Side:アリサ


誰が如何見てもヤバいわよねアレ?
魔力の球体に包まってる状態でも、凄まじい魔力を感じるわ――其れこそ、ユニゾン状態のなのはをも凌駕する位のトンでもない魔力をビリビリとね……

「すずか、アレを凍らせて大人しくする事できる?」

「其れは無理だよアリサちゃん。
 凍らせる事は出来るかも知れないけど、多分直ぐに砕かれちゃうと思う……私の力じゃ、アレを完全に抑えるのは無理。
 ううん、多分クロノ君がデュランダルを使ったところで、アレを完全に凍結させて永続的に動きを封じ込めるなんて言う事は出来ない――規格外すぎるよ。」


やっぱり無理か……マッタク持って如何しろって言うのよ!?
今は未だ休眠状態みたいだけど、目覚めたら其れこそ世界が吹っ飛びかねないわ!!何とかして、アレを鎮圧しないといけないんだけど――



「……矢張り、こうなってしまいましたか……」

「シュテル?」

「シュテルちゃん?」


矢張りって……アンタ、若しかしてU-Dがこうなる事は予想して居たって言うの!?
だったら何で、先に其れを言わないのよ!!アレを放置したら拙いってのは、アンタだって重々承知してるでしょ!?其れなのに何で黙ってたのよ!!!


「あくまでも最悪の状況が此れでしたので、仮初の予想を口にすべきではないと判断した結果です。
 ですが、この状況は最悪ではありますが好機でもあります――あの状態であるならば、倒す事は出来ずとも能力を弱体化させる事は可能ですからね……」


弱体化?……其れでも良いわ!
倒せずとも弱体化できるなら、其れだけでも良い手よ!!如何すれば良いのか、教えてくれるわよねシュテル!!













魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天77
『Flame and blue thunder』












Side:シュテル


方法ですか……実にシンプルなモノですよアリサ。
U-Dに対して、制御用のプログラムを打ち込む、只それだけの事です。――此れが成功すれば、U-Dの能力を大幅に減衰させる事が可能でしょう。


「其れだけで良いの?だったら、さっさとやるわよ!!
 アイツを弱体化させる事が出来れば、なのは達が合流したあとでより戦いやすくなるからね!」

「そうでしょうね……ですが、貴女達には此処で大人しくして居て貰いましょう。」


――バキィィィィン!!


「「「「!!!!」」」」


しばし、大人しくして居て下さいね?


「シュテル……貴様、一体如何言う心算だ!!家臣でありながら、王たる我にこのような無礼を働くとは、気でも違ったか!!」


いえ、私は正気ですよ王。
寧ろ、貴女の為を思えばこそなのです――貴女は、此処で死すべき者ではありません。U-Dを救い出すと言う大きな使命が残っているのですからね………


「!!……シュテル、アンタまさか!!!」


全員で挑んでも、成功率は50%が良い所……最悪の場合は、私達5人全員が戦闘不能に陥ってもおかしくない。そうなっては元も子もありません。
ならば、成功率は落ちますが、犠牲を最小限に留める方が有効であると判断しました――U-Dには、私が単体で挑みプログラムを撃ちこみます。


「ふざけるなシュテル!!その様な事を許すと思うてか!!
 自己犠牲などまかりならん!!今直ぐ我等の拘束を解き、全員で挑めるようにしろ!!此れは命令ぞ、逆らう事は許さぬ!!」

「ならば私は、その命令を拒否します――これ以上は、話す時間もありません……後を頼みましたよ王――

「!!待て、待たぬか馬鹿者!!!」




馬鹿者ですか……確かにそうかも知れません。
理のマテリアルでありながら、こんな方法しか思いつかなかった私は、紛れもない大馬鹿者なのでしょう……ですが、それで未来への道が開けるならば……

「唯一の心残りは、高町なのはともう一度闘う事が出来なかったと言う事ですね……
 申し訳ありませんなのは……再戦の約束は、如何やら果たす事は出来そうにありません……約束を破る無礼を、如何か許して下さい……」

ふぅ……さて、行きますよU-D!!


「ちょ〜〜〜〜っと待った〜〜!僕も一緒に連れて行け〜〜〜〜!!!」

「一人でカッコつけてんじゃないわよ、このアホンダラ!!」


レヴィ?其れにアリサ?……一体如何やって?


「力で破れないなら、炎熱で焼き切るのみよ!」

「僕は力任せにバーンって!僕力のマテリアルだし。」


アリサの脱出方法は兎も角として、レヴィが其処まで馬鹿力だとは思いませんでした――して、拘束を破ってまで此方に来て、何をなさるおつもりですか?


「決まってんでしょ?アタシ等も手伝ってやるわよ!
 言っとくけど拒否権はないわよ?一人特攻かまそうとしてる馬鹿を、みすみす『はいそうですか』って行かせるほど、アタシは薄情じゃないのよ!!」

「一人より二人、二人より三人、そっちの方がせーこーりつが高くなる事くらい僕だって分かる!
 それに、ありさはすずかが止めるのも無視してきてくれた!だったら、一緒にやらないのはありさのかくごをムダにする事になると思う!」


やれやれ……そのように言われては何も言えません。
では、お言葉に甘えるとしましょう――力を貸してください、レヴィ、アリサ。貴女達の力を借りれば、若しかしたら若しかするかもしれません。


「「勿論!!」」

「ですがアリサ、貴女は出来るだけU-Dから離れて攻撃を行ってください――メインはあくまでも私とレヴィで行います。
 プログラム体である私達は、死しても周囲の魔力リソースを使って復活する事が可能ですが、生身の人間である貴女はそうは行きません。
 まして、貴女を死なせてしまったとなれば、此方の世界のなのはに転生100回でも足りない位に殺されてしまいそうですから。」

なので、貴女には隙を見て『対U-D用プログラムワクチン』を撃ちこむ役目をお任せします。
U-Dの隙は、私とレヴィで作り出しますので確実に撃ちこんで下さい――頼みましたよ?


「其れって超重要じゃない!……OK、任されたわ!!」


では……いざ、決戦へ。




「……君達は……来てしまったのか……」

「来たわよU-D!アンタを止めにね!!」

「……無駄だ、止める事など出来ない……君達は、態々……壊されに来たのか?
 力が大分戻って来た……戻ってきてしまった……現在の稼働率は85%……マテリアルよ、一度君達を倒した時とは比べ物にならない……だから退け…」


理のマテリアルとしては、確かに撤退を推奨するところでしょうが、シュテルとしての意見は違いますので其れには従う事は出来ません。
其れにアリサが言ったでしょう?『止めに来た』と……例え確率が低くとも、私達は貴女を止めに来たのです、此処で退く事など出来ません。


「ならば……散ってしまえ。」


「誰が散るもんですか……フレイムウィップ!!」

『飛べオラ!!』

電刃衝!!

ディザスターヒート!!

乾坤一擲の大勝負……王の為にもしくじる事は許されませんね。








――――――








Side:すずか


アリサちゃん、強引にバインドを破ってレヴィちゃんと行っちゃうなんて、幾ら何でも無謀だよ!
U-Dは、闇の書の闇以上に危険な存在みたいなのに、其れにたった3人で挑むなんて自殺行為……直ぐに追い掛けなきゃいけないのに……く、堅い!!


『埒が明きませんわすずか。
 少々危険ですが、ジャケットパージの衝撃で無理矢理にバインドを吹き飛ばしますわ!マッタクあの二人は、どうやって此れを外したのか疑問ですわね?』



スノーホワイト……分かった、やって!!


『行きますわよ?……ジャケットパージ!!』


――バリィィン!!


く……結構衝撃が有るね此れ?だけど此れで動ける!
待っててディアーチェちゃん、今バインドを斬るから!


――バキィィィン!!


おぉ、でかしたぞ月村すずか
 シュテルのバインドを斬り裂くとは、その氷の槍は中々に優秀なようだな?……今し方の働き、見事であると褒めて遣わそうぞ!」

「お褒めに預かり光栄です、闇総べる王よ。
 ……何て事をやってる場合じゃなくて、アリサちゃん達を追わないと!幾ら何でも、三人でU-Dに挑むのは危険すぎるから、最悪の事態になる前に!!」

「む、そうであったな!!
 では行くぞ月村すずか!我の家臣と、ウヌの友をムザムザ失う訳には行かんからな!!」


うん!全速力で!!

だけどなに?凄く嫌な予感がする……何て言うか、身体にべったりとこびり付く重油の様な、重くて濃密なまでの嫌な予感が……!!
お願い、如何か無事でいて皆!!



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・・・・・・

・・・



だけど、私の願いは裏切られ、嫌な予感は的中してしまった――


「シュテル!レヴィーーーーー!!!」


私とディアーチェちゃんが到着した時には、U-Dが拍翼でボロボロになったシュテルちゃんとレヴィちゃんを吊り下げてる状態だった。
アレは、誰が如何見ても戦闘不能なレベル……間に合わなかった……


「む?あの炎熱娘は何処だ?」

「そう言えば、アリサちゃんは何処!?」

まさか、もう落とされて海に沈んじゃったんじゃ……



「炎髪の少女は……?」

「彼女を甘く見すぎましたね?」

「ありさこそが、この戦いの切り札……」

「つまりそう言う事よ!!」


――轟!!


!!アリサちゃん!!全身を炎で包んで、一体何をする心算!!


「此れがアタシ達の盤面此の一手!喰らえU-D!アタシの全身全霊と、シュテルが作ったワクチンプラグラムを込めたこの一撃……ヒートドライブ!!

『終わりにするぜ!!』

いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!


――ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!


な、何て凄い衝撃!!
此れなら或は、U-Dでもダメージを受けた筈………でも、アリサちゃん達は!?アリサちゃん達は無事なの!!?


「あ……うあ……か、稼働率低下……出力不安定……」

「「「…………」」」


爆炎が晴れた其処には……U-Dに貫かれてるシュテルちゃんとレヴィちゃん、そしてボロボロの状態で吊り下げられてるアリサちゃん……!!そんな……!


「う……うあ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


U-D!!……転移したみたいだね。
それよりも、大丈夫アリサちゃん!!確りして、ねぇってば!お願い返事をして!!


「う……るさいわねすずか……耳元で大声出すんじゃないわよ……派手にダメージ受けたけど、アタシは何とか大丈夫よ……特攻は堪えるわねやっぱり。
 でも、問題はアタシよりも、シュテルとレヴィよ!!アイツ等は――!!」


そうだ、シュテルちゃんとレヴィちゃんは身体を貫かれて――!!



「確りせい、レヴィ!シュテル!!
 待っていろ、直ぐに我の魔力を分けてやる!だから、死ぬでないぞ!!」

「其れは……受け取れません……貴女には、まだやらねばならぬ事が有るのですから……」

「だから、王様の魔力を僕達が貰うんじゃなくて、僕とシュテルンの残りの魔力を、王様に全部あげる……だから、U-Dを救ってあげて、王様……」


二人ともなにしてるの!?
そんな状態で、魔力供給なんかしたら死んじゃうよ!今直ぐディアーチェちゃんへの魔力供給を止めて!!


「こやつの言う通りだ!貴様等の魔力など要らぬ!!今直ぐ魔力供給を止めろ!!止めぬか馬鹿者!!
 我一人を残して消える等まかりならん!!大体にして、家臣無くして何が王か!!U-Dを何とかしたとて、貴様等が居なくては、何の意味も無かろう!!
 止めろ!!もう十分だ!!だから魔力の供給を止めろ!此れは命令ぞ!!王の命令が聞けぬのか!!もう良いと言っておるだろうが!!!」

「未だです……この程度では足りません……。
 其れに、王無くしては我等も家臣たり得ません……例えこの身は消えようと、我等は常に貴女と共に居ます……だから、大丈夫ですよディアーチェ。」

「僕達の力で、U-Dを助けてあげて……ゴメン王様、僕とシュテルン……疲れちゃったから、少し眠る……ね………」

「待て!!行くな!!逝くな!!シュテル!!レヴィーーーーーー!!!!


――シュゥゥゥゥ………


「あ……あ……うわぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!」


「アタシが言えた義理じゃないけど、あの馬鹿共――!!
 アタシがヒートドライブをブチかます瞬間に離脱すればよかったのに、確実に攻撃を当てるためにって、あの状態から攻撃仕掛けて……」


それでU-Dにカウンターで……


「馬鹿者共が……我を残して勝手に居なくなるとは、家臣にあるまじき行為……だが、貴様等の魂はしかと受け取ったぞ。
 貴様等の犠牲は無駄にはせぬ!!闇総べる王の名に誓って、必ずU-Dの暴走を止めて見せようぞ!……必ずな!!」


!!!ディアーチェちゃんの羽根の色が変わった!
二対目はシュテルちゃんの魔力光の色で、三対目はレヴィちゃんの魔力光の色……二人の力が、ディアーチェちゃんに宿ったって言う事なのかな?

ディアーチェちゃん……


「本音を言えば、今直ぐにでもU-Dに突撃したい所だが、其れをやってしまっては、シュテルとレヴィの思いをドブに捨てる事になりかねんからな……
 不本意ではあるが、一度退いて体勢を立て直し、作戦を練り直したうえで挑むのが最善であろう?」


そうだね。

ん?何か近付いて来る?………アレは、なのはちゃん!!








――――――








Side:なのは(夜天)


物凄い魔力を感じたから、その魔力の発生源に来てみれば、目に飛び込んできたのはすずかちゃんと、ボロボロになったアリサちゃん。
そして、羽根の色がカラフルになって魔力が物凄く上昇してるディアーチェちゃん………此れは若しかしなくても、此処でU-Dと一戦交えたのかな?


「うん……その結果、シュテルちゃんとレヴィちゃんが瀕死の状態になって、ディアーチェちゃんに魔力を全部渡して……」

「消えたわ……あの馬鹿者共……!!
 二つの夜天が揃ったのは兎も角として、貴様にU-Dの力は渡さんぞピンク!アレは我の物……我が手にしなくてはならないモノなのだ!!」

「分かってるわよ王様……今更横取りはしないから安心して。
 寧ろ、今までの罪滅ぼしとしてやれるだけの事をさせて貰うわ……アミタにも、謝っとかないといけないしね……」


……成程、シュテルとレヴィは消えちゃったんだね?
アリサちゃんの怪我を見る限り、アリサちゃんもその二人と一緒にU-Dと戦ってたのは間違いない――取り敢えずアリサちゃんは、戻ったら即治療ね?


「そうしてくれると有り難いわ〜〜。
 正直、火傷と裂傷と、右肩と左膝と両足首の亜脱臼は結構冗談抜きでキッツイのよ此れ……」

「普通やったら、志々雄真実張りに包帯グルグル巻き状態やな………」


シャマルの癒しの風なら一瞬で治るけどね。


「しかし、主なのは……シュテルとレヴィ、其れにバニングスが束になっても敵わないとは、相当な相手ではないでしょうかU-Dと言うのは?
 若しかしたら、その力は闇の書の闇すら凌駕するかの知れません――其れほどの相手に、物量のみで挑むのは些か危険であると思うのですが……」


うん、其れは分かってるよシグナム。
幾ら最強クラスの戦力が揃ってるとは言え、相手は極めて規格外の存在だから、作戦を立てておかないと私達の方がジリ貧になりかねないからね?

「だから一度、博士の研究所に戻ろう?
 博士の事だから、今の戦闘のデータは観測してるだろうし、そのデータを元にU-Dへの有効な対抗策を考え出してるかも知れないからね。」

「プロフェッサー・グランツならばあり得ますね……では、一度研究所に行くと言う事で宜しいですね?」


うん!
先ずは研究所で、最終決戦に向けての作戦会議!!――あの子は、U-Dは……絶対に救ってあげなくちゃならない子だからね。














 To Be Continued…