Side:なのは


シュテルの、闇の欠片の一件も如何にか解決した訳だけど、其れとは別に日常の忙しさはやって来るのは仕方ないよね?
って言うか、今日は大晦日だから、どうやっても忙しくなるのは至極当然だからね――只今高町家&翠屋は、誇張抜きで地獄の如き忙しさになってるの…


「あ〜〜〜〜!!ワックスが切れた〜〜!恭ちゃん追加宜しく!!」

「悪いが自分でやれ!棚やタンス、その他家具の立てつけ直しで其れ所ではない!!」



「ムゥゥゥン……でぇぇぇえりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」

「雑巾掛けって、あんなに気合い入れてやるモノだったでしょうか?」

「あらあら、凄いわねザフィーラは♪」


何て言ったって、絶賛『大晦日恒例大掃除』の真っ最中だからね?
って言うかザフィーラ、そんなに気合い入れて雑巾掛けしなくても良いからね?…ザフィーラがパワー全開でやったら、寧ろ廊下が抉れちゃうかもだから。
まぁ、手を抜かずに真面目にやるって言うのは良い事だと思うけどね。


「ドレだけ気合を入れようと、ザフィーラが力加減を間違える事はありませんのでご安心ください主なのは。
 しかし、年の瀬に此れだけの大掃除をすると言うのは初めての経験です――全てを清めて新たな年を迎える……実に良き習慣であると思いますよ。」

「シグナムもそう思う?実は私もそう思うんだ。」

私は身体が不自由だから、掃除って言っても出来る事は限られてるけど、やっぱりちゃんと綺麗にして新年を迎えたいと思うもん。
だから、自分の出来る範囲で精一杯綺麗にする心算なの――まぁ、毎年の事だけどそろそろ私に付き添い有りでの買い出しが言い渡されるんだけどね。













魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天64
『大晦日の一幕』











「付き添い有りでの買い出しって、なんでだよ?」

「こう言っちゃなんだけど、私は下半身不随状態だからお兄ちゃん達と同じように大掃除をする事は出来ないでしょ?
 ともすれば足手まといになりかねない訳だし――でも、そうならない様に、適当な場所を掃除したら付き添い有りで買い出しに行く事が決まってるんだ。
 私の事を気遣ってくれての事だから、悪い気はしないし、大事な買い出しを任せて貰えるのはやっぱりうれしい事だしね♪」

「成程……まぁ、なのはがそれで良いってんならアタシは何も言わねーけどな。」


うん、ありがとうヴィータちゃん。
あ、そうだ!今年の買い出しにはシグナムとヴィータちゃんに一緒に来て貰いたいなぁ?――2人ともいいかな?


「其れが貴女の望みなら是非もありません。御一緒させて頂きますよ主なのは。」

「アタシが断る訳ないだろ?
 なのはと一緒に買い物が出来るなんて、アタシにとっても嬉しい事だしな♪」


じゃあ決まりだね?宜しく、シグナム、ヴィータちゃん♪



「なのは〜〜、悪いけど誰か付き添い連れて買い物に行って貰っても良いかしら?」

「は〜〜い、了解だよお母さん。
 シグナムとヴィータちゃんに付き合って貰うから安心して!買い物メモとお金はテーブルの上かなぁ?」

「そうね〜〜……買い物メモに書いてあるもの以外で、必要なモノがあったら適当に買って来てくれていいから。」


ん、了解です。
まぁ、買い物のメモを見る限りは年越しと新年に必要な物が書いてあるから、取り立てて必要な物が追加されるとは思わないけど、有ったら有った時でね。

あれ?だけど年越しそば用の御蕎麦は8人前じゃ足りないよね?
お父さんとお兄ちゃん、其れにヴィータちゃんとザフィーラは2人前は食べるだろうから――15人前は買っておいた方が安全牌かもしれない、結構本気で。

そこら辺は臨機応変に対応していくとして、後は大丈夫だね。


其れじゃあ行こうか、シグナム、ヴィータちゃん。


「おう!」

「はい、参りましょう主なのは。」


其れじゃあお買い物に出発〜〜〜〜!








――――――








Side:ヴィータ


んで、やって来たのは何時ものデパートなんだけど、今日はやたらと人が多くねぇか?
何時ものタイムサービスまでとは行かないけど、結構な人の量だよな?――もしかして今日が大晦日だからなのかな?


「だね。
 皆、今日の年越しそばや明日の御節の材料を買いに来てるみたいだから。まぁ、此れもある意味で大晦日の風物詩だよ。」

「皆年越しの準備で忙しいと言う事ですね?――大体買う物は此れで全部でしょうか?」

「うん、後は御蕎麦と天婦羅の材料を買えばメモに書いてある物は全部揃うよ。」


やっぱし大晦日だからか。
まぁ、アタシ等の買い物もあと少しって所だけど、あのさなのは、蕎麦は兎も角として天婦羅は惣菜コーナーで出来あい物を買ってった方が良くねーかな?

幾らシグナムやはやてが手伝うって言っても、大掃除をした後で今日の年越し蕎麦と、明日の御節料理の準備って幾ら桃子さんでもキツイと思うんだよ。
其処に天婦羅を揚げるってのが加わったら、忙しいどころの騒ぎじゃねぇ――確かに桃子さんの揚げた天婦羅の方が絶対的に美味しいんだけど……


「む……確かにヴィータの言う事も一理あるな?
 幾ら私やはやて嬢が手伝うと言っても、桃子殿に掛かる負担は大きいモノだ……如何いたしましょうか主なのは?」

「確かに……だけど電話で聞いてもお母さんは絶対に『大丈夫』って言うだろうから――此処は折衷案で行こう!
 揚げるのに時間が掛かるエビ天やイカ天なんかは買って行って、比較的短時間で揚がる舞茸や野菜類は材料を買って行こう!此れならOKだよ!!」


確かに其れがベターかも知れねぇな。
けどよぉ……此れはアタシの目の錯覚か?なんだよ惣菜コーナの、このエビ天とイカ天の山は!?明らかに盛り過ぎだろ!?何で崩れねぇのか謎だ!!
買う人が多いって予想したんだろうけど、限度がアンだろ限度が!!

ある意味でスゲェよ、この『エビ天マウンテン』と『イカ天マウンテン』はさ……


「にゃははは……確かに凄いね…?
 デパート側も気合が入ってるって言うか、気合を入れ過ぎと言うか……まぁ、取り敢えず人数分+αを買って行くとしようか?」

「そうですね。」


だな。
まぁ、アタシ等ヴォルケンリッターにとっては、生まれて初めてとなる大晦日の過ごし方だからな?……目一杯楽しませてもらうぜ!

こんな事を体験できるのも、全ては今回のアタシ等の主がなのはだったからだよな。


若しかしたら、此れまでの色んな事は、最終的になのはの下に辿り着くために通らなきゃならない試練だったのかも――だとしたら、其れも悪くねぇぜ。

確かに結構辛い目には遭って来たけど、その全てが今に至る為って思えば苦痛でも何でもないからな。

「へへ……」

「ん?如何したのヴィータちゃん?」


いや、新しい年もなのは達と一緒に楽しく暮らせたら最高だなって思っただけだ。
で、其れは多分現実のモノとなるって思ったら、自然と笑いが零れちまったんだよ――何となくアタシの気持ちは分かるだろ?


「うん、良く分かるよ?
 私もヴィータちゃんやシグナム、騎士の皆にはやてちゃんにアリサちゃん達、アミタさん達にフェイトちゃん達……皆と一緒に楽しく暮らして行きたいもん。」

「心を許せる者達と、平和な日々を送る――若しかしたら、此れこそが最高の幸福であるかも知れませんね……」


かもな。
だからこそ、アタシはこの世界を、なのは達を護る!!漸く得た平穏は、護り抜いてなんぼだからな!!

へへ、新しい年も宜しくな、なのは♪








――――――








Side:はやて


今年の大掃除はアレやなぁ?人数が倍化どころやないから、ものゴッツスムーズかつ的確に行われてるわぁ。
なのはちゃん――姉やんは毎年の如く、お供引き連れて買い出しに行ってもうたけど、其れでも圧倒的に人数が多いから大掃除も本気で楽や此れ。

まぁ、驚いたんは市さんがちゃんとお掃除できるって事やったけどね?
天下人の妹君やったら、自分で掃除する機会なんて無かったんと違うの?


「其れがそうでもないんですよ?
 私は所謂『姫武将』でしたし、出来るだけ自分の身の回りの事は自分でしてましたからねぇ?兄様にも『自分の事は自分でせよ』って言われてましたし。」


成程なぁ……歴史研究家でも知らん歴史的事実をまた一つゲットやで!
信長さんの言い付けを守って、自分の事は自分でしてきた結果、掃除とかのスキルは高いと……なんちゅうかGJやな信長さんも。

まぁ、家事スキルがそこそこ高いってのは悪ないけどね、


なら、もう一頑張りや!姉やん達が帰ってくる前に大掃除終わらせてしまおうやないの!!




「ちょ、恭ちゃん!!何この発禁モノの雑誌ー!!!」

「其れは忍が勝手に、そして強制的に押し付けてきた物だ!!
 おまけに『処分したら、思い切り吸い取らせてもらうわ』とか言われたら捨てる事も出来んだろうが!!なら、ベッドの下に隠すしかなかろうが!!」

「忍さんは何処に向かってるの!?」

「知るか!!」


苦労しとるなぁ、恭也お兄ちゃんも……てか、何してんねん忍さんは!?
――まぁ、ある意味で奥手なお兄ちゃんを焚き付けるためと言えなくもないけど、自分の彼氏に『発禁確定』な代物を送りつけるのは流石にアウトやで?


そんだけお兄ちゃんの事を愛しとるのかも知れへんけどね。
まぁ、其れは其れとしてもう一頑張りや!!家中綺麗にして、さっぱりした気分で新年を迎えたいもんやからね♪








――――――








Side:シグナム


大掃除も買い出しも恙無く終わり、現在はリビングでテレビを見ながら、皆で年越しと洒落こんでいる。


年越し蕎麦の具材に関していうなら、桃子殿は出来あい物があった事に不満があったようだが、主なのはとヴィータの提言で最終的には折れてくれた。
出来るだけ負担を減らしたいと言うのは事実だからな。

だがそうであっても矢張り桃子殿の料理は絶品だな?
エビ天とイカ天は出来あい物とは言え、それ以外はすべて桃子殿の手作り――マッタク持ってすさまじいスキルだと思うな。

尤もそのお蔭で、此れだけの御晦日を過ごせる訳だから感謝すべきだろうな?――と、そろそろ眠気の限界ですか主なのは?其れにはやて嬢?


「うん……結構眠い……」

「ならばお休みを……目が覚めれば其処は新年です。
 気が早いかもしれませんが、来年もまた宜しくお願いいたしますね主なのは――新たな年が、貴女の未来に通じる道である事を祈りますよ。」

「私の未来……うん、約束だよシグナム?
 来年も、きっと良い年にしようね……出来る筈だから、私達ならね!!」



えぇ、良い年にしましょう。
其れこそ来年だけでなく、再来年も、その次もずっと我等守護騎士は貴女と共に在ります。

新たな年もまた、我等と共に歩んでください主なのは――私の願いは只一つ!主と共に歩む事ですので、来年もまた宜しくお願いしますね!


新たな年は、果たしてどんな一年になるのか……今から楽しみにしていますよ、主なのは。














 To Be Continued…