Side:なのは?


U-D……貴女は本当に此れで良いの?
シュテルも、レヴィも、王様も、皆が貴女の事を救いたいと思ってる……其れなのに、貴女は只破壊衝動に駆られるままに暴れて、全てを壊して…それで!


「私が目覚めたその時に、終わりが始まっている……此れは如何しようもない事だ。
 だから目覚めたくなかった……ずっと、闇の奥底で眠っていたかった――そうすれば、何も壊さなくて済んだから……けれど、それももうお終いだ……」

「勝手なこと抜かすなアホンダラ!!
 もうお終いやと?……ハナっから諦めて、抗おうともせんでそないな事言うなや!!私は認めへん……アンタが破滅だけを齎すだけの存在だなんて!」

「そうだよU-D!
 諦めなければ未来が開けるんだ……だから、諦めないで!私達が、きっと貴女を助け出して見せるから!!」


「……無駄だ…全て無駄なんだ――私を救う事なんて出来る筈がない。
 仮に君達とディアーチェ達と闇の書の騎士達が力を合わせても、其れは絶対に不可能だ――だからもう終わらせよう……全てが消えれば其れで良い…」


――!!この分からず屋!!
なんで、試しもしないで諦めるの?如何して、闇に沈もうとするの!?
救いの可能性があるのに、その可能性を頭ごなしに否定して自ら破滅を願うなんて、そんなのは絶対に間違ってる!!間違ってるよU-D!!!


「間違っていても、それしか道はない……もう眠れ……セイバー!!

「……っの馬鹿ぁぁぁ!!ディバイィィィィィン……バスターァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!


――バガァァァァァァァァァァァァッァァン!!……ギュルリ…


!?……U-Dと私の攻撃がかち合った場所に何か……アレはまさか、次元震!?
何て吸引力……ダメ、此れは離脱できない!!私だけじゃなく、はやてちゃんとフェイトちゃん、ヴォルケンリッターの皆に王様達とU-Dも!!

く……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!












魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天70
『World which intersects』












Side:なのは


3月も半ばになり、日に日に春の足音を感じる今日この頃、本日は皆でグランツ研究所に来てたりします。
私のシュベルトクロイツの調整が終わって、更にナハトヴァールが頼んでた『パイルガイストピアス』の改良も出来たみたいだから、其れを受け取る為にね。

で、今回は博士の徹夜対策は大丈夫でしたかキリエさん?


「大丈夫よ〜〜ん?
 パパの研究室に、日付が変わって1時間が経過したら催眠ガスが噴射される装置をくっつけといたから、徹夜作業は絶対に無理のTZMだからね〜〜♪」

「此れには流石にお父さんも参ったのか、徹夜する事なく、しかし最高速度で仕事をこなしましたけどね。」


徹夜しなくても、仕事は速くて凄いんですねグランツ博士は――まぁ、其れだけに期待できるって言うモノなんですけど。
それじゃあ、早速見せて頂けますか?私のシュベルトクロイツと、ナハトヴァールの新たな武装を。


「うん、是非とも見てくれるかな!
 シュベルトクロイツもナハトヴァール君の武器も、僕が今持てる全ての技術を注ぎ込んだモノだから性能の方は保証するよ?早速起動してくれるかな?」


金色の剣十字がシュベルトクロイツで、同じ剣十字の装飾が施されたブレスレットがナハトヴァールの新武装かな?
取り敢えず、先ずは起動してみようか!!


「えぇ、先ずは起動してみなくては性能の確認も出来ませんからね。」


――ヴオォォォォォォン!!


起動してみたらこれは……!!夜天の力に完全覚醒した時に得たのとは全く違う力を感じる!!
見た目は剣十字をあしらった金の杖のままだけど、前よりも剣十字の剣の部分が鋭くなって、杖って言うよりも『槍』って言った方がしっくりくるかも。
此れは若しかしなくても、近接戦闘用のデバイスとして改修・改造してたりしますかグランツ博士?


「ご名答、その通りだよ。
 レイジングハートが基本中〜遠距離戦用のデバイスだから、シュベルトクロイツはアームドデバイスの剛性を生かして近接型にしてみたんだ。
 勿論A.C.S機能やストライクフレームも搭載されているよ。なのは君は、最近クロスレンジの練習もしてるみたいだし、充分性能は生かせると思うよ?」


はい、ありがとうございます!
射撃・砲撃にレイジングハート、近接戦闘用にシュベルトクロイツ――うん、此れならどんな距離でも戦う事が出来る!…近接戦闘はもっと要練習だけど。

「ナハトヴァールの方は如何?」

「私の方は、魔力矢を発射するクロスボウが削除されていますね。
 代わりにシールドに分割式になって、分割したパーツは夫々ショートブレードになる上にビット兵器としても機能するようです。
 後は、メインの大型ブレードが折り畳めるようになって、ショートブレードを使って戦闘を行う際に取り回し面で邪魔にならないように改良されています。」

「ナハトヴァール君はデバイスを使わずとも中〜遠距離の攻撃が出来る訳だから、蛇足的な射撃機構はこの際思い切って削除してみたんだよ。
 代わりに、近接戦で使いやすいショートブレードをシールドのギミックの一つとして取り入れてみたんだ。」


そうなんですか……ん?『シールドのギミックの一つ』?
分割式のビット兵器兼ショートブレードの他にも、シールドには何か秘密があるんですかグランツ博士?


「その通り!此れは実際に見て貰った方が早いかな?
 ナハトヴァール君、此れから僕がこのボールを投げるからシールドで防いでみてくれるかい?」

「え?はぁ……」

「じゃあ行くよ!!」


――ビュン!!


――ギュイン!!!



「!!此れは……自動発動式のエネルギーシールド!?」

「その小型のシールドでは全ての攻撃を防ぐ事は出来ないから、シールドを使って防御する際に自動発動式のエネルギーシールドを追加してみたんだ。
 更に、大型ブレードも必要に応じて刀身に魔力を纏わせて『魔力刃』として使う事も出来るんだよ。実体刃と魔力刃の使い分けが出来る訳だね。」


相変わらずグランツ博士は凄すぎます!!
でも、グランツ博士が凄いおかげで私達のデバイスは何時も最高のメンテナンスを受ける事が出来るんだから、此れは普通に感謝しておかないとなの。


「なぁ姉やん、シュベルトクロイツは折角新しくなったんやから、名前もちょっとリニューアルしたら如何やろか?
 レイジングハートがレイジングハート・エクセリオンになったみたいに。ナハトヴァールも生まれ変わった自分の相棒に新たな名を付けてやったらえぇわ。」

「はやてちゃん――確かにそうかも知れないね。
 シュベルトクロイツは生まれ変わった訳だから……ん〜〜〜〜〜〜……うん、『シュベルトクロイツ・イクシード』なんて如何かな?」

「イクシード…超越ですか。
 良いのではないですか?何時如何なる時でも、限界を超越するであろう主なのはが持つ剣十字にはピッタリの名前でしょう。」


えへへ、そう思う?
じゃあ、私の方は此れで決まりだけどナハトヴァールは決まった?


「はい。私の方は最早完全に別物ですので、根本から名を変えてみました。
 私の新たな武装の名は『正宗』――この地に伝わる名刀の名と記憶していましたので、この最高性能の剣には相応しい名かと。」


正宗か……うん、悪くない!
其れじゃあナハトヴァール、早速エクシードと正宗の性能を試してみようか?


「是非もありませんマイスターなのは。
 実を言うと、私も正宗の性能を試したかったのです――その相手がマイスターなのはであるならば、これ程素晴らしい事も有りません。」


なら決まりだね?
グランツ博士、トレーニングルームを使わせて貰っても――



――ビーッ!ビーッ!!




「「「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」」」


此れは警報!?
此処の警報が作動したって言う事は、何らかの魔導的な事が起きたって事なんだけど……グランツ博士!!


「うん…うん……如何やら海鳴を中心にかなり規模の大きな次元震が発生したらしいね。
 しかもその次元震から、凄まじい魔力反応を観測したと来た……悪いけど行って貰えるかな皆?」


勿論です!!
大規模な次元震なんて、そんなモノを見過ごす事は出来ませんから!!――それに、シュベルトクロイツの良い試運転になりますからね!!!


「では行きましょう!この地の平和を脅かす可能性があるモノは、即時排除しなくてはなりませんから!!」

「ま、この面子に加えてアリサちゃんにすずかちゃん、更にはフェイトちゃんとアリシアちゃんが加わる訳だから、何処をどうしても負けが見えないDDMね♪」


うん、私達ならきっと大丈夫!
其れに、此れだけ大きな次元震ならアースラでも観測してるだろうから、クロノ君やリーゼさん達も来てくれるかもしれないしね。


思いがけずシュベルトクロイツ・イクシードの初陣になっちゃったけど、此れは此れで初陣に相応しいモノかも知れないの。
何れにしても、大規模次元震は見過ごせない――夜天の主・高町なのは、行きます!!








――――――








Side:ナハトヴァール


ふむ、次元震を観測したのは大体この辺りだな?
確かに、強大な魔力が弾けた残滓を感じるが……此れだけの強大な魔力を放出した者は一体何処に居るんだ?……間違いなく居る筈なんだが――


「く……あれ?此処は……海鳴?」


へ?マイスターなのは?


「ほえ?リインフォースさん?……が、ガングロにしたんですか?」

「誰がガングロですか!!と言うか、私はリインフォースではなくナハトヴァールです!!
 貴女ならば其れ位わかるでしょう!?其れとも分かっていた上で態と間違えたと言うのならばあまりにも性質が悪すぎますよマイスターなのは!!」

「ナハトヴァール?……其れに私の事をマイスターって……貴女は誰なの?」


!?……私の事を知らない?――若しかしてこのマイスターは闇の欠片……ではないな。
目の前のマイスター(?)からは、闇の欠片ではあり得ない程の魔力を感じる――だが、よくよく見ればマイスターなのはとは随分と違う部分が有るな?

マイスターなのはのバリアジャケットは黒字に蒼のラインが入っているが、目の前の彼女は『白地に蒼のライン』だ。
加えて胸部の装飾も、マイスターなのはは金属パーツだが、彼女は真紅のリボン……レイジングハートの形も微妙に異なっているみたいだ。

「質問を質問で返すようで悪いが、君こそ誰だ?
 君の外見はマイスターなのはにそっくりだが、バリアジャケットのデザインやデバイスの形状で差異がみられる……だが君は『闇の欠片』じゃない……」

「私は『高町なのは』です。仲の良い友達は『なのは』って呼んでくれます。
 それで、貴女は一体………私がマイスターって如何言う事ですか?」


……私の名はナハトヴァール――夜天の魔導書の防衛プログラムだった存在だ。
そして、君をマイスターと呼んだのは……『高町なのは』は夜天の魔導書の主であり、我等『ヴォルケンリッター』の主であるからだ!!


「えぇぇぇぇぇ!?わ、私が夜天の魔導書の主って、そんなのオカシイよ!!
 夜天の魔導書の主ははやてちゃんでしょ!?それに、闇の書の防衛プログラムはあの時確かに皆で破壊した筈なのに……」


夜天の主がはやてだと?此れは……若しかしなくても途轍もなく面倒な事になったのかもしれないな。

え〜と……其れで如何する?


「如何しましょうか……全然思いつかないですぅ……」


本気で如何したモノだろうね?
恐らく彼女は、この間現れた統夜達(コラボ小説参照)の様に『パラレルワールド』からやって来たのだろう……だが、其れをどうしろと言うのだ!?


――ヴォン


『ナハトヴァール、無事?』

「マイスターなのは!」

はい、無事ですが如何なされましたか?


『そっちに『私』が現れてないかな?』

「はい、今目の前にマイスターなのはにそっくりな魔導師が居ますが……其れが何か?」

『実はね、私やシグナム達も『私達にそっくりな魔導師や騎士』と出会ったんだよ。
 最初は『闇の欠片』かと思ったんだけど、話を聞く限りだとどうにもそうじゃないみたいなんだ……一度『時の庭園』に集まって情報を整理しよう。』



マイスターなのは達の前にも……矢張り只事ではないな此れは。
あ〜〜〜〜……悪いが私に付いて来てくれるかな?如何にも、私達の力では如何しようもない事態が起きているようだからね?


「私も訳が分からないですけど……でも……」


私の言う事を鵜呑みには出来ないか?――まぁ、当然だろうね。
初対面の相手の言う事を信じろなどと言う方が無理があるからな……ならば私は此れを君に預けよう、私の戦闘用デバイス『正宗』をな。


「此れは……如何して!!」

「『和平の使者は槍を持たない』……君も聞いた事はあるのだろう?」

「ベルカの諺でしたっけ?」


正確には小話のオチだけれどね。だが、私に君と敵対する意思はないのは分かってくれるだろう?
……此処は大人しく付いて来てくれないか?マイスターなのはに余計な心配を掛けたくはないんだ――其れは理解してくれるだろう?


「分かりました……でも、此れは返しておきますね?
 和平の使者は槍を持たないと言うのなら、相手から差し出された『槍』を返すのもまた此方が示せる和平の意思、誠意だと思いますから。」


正宗を!!
……世界は違えど、マイスターなのはの根本は変わらぬようだな?マイスターなのはも同じ状況に置かれたら、間違いなく同じ事をするだろうからね。


うん、君の意思と誠意は受け取ったから、行くとしよう『時の庭園』に。
君達が何故この世界に現れたのか――現れてしまったのか、其れを知らねば私達も動きようがないのでね。


「分かりました。じゃあ、行きましょうかナハトヴァールさん!」

「あぁ、行こうか。」

大規模な次元震に、並行世界からの渡航者とは……如何にも面倒な事になりそうだな?
いや、それ以前に時空を超えるだけの次元震を発生させるなど、彼女達は一体何と戦っていたと言うのだ?…此れだけの事態を引き起こす相手は一体…

如何やらこれは、只の大規模次元震の調査では終わらないようだな……








――――――







Side:?????


くぬぅ……閃光に飲み込まれ、漸く視界が利くようになったと思ったが此処は一体何処だ?
それ以前に無事か、シュテル!レヴィ!!!


「心配には及びませんよ王……次元震に巻き込まれはしましたが私の魔導には一切の淀みはありません――念願成就の為に動く事だって出来ます。」

「僕も全然平気〜〜〜!!」


シュテルもレヴィも無事であったか!!――此れは何にも勝る幸運だ……あの閃光の後、もう二度と会う事が出来ないのではないかと思って居たからな。

しかし、此処は一体何処なのだ?
海鳴とよく似てはいるが、同じ世界ではない事は何となく分かるのだが――



「ん?……はい、はい……分かりました、確かに其れが一番ですね。
 無理をするな?……レヴィは兎も角、王を連れ出すには手間がかかります……分かりました、必ずや一時間以内に其方に参上いたします。」


如何したシュテルよ?


「高町なのはからの通信ですが――単刀直入に言います、今直ぐ何も言わずに私と一緒に『時の庭園』に行って下さい。
 無論レヴィも同席させますが、如何やら事態は私達の予想の範疇を遥かに超えた次元で起こっているようです……其れを解明する為にも是非に…」


我等の予想をも上回る事態だと?……確かに其れは捨て置けんな。
良かろう!此方から出向いてやるのは些か不快だが、今の我等の現状を知るには其れが最もベターな選択肢だろう。



だがしかし、一体何が起きたと言うのだ?


U-Dの姿も見えぬし……如何にも嫌な予感がするな?――此れが我の杞憂であったのならばどれ程楽だった事か……


数十分の後、我の希望的予測が全て粉砕される事になる等とは、この時は予想すらしていなかったのだけれどもな……














 To Be Continued…