Side:???
嘘でしょう…まさか闇の書の主が魔導師として覚醒なんて…!
それに其の友達の子も…!
それ以前に、魔法技術の欠片もない世界でありながら独学で魔法理論を確立して、更にデバイスまで作る人が居るなんて!
「おまけに…今のあの子の砲撃魔法――本当に魔法を初めて使ったとは思えない…」
管理局員の中にだって、アレだけの砲撃を放てる魔導師は一握りも居ない…驚きだわ。
守護騎士達も、私達が知るよりも力を増しているしね…
なにより、あの子の一連の行動はフェレットの子を『助けたい』って一心だった。
1人じゃ碌に動くことすら出来ないのに…それでも助ける為に迷わずに力を手にした。
ロッテが言ってた通り本当に良い子だよ……周りの仲間達も含めてね。
うん、確かにあんな子を凍結封印なんて出来ないよ!
其れにあの子にそんな事をしたら、こっちも火傷じゃ済まない痛手を被ることにもなりかねないしね…
計画の見直しと練り直しが必要だわ……
せめてあの子が、自分勝手で我侭に蒐集でもしてるならこんな思いはしなかったんだろうね。
闇の書を=悪と決め付けて、主の人となりを考えずに封印って手段をとろうとした…此れは報いかもね…
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天7
『主と友と騎士達と…』
Side:はやて
「なのはちゃんが…死ぬやと…?」
何で…何でそないなことになるの!?
何で闇の書を完成させへんと、なのはちゃんが死んでまうの!?そんなんオカシイやろ!!
「冗談じゃないわよ!!何でなのはが!!」
「なのはちゃんが死ぬなんて認められないわね〜?ZHK、絶対不許可よそんなのは!」
「………」
「答えて下さいシグナムさん!」
「如何してなんです?何故なのはさんが…」
なんで、如何してそないな…
「なのはは、闇の書に侵食されてんだ……其のせいで足を動かすことが出来ねぇ…」
「「ヴィータ!」」
「ヴィータちゃん!?」
「どの道、分っちまうことなんだ…隠してたって意味がねぇ…」
「だが…!!」
「うっせーシグナム!アタシはなのはに死んで欲しくねぇけど、でも変に隠し事するのも嫌だ!
だったら、許可貰って正々堂々蒐集してなのはを助けてぇ!!」
「…!!…そうだな、すまなかった…」
……ヴィータの必死さ…ホンマの事なんやね?
如何して…侵食なんて、そないな事が…
「…教えて、シグナム、シャマル。
何で闇の書を完成させないと私は死んじゃうの?それから侵食ってなんなの?」
「主なのは…!ソレは…」
――ファンファンファンファン!!
!!パトカーのサイレン!!
そか、モンスターの初撃の時は結界が張ってなかったんやな?
それで、何かが壊れる音を聞いた近所の人が通報したんや……アカン、話は後や、先ずは離脱すんで!!
「取り敢えず近くの公園に避難です!!」
「其れが一番ですね、アミタさん!ザフィーラ!」
「御意に!」
「はやてちゃんも乗って!シグナムとシャマルは、アリサちゃんとすずかちゃんをお願い!」
「はい!」
「了解しました。」
ここでもリーダーなのはちゃんやね。
…やけど、ホンマにどうしてなのはちゃんが……闇の書…どうやら思った以上の代物みたいやね…
――――――
Side:なのは
結局公園には行ったけど、時間が時間だからって言うことで皆で家に。
玄関ではお兄ちゃんとお姉ちゃんが待ってくれてた。
やっぱり心配はするよね…ゴメンナサイを皆でしたの。
で、時間が時間だから今日はアリサちゃんとすずかちゃん、アミタさんとキリエさんはお泊りって事に…
なったんだけど、リビングの空気が微妙なの。
仕方ないか…さっきの続き、私の死と闇の書の関係の話だもん。
「ふざけるなよ…なんでそんな大事なことを最初に言わなかったんだ!なのはが死ぬ?冗談じゃない!!」
「我々だって知らなかったんだ!今の今まで、蒐集を禁じた主など居なかった!
誰もが書の主になった途端に、闇の書の持つ大いなる力を欲して蒐集を命じたのだ…蒐集をしなかった場合の事など…知る由も無い!」
「だが!!!!」
「落ち着きなさい恭也。」
お父さん?
「父さん?」
「シグナムも落ち着いてくれるかな?」
「士郎殿…はい。」
「事情は良く分ったよ。
闇の書は、つまり本来は蒐集で得るべき力を、蒐集を行っていないが為になのは自身から蒐集している。
その影響で、なのはは足に病を抱え、更に其れが進行していると言う事だね?」
「そう、なります……我等の存在が、主を苦しめている……申し訳も何もない…」
シグナム…違うよ!
蒐集を禁じたのは私自身の意志だもん!シグナム達が悪いわけじゃない!!
「ですが…!!」
「はい、ストップ。今は解決策を探すほうが先でしょう?」
「お母さん…」
でも、解決策なんてそんな……
「有るわ。有るわよ解決策!さっきヴィータが示してくれたじゃない!!」
「アリサちゃん?」
「なのは、アンタは『人に迷惑が掛かるから』蒐集を禁じたのよね?
なら、人に迷惑が掛からない方法だったら如何?それでもアンタは蒐集を禁じる?蒐集する事が人助けだとしても?」
ふぇ?ど、如何言う事なのアリサちゃん?
人に迷惑掛からないだけじゃなくて、人助けって?
「あ、さっきの宝石!」
「せや…え〜と、そう!ジュエルシードや!!」
「ジュエルシード!?」
な、何でそうなるの!?
「さっきヴィータはジュエルシードから魔力を蒐集しとった。
なぁ、ユーノ君、魔力蒐集されたジュエルシードはドナイなるんや?」
「ジュエルシードは元々が純粋な魔力の結晶なんだけど、それから魔力を吸い取ったら只の石に過ぎない。
宝石としての価値はあるかもしれないけれど。
ジュエルシードは他者の願いを歪んだ形で叶えてしまう危険な代物だから、本来だったら封印して保管するのがベストなんだ。
けど、封印した上で更に魔力を吸い取ってしまえば、或いはそっちの方が安全かもしれない。」
「成程……その手がありましたか!」
「それなら誰にも迷惑は掛からないし、ジュエルシードを集めるユーノ君のお手伝いにもなるわね〜♪」
へぇぇ!?え、でも…ジュエルシードって…大丈夫なの?
「暴走状態なら兎も角、一度封印してしまえば安定した魔力結晶だからね。
其れを使う分には……まぁ、僕としてもジュエルシードを集めるのを手伝ってもらえるのはありがたいしね。」
「ユーノ君…」
確かにそれなら誰にも迷惑は掛からないし、私も死にたくないけど…
「主なのは、私の我侭を聞いていただけますか?」
「シグナム?」
「我等は、永き時を闇の書と共に渡り、様々な主と巡り会いました……本当に様々な。
我等の中で、何時の頃からか覚醒=書の完成の為の蒐集の日々の始まりと言う認識が出来上がっていました。
当然、此度もそうなるだろうと思っていました――が、そうではありませんでした。
貴女は我等を『人』として扱い、温かく優しい、穏やかな暮らしと言うものを与えて下さいました。
私は…私達は貴女を喪いたくはない――他者に迷惑を掛ける事だけはしないと誓います!
ですからお願いです、貴女を死なせないためにも、書を完成させることをお許し願いたい…!」
「なのは、俺からも頼む……闇の書を完成させてくれ。
俺は…いや、俺だけじゃない。父さんと母さんも、美由希も、他の皆だってお前が死ぬのは…嫌だ。」
お兄ちゃん……
そっか…私の命は私1人の物じゃないんだね。
私が死んじゃったら悲しむ人がこんなに多いんだ――
「分った。」
「なのは?」
「私だって死ぬのは嫌だし、私が死んじゃったら悲しむ人が多いって分ったから。
でも、人に迷惑を掛けるのは絶対にダメ。此れだけは守ってほしいの…出来る?」
「はい…誓います。騎士の剣と、誇りに懸けて。」
「あぁ、鉄槌の名に懸けて誓うぜ。」
「湖の騎士の名に懸けて…」
「我が爪牙に懸けて誓いましょう、我等が主よ…!」
シグナム、ヴィータちゃん、シャマル、ザフィーラ…ありがとう。
「ん?でもちょい待って?闇の書て結局何ページあるん?
さっきのジュエルシードでドンだけ埋まったんやろか?」
「全部で666ページ…さっきので…10ページ半てとこだな…」
「10ページ半…ジュエルシードは全部で何個あるん?」
「21個…シリアルナンバーで多少の含有魔力の差は有るだろうけど、其処まで大きくは無いと思う。」
「って事は全部集めても210ページちょい!?全然足りないじゃないの!!」
半分にも満たないね…ま、まぁソレはしょうがないんじゃないかな?
「まぁ、確かに数はしゃーない…やけど足りない分は稼がなアカン!!
ちゅー事で、私の魔力も蒐集せいや!!」
はやてちゃん!?
「アタシの魔力だってくれてやるわよ!!」
「私も!!」
アリサちゃんとすずかちゃんまで…!
「当然私達だって差し出しますよ!!」
「なのはちゃんに魔力をプレゼント〜、NMP〜〜♪」
アミタさんとキリエさんまで!?
ちょ、ちょっと待って!幾らなんでもソレは…!
「シャラップやなのはちゃん!恭也さんも言うとったやろ?なのはちゃんが死ぬのは絶対嫌や!
それやったら、魔力の一つや二つくれたるわ!大体リンカーコアってのを蒐集されたからて死ぬわけやないんやろ?」
「え?えぇ…コアの萎縮による一時的な魔力閉塞は有るけど、時間が経てば元に戻るわ。
けど、コアの蒐集は物凄く負担が大きいし、蒐集される側には苦痛が…!」
「苦痛がなによ!書が完成しなかったら、なのははそれ以上の苦痛に苛まれた挙句に命を落すんでしょ?
だったら、アタシ等が喰らう苦痛なんて蚊に刺されたほども無いわよ!」
でも、だからって…!!
「異論は聞きませんよなのはさん!此れは私達がそうしたいからするんです!」
「アミタさん…」
…本当に私は幸せ者だね。
此れだけ沢山の人に思われてるんだもん……本当に…
「はやてちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん、アミタさん、キリエさん…ありがとう。
本当に…本当に…ありがとう…私はきっと、世界で一番の幸せ者なの…」
「…本当にそうだね。
ありがとう皆、親として僕と桃子さんからもお礼を言わせてもらうよ。」
「俺と美由希も、兄妹としてな…」
「何を仰いますか!大切な友のためです!此れくらいは普通ですよ!!」
それでもです。
本当に、ありがとうございます…!
「良いって事よなのは!…あれ?でもそうなると誰から蒐集するかよね?
アタシとすずかは兎も角、はやて、アミタ、キリエは時間おいて蒐集しないと拙くない?」
「うん、私とアリサちゃんは良いとして、はやてちゃん達を一気に蒐集したらジュエルシードと戦える人が居なくなっちゃう。
シグナムさん達も何時も動けるわけじゃないし、少し考えないと…」
確かに言えてるかも……って、如何したんですかキリエさん?
「ん〜〜、アリサちゃんとすずかちゃんが望めばなんだけど、多分2人のデバイスはパパに頼めば作ってくれるわよん?
人助けの為に魔法を使うって言うなら絶対反対しないし〜〜…
それなら、誰から蒐集しても特に問題はないんじゃな〜い?」
「…流石は博士なの…」
でも納得。
にゃはは…思わぬところから思わぬ結果になったね……此れも結果オーライって言うのかな。
うん、皆の魔力はありがたく頂きます!……何度も言うけど、本当にありがとうなの…
「良き友に恵まれたのですね、主なのは…」
「うん!最高の友達なの!!」
自慢のね。
「それじゃあこの件は此処までにしようか。
さてと…お泊りの皆は客室を使うとして…其のフェレット――基ユーノ君は如何しようか?」
ほえ?私とはやてちゃんの部屋で良いんじゃないの?
あんまり大きくないし、籠に毛布でも敷けば充分だと思うの。
「…お前は私と同室だ…!」
「ザフィーラ?」
「主よ、ユーノは男です!同室には出来ません!!」
え?でもユーノ君フェレットだから大丈夫だと思うよ?
『Master、ソイツは実は人間の少年ですよ?』
「「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」」
レイジングハート…如何言う事かな?
『ですから人間の少年なんですよその駄フェレットは。
消費エネルギーを回復する為にフェレットに……其れを利用してMasterの着替えや裸体を眺めようとしているんですよ?』
「ちょっとレイジングハート!?それ濡れ衣だから!僕そんなこと思ってないから!?」
『口ではなんとも言えますよ?現にMasterが同室提案をしたとき異を唱えなかったでしょう?
ソレはつまりそう言う下心が有ったに決まってるでしょう、この淫獣。』
「酷いこと言われてる!?」
『しかもあわ良くば、Masterのベッドに入り込んで、しかも寝巻きの中に入り込むつもりでしたね?
あぁ、恐ろしい。可愛い顔して悪魔とはこの事ですね。正に淫獣、救いようがありません。』
「ちょっとぉぉ!?」
…ユーノ君?
…シャマル。
「はい。…少し大人しくしてて…」
――バキィィン!!
「バインド!?」
「…恭也殿、矢張り動物を飼う場合は飼い主が責任を持って色々やるべきだと思うのだが…」
「そうだな。ご近所の迷惑にならないように、最低限の事はするべきだな………切り落とすか。」
「えぇ!?ちょ、待って!!僕の話を聞いて!!てか助けて皆〜〜!!」
「いやぁ、手術代無料はありがたいね桃子さん♪」
「そうですね士郎さん♪」
「ちょ〜っとソレは見過ごせないかな?」
「ナニ切り落とされて往生すればえぇんや…」
「潰されちまえ!」
「あのSOSは無視すればよかったわ…」
「変態さんだったんだ、ユーノ君…」
「救いが無い!?」
……取り敢えずユーノ君、覚悟を決めやがれなの。
幾らなんでも、ソレは許せないかな?……ユーノ君、少し頭冷やそうね?
「えぇぇぇぇえっぇぇ!?」
「お兄ちゃん、シグナム…」
「任せておけ…」
「御意に…」
レイジングハート…
『All right My Master.』
「せめてもの情けだ、命まではとらん…」
「だが、暫くは男としての機能は失うと思え…」
「バイバイ、ユーノ君…」
『Die♪』
「ちょっとぉぉぉぉ!?」
――只今ユーノ君を粛清中に付きちょっと待っていてなの。
「…レイジングハートの鬼…」(ガクリ)
『お褒めに預かり恐悦至極!』
うん、多分褒めてないと思うよ?
まぁ、それじゃあ予定通りユーノ君はザフィーラの部屋で。
…ザフィーラ、ユーノ君の事お願いね?
「お任せを…不審な動きをしたら其の瞬間に磨り潰しましょう。」
「OKザフィーラ其の意気や。」
まぁ、ザフィーラが一緒なら安心だね。
…それにしてもユーノ君がそんな人だったなんて…油断も隙も無いの。
あふ……もう10:30…寝ないとだね。
うん、お休みなさいの時間なの…
「あらあら…色々有って疲れたろうから、ゆっくり休みなさい…皆もね。」
そうするの…
慌しかったけど、良い一日だったのかな?
皆の思いを知ることが出来たし、其れに絆が深まった気がするから…うん、こんなのもきっとありなんだね…
――――――
Side:???
「反応があったのはこの場所…」
「だけど今は無反応…」
如何言う事だろう?
既に誰かが回収したのかな、アリシア?
「有るかもね。…此処に魔導を使える人が居るのが前提になるけど。」
「低いけど確率は0じゃない……」
危険なロストロギア『ジュエルシード』。
母さんに言われて、アリシアと回収に来たらこの有様…
でも誰かが回収したとしたらソレはなんで?
叶えたい目的がある?それとも此れの危険性を知っていて封印を行ってる?
もし後者なら協力体制が敷けるかも知れない。
「一度お母さんの所に戻った方が良いかも。
現場の現状を伝えて、其の上でどうするかの指示を仰いだ方が良いと思うよ、フェイト。」
「そうだね……さすがアリシア。」
「こう見えてもお姉ちゃんだから♪」
じゃあ戻ろう、母さんのところに。
ジュエルシードは、絶対に野放しに出来ないものだからね…
To Be Continued… 
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