でカートリッジ使えば更なる強化が望めるけどね……だけど、其れだけの相手なんだよ、リヒティに浸食されたU-Dは。
 多分あの状態で極大砲撃を放てば、その一撃で海鳴市は地図上からなくなりかねない――チートクラスの強化を施してでも倒さなきゃダメなの!!」

「アレは其処までか……せやけど、U-Dも助けなあかんと来とるからなぁ?
 これは、中々のハードミッションやけど、其れでこそやりがいがあるで!!……ほな、第2ラウンドといこか!!」

「そうだね――お市さん、元気の出るやつを一発お願いします!」

「はい!戦乱を生きる力を、渾身!


――ギュゴォォォォォォォォォォォォォォ!!!


!!こ、此れは……力が湧き上って来る!!此れは一体何やの?


「肉体強化術『渾身』で、皆さんの攻撃能力を上昇させたわ。特に、近接戦闘を得意とする方には効果はより大きい筈よ。」


更なる強化……此れは行けるかも知れへん!!!


「グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


――ドガァァァァァァァァァア!!!


と思った矢先に、暴走U-Dの一撃やと!?
あ、アカン……あんなん喰らったら、一撃KOやで!?防御魔法で防いだところで、ダメージを幾分軽減する事しか出来へんやろうし……やってもうた!


「そんな攻撃を通すと思ってるのかな?――甘いよ!!」


――バキィィィン!!!


って、うっそやぁぁぁぁぁぁ!!
夜天のなのはちゃんが、地面に刺さった刀を引き抜いて一閃しただけで、一撃必殺クラスの極大砲撃が霧散するとか、普通にあり得へんやろ!!


「そうでもないよ?今使ったのは『妖刀・村正』だからね。刀身に妖力を宿した刀なら、砲撃を斬る事だって不可能じゃないんだよ。
 まぁ、其れが出来たのも、お兄ちゃんとお姉ちゃん、其れにシグナムから剣術の手解きを受けてたからだけどね――とは言え、マダマダだね。
 私の真骨頂は、やっぱり砲撃って事なんだろうなぁ……そうでしょ、レイジングハート?」

『その通りです。Masterの砲撃は強く、そして美しいのですから。
 その必殺の砲撃で、しぶといリヒティを撃滅して差し上げましょう……Buster Cannon mode Drive ignition.』



クロスレンジのトレーニングもしとるって、夜天のなのはちゃんはホンマに底なしか!?
こっちのなのはちゃんかて努力家やけど『弱点を補う暇があるなら長所を伸ばせ』を地で行ってるさかい、クロスレンジはからっきしやからなぁ……?

まぁ、其れでも今は砲撃の方がメインみたいやけど、取り敢えず変形したレイジングハートは、其れはもう杖やあらへんやろ!
誰が如何見ても、長距離射程用のランチャーキャノンやないか!!しかも、何故か全然違和感を感じないと言う不思議やし!……ドナイなっとんねん!


「極大砲撃を放つには、杖の形状よりもこっちの形状の方が安定感が出るからね。――さて、行こうか夜天のはやてちゃん?」

「何やアレやけど、まぁそう言う事で納得しとくわ。」

ほな、改めて第2ラウンドを――いんや、ファイナルラウンドを始めようやないの!!








――――――








Side:なのは(夜天)


リヒティガルード……夜天の魔導書を闇の書へと変貌させ、リインフォースとナハトヴァールを永き時に渡って苦しめて来た存在が、今度はU-Dにとはね。
U-Dの身体を乗っ取り、まるで『闇の書の闇』を思わせる異形の怪物に変貌したみたいだけど、この結界の中で私達に勝つ事は絶対に不可能だよ?

此処は私の世界だからね――世界の支配者に敵対する者の力は減衰するんだよ?
更に、この世界の刀剣類は誰でも自由に使う事が出来る上に、模造品とは言え限りなく本物に近い力を有してるから、武器も無限にあると言って良い。


これ等の事を踏まえれば、多少の苦戦はしても絶対に負ける事だけは有り得ない!!
先陣突破、アリサちゃん、ヴィータちゃん、思い切りぶちかまして!!


「そう来ると思ってたわよ!!
 一度ぶっ倒された癖に、蘇ってんじゃないわよリヒティ!!もう、良いでしょ……ヒートドライブ!!

『終わりにするぜ!』


「好き勝手やってんじゃねぇ、この野郎!!テメェなんぞは、大人しく地獄で眠っていやがれぇぇ!!
 轟天爆砕……ギガントシュラーーーーーーーーク!!!!

『Explosion.』



――ドガバァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!



うん、効果は抜群!
夜天のはやてちゃんも、指示を出して、向こうのヴィータちゃんともう一人の私が、鉄槌と砲撃で結構なダメージを叩き込んでくれたからね。

けど、此れで終われば苦労は無い!

攻撃の手は休めないで!!シグナム、ナハトヴァール!!


「言われずとも、分かっています主なのは!覇ぁぁぁぁぁぁぁぁ……飛竜一閃!!

「不浄の光と共に闇に散れ!!おぉぉぉぉ……レーゲンストリーム!!



――ゴアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァッァァァアァァァァァァァァァ!!!!



「ウゴアァァァアッァァァァァァァアァァ!!!!!」


く……シグナムとナハトヴァールのコンビネーションを喰らっても略無傷とか恐ろしい事この上ないけど、力は無限じゃない、何れはエネルギーが尽きる。
だからその瞬間を叩くのが一番な筈だよ!――可也根気のいる戦いになりそうではあるけれどね。


とは言っても、戦況はこっちの方が絶対的に有利なのは間違いない感じなの。
個々の能力が底上げされてるのも有るけど、リヒティに浸食されたU-Dは、その体躯の大きさから『当て放題』の的であるとも言える状態だからね。

だけど、ドレだけ強い力を持っていたところで、その動きが愚鈍なら脅威たり得ないもん。
そんな、分かり易い軌道の攻撃を喰らってあげるほど、私達はお人好しじゃないんだよ?


「「貫け、雷神!!」」

『『Jet Zamber.』』


僅かな隙を突いて、2人のフェイトちゃんの最強奥義が炸裂!!――其れでも尚、U-Dを完全停止するには至らなかったけど、大ダメージは確実!!


恐らくはもう一押しで、完全停止をする事が出来る筈だから、このまま一気に―――


「コワスコワスコワスコワスコワスコワス……スベテキエサッテシマエーーーーー!!」


――ゴォォォォオオッォォォォォッォォォォッォォォォォォォォォ!!!


押し切ろうと思ったとたんに、砲撃――全軍回避!!此れを喰らったら、一撃で戦闘不能は免れないから――誇張抜きでトンでもないよ此れは……!


「ぐぐぐ……消えろ……スターライト……ブレイカー!!」


しかもブレイカーまで!?
幾ら強化状態の私達だって、アレを喰らったら流石に大ダメージは確実かも知れないけど――


「そうはさせるか!!リリィ、もう一発『ゼロ』をブチかます!!」

うん、分かったわトーマ。


未来からの渡航者のトーマとリリィが連携して事に当たってくれてる――あの破壊力抜群の『ゼロ』なら、暴走U-Dにも対処できるかもだからね。


「早々やらせるかよ!!破壊の力も未来の為に、俺は使う!!ディバイトゼロ・エクリプス!!


威力タイミング共に申し分はない……実に見事だった――って、そう言う評価をするだろうなシグナムは。
それ以前に、暴走U-Dの砲撃を一撃の下に無効化した事に驚きだけどね……エクリプスドライバー『魔導殺し』ならではの力なんだろうねきっと。



――ドゴォォォォォッォォォォォォォォォォォ!!



其れは兎も角として、此の集束砲の破壊力はトーマの『対魔導師』の力を宿しただけあって、相当に強いみたいだね?――今もまだ余波が残ってるし。

だけど、此れでU-Dが浄化されたとは考え辛いけど――



「うごあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



やっぱり健在だったね!!
魔力の結合を解く力を持ったトーマの一撃を喰らって健在だって言うのは、正直恐ろしい物があるけど――だけど、其れは諦める理由にはならないの!


「ふ……その通りですよ、主なのは――30秒も稼げば充分ですか?」


シグナム………うん、30秒あれば充分過ぎるよ!!――悪いけど、其の30秒間を、貴女に任せるよ!!!


「御意に……てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


幾ら強化U-Dとは言っても、調停者としての力を取り戻し、そして日々ストイックに鍛えて来たシグナムの魔導を簡単に打ち払えるとは思わないわ。
シグナムは、私の直属の剣士様で、私の一番大事な人だからね……其処、ブチかまして!!!


「覇ぁぁぁぁぁぁぁぁ……飛竜一閃!!


――ドオゴォォォォォォォォォン!!!


「あがぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!?」


効果は抜群だね……おかげで、準備は整った!!此れがトドメだよU-D!!



――ギュイィィィィン!!



「な!!周囲の刀剣類が……消えて行く?」


うん、消えてるんだよ……最強の一撃を放つためのエネルギーと化したからね!



――ギュゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオォォォォォォォォォォォォォ……!!



「え……あ……う、嘘だよね?」

「何やねん、この『桜色の元気玉』は……トンでもない魔力が結集しとるやないか――!!普通なら考えられないレベルやで!!!」


普通なら、確かにあり得ないかもしれないけど、だけど現実に、此れが私の手加減抜きの全力全壊!!リヒティの悪しき光は、今度こそ此処で断つ!!



だからもう、此れで終わりだよリヒティ!!!
U-Dに寄生して、あわよくばその身体を乗っ取ろうとしたんだろうけど、相手が悪すぎたね――あの聖夜に、貴方の運命はとっくに終わって居たんだよ!


今度こそ眠ってリヒティ、貴方の居場所は、世界の何処にもありはしないから!!

「此れが私の限界突破の全力全壊!!」

『Starlight Unlimited Breaker.』


スターライト・アンリミテッド………ブレイカーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!



――キュゴォォォォォォォォ……ドガバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!



私の魔力の全てと、疑似固有結界内の刀剣類全てを集束した、一撃必殺すら超越した集束砲の極地……もしも此れでダメなら万事休すだよ……


だけど、確かに手応えはあった――決定的なダメージは入れられたはず――



「う……ぐ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁl!!!!」


U-D!!……此れは、効果があったかな?


はい。如何やら無限連環機構は停止したようですし、リヒティも完全に沈黙しました。


と言う事は、此れが最大の好機って事だね?――ディアーチェちゃん!!!


「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「もう泣くな!!貴様の絶望など、我の闇で喰らい尽くしてくれる!!
 集え、星と雷、我が闇の下に!!……此れが我の砕け得ぬ闇――絶望を喰らい尽くせ、ジャガーノート!!!!!


一切の手加減なしで放たれたディアーチェちゃんの一撃は強烈無比そのモノ!!
エクザミアが停止したU-Dには、間違いなくトドメの一撃になった筈なんだけど――攻撃で巻き起こった閃光で、何がどうなったかは分からないみたい。



でも、分からなくても分かるよ――ディアーチェちゃんの渾身の一撃は、U-Dを永久の闇から救い出す『救済の闇の一撃』だったって言う事はね――











 To Be Continued…