Side:はやて(夜天)


さてと、美由希お姉ちゃんと、怖そうな黒騎士的なお兄さんを模した闇の欠片が現れてくれた訳やけど、ドナイする旋風姉やん?


「態々聞くか小鴉?
 昔からそうしていたように、我等に仇なす愚物は、徹底的に叩きのめして我等に盾突く愚かさをその身に刻み込んでやるだけであろう?……ならば、な?」

「まぁ、大体予想はしとったけど、旋風姉やんやったらそう来るやろなぁ?
 てか、そう来なかったら旋風姉やんとちゃうからね……よっしゃ、風の名を冠した私等姉妹の力で、あの闇の欠片を在るべき場所に還したろうやないの!」

「言われるまでもないわ!
 闇の欠片だか何だか知らぬが、旋風と疾風に盾突いた事を、精々地獄の深淵で後悔するが良い!!来い、塵芥共が!!」




「うぐ……ぐあ……敵は殺す…倒す……!
 俺の……俺達の前に立ちはだかる奴は、誰であろうとぶっ殺す……殺して、排除しなきゃダメなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁ!!!」

「小太刀二刀御神流――その真髄を、その身を持って味わって貰おうかな……」


黒いお兄さんと、美由希お姉ちゃんの闇の欠片……どっちも大層な力を持っとるやろうけど、それでも欠片程度は私等の敵やないで!!
少しだけ待っててな?私と、旋風姉やんで、彼方達を在るべき場所に還してあげるさかい、せめて大人しくやられてほしいモンや。





其れは、絶対に敵わぬ願いであると分かっていても、そう願わずにはおれへんね……













魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天75
『姉君無双伝説!無双で悪いか!』












んで、戦闘が始まった訳やけど、闇の欠片とは言え、やっぱり美由希お姉ちゃんはゴッツ強いわ〜〜〜。
私も普段のトレーニングで、大分力を付けたと思っとったけど、闇の欠片の美由希お姉ちゃんを相手取って互角とは……ちょお、自信無くしてまう感じやで。

尤も其れ位に美由希お姉ちゃんが強い言う事なんやろうけどね――もし、恭也お兄ちゃんやお父さんが欠片として再生されとったらゾッとするわマジな話で。


まぁ、其れでも所詮は劣化コピーの闇の欠片やね……本物の美由希お姉ちゃんの太刀筋と比べたら、見切れんレベルやないからなぁ!!
加えて、斬り払いや薙ぎ払い的な攻撃が多くて、美由希お姉ちゃんの真骨頂たる超絶破壊力の『突き』は再現されてない感じや……此れやったら行ける!


「此れで決めるわ。」

「決めさせるかい!!そんな蠅が止まりそうな鈍い突きじゃ、私はやれへんよ!
 寧ろ、そんなに隙だらけの突きは、私に『どうぞ反撃してください』って居とるようなモンや!!……望み通り、反撃したるわ闇の欠片!覚悟はえぇな!!」



――轟!!



「!!?」


カートリッジ10発ロード!
此れで終わりやで、美由希お姉ちゃんの欠片――此れが、今の私に出来る最高の技や!!


――シュン!!……ズバガキィィィィィィン!!!


「え?……そんな、馬鹿な……ふふふ……良い一撃だったわはやて……何時の間にか、こんなに成長してたんだね……」


超高速の踏み込みから、アロンダイトを一閃して、横薙ぎの斬撃と剣圧を同時に喰らわせる、私の最大の一発や……流石に此れは効いたやろ?


「予想以上に効いたわよ、はやて……うん、実に良い一撃だった。
 だから、次は彼女を助けてあげないとだよ?……貴女のお姉さんと、闇の欠片で再生された黒騎士――その双方を在るべき場所に還さないとならない。」


うん、分かっとるよ、
旋風姉やんも、怖そうな黒いお兄さんも還してやらなアカン存在やと言うのは重々承知しとるからね……多分、旋風姉やんは分かっとると思うんやけどなぁ。

まぁ、何にしても旋風姉やんは、私が送ってやらなあかん人やから、私のすべき事はキッカリ全部やったるよ。
せやから、美由希お姉ちゃんの欠片も、そろそろあるべきところに戻りや?――頑張った『妹』のお願いは聞いてくれるやろ?


「そうね……複製が何時までも居ちゃいけないし、良い戦いが出来たから満足だしね。
 其れに、最後の一撃はバッチリ決まったから、此れで終わりみたい――じゃあねはやて、『本物の私』と仲良くしてね?後恭ちゃんや、なのはとも。」

「うん、言われるまでも無いて。既に仲良し兄妹やからな♪」

「なら良し!あ、其れと恭ちゃんに『さっさと忍さんと結婚しろ』って伝えといて?」


何とそう来たか〜〜〜〜!……OK、了解や!
ちゃ〜〜〜んと伝えとくから、安心してや―――ホンなら、お休みや美由希お姉ちゃんの欠片。


「うん、バイバイ。」


――シュゥゥゥゥゥ……


ふぅ……勝ったか〜〜。
さてと、旋風姉やんの方はドナイやろ?見た目だけやったら、怖そうな黒騎士お兄さんの方が強そうやったけど――――



「ふははははははははは!如何した黒騎士、その恐ろしげな外見は見かけ倒しか?
 その様な温い剣では、敵を撃ち滅ぼす事も、大切な者を護る事も出来はせんぞ!まして、この我を倒そうなどとは片腹痛い!真に笑止であるわぁ!!」

「ぐ……クッソォォォォォォォ!!!」


メッチャ余裕で無双状態やな旋風姉やん!?
てか、身の丈以上のレーザーブレード対艦刀を、なしてそんな軽々振るえるんや!?旋風姉やんの関節とか筋肉構造てドナイなっとるん!?

キラ・ヤマトが登場したストライク・ガンダムかて、其処まで見事にシュベルトゲベールをぶん回す事は出来なかったのに……スペックはガンダム以上か!?



「敵は倒す…倒す!!クリムゾン……スラァァァァッシュ!!」

「飛び道具か?……ならば応えよう!必殺……アバンストラァァァァァァッシュ!!!」


今度は何を使ってんね〜〜〜〜〜〜ん!!
其れは確かに飛び道具の類やけど、何処で覚えたんやそんな技!闇の欠片として再生された事で、やりたい放題やな旋風姉やんは……


――ガキィィィン!!


せやけど、黒騎士のお兄さんもバリアでアバンストラッシュを防いだか……やっぱタダモンとちゃう感じやな。
いや、タダモンがあからさまに悪役全開の厨二っぽい服は着る訳ないんやけどね?……取り敢えずバリアは破壊せな……


「バリアか……小賢しい!!喝!!!」


――パリィィィン!!!


「待てやーーーー!!気合でバリア破壊するなや!!
 てか、何処の世界に気合い一喝でエネルギー的障壁破壊する奴がおんねん!今更ながらに、旋風姉やんてホンマに人間やの!?宇宙人やなくて!?」

「む、姉は人間の心算だぞ小鴉よ。
 まぁ、闇の欠片として再生したが故に、ちょ〜〜〜〜っとばっかり魔法的な何かが使えるようにはなったようだがの?」

「そのスペックでちょっとばかりとか言わんといて……激しく自信無くすから。」

「そうか?まぁ、其処は生前のスペックの高さと言う事で納得せい。
 それにだ、やろうと思えば此れ位は簡単に出来る事であるぞ?」


――バババババババババババババババババババババババババ!


いやいやいや、出来へんから!
そないに高速で剣をぶん回して、無数の鎌鼬を飛ばすとか、恭也お兄ちゃんやシグナムでも、少なくともそんな大剣では出来へんからね!!!



――ガギィィィィィィィン!!



まぁ、其れもまたバリアで防がれてもうたけど。
やけど、如何するんや姉やん?あのバリアはさっきのバリアよりも、もっと堅そうな感じがするんやけど……


「確かに堅そうではあるが、其れが如何した!
 大体にして、バリア如きで我の攻撃を防ぎきれると思うてか?考えが浅いわ、この……た!!」


――ピシ!


「わ!!!」


――ピシピシ!!


「け!!!!」


――バリィィィィィィン!!



いやん、姉やん超強い。
もしも姉やんが生きてて、私等と一緒に魔導師になっとったら、間違いなく無限チートのバグキャラ級の魔導師になってたんとちゃうやろか?なっとるやろ!
そんでもって、ご愁傷様や黒騎士のお兄さん……アンタじゃ姉やんには勝てへん――グレムリンじゃ青眼の白龍には勝てへんのよ。


「其れでは終わりにしようか黒騎士!!覚悟は良いな!!!」


――キュイィィィィン!!


は?ちょう待って姉やん!大剣を掲げたその構えは、まさか!!!!


「喰らうが良い、我が最強奥義……超究武神覇斬!!!」

「やっぱしFF7の主人公の最終奥義か〜〜〜〜い!!!!」

敵ランダム16ヒットで、全弾クリティカルの弩チート技を極めるとは……もう、流石は旋風姉やんとしか言いようがないな……ホンマに呆れたスペックやで。
此れは完全に決まったな……


「うぐ……くそ……くそ……ゴメン……俺はダメだったよ、リリィ……」

「悪い夢の覚める時だ、有るべき場所に還るが良い。」



――シュゥゥゥン……



消えた……何ちゅうか、溜息が出てまう程に無双やったね姉やん?
思い起こせば、姉やんは生前から公園で威張り散らしとるガキ大将を懲らしめたりしとったからなぁ……途轍もなく強いんは、既に実証済みやったんやね。


「そう言えば、そんな事もしておったなぁ?今となっては良い思い出だがな。
 さてと、取るに足らない塵芥は殲滅したが……我にもそろそろ時間が迫って居るようなのでな……我と一度勝負せい。
 最初で最後の姉妹の立ち合い……姉への選別として、今のお前の強さを我に見せてくれまいか?……知りたいのだ、我が妹がどれだけ成長したかをな。」

「姉やんの性格から、そう来るとは思っとったよ……断る訳がないやろ?
 今の私の強さ、嫌と言うほど見せたるわ!!せやけど、私の予想外のレベルアップに驚いて、腰抜かさんといてや!!!」

「その意気だ!!遠慮はいらぬぞ!!
 幼き日に、プロレスごっこをした時の様に思い切りぶつかってくるが良い!!」


言われるまでも無いわ!行くで姉やん!!



――ガキィィィィィン!!



「ほう?中々良い太刀筋ではないか?」

「生憎と、恭也お兄ちゃんと美由希お姉ちゃんて言う、剣術家としては一流クラスの人が今の家族に居って、更に私の剣のお師匠様やからね。
 此れ位の事は出来るで!!どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「く……予想以上に重いな……だが、其れで押し切れると思うなよ?
 姉と妹では、戦いにおける年季が違うと教えてくれるわ!!剣道有段者の腕前を甘く見るでないわ!!」


その言葉、そっくり返すで姉やん!!
魔法と出会ったその日から、私は自分の力をずっと磨き続けて来た、剣の訓練だって欠かさず続けて来たし、危険な戦いだって何回も経験したんや!!!
マダマダ未熟な部分は有るけど、戦いの年季やったら負けてへんからな!!!


――バギィィィン!!


「でぇぇぇぇぇぇぇえぇっぇぇぇ!!」

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



――カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン
   カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン
   カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!




自分で言うのも何やけど、こんだけの目まぐるしい剣戟ってのも、早々お目に掛かれるもんやないんと違う?
私と姉やんの剣戟は、正に拮抗してて、互いに決定打が撃てない状況になっとるからね……やけど、何時までもこのまま剣戟を続ける訳にも行かへんね…

せやけど、姉やんの剣には隙が無い……何とか隙を作らへんとジリ貧やけどドナイしたもんかな?
どうやって……



『良いかいはやて、剣術と言うのは必ずしも剣のみを使うとは限らない。
 戦況如何によっては、剣だけでなく己の身体を使った体術だって使う事が有る……こと、モーションの小さい蹴り技は有効だから覚えておくと良い。』



!!そうや、恭也お兄ちゃんが教えてくれたやないか!!
剣での戦いであっても、剣が全てやない――場合によっては、体術による一撃も有効やって!!やったら、この状況では、これや!!


――パァァァァァァァァン!!


「ぬぅ!?この剣戟の途中に鋭いローキックだと!?」

「其れだけやないで!!」


――ドガアァァァァァァァァァァァ!!!


「ガハ!!……右のローの次は、左のミドル……我の予想以上に成長しているようだな小鴉――!!」


成長なしには何も出来へんからね!!
其れは其れとして、今のミドルでガードが開いた!!脇が隙だらけやで、旋風姉やん!!……此れで決まりやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!



――ズバァァァァァァァアァァァァァァァアァ!!!



「…………見事だ小鴉……流石は我の妹であると褒めてやる。
 今の格闘を交えた一連の攻撃、実に見事であったぞ?……お前の成長を、文字通りこの身で感じる事が出来た……我は其れだけで満足だぞ。」

「姉やん……」

「そんな顔をするな……我は、所詮闇の欠片……何れ消える事が確定して居た夢に過ぎぬ。
 尤も、我は闇の欠片としては特異な存在なのだろうが――其れが幸となり、お前の成長も見て取れた……実に姉冥利に尽きると言える一時であったよ。」


――シュゥゥゥン……


姉やん!!……タイムリミットなんやね…


「その様だ……今回は泣かぬのだな、小鴉よ?」

「涙のお別れは、闇の書に取り込まれた際に済ませたからな……今度は笑顔でお別れや。
 其れに、何時までもべそかいとったら、姉やんもお父さんもお母さんも、心配で天国に行く事が出来へんやろ?……やから、今度は笑顔でお別れや。」

何も心配いらへんよ?……私は『高町はやて』として、今を生きてるからね。
姉やん達の事を忘れる事はしないけど、せやけど引き摺る事もしない……私は『高町はやて』として、此れから生きて行く。誰にも文句は言わせへんよ。

やから姉やん、天国に行ったらお父さんとお母さんに伝えて貰って良いかなぁ?


「うむ、構わんぞ?」


うん、せやったらこう伝えてや?
『私は元気です、高町家の一員として日々を過ごしてます……色々な事が有るけど、日々元気だから、安心してください。』こう伝えてや。


「うむ……了解した。ちゃんと伝えておこう。
 ……此れにてお別れだはやて……貴様は天寿を全うしてから此方に来るが良い……だが忘れるな、我等は常にお前を見守っているからな。」


うん…分かっとるよ……だから安心して在るべき所に還ってや。
今、私は幸せや――胸を張って、自信を持ってそう言いきれる!私は、『高町はやて』として、此れからの人生を歩んでくからね……バッチリ見ててや!!


「うむ……そうするとしよう。
 イレギュラーな事態ではあったが、もう一度会えた事を嬉しく思うぞはやてよ……己の道、踏み外さずに進んで行くが良い……其れが、我の願いだ。」


姉やん、もう大分体が薄くなっとる……いよいよお別れやな。
ほな姉やん、今度はあの世でな?あと80年くらい待っとってや〜〜〜。


「うむ、可能な限りそうしておこう……闇の欠片であったとは言え、この時間は存外楽しめた。
 お前の成長を好みで確かめる事も出来たしな……再生されてよかったよ……もう、心残りは何もない……今度こそ最後だ……息災でなはやて!!」


うん!!分かっとるよ姉やん!!
高町はやては、いつ何時でも元気やから!!何が有っても、この元気は無くさないから!!見とってや姉やん!!!!


「うむ、何時でも見守っているぞ小鴉――愛すべき、我が妹よ。」


――シュゥゥゥン



姉やん!!……消えてもうたか……ふふふ、生前と変わらず、嵐の様な人やったね……そうでなければ姉やんやないけどね。
けど、ホンマに……く……


『大将……泣いてんのかい?』

「アホ言うな、此れは汗が目に入っただけや……泣いてる訳……ないやろ……」

『なら良いが、泣くのを我慢するなよ?
 泣くのを我慢しまくったら、本当に泣きたい時に泣く事が出来なくなっちまうからな……俺は、そんな大将は見たくねぇからよ。』



分かっとるよ……涙我慢するのは今だけや。
旋風姉やんの事は、今度は笑顔で送りたいからな……そんだけや。


今度こそ、本当にバイバイやね旋風姉やん――私は大丈夫やから、安心して天国に行ってな?
此れからも、迷う事や躓く事が有るかも知れへんけど、其れでも私は、『高町はやて』は日々を元気に過ごすから、やから安心しとって。



それと、ずっと大好きやで旋風姉やん……例え100年経たっても其れは変わらへんからね………













 To Be Continued…