Side:なのは(夜天)
グランツ研究所で、U-Dのいる場所を特定して、其れで其処まで来て、その周囲半径1kmをシャマルの封鎖結界で隔離して決戦の準備は万端整ったね。
こっちのシャマルと、向こうのシャマルの重ね掛けの結界なら強度は半端じゃないから、多少――ううん、可成り荒っぽくやっても大丈夫だと思うし。
「まぁ、シャマルの結界重ね掛けやったら、簡単に壊れる事は無いと思うんやけど……アレは一筋縄でいく相手とちゃうやろ夜天のなのはちゃんや……」
「うん、一筋縄でいく相手じゃないよ夜天のはやてちゃん。
だからこそ、此れだけの戦力を集結させて、シャマルの結界を重ね掛けしたんだよ――U-Dを如何にかするためにもね。」
何にしても、此れが最終決戦になると思うの――皆、準備は良い!?
「愚問ですね主なのは……貴女と共に在る時点で、我等守護騎士の覚悟は決まっています。
貴女が戦場を駆けると言うならば、我等は其れに従うのみ……戦の為の準備など既に出来ています――所謂『常在戦場』と言うやつです。」
「準備万端に決まってんでしょ?派手にブチかましてやろうじゃないの!!」
「そして、その上でU-Dを救う……ううん、救わないとだよ。」
「まぁ、手加減不要の全力全壊や!!私等の全てを持ってして、U-Dを救ったろやないの!!」
如何やら聞くまでもなかったみたいだね?
向こうの私達と未来からの渡航者の皆も準備は万端整って、やる気も闘気も充実してるみたいだし、此れなら負ける事は絶対にない!あり得ない!!!
さぁ、最終決戦の幕開けだよ――思い切り行こうか!
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天79
『Die Macht der Dunkelheit ist tief』
「……君達は……?」
「気分は如何かなU-D?……貴女の事を助けに来たよ。」
「助けに?……何故無駄な事をするんだ?
私を止める事など出来はしない……私は、触れるモノ全てを破壊するだけの存在――其処に在るだけで、破壊を撒き散らす呪われた存在に過ぎない。
其れを助けるとは……愚かすぎる。」
そうかな?
仮にそうだとしても、貴女を助けられない理由にはならないよ?――闇の書の夜天の魔導書に戻す事が出来た私達から言わせればね。
破壊不能とまで言われた封印指定の一級ロストロギア『闇の書』であっても、皆の力を集結する事で正常な『夜天の魔導書』に戻す事が出来たんだよ?
その前例を持ってすれば、貴女一人を救う事くらいは訳ない事……2つの世界の魔導師と騎士達が集っているなら尚の事ね。
「其れでも……多分無理…だ……私は……もう――!!
…………稼働率98%……無限連環機構、正常に作動……敵性存在を……排除する!!!」
雰囲気が変わった!!
如何やら、稼働率が100%に近くなったせいで、理性が失われたみたいだね?――先ずは、この状態を食い止める!!リインフォース!!
「了解です、我が主……ユニゾン・イン!!」
――キュゴォォォォォォォォォォォ!!
『融合完了。プログラムカートリッジ『ネーベルベルファー』ロード。ドライブイグニッション。』
ふぅ……夜天の祝福今此処に!!
夜天のはやてちゃんもユニゾンしたみたいだし、カートリッジ持ちは全員がロード完了したみたいだし――何よりも……
「覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
――バチィ!!
「烈火の将にして夜天の調停者……押して参る!!」
シグナムが調停者モードになったからね?――ユニゾンした私と調停者モードのシグナムが揃った以上、多少の苦戦はしたとしても勝利は絶対なの!!
さぁ、始めようかU-D……貴女を救う為のFight which transcends the limitを!!
「消えろ……ジャベリン!」
「ディバインバスター!!」
必ず貴女を救うよU-D……ううん、『ユーリ・エーベルヴァイン』!!
――――――
No Side
なのは(夜天)のバスターとU-Dのジャベリンの激突がゴングとなって始まった最終決戦。
バスターを相殺するU-Dの力は計り知れないが、単騎であるならば攻撃の隙を突くのは、其れほど難しい事ではない。
如何にU-Dが規格外の強さであろうとも、単体であるならば数の利を持って攻めたてる事は難しい事ではないのだ。
「貰ったわ!!」
「隙だらけだぜぇ!!」
「ぶっ飛びやがれ!!」
「「「ラケーテンハンマー!!」」」
『『『Raketenhammer.』』』
その先陣を切ったのは、アリサと2人の鉄槌の騎士の『斬り込み隊長』トリオ。
兎に角、攻撃力に特化したこの3人の同時攻撃、それも『一撃必殺』を目的とした乾坤一擲の一撃を同時に叩き込まれたら、普通は即戦闘不能であろう。
だが其処はU-D。強固なシールドでガードし、この必殺を防ぎきってみせた。
「やっぱ防ぐか……だが、あめぇ!!アリサ!!」
「任せなさい!!……真っ黒に、焦げちゃいな!」
『黒だよ……真っ黒!!』
それでも、防がれる事は予想済みだったのだろう。
一瞬で、アリサがU-Dとの間合いを詰めて自身の最強技とも言える『クリムゾンスターロード』を叩き込み、紅蓮の炎がU-Dを包み込む。
此れには堪らずU-Dもその場を離脱するが……
「「縛れ、鋼の軛!!」」
「!!!」
離脱した先には、ザフィーラ(夜天)が展開した空から降る魔力の杭と、ザフィーラ(GOD)が展開した地面から伸びる楔の同時拘束攻撃が!
碧衣と蒼衣の守護獣の同時攻撃に捕らわれたら、如何にU-Dとて簡単に脱出する事は出来ないだろう。
「く……セイバー!!」
その危険性を察知し、U-Dは拍翼を巨大な刃に変形させて拘束攻撃を全て斬り捨てる――此れを斬り捨てるとは、矢張り相当な力なのは間違いない。
だが、斬り払った直後にU-Dは身体に衝撃を感じた……
「疾風迅雷!」
「雷光一閃!」
其れは、2人のフェイトによる雷速の斬撃!
U-Dが鋼の軛を斬り払ったその瞬間に、雷速で接近して目にも留まらぬ――否『目にも映らない』斬撃で、U-Dを攻撃したのだ。
「「ロックオン!!」」
――バキィィィィィン!!
「!!!此れは!!」
更にその隙を逃さず、2人のキリエがU-Dをバインドで拘束!
まぁ、U-Dのパワーを持ってすれば力任せに外す事は出来るだろうが、二重掛けされたバインドを砕くのは少々時間が必要だろう。
そして、その僅かな時間が鎮圧組にとっては最大の好機でもあるのだ。
「「今よアミタ!!」」
「「任せて下さい!!」」
2人のキリエの呼び掛けに、これまた2人のアミタが応える。この辺の姉妹の連携は見事であると言えるだろう。
「無限の運命、私達が今此処で終わらせます!!」
「ジ・エンド・オブ・デスティニー!!この一撃で、全てを貫いて!!!」
その連携を飾ったのは、2人のアミタによる超高速斬撃からの無数の魔力弾の絨毯爆撃!!正に圧倒的な攻撃だろうが、此れで落ちるU-Dではない。
「う……うあぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
文字通り、全てを破壊せんとばかりに魔力弾を撒き散らしての無差別破壊を敢行!
もしも此れが結界の外で放たれたら、海鳴は間違いなく焦土と化して居ただろうが――
「舞え、陣風!」
『Schlangebeissen.』
「刃以って血に染めよ…穿て、ブラッディダガ―!!」
それらは全てシグナム(GOD)とナハトヴァールが迎撃し、無差別破壊攻撃を防いで見せた。
此れには驚くほかないだろうが、此れで終わりではない。
「皆を護る!貴方も助ける!!てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……咲き乱れよ、連昇!!」
「諦めちゃダメ!絶対に道は残されてるんだから!!!ディバイィィィィン………バスター!!!!」
「無限の苦しみに捕らわれる道理もないだろう?……ならば、大人しく此処で安らぎを得るが良い――烈火一閃!!」
「今は、眠って!!サンダーレイジ!!」
市の連昇、なのは(GOD)の直射砲、シグナム(夜天)の鋭さ抜群の居合とアリシアの雷撃炸裂しがU-Dに絶対的なダメージを与えて行く。
此れでも落ちはしない頑丈さは凄まじいとしか言いようがないのだが……
「無駄だ…全ては無駄なんだ……私の進む先には破壊しかない。」
「そんな事は無い!」
全てを拒絶したかのようなU-Dのセリフに反応したのはトーマ。
「俺も、前に一度全てをぶっ壊したいって衝動に駆られて暴走した事が有ったんだけど、未来を見据える事でその考えは変わったんんだ!!
だから、君が此処で破壊を齎すだけの存在として終わるのは認められないんだぁぁぁぁ!!!」
『エクリプスゼロ承認。』
自身も嘗ては、破壊衝動に駆られるがままに動いた経験があればこそ、トーマの一言には重みがあるのだろう。
「諦めなければ未来が見える!」
『王様と皆が、必ず貴女を助けるから!』
「今は……コイツで全部、ゼロにする!!」
――バガアァァァァァ!!!
平行世界の未来に於いては、生命活動の分断すら可能にする一撃がU-Dに炸裂!エクリプスドライバーの特性も相まって効果はあったようだ。
「行きますよ、ヴィヴィオさん!」
「はい!アインハルトさん!」
その追撃を担うのはアインハルトとヴィヴィオ――現代に蘇った覇王と聖王。
「目を逸らさないで……きっと、未来は開けるから!!」
「悪しき楔を、断ち切る力を――!!」
既にこの2人には臨界を超えた魔力が集中している。
放たれるその一撃は、古代ベルカの戦乱期を駆け抜けた若き覇王と、慈愛の聖王の『救済の一撃』と言っても過言ではないかもしれない。
「覇ぁぁぁ!一閃必中……セイクリッドブレイザー!!!」
「覇王!断!空!!拳!!!」
――ドゴォォォォォォォォォォォォォン!!!
そしてその破壊力は強烈無比!!
直撃を喰らったU-Dだが、何とか体勢を立て直す――
「どえりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「く………」
事は出来なかった。
これ幸いとばかりに、はやて(夜天)がアロンダイトを用いて強襲し、U-Dを防戦状態に貼り付けて目にも留まらない剣撃のラッシュ、ラッシュ、猛ラッシュ!
身の丈近い大剣で、これ程のラッシュが出来るのかと言うのは甚だ疑問だが、このラッシュでU-Dを釘付けにしているのだからその威力は凄いだろう。
「此処が好機!……アイスバインド!!」
「「ストラグルバインド!!」」
そして、その攻撃の隙を突いて、今度はすずかと2人のクロノがバインドを三重掛けしてU-Dの動きを完全シャットダウン!!
超一流の魔導師のバインドの三重掛けでは、動こうとして動けるモノでもない。
寧ろもがけばもがくほど拘束は強くなって行くのだから。
こうなってはU-Dとて、最早貼り付けの蝶でしかない。
「行くよU-D!此れが私の全力全壊!!」
『Starlight Breaker.』
「私となのはちゃんからの、夜天の祝福を受け取ってやヤミちゃん!!」
そしてその蝶を破壊し、そしてあるべき姿に再生するのは2人の夜天の主――既に、夫々のデバイスには凄まじいまでの魔力が集まっているのだ。
「響け終焉の笛!ラグナロク……」
「奏でよ終末の鐘!スターライト……」
「「ブレイカーーーーーーーーーーーー!!」」
――キィィィィィィン……ドガバゴォォォォォォォォォォン!!
放たれた一撃は、惑う事なくU-Dを飲み込み、そして爆発的な魔力が弾けた……
――――――
Side:なのは(GOD)
す、すごい爆発!!此れなら幾ら何でも……
「ダメだね、終わりじゃない。」
「へ?終わりじゃないって、如何言う事なのもう一人の私!?
貴女とはやてちゃんの一撃で、U-Dは戦闘不能になったんじゃないの!?」
「違う……まだ、エクザミアが停止してない!それどころか、ドンドン魔力が大きくなってる!!――此れは、如何やら嫌な予感が現実になったかもね…」
そんな!!……そんな事って―――!!
――バガァァァァァァン!!!
「うぐ……うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!!」
あり……えた……嘘でしょ?
もう一人の私とはやてちゃんの合体攻撃――其れだけじゃなく、アレだけの攻撃を受けたのにまだ止まらないだなんてドレだけ!?しかも、この姿は―
「リヒティガルードに寄生されてる……多分、次元移動の際に数多に分岐した歴史から拾ったんだろうけど、其れがこうなるなんて思わなかったの……」
拍翼はより禍禍しく巨大になり、肌は鈍色で瞳は翡翠色、身体には紋様が浮き出て、髪はアッシュブロンド……相当に変わったね此れは…!!
しかも、力も相当に――!!
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁっぁ!!!」
――ピシ!!
強化されてる!
幾らシャマルさんが2人掛かりで張った結界だって言っても、此れに耐える事は出来ないかもしれない!だけど、此れを外に出したら―――!!
「シャマル、あと30秒だけ頑張って!!」
「なのはちゃん………分かりました!あと30秒ですね!!」
ふえぇ!?な、何をするのもう一人の私は!?
「滅多に使うなって言われたけど……此処は使うしかないみたいだよ聖天の王……」
――轟!!
「Das Herz wird mit Stahl getan.(心は鋼で出来ている。)」
此れは…詠唱!?
「Bezuglich des Gedankens ist die Absicht Eisen mit dem Glas.(思いは硝子で、意思は鉄。)
Es ist indomitability uber viele Schlachtfelder.(幾多の戦場を超えて不撓。)
Ohne einen Misserfolg gibt es nicht nur eine Versohnung auch.(ただ一度の挫折もなく、一度の諦めもない。)
Deshalb hort die Person es nicht auf.(だからこそ、その者は止まらない。)
Ich bete nur um die Zukunft mit einem Freund im Himmel des nachtlichen
Himmels.(ただ夜天の空で仲間と共に未来を願う。)
Deshalb hat das Leben den Misserfolg nicht……(故に、その人生で諦める事はなく……)
――Der Korper wurde sicher von unnachgiebigen Herzen gemacht!(――身体はきっと、不屈の心で出来ていた!)」
な、なに?詠唱が紡がれるたびに景色が変わって行く!?
「疑似固有結界『Night heaven’s blade works(夜天の剣製)』。」
――ギュゴォォォォォォォォォォォォォォ!!
此れは……完全に景色が変わった!?
月が照らし出す夜天の空、そして無数の剣が突き刺さった大地……
「ようこそ、私の世界へ。」
そして、その無数の剣に囲まれる様に『剣の玉座』に降り立つのは、もう一人の私。
だけど、その姿は私の異次元同位体なんかじゃない。
黒衣を纏い、無数の剣に囲まれて佇むその姿は、正に『夜天の主』――何人たりとも、その歩みを止める事は出来ない『絶対支配者』が其処に居た…!
To Be Continued… 
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