Side:なのは


「はやてちゃん、ココアパウダー取ってくれる?」

「え~~っと……純ココアの方でえぇんよね?姉やんのチョコはそろそろ完成みたいやな?何とも美味しそうなチョコやないの。
 私も貰えるけど――この如何見ても『特別』な感じがするトリュフはシグナム宛やろかな~~?まぁ、シグナムは姉やんの筆頭騎士やし、姉やんもなぁ?」

「にゃぁぁぁぁあ!!た、他意はないの!!たまたま……そう、たまたまシグナムに上げるのだけ物凄く上手に出来ちゃっただけだからね!?」

「へ~~~、そうなん?
 私はてっきり、姉やんはシグナムにお熱なんかと思っとったんやけど、私の勘違いやった言う訳か~~。ナンヤザンネンヤナーーーー!!」


ぐ……滅茶苦茶ワザとらしいよはやてちゃん。


さて、もう分かると思うけど、2月も半ばに差し掛かって、明日は一大イベントと言っても過言じゃないバレンタインデー。
明日は学校がある、私とはやてちゃんとヴィータちゃんと美由希お姉ちゃんは今日の内にプレゼント用のチョコレートを作成中。今年は上手く出来たみたい。

流石に3回目ともなれば、溶かして固めるだけのチョコレートも上手になるし、トリュフみたいな物も作れるようにはなるってモノだよ。
トッピングは巧く出来たし、ラッピングも綺麗に出来たから後は渡すだけだね――確かにはやてちゃんの言うように、シグナム用のが一番上手かもだけど。


だけど、多分此れは無意識なんだと思うんだよね。
夜天の主として、夜天の筆頭騎士を一番に思って居るのは間違いないよ。――勿論、守護騎士の皆は大事だけど、一番はシグナムなのは否めないもん。

シグナムは喜んでくれるかな、私のチョコレート?喜んでくれるといいなぁ、喜んでほしいなぁ……


「うおぉぉう……姉やんがメッチャ乙女や此れ。」

「頑張れなのは、相手が同性でもお姉ちゃんは全力で応援するから。」

「何て言うか、其処までなのはに思われてるシグナムに、アタシはちょびっとジェラシー……」


うにゃあぁぁぁぁ!!違う!!違うの!!ただ単純に、シグナムに私のプレゼントを喜んでほしいだけなの~~~~~~!!!












魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天68
『Sweet Valentine Day♪』











Side:シグナム


今日はバレンタインデー……女性が男性にチョコレートのプレゼントと共に己が思いを伝える日らしいが、最近では同性での『友チョコ』なる物があるとか。
桃子殿から教えて頂いたが、そうなると主なのは達が昨日作っていたのはその『友チョコ』なるモノなのだろうか?

こう言っては何だが、主なのはもはやて嬢も、月村もバニングスも意中の男性が居るとは思えん――ヴィータに至っては論外だ。
美由希殿もそうは見えないし、そう考えると士郎殿と恭也殿以外の男性にプレゼント用のチョコレートを作るとは思えん……義理ならチロ○で充分だしな。


まぁ、其れは今日中に分かる事だろうが――さて、私は如何したモノだろうな?
私とて、バレンタインのイベントは堪能したいし、主なのはに日頃の感謝を込めたプレゼントを送りたい。

しかしだ、幾ら桃子殿に仕込みを任される身になったとは言え、この身はマダマダ未熟――果たして、主に献上するに値する物が作れるかどうか……


「あら、大丈夫だと思うわよシグナムなら♪」

「桃子殿………」

何故、そう思われるので?


「誰かを思う気持ちや、愛情って言うのは最高のスパイスと言われているわ。
 貴女がなのはの事を心から思って居るなら恐れる事はないわよ?その思いを込めれば、最高の一品が出来上がる筈ですもの♪」

「!!!」

頭をハンマーで殴られたような………とは、正にこの事だな。
彼是考えるよりも、己の思いや気持ちを込めれば自然と最高の物が出来上がると言う事か!桃子殿が言われると、更に説得力がありますね。


「うふふ、頑張ってね?
 調理器具や材料は好きなように使ってくれて良いから、貴女達のやりたいようにやってごらんなさい?」

「「「ありがとうございます。」」」


さて、では始めるか――の前に姉さん、シャマルは?


「案ずるな、バインドでグルグル巻きの芋虫にして天井から吊るしておいた。」

「私とナハトのバインドの三重掛けだ、如何にシャマルでも解く事など出来んさ。」

如何して、私は作っちゃダメなのよ~~!手伝うくらい良いじゃない~~~!」


馬鹿者!主なのはを毒殺する気かお前は!嘗て、クッキー状の謎の新生物を錬成したのを忘れたとは言わせんぞ!
菓子用のチョコレートを湯煎して作るだけの手作りチョコとは言え、お前が手出しをしたら、最悪の場合はまたしても謎の新生物が生まれてしまうわ!!


「そ、そうなったらそうなったで、またタマモちゃんに食して貰えば……」

「更に巨大化したら如何する心算だ?」

「ゴメンナサイ。」


宜しい。
まぁ、調理は無理だが箱詰めやラッピングの時はお前の手も借りるぞ?私と姉さん達よりも、そっちの方はお前が上手だからな。


「あら、任せて♪」

「だから、出番が来るまでは其処で大人しくしておけ。味見くらいはさせてやるから。」

「しょぼ~~ん………」


まぁ、そう言う事だから。……にしても、今更だが、リイン姉さんは何でシャマルを料理下手に設定したのだろうな?考えるだけ徒労か。
さてと、では作る事にするが――姉さん達はどんなチョコレートにする心算なんだ?私は定番のトリュフチョコで色々なバリエーションを作る心算だが。


「溶かして固める型抜きチョコレートにしようかと思っているよ。料理は得意だけど、流石に1000年以上のブランクがあるから、先ずは簡単にね。」

「私はちょっと斜め上で、チョコレートを使ったクッキーを作ってみようかと思ってる。
 生地に練り込んだり、表面をコーティングしたり、色々と出来そうだからね。」


其れならば被る事はないか。
ふぅ……よし!私の思いを目一杯込めて、主なのは達へのバレンタインのプレゼントを作るとするか!



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よし、取り敢えず色々なトリュフが出来たな。
ミルクにビターにホワイトを基本に、ドライフルーツ入り、キャラメルアーモンド入り、ゼリー入りに……本当に我ながら、良く色々作ったモノだ。

後は表面にパウダーをかければ完成だが、ココアパウダーやシュガーパウダーだけと言うのも、少々あり来たり過ぎて面白くないな?
ふむ、どうせだから細かく砕いたナッツ類や、ドライフルーツなんかを塗しても中々美味しいかもしれん。コーヒーパウダーも行けるかもしれないな。

いやいや、ホワイトチョコのトリュフには抹茶パウダーもありかも知れない――ふむ、こうして考えると一口にトリュフと言ってもバリエーションは無限だな。

時に姉さん達の方は如何だ?巧く出来ているか?


「シグナムには及ばないが其れなりにね。
 流石に溶かして型で固めるだけでは味気ないので、アラザンや小さなビスケットでデコレーションをしてみたよ。」


ふむ、リイン姉さんのはシンプルながら見た目にも可愛い仕上がりになって居るな。してナハト姉さんは……


「力作だ。」(やりきった顔)

「「普通にスゴ!!」」


チョコレートを使ったクッキーを作ると言っていたが、まさかの超デフォルメ主達型のクッキーだと!?しかも似顔絵クッキーじゃなくて全身!?
普通にねんプ○サイズの主達のクッキーが立って居る………ドレだけ器用なんだナハト姉さん?此れは、普通に商品として売り出せるレベルだぞ!!


「頑張った。」


うん、頑張ったのは良く分かった。物凄く頑張ったと思うぞ私は。………そう言えば、人間だった頃からナハト姉さんは手先が器用だったな。
さて、残るはラッピングな訳だが、此処で出番だシャマル!さぁ、如何ラッピングすれば良いと思う!!


「ならば応えましょう!シグナムはシンプルに箱詰めにしてリボンを巻く!リインフォースも箱詰めだけど、箱はファンシーなモノにして!
 ナハトヴァールは箱詰めじゃなくて袋詰めにしましょう!そして飾りのリボンは渡す相手の魔力光かイメージカラーがベストであると判断するわ。」


成程……と言う事は――


「我が主は「マイスターなのはは「主なのはは桜色のリボンだな!!!」」」


満場一致とはこの事だ!主なのはのイメージカラーと言えば、魔力光であるあの眩いばかりの桜色をおいて他には有るまい。
よし、此れでラッピングも完了だ。主なのはは喜んで下さるだろうか?喜んで下さると良いな――貴女のプレゼントには少し仕掛けをしておきましたので。








――――――








Side:はやて


さぁて、バレンタインデーと言う名のお茶会を始めよか~~~。
翠屋の屋外テーブルを借り切って、高町姉妹とすずかちゃんとアリサちゃん、ザフィーラを除くヴォルケンズとアミタさんとキリエさんとテスタロッサ姉妹。
お兄ちゃんとザフィーラにもプレゼントは用意しとったんやけど、お兄ちゃんは忍さんと、ザフィーラはアルフとバレンタインデートやから、渡すんは後でやな。

なので、私等は女子だけでバレンタインのお茶会な訳やけど、美由希お姉ちゃん、その紙袋に詰め込まれた大量のチョコレートは何やねん?


「全部シグナム宛……如何にもウチの学校の子達の中には、店に来てシグナムにハートブレイクされた子が多いみたいなのよ。
 中でも、執事服を着た時のシグナムにマインドブレイクされた子は数知れず……渡しておいてくださいって言われて預けられてこの量だよ。
 で、こっちの袋は私宛――主に剣道部と文芸部の後輩の子達からね。私って取り立てて美人て事もないと思うんだけど……アミタとキリエには負けるし。」

「何を仰いますか!美由希さんは文芸部での『知的美女』と、剣道部での『凛とした侍ガール』の双方が物凄い魅力となって居るんです!!
 特に剣道に於いては、他行との練習試合で毎回神速の一本を決めるのは我が校の誇り状態です!剣道部最強の名は伊達ではありません!!」


成程、シグナムと美由希お姉ちゃん宛のチョコ言う訳か。
まぁ、競技としての剣道をやっとる人相手に、お姉ちゃんが負ける事はないわな――小太刀二刀御神流は実戦を重視した戦闘用の『剣術』なんやから。

にしても、その量食いきれるんかい?お姉ちゃんのかて10個やきかへんけど、シグナムのは軽く30個越えとるやろ!?…此れは食材に回さなアカンね。


取り敢えず、其れはオイオイ考えるとして、バレンタインのプレゼント交換と行こうやないの?
ハッピーバレンタインやで♪








ほうほう、此れは中々凝ったもんやな?
バラエティ豊かなトリュフチョコに、シンプルながらも鮮やかな型抜きチョコに、終いには超デフォルメした私達の形をしたチョコレートクッキーとは、お見事や!

姉やん達が作っとった物は分かってたけど、シグナム達がどんなモン作ってたかは分からへんかったもんね。


アミタさんとキリエさんのチョコも、似顔絵付きの型抜きチョコと、ファンシー感たっぷりのデコレーションチョコレートと見事やったからな。


「「!?」」


ん?ドナイしたの姉やん、シグナム?2人とも顔が真っ赤やで?


「「な、何でもない!!!」」


?……姉やんがシグナムから貰ったのも、シグナムが姉やんから貰ったのも、特に他と変わった事はないみたいやけど……若しかして『特別』やったか?
まぁ、此処で其れを問うなんて無粋な事はせぇへんから、姉やんもシグナムも思ったようにやるとえぇよ?私等は二人の味方やからね。


「は~~い、お待たせ~~。
 今日のおやつは、翠屋特製バレンタイン仕様のチョコレートシュークリームよ♪」

「「「「「「「「「「「「「待ってました~~!!」」」」」」」」」」」」」


取り敢えず今は、お茶会を楽しもか?
何よりも、カスタードとチョコクリームをココアのシュー生地で包んだ、お母さん特製のチョコシューは絶品やからな~?ん~~~、美味しい!!

お母さんのシュークリームは天下無敵やな!異論は認めへん!!
前に雑誌に書いてあった『翠屋のシュークリームは、市外や県外からも買いに来る人が居るほどの究極至極の逸品スウィーツ』てのは誇張やないで!!


今年のバレンタインは、今まで以上に良いイベントになったみたいやね♪――あ、ヴィータ、そのシュークリームは私のや!!


「るっせぇ、早いモン勝ちだ!」

「ぐぬぬ……ならば最終奥義――お母さん、シュークリームおかわり!!」

「は~~い、ちょっと待っててね♪」

「此処で、その奥義だと!?……良いぜはやて、おかわりもアタシが食い尽くしてやる。」


クックック………やってみろやヴィータ。既に一度負けた私の戦闘力は、敗北パワーアップ補正を受けて3倍になっとるんや、次は負けへんで!!





「我が主、そろそろ突っ込んだ方が良いでしょうか?」

「突っ込まなくて良いよリインフォース。如何せ徒労だし、行く所まで行けば自然と終るだろうからね。」


止めて!分かってて放置プレイは止めて姉やん!芸人にとってスルーは一番辛い反応なんや!せめて、せめて軽くでも良いから突っ込んだって~~!!


「だが断る!!」

「ピギャラッパァ!!」

おふぅ……最後の最後でやられてしもうた……この流れから、あっさり切って捨てるとは流石は姉やん――今年のバレンタインは生涯の思い出になるな…








――――――








Side:なのは


今年のバレンタインも終わって、最近は日課になりつつある夜の星空観察。――済んだ冬空は本当に星が良く見えるね。


「えぇ……ですが、昔のベルカはもっと星が見えて居ました。世界と環境の違いと言うのは、思った以上に大きいモノであるのかもしれません。
 けれど、昔のベルカで見た星空よりも、この海鳴で見る星空は美しい、そう感じます。或は、此処は平和な世界ゆえにそう感じるのかもしれませんが。」


シグナム………そっか、昔のベルカはもっとすごい星空だったんだ、見てみたかったな。
あ、そうだ!シグナムから貰ったトリュフチョコレート凄く美味しかったよ?中に入ってたキャラメルアーモンドとかがアクセントになってて見事だったの!


「そう言って頂けると作った甲斐もあります。主なのはから頂いた生チョコも美味でしたよ。
 で、その……あの、蓋の裏側に書かれていた事なのですが……あの、本心と取って構わないのですよね?///

「あう……ほ、本心なの!!偽りなく本心なの!!
 そ、それよりもシグナムの方こそ、蓋の裏側に書かれてた事は、本心だと取って良いんだよね!?///

「む、無論です!!私は、主なのはを愛しています!!」


め、面と向かって言われると、破壊力が~~~!!
私はシグナム用のチョコの箱の裏側に『大好き』って書いたんだけど、シグナムから貰ったチョコの箱の裏側には『愛しています』って……うぅ、顔が熱い。

だ、だけど女の子同士なんておかしくないかな?


「何かおかしい事でも?古代ベルカでは同性のカップルなど割と普通でしたよ?」

「何そのカルチャーショック。百合カポー普通とか、流石に衝撃が青眼の白龍クラスなの。」

『お互いが真に心の底から好き合っているのならば、年齢差や性別など些細な問題だ』と、我が父上は申しておられましたが如何でしょうか!」

「OK、其れは多分真理だと思う!!」

至言だね其れは。
だけど安心した……両想いだったんだね。


「改めて誓いを立てますか?」

「うぅん、手にも唇にもして貰ったから充分――その代り、ハグしてほしいの。」

「そう言う事でしたら、幾らでも。」


――ぎゅむ……


ん~~~……シグナムは剣士と言っても、やっぱり温かくて柔らかいね。――うん、大好きだよ。
まさかまさかの事だったけど、最高のバレンタインだった。――今年のバレンタインを忘れる事は、生涯有り得ないと思う。其れ位良い物だったからね♪













 To Be Continued…