Side:アミタ(GOD)


……?此処は一体何処なのでしょうか?私は確か、U-Dの攻撃を受けて……そして戦闘不能に陥った筈ですが、如何やらまだ動く事は出来るみたいです。
尤も、ザッパーのオーバードライブを使ってしまった影響で、エネルギーはほとんど残ってはいませんが……


「あ、目が覚めましたか?」

「はい?……って、私ですか!?」

私の目の前には、私にそっくりと言うか、私そのままの女の人!?――あの、貴女は一体どちらさまなのでしょうか?


「私はアミティエ・フローリアン……平行世界に存在している、貴女の異次元同位体ですよ、平行世界のアミティエ・フローリアン。」

「平行世界の私ですか!?
 よもや、そんな存在と邂逅するとは思っても居ませんでしたが……と言う事は、貴女と一緒に居る桃色の髪の子は若しかしなくても……」

「キリエ・フローリアンよ〜〜〜ん?
 まぁ、貴女の妹とは別モノの異次元同位体だけどね〜〜?まぁ、其れは其れとして、身体の具合は如何なの〜〜?一応応急処置はしといたけど〜〜?」


身体の調子……取り敢えず、普通に過ごす分には問題ないレベルですね。戦闘となるとキツイモノがあるかも知れませんけれど。
ですが、U−Dに貫かれたお腹と、吹き飛ばされた左腕がこうも完全に治されているとは驚きですよ?…思った以上に、この世界の技術レベルは高い様です。


「アタシ達のパパが、ガッツリ頑張ってるからね〜〜?あのくらいの損傷だったら、朝飯前で治しちゃうのAMNよ〜〜ん♪
 まぁ、其れは其れとして、アタシ達は貴女に聞きたい事が山ほどあるの……答えられる範囲で良いから、一体何がどうなってるのか話してくれるわよね?」


……はい。話すとしましょう。
一体何が起きているのか、何故こんな事になってしまったのか……キリエが一体何を望んでこんな事をしたのか――私の話せる範囲で、全てを話しましょう。













魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天76
『Without leaving advance』












Side:キリエ(夜天)


目が覚めたパラレルアミタから色々聞きだす心算だったけど、思った以上に色々と話してくれたわね?此れは、間違いなく良い収穫だわね〜〜〜?
要約すると……


・平行世界のアミタとキリエの住む世界は滅びに向かっている。
・グランツ博士が何とかせんと手をこまねいているが効果は上がらず、グランツ博士も病の床に伏してしまった。
・で、少しでも進歩したところを見せたいと、パラレルのアタシが、禁忌を犯して過去に渡って、砕け得ぬ闇を覚醒させる。
・それを如何にかしようとした戦いの最中に次元震が発生してこっちの世界に飛ばされてしまった。
・何れにしてもパラレルキリエを止めないと取り返しの付かない事になる。


大体こんな所だけど、パラレルのアタシには本気で心の底から突っ込みを入れたい感じね?
確かに気持ちは分からなくもないけど、禁忌を犯して、更には自分と実の姉を危険に巻き込むような事をしたら本末転倒でしょうに……暴走してるわねぇ〜?

まぁ、アタシだってパパやアミタが倒れて、助ける手段は限られてるってなったら相当な事をすると思うけど、其れでも今回の此れは見過ごせないわよ?
本来ならば、この世界に居る筈のない人達がこれ程多く集まっちゃった訳だから、何らかの不具合は発生して然りでしょ?


「!!……キリエ!!」

「あぁ、まだ動いちゃダメです!!
幾らお父さんが治したとは言え、人間だったら全治1年以上の大怪我何ですから、エネルギーが回復するまでは!!」

「……すみません、取り乱してしまいました……」


別に良いわよ〜〜ん?取り乱して然るべきだと思うし〜〜〜?
兎に角、面倒な彼是は言いっこなしにするとして、U-Dの事はアタシ達で何とかするから、貴女は治るまで安静にしておきなさいよ〜〜?


「分かりました……あの、其れで私が何者であるかも聞きたいんじゃないかと思うんですが……」


そりゃまぁそうね?大体予想はついてる事なんだけど〜〜〜?
改めて、確認がてら聞くけれど貴女は若しかしなくてもサイボーグ、或はそれに準じた存在である事で間違いない……わよね?


「その通りです……私もキリエも、博士が生み出した、エルトリアを救済する為の手段を行う機械でしたが……如何にも心の部分が作られ過ぎた様で…
 身体は間違いなく機械であっても心は此処に在る――そのお蔭で、エルトリアの滅びを少しだけ止める事は出来ました…本当に少しですけれど。
 でも、其れとは別に、日々弱って行く博士をキリエは見ている事が出来なかったのかもしれません……エルトリアの復興を見せずに死なせられないって。
 けれど、禁忌とされる時間移動を行って、更に平行世界に飛ばされるとは全く持って予想はしていませんでした……」


心を持った機械!!――そうなると、パラレルのアタシの暴挙も納得できるわね〜〜?
尤も、其れを斟酌したところでやり過ぎたのは間違いないんだけど。まぁ、アースラのスタッフも出張ってくれてるから、パラレルキリエは何とかなるでしょ。


「ところで、貴女は機械の身体と言う事ですが……食事とかは如何なっているんですか?」

「はい、普通に食物からエネルギーを摂取する事が可能です。食物をエネルギーに変える機構を搭載していますから。
 序に言うと、エネルギーが減って来ると人並みに空腹感を感じると言う謎の機能まで備わっているのですが……博士は一体何がしたかったのか……」

「「平行世界でもお父さん(パパ)は、やっぱり技術チートだった!!」」


空腹を感じるサイボーグって何よ!?……こっちのパパもやろうと思えば出来そうで怖いけど?
ん?って言うか、パパの学生時代のお友達がそんなモノを研究してたとかなんとか………まぁ、其れは今は良いわ。


問題はU-Dよね〜〜?
パラレルアミタを撃墜してからと言うモノ、全く音沙汰なしな上に家のサーチにも、時の庭園のサーチにも、アースラのサーチにも引っ掛からないなんて……

アレだけの凄まじい攻撃を、略零距離で受けたとは言え略無傷だった事を考えると、ダメージを回復させるために雲隠れしてるとは考え辛いのよね〜〜?
若しかして、U-Dは全力状態じゃなくて、完全起動の為に雲隠れしてる?


――もしそうだとしたら、尚の事探し出さないと!!アレが完全に、パワー全開の状態で暴れ回ったら地球壊滅のTKKが確定しちゃうわ!!
何だって、こうも短期間に2回も世界崩壊の危機に曝されるのよこの世界は〜〜〜!!SSP!!世界がスーパーピンチよ〜!何とかしてなのはちゃ〜ん!








――――――








Side:なのは(夜天)


はい!何とかします!!……って、アレ?


「如何なさいました、主なのは?」

「えと……何か今、キリエさんから『なんとかして』って言われた気がして……気のせいだったのかな?」

「或は、彼女の必死の思いが主に伝わったのかもしれませんね?互いに魔力を持った者同士の場合、心の底からの必死の願いは通じる事も有るようです。
 ですが、もしそうだとしたら、回収した平行世界のアミティエから途轍もない事を聞いた――或は其処から推測して最悪の事態を想定したと言う事かと。
 何れにしても、行方知れずの砕け得ぬ闇本体と、平行世界のキリエを探し出すのが先決かと思います。」


だね……だけど、2人とも一体何処に行っちゃったんだろう?
少なくとも海鳴周辺から居なくなったとは考え辛いんだよね?下手に遠くに逃げたら、却って自分の首を絞める結果になるかも知れない可能性もあるしね?
何よりも、僅か30分かそこいらで、そんなに遠くまで行けるとは思わないし――



「ん?んん〜〜〜〜?……アレ!あそこ!!右前方のあの人、キリエさんと違う!?」

「夜天のはやてちゃん!?……確かにあれはキリエさん!!
 しかも、あのドギツイピンクの防護服は平行世界のキリエさんで間違いない!!あの、キリエさ〜〜〜ん!!!」



「!!!貴女達は!!……見つかっちゃったか。……私を逮捕するのかしら〜〜?
 確かに、貴女達からしたら怪しいお姉さんをしょっ引きたい所でしょうけど、生憎とそうも行かないのよね〜〜〜?邪魔するなら、斬って払っちゃうけど〜?
 って言うか、折角アミタがU-Dにすこ〜〜〜しばかりダメージを与えてくれたんだから、この機を逃す手はないでしょ〜〜?アレは私が貰い受けるわ!!」


な!!……本気で言ってるですか!!
アミタさんは身体を張って貴女を護ったって聞いてます!!其れなのに、身体を張った姉の思いすらU-D奪取の為に利用するんですか貴女は!!!


「気に入らない?だけど、目的の為には手段を選ばないのも必要なのよ〜〜ん?
 てなわけで、邪魔立てするなら相手になるわよ?4vs1でも、切り抜ける方法が無い訳じゃないし〜〜〜?」

「……誰が貴様如きに4人で相手をするか、身の程を弁えろ愚物が!!」


へ?シグナム?
若しかしなくても、相当に怒ってるよね此れは……いや、私も、夜天のはやてちゃんとリインフォースだって怒ってるけど、シグナムの怒りはそれ以上!?


「妹を思う姉の気持ちすら目的の為に利用しようとする貴様の下衆な考えは、心の底から虫唾が走る。
 4vs1でも切り抜けられる?寝言は寝てから言え!貴様如き、主なのはが出るまでも無い――私一人で充分だ!!」


――轟!!


「な!!此方の世界の将の……髪と目の色が変わった!?」

「こっちのシグナムはスーパーサイヤ人的変身が出来るんかい!!」


調停者モード……!其れだけ本気って言う事だね?
なら、この場は任せるよシグナム!平行世界のキリエさんを無力化し、そして捕縛せよ!!あ、出来るだけダメージは抑える方向で宜しくね!!


「了解しました主なのは……てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」

「!!!」


――ガキィィィィン!!


ヤマトフォームに換装してからの、超高速の居合い切り――アレは見切れるモノじゃない、咄嗟にガード出来たパラレルキリエさんは凄いとしか言えないね。
だけど、其れを避けるんじゃなくてガードしたのは最大の悪手だよ?


「せやぁぁぁあ!!」

「鞘で!!」


剣での一閃を防いでも、間髪入れずに逆手に持った鞘での二段居合が襲い来るし、同時にレヴァンティンを二刀流のデュアルフォームに換装してるからね?
夜天の主直属の騎士の筆頭たる、烈火の将の剣は此処からが真骨頂だよ!!


「如何した?防いでばかりでは勝つ事など出来んぞ?
 4vs1でも切り抜ける策があるのだろう?タイマン勝負ならば、私を圧倒できるのではないか?……脇が甘いぞ!!」

「嘘……そんな、幾らなんでも速いし、強過ぎる!!
 向こうの世界の烈火の将も強いらしいけど、貴女の強さは桁が違うわ……けど、私はこんな所で止まる事は出来ないの!故郷の為にも、パパの為にも!」

「そうだとしても、姉の思いを利用すると言ってのける貴様では、目的を達する事など出来ん!!
 真に己が目的を果たしたいなら、もっと周囲に目を向けろ!広い視野を持て!!物事の真偽を見極めろ!!其れが出来ぬようでは、何も出来んぞ!!」

「分かってるわよ!
 だけど、其れでも私は堕ちるとこまで堕ちても、U-Dの力をてにしなくちゃならないのよ!!私が生きる世界を世界を救う為にも!!!」


キリエさん……その気持ちは分からなくもないけど、貴女が今やってる事は間違ってる!!間違ってるよ!!


「己の世界を救いたいと言う気持ち、分からなくもないが、その上で敢えて言おう――ふざけるな!!
 そう言って、大義名分を掲げ乍ら姉を利用し、U-Dの覚醒による被害を『必用な物』と斬り捨て、見なかった事にする!!其れが貴様の目的か!!!
 大体にして、貴様の姉は、貴様を護る為にその身を盾とした!!それなのに、貴様は其れも必要な犠牲だと、仕方のない事だと言って斬り捨てるのか!!
 そうだと言うのならば……私は、今此処で貴様を討つ!!」

「!!」

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!爆炎双龍刃!!


――ズバァァァァァァァァァァァァァァァ!!!


「な……そんな……」

「我が剣に迷いはない。
 ヴォルケンリッターの筆頭騎士、烈火の将はいつ何時でも主なのはと共に在る……主と共に居る限り、我が剣の切れ味が鈍る事は無いと知れ!」


上下左右の四択に加え、一瞬十六斬の攻撃を見切る事は先ず不可能。
此れにて完全決着だよ!!!


「そんな……たった一撃で……こんな事ってないわよ……
 アミタと喧嘩して過去に来て、アミタに大怪我させて……其れなのに目的を果たす事が出来ないなんて……私は一体何しにこの世界に来たって言うの…」


え?キリエさん?


「考えが甘かったのかしらね〜〜〜?
 その結果、何も出来ずに終わるだなんてお笑い草よ……これじゃあ、私は世界一の大馬鹿者じゃない!!こんな、これじゃあ!!」


キリエさん……さっきの言葉は本心じゃなかったんですね?
其れを聞いて安心しました、家族を手駒同然に扱う外道なら、この場で叩きのめしてるところですけど、キリエさんはそうじゃない……だから、やり直せるよ。

其れに貴女は、U-Dの力を悪用する心算は無いみたいだし……やり直しましょうよキリエさん?きっと全てが巧く行く方法がある筈でですから。
大体にして、U-Dが暴走したら、この世界だって危ないんです!だから、出来る限りの事はする心算です!!――もう、1人で頑張らなくても良いんですよ?


――ぎゅ……


「え?……え、あ、アレ……如何して?」

「本心じゃないんですよね?アミタさんの思いを利用するって言うのは。
 ううん、そう言う風に言わないと、自分を奮い立たせる事が出来なかった……だけど、もう強がらなくて良いです、一人で背負わなくて良いんです。
 不幸中の幸いと言うか、今この世界には最強の戦力が集っているんですから、その力を集結すればU-Dの事だって如何にか出来ると思いますからね?
 だからもう、一人で背負い込むのは止めましょうよ?必要な時に頼る為に家族や仲間って言うのは存在しているんですよ?
 こんな事をしなくても、貴女の目的を果たす手段はきっとある筈だから一緒に考えましょうよ?一人じゃ如何にも出来ない事も、仲間や家族が居ればね?」

「う……うぅ……分かってた!!分かってたわよ全部みんなすべて!!
 だけど、博士にほんの少しでも前に進んだ事を見せてあげるには、此れしか方法が思い浮かばなかった!!だからアミタと喧嘩してまで過去に来たのに!
 其れなのに、アミタに瀕死の重傷を負わせて、其れでU-Dは行方知れずって……これじゃあ、私は只の大馬鹿者じゃない!!
 ……ゴメン……ゴメンねアミタ……私のせいで、大怪我して……痛かったよね?……謝って許される事じゃないけど……ゴメン…御免なさい!!」


………『良いですよ、許します!』


「へ?」


平行世界の異次元同位体であっても、アミタさんならきっとこう言いますよ。
それ以前に、アミタさんは怒ってすらいないと思いますよ?それどころか、キリエさんの事を護る事が出来たって事で良しとしてる可能性すら有りますからね?
それどころか『妹を許さない姉が居ますか!!』とか言いそうですし――誰も貴女を責めたりはしませんよ?……だから、もう良いんです。

貴女の気持ちは分かりました……だから、今度はその気持ちを…ね?


「う……うあ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁん!!
 ゴメン……ゴメンねアミタ!!……私は……私は……御免なさい……ホントにゴメンナサイお姉ちゃん……!!」


うん……良いよ、許してあげる。
貴女の気持ちは分かったから、今は溜めてたものを全部吐きだしちゃおうよ?――其れを吐き出して漸くスタートラインだからね。




「……こう言っちゃなんやけど、夜天のなのはちゃんは何モンや!?
 キリエさんを抱きしめて、彼是説いたその姿は、惑う事なき『聖母マリア』その物やないか〜〜〜!!なんか、夜天の主として大幅に負けた気分やわぁ…」




……少し空気読もうか夜天のはやてちゃん?
如何思うのも勝手だけど、それを口に出すのは時と場合を選ぼうね?……理解できたかなぁ?



「!!Yes Manm!!(了解ですマム!!)」


なら良し!……取り敢えずこのキリエさんを博士の所に連れて行こう?
外見的な損傷は皆無だけど、エネルギーを消耗してるの時は間違いないから、先ずはエネルギーを充填するのが先決だからね!!








――――――








Side:アリサ


マテリアルズと行動してたたら、此れはまた如何にもってのが出て来てくれたものだわ……直径10m以上の球体に身を包んだU-Dが御登場とはね!?
アレは未だ起動状態じゃないけど、其れでも、アレがトンでもないモノだって言うのは否が応でも感じ取れる。

だからって退く気は毛頭ないし、負ける心算だってない!
正直、この戦力でU-Dに勝つのは難しいかもしれないけど、なのは達が来るまで持ち堪える事が出来ればその限りじゃない……行くわよフレイムアイズ!!


『みなまで言うな、準備万端だぜ大将!!
 精々なのは嬢ちゃんが来るその時まで、弩派手に暴れ回ってやろうじゃねぇか!!燃えて来るぜ、心の底からなぁ!!!』



弩派手にね……その案乗ったわ、フレイムアイズ!!アタシだってテンションは最大級に素敵状態で、誰にだって負ける気がしないわ!!




だけど、だからこそアタシは気付く事が出来なかったのかもしれないわね?


今、こうしているこの間にもマテリアルズ……と言うか、シュテルが全てを丸く収まる術を――自らの身を犠牲にした特攻戦術を考えてるとは思わなかったわ。














 To Be Continued…