Side:なのは
時は2006年1月1日――つまりは新年。
その新しい年の始まりに、私達は夜が明ける前から家族全員で海鳴臨海公園にやって来ていた。勿論、ヴォルケンリッターの皆も一緒にね。
「まだ陽も昇って居ないと言うのに、何故このような場所に?
何か考えがあっての事とは思いますが、この寒空の中を一家総出で此処に来る意味は果たしてあったのしょうか?…少しばかり解せないのですが……」
まぁ、そう思うのは仕方ないかな?
だけど、その意味はもうすぐ分かると思うよ――水平線の向こうをよく見てて?
「はぁ?」
「水平線の向こう……何も見えねぇ……」
「ヴィータちゃん………だけど、何が起こるのかワクワクです♪」
でしょ?……さて、そろそろだね――新しい年を告げる陽光のお目見えだよ!
――カッ!!!
「「「「「「!!!!!」」」」」」
「やっぱり何時の時代であっても、新年の日の出と言うのは素晴らしいですね……よもや、もう一度この陽光を拝めることが出来るとは思いませんでした。」
ふふ、シグナム達は驚いたみたいで、お市さんは満足してくれたみたいだね?
此れが新しい年の始まりを告げる『初日の出』だよ――どうだったかなぁ?
「実に見事でした主なのは……アレほど美しい陽光を拝んだのは初めてです。
あの陽光に改めて誓いましょう、我等ヴォルケンリッターは、この先何が起ころうとも、身命を賭して主を護ると!!
例え無様な姿を曝すこちになろうとも、生きて主を護り抜くと、この陽光に誓いましょう――此れからも宜しくお願いしますMeister Nanoha.(主なのは。)」
うん、今年も宜しくねシグナム、皆!!
「「「「「「Jawohl Meister Nanoha.(了解です、我が主なのは。)」」」」」」
ふふ……本当に頼りになる守護騎士なの♪――さて、今年の元旦はどんな事が起こるかなぁ?
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天65
『謹賀新年〜A Happy New Year〜』
Side:シグナム
初日の出とやらを拝んだ後で家に戻って来た訳なんだが……主なのは、此れは一体何でしょうか?
普段翠屋で着ている『矢絣袴』とよく似た形状ですが、此方はより『美』を意識したデザインではないかと思うのですが……此れを一体如何しろと言うので?
「此れはアレだね、有無を言わさずに私達に『振袖』を着させるつもりだろうね。
確かに、此れから初詣に行こうって言うのに、ジャージやTシャツじゃ幾ら何でも締まらないから……お母さんなりの気遣い、なのかなぁ?」
「……そうであると言う事にしておきましょう。下手に考えると面倒な事になりそうですので。
ですが、如何に用意してくださったとは言え、我等は着物の着付け技術は皆無であるが故に如何着て良いか分からないので、宜しく指導願えますか?」
「そう言う事なら問題ないよ。
幸い、私もはやてちゃんも着付けは出来るし、お市さんも着物の着付けは出来ますよねぇ?……ある意味私達よりも知ってるかも知れませんから。」
「で、出来ますよ!最低限の事は覚えています!!」
「せやけど着付けか〜〜……久々に燃えそうやねぇ?今回は素材がグンバツだけに、ものゴッツ気合入ってくるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
え、あの、はやて嬢!?
ちょ、ちょっと待って!!うわぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
――10分後
「見事なまでに着付け完了だね?――流石ははやてちゃん………」
「ふっふっふ……私の着付けスキルを舐めたらアカンで姉やん?」
何が何やら分からぬままに、気が付けば振袖とやらに着替えて居ただと!?……一体どれだけのスピードを持ってして着付けをしたのか実に疑問だな。
とは言え、無事に着付けが出来たと言う事は喜ばしいし、振袖のデザインも実に我等にあっていると思いますからね。
主なのはとはやて嬢と市は、己の魔力光をイメージした色で、我等は夫々の騎士服の色をイメージして、実に見事なモノです。
む?そう言えば、女性はこの様な着物を着るとして、男性はどのようなモノを着るのでしょうか?
「羽織袴だね。
ザフィーラは、多分お父さんかお兄ちゃんに着方を教わってると思うよ?」
「ザフィーラの羽織袴姿……有りやな。」
羽織袴と言うと、以前にテレビで見たアレか?
確かにザフィーラには良く似合いそうだし、士郎殿や恭也殿も良く似合う事でしょうね。――時に、ヴィータの振袖だけは妙に丈が短いようですが……
「多分、活発的なヴィータちゃんは通常の丈の振袖だと動き辛いだろうって、お母さんが考えてくれたんじゃないかなぁ?
ほら、夏祭りの時の浴衣もヴィータちゃんはミニスカートタイプだったしね?」
「成程納得です。
しかし主なのは、此れから向かう『初詣』とは一体どのようなモノなのですか?取り敢えずテレビでは神社に人が大勢集まって居たようですが……」
「うん、神様に新年のご挨拶と、今年1年無事に過ごせますようにってお願いに行くってところだね。他にも自分の願望成就の祈願とか。
まぁ、新年のお決まりのイベントみたいなものだから、そんなに固くならなくて良いと思うよ?」
そうですか。
しかし、神への新年の挨拶を兼ねての願望祈願か……まぁ、私の願いなど決まりきって居る事だが、其れは自らの手で成し得るモノだ。
だからそうだな、神には私の進む道を見守って居てほしいと頼んでみるか。
――――――
Side:なのは
皆の着付けも終わって、いざ初詣に!
因みにお姉ちゃんも振袖に着替えてたけど、お母さんは小袖だった――何でも振袖は『未婚の女性が着るモノ』なんだって。そうだったんだ。
で、予想通りザフィーラの羽織袴姿は凄くカッコ良かったの!
褐色肌と銀髪に、濃紺の羽織袴がこれ程マッチするとは予想外!……今のザフィーラを見たら、アルフは更にザフィーラを好きになっちゃうかもだよ!!
「お褒めに預かり光栄です、我が主。
まぁ、アルフに好かれるのは私としても嬉しいモノがあるので別分問題なしです。」
にゃはは、そうなんだ?
だけど、ザフィーラもそうだけど、お兄ちゃんも良く似合っててカッコいい……初詣にアルフや忍さんが来てたら2人とも拉致られちゃうかも知れないの♪
「「空恐ろしい事を言うな!」わないで下さい!!」
冗談だよ?まぁ、あながち冗談とも言いきれないんだけどね……
さて、そうこうしてる内に目的地の『海鳴神社』に到着〜〜!
毎年の事だけど物凄い人だねぇ?……如何考えても市外からも人が来てるし、前に新聞で『海鳴の明治神宮』って言われたのもある意味納得かも。
「あ、来たわね?なのは〜〜、はやて〜〜、こっちこっち!!」
ほえ?アリサちゃん?
其れにすずかちゃんに忍さん、ノエルさんにファリンさん、アミタさんとキリエさんとグランツ博士に、フェイトちゃんとアリシアちゃんとプレシアさん?
更にはアルフとリニスさんと……えっと、見慣れないオレンジ髪をツインテールにした女の子?皆如何したの?
「初詣に来たら偶然会ったのよ。
で、この分だとなのは達も来るだろうから、どうせなら待ってて皆でお参りしましょうって事にした訳!」
「そうなんだ?うん、確かにそっちの方が楽しいね。
だけどその前に……あけましておめでとうございます、今年も宜しくお願いします!」
「と、確かに先ずは新年の挨拶だったわね。
あけましておめでとうございます、今年も宜しく頼むわよ?」
私とアリサちゃんの新年の挨拶を皮切りに、皆が次々に新年のご挨拶。
だけどキリエさん、新年の挨拶も略すって如何なんでしょうか?流石に『新年あけましておめでとうございますのSAO』はないと思います、割とNGです。
まぁ、其れは其れとして、フェイトちゃん、そのオレンジの髪の子は誰なの?
「あぁ、この子はリニスの妹なんだ……ほらティアナ、自己紹介して?
彼女が、貴女が『一度会ってみたい』って言ってた『高町なのは』さんだよ?」
「そ、そうなんですかフェイトさん!?
は、初めまして高町なのはさん、ティアナ・ランスターです!!」
ティアナちゃんて言うんだ?
初めまして、高町なのはです。宜しくねティアナちゃん♪
「い、いえ此方こそよろしくお願いします。」
にゃはは、そんなに固くならないで?
多分私の方が年上なんだろうけど、只それだけだから、出来ればそんなに緊張しないでほしいなぁ?私は私、別に特別な人間じゃないんだよ?
だから、貴女とも対等なお友達になりたいんだけどダメかなぁ?
「そんな、ダメだなんて事はありません。
でも……流石に年上のなのはさんに敬称略でのタメ口は抵抗があるんで、その辺は許容してくれるとありがたいです……」
それはまぁ、仕方ないかな?ゆくゆくは敬称も敬語も無しになって欲しいところだけどね。
其れは此れから期待するとして……しっかし凄い参拝客の列なの。
二列に並んで本堂に向かってるにも拘らず、鳥居の外まで行列が繋がるってドンだけ!?間違いなく来訪者は1万人を超えてると思うの!!!
此れはお賽銭までに相当時間が掛かりそうだね……
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で、待つこと1時間、漸く賽銭箱の前に到着。
車椅子はシグナムが押してくれてたんだけど、私の隣に居たお兄さんが、移動の彼是を考えてシグナムと私を一緒に参拝させてくれた。
――ちゃり〜〜〜ん
100円玉を投げ込んで、そして二礼二拍手……祓いたまえ、清めたまえ、神ながら幸わえたまえくしみたまえ…
如何か今年も、家族の皆と、そして騎士の皆と平穏無事に過ごせますように……夜天の主・高町なのはは、只それだけを願います……
ちらりと横を見ると、シグナムも真剣にお祈りしてる。
何を願ったのか気になるけど、其れは聞かないのが礼儀だし、シグナムがトンでもない事を願うとは思えないから、きっと純粋な願いだよね。
そして10分弱で全員がお参り終了!
そして此れもまた新年お約束の御神籤を皆で引く事にしたの――さて、今年の運勢は如何かなぁ?
「えっと……27番です。」
「27番……此れですね。」
ありがとうございます……やった、大吉!!
しかも細かく分かれた1年の運勢も割とよさげだし、此れは正月早々縁起が良いね♪
尚、はやてちゃんとアリサちゃんとお母さんとお兄ちゃんは中吉。
すずかちゃんと忍さんとお姉ちゃんとヴィータちゃんとリニスさんが末吉。
お父さんとグランツ博士、プレシアさんにアミタさんとキリエさん、お市さんとザフィーラにアルフと、フェイトちゃんとアリシアちゃんは吉。
ノエルさんとファリンさんは引かなかったみたいだけど……シグナムとリインフォースとナハトヴァールは御神籤を凝視したままで如何したの?
「いえ……我等3人は同じ物を引き当てたようなのですが…」
「此れは果たして如何したモノかと……」
「一体何なんだ此れは?」
変な御神籤が出たのかな?……え〜〜〜〜と……はい?何此れ?
シグナムとリインフォースとナハトヴァールが引いた御神籤は3人揃って『大胸』って、何ナノ此れは〜!!
いや、否定はしないよ?
だけどこんなにピンポイントな物が出て来たら突っ込まずには居られないって言うの〜〜〜〜〜!!
一体何を想定して海鳴神社はこんな御神籤を用意したのか……多分考えるだけ無駄なんだろうなぁ……まぁ、内容は悪くないから安心だけどね。
でも今年の初詣は新しい友達も出来たって言う事を考えると得るモノが大きかったね。
「大胸……確かにピッタリやな。
流石は我儘ボディで、パーフェクトプロポーションの乳魔人やね……本気の本気で脱帽しましたあぁ!!」
「「「!?///」」」
はやてちゃん、無駄に煽らなくて良いからね?
だけど今年一年、きっと楽しい年になる事は間違いなさそう――面倒な事が有るかもだけど、其れすら超えて楽しい1年にする心算だからね!!
――――――
Side:シグナム
まさかあの様な御神籤が出るとは思わなかったが、ともあれ初詣は無事に済んだし、主なのはの御神籤が『大吉』であったのは嬉しい事だからな。
そして初詣を終えた私達は只今『新年会』の真っ最中――士郎殿と恭也殿は酒が入っているせいか何時もよりもテンションが高いようだが問題はないか。
私を含め、全員が桃子殿の御節料理に舌鼓だ――これほどまでに美味な物があるとは思わなかったな。
しかし、こんなに穏やかな気分で新年を迎える等、私の記憶にはない事だ……此れまでは新たな年など何の意味も成さない事だったからな。
だが、今は違う。
我が主、高町なのはと平穏の中で新たな年を迎える事が出来る等、正に騎士冥利に尽きると言うモノです。
「シグナム、如何かした?」
「……いえ、新たな年の初めに、騎士としてのあり方を考えていただけです――この様に穏やかで温かい新年は初めてですので。
だからこそ、新年の誓いとして、私はこの世界と主なのはを必ずや護り通して見せます――其れが私の新年の誓いであり真の思いですので。」
「そっか……筆頭騎士様に其処まで思って貰えるなんて、私は幸せ者だよ――正に夜天の主冥利に尽きるって所だね?
でも、だからこそ頼りになるよ――改めまして、今年も宜しくねシグナム♪」
はい、主なのは!
新たなる年もまた、烈火の剣聖は、夜天の主と共に居ます……何時、どんな時でも可能な限りお供いたしますよ、主なのは。
新たな一年が良き年になりますように――息災で過ごす事が出来たら、其れはきっと何物にも代えられない『幸福』であるのかもしれないからな。
改めまして、新たなる一年、宜しくお願いしますね主なのは。
To Be Continued… 
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