Side:なのは(夜天)


さてと、全員が研究所に揃った訳だけど……グランツ博士、U-Dの事で何か分かった事はありますか?


「そうだねぇ……取り敢えずU-Dには『スーパーアーマー』とでも言うべき機能が備わっていると言う感じかな?
 此方の攻撃でダメージを与える事は出来るけど、攻撃を喰らっても怯む事が無い――早い話が、ドレだけ攻撃しても平然と向かってくるんだよ彼女は。
 しかも、其れだけはなく耐久力もすさまじく高い……U-Dを倒すためには、なのは君がカートリッジを使用したディバインバスター3発喰らわせないとだね。」

「その頑丈さ、普通に詰んどるやん!!!
 カートリッジをロードした姉やんのバスター3発ってドンだけやねん!!堅いにも程があるやろ!!」

「そうなんだよねぇ〜〜〜……しかも、ダメージを受けた端から回復する事も出来るようだから、此処は超波状攻撃で機能を停止するしかないだろうね。」



其れはまた、何とも厄介な相手ですね?
一筋縄でいく相手だとは思って居ませんでしたが、まさか其処までだとは思いませんでした―――だけど、『其れが如何かしましたか?』

U-Dが、元より驚異的であるのは分かっていた事です……なら、その力が明確になった所で慌てる事なんて有りませんよ。予想してたんですから。
其れに、カートリッジ使用の私のバスター3発で倒せるなら問題ありませんよ?この戦力であるなら、それ以上の波状攻撃を仕掛ける事は簡単な事ですし。

「何よりも私の辞書に『不可能』の文字は無いんです。
 はやてちゃんにすずかちゃんにアリサちゃん、更にヴォルケンリッターの皆が一緒なら、どんな事だって出来る!私はそう信じているの!!」

「言うじゃないなのは?……だけど、アタシ達が力を出せるのは、リーダーであるアンタが居るからよ。」

「指揮官たる主が居ればこそ、我等は力を発揮できる。
 貴女は、我等にとってなくてはならない存在なのです――そして、貴女が信じ、信頼してくれるのならば我等は其れに応えましょう!!!」


うん、ありがとうアリサちゃん、シグナム。
ともあれ、U-Dとの最終決戦は絶対に勝たなきゃならないから、気合入れて行くよ?この戦いに勝って、そしてU-Dを…ユーリを救わないとだからね。













魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天78
『Vorbereitungen des Krieges』












とは言え、戦いに於けるアドバンテージは出来るだけ欲しい所なんだけど……その辺は如何にかなりませんかグランツ博士?
このメンバーなら万が一にも負ける事は無いと思うんですけど、戦闘面で優位に立っておきたいって言うのも本音なんです――相手が相手だけに余計に。


「その辺は抜かりないよ?――こう言っては何だけど、シュテル君の特攻のお蔭で、ワクチンプログラムのデータを得られたからね。
 今は研究所のスタッフとプレシア女史が力を合わせて『対U-D』用のプログラムカートリッジを作り出してる――あと一時間もすれば出来上がる筈さ。」


……うん、色々突っ込みたい所があるけど、其れは突っ込んだら負けな気がするの。
って言うか、幾らデータが有ってプレシアさんが協力してるとは言え、一時間でカートリッジを使える人達全員のカートリッジを作るなんて凄過ぎですよ!?


「まぁ、プレシアんさんやし……」

「グランツ研究所だし……」

「頭脳チートの巣窟ですからね此処は……」


でも、此れで納得する自分がちょっと複雑な気分なの……確かに説得力は抜群だけどね。


………其れは其れとして、果たしてU-Dをどうやって倒して救おう?
幾らカートリッジがあるとは言え、U-Dの攻撃は喰らったその瞬間にお陀仏になりかねないからね……そっちの私達は、何か良い考えはないかな?


「U-Dに攻撃の隙を与えない程の波状攻撃って言うのは良いんだけど、其れが有効打になるとは思えないの。
 それ以前に、ドレだけ攻撃しても一撃で状況を変えるだけの力がU-Dにはある訳だから、波状攻撃を超える『飽和攻撃』で圧倒しないと多分無理だよ。」

「せやけど其れだけでもまだ足りへん……今のU-Dは暴走状態やから、其れを止めて正常な状態に戻さなあかん。
 幾ら飽和攻撃で、一時的に機能を停止させたところで暴走状態が治ってない限りは、再起動したらまた暴れまくるんは目に見えとるからなぁ……」


だよねぇ?例えば、私や夜天のはやてちゃんみたいに『夜天の魔導書の管理者権限』みたいな物があればU-Dの機能の上書も出来るんだけど――


「――ならば、我ならば奴の暴走を止められると言う事だな?」

「王様?」

「ディアーチェちゃん?如何言う事かな?」

「我は、闇総べる王であると同時に、この『紫天の魔導書』の管理者でもある。
 そして、U-Dと我等マテリアルは元々一つの存在だったのだ――なれば、マテリアルの王としての権限を使えばU-Dの正常化を行えるかもしれんぞ?」


成程ね。
リインフォースの時みたいに、飽和攻撃で一時的に暴走を止めたところで機能の上書をして、そして正常な状態に戻す――確かに一番ベターな方法だよ。

そうなると現場での役割を決めないとね?
取り敢えず私と夜天のはやてちゃんは、ユニゾンした状態で砲撃と広域攻撃の固定砲台で、ザフィーラがU-Dの攻撃を捌くチームの守護神は確定。
シグナムと、フェイトちゃんとこっちのはやてちゃんはクロスレンジメインで、アミタさんとキリエさん、アリサちゃんとヴィータちゃんはクロス〜ミドルレンジで。
シャマルとすずかちゃんはサポートメインで、クロノ君とお市さんは状況に合わせて、サポートと攻撃の両方をお願いするね?


「流石ねなのは、こうも簡単にチームの役割をテキパキ決めちゃうなんて、誇張抜きでアンタってば生まれながらに『リーダー』の素質があるわよねぇ?
 って言うか、夜天の主になってからは更にその傾向が強いって言うか……ぶっちゃけアンタ『カリスマSS』状態になってるんじゃないの?」

「其れは如何かと思うの……私は単純に『夜天の主』としての自覚を持ってるだけだよ?」

「其れが凄いってのよ!見なさい向こうのなのは達を!アンタの余りの『リーダー』っぷりに『ポカーン』としちゃってるじゃないの!!
 って言うか、アンタ来年度児童会長に立候補してみたら?応援演説はやってあげるからさ。多分獲得票9割で当選できると思うわよ、冗談抜きで。」


にゃはは……其れは止めておくの。
え〜〜〜と、それで、そっちの私は何でそんなに私の事を見てるのかな?


「だってだって……カッコ良すぎるんだもん!!異次元同位体とはとても思えないの!!
 はやてちゃんに聞いた話だと、私よりも少ない魔力消費で、私よりも強力な砲撃を撃ってたって事だし……何て言うか自信無くしちゃいそうなの……」


あ〜〜…成程、そう言う事なの。
ん〜〜〜、消費魔力が少ないのは此れのおかげかな?前に平行世界の渡航者が来た時に、その人に貰ったペンダントのお蔭だよ。(コラボ編参照)
この剣十字のネックレス『蒼天の誓い』は魔術礼装って言うモノで、簡単に言うと『消費魔力1/2』の効果を持った一級品のアイテムなんだ。
此れのお蔭で、私は消費魔力半分で通常威力の魔力の使えるって訳。此れがなかったら、威力に比例して相応の魔力を消費してる筈だよ絶対に。


「だとしても、基本的な強さが違う気がするの。」

「其れはほら……私の場合は、魔法にしろクロスレンジ戦闘にしろ先生が色々凄すぎるからね?
 真正ベルカの騎士様に、一般人最強状態のお兄ちゃんとお姉ちゃん――此れが先生で、強くならないって、そんなのは絶対に嘘なの。分かるでしょ?」

「確かに、こっちの世界でもお兄ちゃんとお姉ちゃんは、ちょっとばかり人間辞めかけてるの……でも、私だって負けないから!!」


にゃはは、流石は私、負けず嫌いだね?
だけどその意思が有れば、きっとまだまだ強くなれるはずだよ?だから、此れからも頑張ってね『もう一人の私』。


「うん!頑張るの!!」


じゃあこの話は此処までで。
其れよりも、この編成で大丈夫かな?私的には、この編成が一番ベターだと思うんですけど、如何でしょうか戦国の姫武将のお市さんから見て?


「問題ありませんね。寧ろこれ以上ない位に役割分担がされた良い陣形かと思います。
 ともすれば、此れはゆーでぃに反撃の機会を与えない程の飽和攻撃も可能でしょう。実に見事な陣形です――此れならば間違いなく行けます。」


ふふ、戦国の姫武将に太鼓判を押されると自信持っちゃうね。
カートリッジの完成までの間に、U-Dのサーチも行われてるだろうから、今は決戦に向けて身体を休めるのが上策なの。相手が相手だからね。



「スイマセン、その決戦、俺達も参加させてもらえませんか?」

「ただ巻き込まれて、其れを見てるなんて絶対に嫌だから……私達も協力するよなのはママ!」

「マダマダ未熟ではありますが、戦力の足しにはなる筈です――覇王流の一手、お見せしましょう。」


貴方達は……トーマ君とヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃんと……えっと、誰ですか?


「あ、リリィ・シュトロゼックです。さっきはトーマとリアクトしてたから姿を見せるのは此れが初めてですね。」


リリィさんですね?リアクトってユニゾンみたいなものかな?トーマ君の見た目も変わってるから、きっとそうなんだろうね。

其れは兎も角、協力してくれるなら其れは有り難い事だけど、良いのかな?
貴方達は言うなれば『巻き込まれた』だけでしょ?――私達に任せて、貴方達は此処で待ってても良いんだよ?其れなのに如何して協力を?


「確かにそうかも知れないけど、黙って見てるのは俺が嫌なんだ。
 それに、目の前で此れだけの事が起こってるのに、何もしなかったら俺はきっとスゥちゃんやノーヴェ姉にこっぴどく叱られちゃうだろうからさ。」

「自分の力が誰かの助けになるなら、その時は迷わずにその力を使え……なのはママから教わった事ですから。
 其れに、トーマと同じで、私もこんな事が起こってるのを黙って見てられないんです――だから、誰が何と言おうと私も出ますから!!」

「覇王の拳は、敵を砕き、仲間を護るために有ります。――私が参戦する理由は、其れで充分です。」


そっか……ならお願いしようかな?
正直、戦力は有って有り過ぎるって言う状況じゃないからね――貴方達の力も、存分に貸して貰う。現場では思いっきり暴れてくれて構わないから!!!


「勿論その心算!ゼロ因子適合者の力、見せてやるぜ!!」

「高町ヴィヴィオ……頑張ります!」

「覇王流……お見せしましょう。」


土壇場で、嬉しい戦力追加だね此れは。
トーマ君にヴィヴィオちゃんにアインハルトちゃん……何れも凄い力を持ってるみたいだし、追加戦力としては申し分ないの。


此れだけの戦力が集えば負けない!――って、そう言いたいんだけど、何なんだろう、この胸の奥に閊えた『嫌な予感』は?
まるで、U-Dを止めただけでは終わらない……そう警鐘を鳴らしてる様な感覚が治まらない――まさか、若しかして…アレがU-Dに寄生したとでも言うの?


あくまでも最悪の予想に過ぎないけど、其れがもし現実のモノだったとしたら流石に笑えないの!!




砕け得ぬ闇……U-Dに、闇の書の闇――リヒティガルードが寄生しているだろうなんて言う事はね………








――――――








Side:キリエ(GOD)


さてと……自分でやった事の尻拭いは当然として、けじめもちゃ〜〜〜んとつけておかないとダメダメよね〜〜〜?
自分のやった馬鹿のけじめをつけようと、アミタのいる病室までやって来たんだけど……


「…………」

「…………」


お互いに無言!……此れは思った以上にキッツイ物があるわね〜〜〜〜……だけど、だからってこのまま流れで終わらせたら絶対ダメ!あり得ないわ!


――!!……御免なさいアミタ!!
 勝手に突っ走って、アミタの言う事に耳を傾けないで……ウィルスまで撃ちこんで、挙げ句の果てには護って貰って……其れなのに私は……私は……!
 ゴメン……ゴメンねアミタ……謝っても許して貰えないかもしれない……だけど、ゴメンナサイ!ゴメンナサイ……お姉ちゃん……」


――ギュム……


へ?


「馬鹿ですねキリエ……本当におバカさんです――妹を許さない姉が居ますか。
 確かにウィルスを撃ちこまれたのは、ちょ〜〜〜〜〜っとばっかり効きましたが、あれくらいは気合と根性で如何とでもなります!!
 其れに、妹を助けるのも姉の役目です!!大ダメージは受けましたが、こうして生きていますし、何よりもキリエが無事ならば、私は其れで充分ですよ。」


へ?…あ……アミタ?お姉ちゃん?


「人間だれしも、間違う事はあるんです――大事なのは、同じ間違いを犯さないようにする事でしょう?
 貴女が、此度の事を『間違った』と思ったのならば、今度は同じ轍を踏まなければ良いんです――だから、私は貴女を許しますよキリエ。」


あはは……ホントに、こっちの世界の夜天の主の言う通りになっちゃたわ。
そうね、私は一人で決めて彼是するよりも、きっとアミタに相談すべきだった――そうすればきっと、こんな事を起こさずに済んだかもしれない訳だしね。


だけど、こうなった以上、自分でまいた種は如何にかしないといけないわよね〜〜〜?
エネルギーは残り40%程度だけど、其れでも戦闘行為を行う事は出来る……自分の尻拭い位しなかったら、せめてもの申し訳も立たないからね〜〜?


此処はアミタ的に気合いを入れて頑張っちゃおうかしら?

キリエ・スーパーハイテンション・パワー!KSHで、自分のやった事の……やってしまった事の清算をしないとよね。
どんな形であれ、あの子を……U-Dを助ける事こそが、私が犯した罪への最大の贖罪であり、そして、未来を歩むための切符になりそうだからね〜〜?



必ず貴女を止めてみるわ――System U-D――砕け得ぬ闇よ!!








――――――








Side:U-D


稼働率80%を突破……後一時間もあれば稼働率は90%を超える――そう成れば、この世界は恐らく終わってしまうのだろう。

正直な事を言うならば、私はこの世界を壊したくはない――だが、如何する事も出来ないと言うのが現実だ……私は既に壊れてしまっているのだから……


無限とも言うべき力を持ち、そしてあらゆる外的攻撃を無効にする力を持ったイレギュラー……其れが私だ。







――と、そう言えば、同情を買えるだろう。
だが、真実は違う私のこの破壊欲求は、元々備わって居たモノに、さらに外部的なモノが作用して、破壊欲求が活性化してしまっている………


恐らくは、この世界に転移する際に何か不具合が起き、トンでもない力の残滓を取り込んでしまったのだろう……故に此れだけの力を有しているのだ。


けれども、この力は真に『破壊』でしかない。



――ドクン!!


ぐぬ………どうやら、もう長くは持たないようです……全てが手遅れになる前に、何とかしてください……闇総べる王と、夜天の空に舞う魔導師達よ――





私は本当は……もう、誰も傷付けたくないんです――だから、お願いします……私を倒してください……!!













 To Be Continued…