Side:なのは


さてと、覚悟は良いかな?私にそっくりな闇の欠片――の総元締めさん?


「……その呼び名は何とも――と言うか、そう言えば名乗って居ませんでしたね?……己が名を名乗らぬとは何たる無礼。
 その非礼を詫びると共に、改めて名乗りましょう。
 私は闇の書の構成素体であるマテリアル。『星炎の襲撃王(シュテル)』と申します――以後お見知りおきを。」


シュテル……ドイツ語で『星』を意味する単語だったかな?
だけど、良い名前だね?貴女にはピッタリの名前だと思うの――だけど、だからと言って貴女を見過ごす事は出来ない……リヒトの復活はゴメンだからね。

其れに何より、闇の欠片が生み出されてる元凶が貴女だって言うなら、私は貴女を撃滅しないとならないの!
闇の欠片はそのものは大した脅威じゃないけど、それでも数が増えて徒党を組んで来たら厄介な事はこの上ないからね?

だけど、其れも貴女を倒せば、闇の欠片は全て活動を停止して、そして消滅する。――其れほど大きく間違ってはいないよね?


「えぇ、確かに貴方の言う通り、私を倒せば全ての闇の欠片は、私と共に再び闇に帰る運命でしょう。
 ですが、其れはあくまでも私が倒されてしまった場合の事――本気モードとなったようですが、果たして私を完全に消し去る事が出来ますでしょうか?」

「出来る出来ないは問題じゃない……大事なのはやるかやらないかだよ?
 貫き通す意志さえ折れなければ、人はどんな困難にだって立ち向かって、そして超える事が出来るんだからね!!」

「主なのは言う通りだ。諦めない心が有る限り、人は無限に成長し、そして強くなる事が出来る。
 故に、貴様は私と主なのはの敵にはなり得んぞシュテル?――心なき者に超えられるほど、私と主なのはは柔ではないのでな!」


その通りだよシグナム。
けどまぁ、これ以上の言葉は意味を成さないのもまた事実……此処からモノを言うのは互いの技と闘気のみだからね!!

行くよシュテル!私とシグナムの攻撃を、受けきれるモノなら受けてみろなの!!













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天63
『夜天と炎星の全力全壊バトル』











アクセル……シュート!!!

『Masterの姿を真似るとは万死に値します。冗談抜きで詫びなさい。寧ろ死んでしまいなさい。』


……レイジングハートの毒舌レベルが何時もよりも凄いなぁ……(汗)
けど、今は戦いに集中だね!


「!!行き成りの誘導射撃……其れも完全に私の意識を外したところで発動するとは、恐ろしいバトルセンスですね高町なのは?
 もしも私の力が並の魔導師程度であったなら、今の一撃を回避、或は防御したところで撃墜は必至だったでしょう……ですが、この程度ではまだ甘い!」


そう思う?
まぁ、確かに今のは完全に牽制が目的ではなったから威力の方は大した事ないかも知れないよ。

だけど、その牽制用の魔力弾は見せ技に過ぎないの!!
本命は、他に在るんだよ!!――思い切りやっちゃえ、シグナム!!!


「覇ぁぁぁぁぁぁ!!紫電一閃!!



――ガキィィィィン!!



「何と……煙幕に紛れて上空から奇襲とは……此れは流石に予想していませんでした――実に見事な戦術と評価するに値しますよ、お世辞抜きでね。
 ですが、その一撃も、ギリギリの状態であっても止める事が出来れば其処まで脅威ではありません。
 如何なる攻撃でも、完全に防ぐ事が出来ればそこには必ず相手の隙が出来る――其れは貴女とて例外ではありませんよ剣騎士!!」


其れは確かに正しいけど、あくまでもそれは『一般の騎士』に対しての事でしょう?
悪いけど、シグナムの力は超一流の騎士の其れと遜色ない上に、デバイスの形状を思いのままに変えて戦う柔軟さだって持ち合わせてるんだよ?


「確かに如何なる攻撃でも、攻撃後に隙が発生するのは必然であり、その隙が最高のカウンターのタイミングになるのも分かり切っている。
 だが、この烈火の将はその程度では怯まん!剣騎士ではあるが、我が剣に間合いなどないと知れ!レヴァンティン!!」

『Jawohl.Schlangebeissen.』


――轟!!



「!!振り抜きと同時に、デバイスをチェーン・エッジに変化させて技の隙を完全に殺すとは……流石は筆頭騎士と言ったところですね?
 更に、チェーンエッジの不規則軌道で私の動きを制する心算ですか?
 確かに見事ですが、そう簡単にこの胸の炎は消せません。パイロシューター・キリングシフト!


――キィィィン……ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!


「な!?此れは、主の『アクセルシューター・アラウンドシフト』!?
 全方位射撃で、シュランゲフォルムのチェーンエッジを全て押しのけるとは……しかも、魔力弾の一発あたりの威力も相当なモノと来たか……」


如何やら、姿を真似てるだけじゃなくて戦い方も私をコピーしてるみたいだね。
確かに、私もシグナムと戦ってる時に同じ状況になったら、アラウンドシフトで吹き飛ばしての仕切り直しを狙うだろうし。

だけど、今は一対一の勝負じゃない!
シグナムの攻撃にだけ気を取られたら命取り!!レイジングハート、カートリッジロード!!


『All right Master.Cartridge load.“Excellion Buster”Drive ignition.全力全壊でブチかましてやりましょう。』

「勿論その心算!!
 行くよシュテル!この一撃を受けきれるな受けきってみて!エクセリオォォォォォン……バスターァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!

『死に曝せ、Masterを不完全にコピーしたコンパチキャラが。Kill you!!』



「しまっ………!!!」


――バガァァァァァァァァァァァァッァン!!!!



マガジン1個分のカートリッジを全てロードして放ったエクセリオンバスター。
破壊力だけなら、ディバインバスターの3倍は下らない……幾らシュテルが強くても、アレが直撃したなら流石に………


「……!主なのは!!」

『Master!』



――シュゥゥゥ………



「……実に良い一撃でした……お世辞抜きで効きました……」


そんな!!無事だなんて……其れまでに頑丈なのシュテルは!?


「いえ……あのままだったら闇に返されていたでしょう。
 ですが、土壇場で私もまたエクセリオンを発動できるのではないかと思い、実行してみたら案の定です――運が良かったとしか言いようがありません。」


エクセリオン!!
そうか、シュテルが私を模してるなら、エクセリオンを発動出来ない道理はない……だけど、此れは実に有り難くない事態だよ。

シュテルは、ナハトヴァールを圧倒するだけの力を持ってる。
実際に、私がユニゾンしてエクセリオンを発動し、更にシグナムが調停者としての力を発動して漸く優位に立てたくらいなんだから……

そのシュテルが、自己強化のエクセリオンを発動したとなったら、此れは正直拙いかもしれないね……


「さぁ、第2ラウンドと参りましょうか?」


――シュン……


!!消えた!?
まさか、シュテルはエクセリオンの発動で、フェイトちゃん並のスピードを手に入れたって言うの!?


――バキィィィ!!


「ガハッ………!!」

「主なのは!!ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」


く、シグナムにすら気取られない程の高速移動での攻撃とはトンでもなさすぎだよ!
しかも、多分フェイトちゃんみたいなヒット&アウェイじゃなくて、超高速で飛び回りながら射撃と砲撃を使ってるから、カウンターも狙えないって来てる……

レイジングハート!


『All right.Protection.』


――カキィィィン!!



取り敢えず今は防御で凌ぐしかないね……!!


「今は其れしかないでしょう。
 ですが如何に主なのはのシールドが強固とは言え、永続的に攻撃を防ぎきれる訳ではありません――いずれ限界が訪れますよ?」

「うん、分かってる。
 だけど、このプロテクションは夜天の魔導書からシャマルの能力を引きだして強化してあるから、早々簡単に破られる事は無いよ。」

其れこそ射撃と砲撃じゃこのシールドは破れない。
このシールドを破る攻撃は只一つ――集束砲だけだからね。


「成程……ですが、主なのはの能力をコピーしていると言うならば、シュテルもまた集束砲は使えるのではないのですか?」


使えるだろうね間違いなく。
そして其れが発動されたら、このシールドだって多分簡単に砕かれちゃうと思うんだけど――同時に集束砲の発動が私達にとっても好機になるかもなの!


私を信じてくれる、シグナム?


「其れを聞きますか?……真に使えるべき主の事を信じなくて何が守護騎士でしょう?
 ならば、私は貴女を信じてその好機を待つだけです!!」


ありがとうシグナム。



さてと、そろそろシュテルも痺れを切らして、切り札を切る頃かな?



「何と頑丈なシールド……ならば、そのシールドごと吹き飛ばすだけです。
 集え明星、全てを焼き消す焔となれ。ルシフェリオォォォォォン……ブレイカーァァァァッァァァァァッァァッァッァ!!!!



――キュイィィン……ドガバァァァァァァァァァッァァァァァッァァァァァン!!



来たね、集束砲!
だけど、此れを耐えれば……耐えきる事が出来れば私達の勝利は確定なの!!――だから、絶対に!!



――ドゴォォォオオォォォォォォォォォォォォォォォン!!



く……うわ……きゃぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁぁぁぁぁあぁ!!!








――――――








Side:シュテル


なのはのシールドを吹き飛ばす心算で、一撃必殺の集束砲をブチかましましたが、確実に手応えはありました。
実際触れた訳ではありませんが、私のブレイカーはなのはの防御壁を完全にぶち抜いたようですし……アレで無事だったら本気で化け物ですね彼女は。


ですが私のブレイカーは、彼女のシールドを貫通し、剣騎士諸共飲み込んだ……如何足掻いても生きてはいないでしょう――



――ギュル!!



「!?」

な!!此れは、剣騎士のチェーンエッジ!?――そんな、まさか……そんな事が!!


「……悪いなシュテル……生憎だが、私と主なのはは史上最強に諦めが悪くてな……お前の一撃は耐えさせて貰ったぞ!!」

「アミタさん風に言うなら『気合と根性で頑張りました』って言うところかな?
 理論を欠いた根性論かもしれないけど、だけど人の心からの思いは、理論も常識も超える!!其れがこの結果だよシュテル!!」


そんな暴論で生き長らえるとは…!!

高町なのはも剣騎士も、防護服が相当に破損し、身体そのものにも多数の裂傷や擦り傷を負っていると言うのに、目の輝きがまるで死んでいない!?




ですが、チェーンエッジでの拘束如き……私の力を全開にすれば!!


「……封縛!!


――バキィィィィン!!


!!……此れは、ナハトヴァールの拘束魔法!?
私に一方的に叩き潰されながら、私を拘束するだけの力を持っているとは!!――く、外せない!!


「はぁ……はぁ……夜天の防衛プログラムを舐めるなよ?
 確かにお前には力及ばなかったが、だが私の全能力を注ぎ込めばお前1人を完全に拘束する事くらいは難しい事じゃない!!絶対に放さん!!
 ――今です、マイスターなのは!そして、シグナム!!」



此れは、チェーンエッジの拘束が何時の間にか………ですが此れは!!


『Starlight Breaker.』

「受けてみてシュテル!!
 此れが私の全力全壊!!行くよ……スターライトォォォォォォォォォォォォォォォ……」



『Sturmfalken.』

「翔けよ隼!」


回避不可……!
此れを喰らったら私は――!……いえ、ある意味で当然ですか………私は彼女達の力を見誤ったようですからね。

如何に私がエクセリオンの真似事を使ったとは言っても、本物の使うエクセリオンには遠く及ばかなったと言う事なのでしょうね……全く滑稽なモノです。



「ブレイカーァァァァッァァァァァッァァァッァ!!!」

「穿ち貫けぇぇ!!!」


その果てがこの結果とは何とも…

如何に私であっても、高町なのはと剣騎士の合体攻撃を拘束された状態で受けきる事は先ず不可能……如何やら、此処が命の捨て所の様です。


ですが、高町なのはと剣騎士……貴女方の様な者達と戦えたことは、心底光栄であると思います……








――――――








Side:なのは


決まった……私のブレイカーとシグナムのシュツルムファルケン――
此れだけの攻撃を喰らったら普通は撃墜必至なんだけど、シュテルはまだ生きてるよね……


――シュゥゥゥ……



「はぁ…はぁ……実に良き攻撃でした――有り得ない程のダメージを受けてしまいました……」


アレを喰らって大丈夫だったなんて、ザフィーラも吃驚の呆れた頑丈さだねシュテル……


「辛うじて、ですが……今の一撃は実に良く効きました――そして同時に思い出しました。
 私が求めていた砕け得ぬ闇こと『無限連環機構』エクザミアは、既に私の中にあり――そして今し方、剣騎士によって撃ち抜かれたようです。」


――シュゥゥゥ……


「お前!!」

「これもまた運命と言うモノなのでしょうね。
 結局私は、貴女の能力のコピーに過ぎず、貴女を超える事は出来なかった……所詮はコピーに過ぎないマテリアルに相応しい最期でしょう?」



……それは違うよシュテル。
確かに貴方の姿は私を模したモノかも知れないけど、だけど私と貴女は全然違うでしょ?
だったら貴女は私のコピーなんかじゃない!!シュテルって言う確固たる自我を持った一人の人間なの!誰にもそれは否定できないよ!!!


「!!……私は他の誰でもなく私であると、そう言う事ですか………フフ、最後の最後で良い事を聞く事が出来ました。
 故に、消えゆく身でありながらも私は祈りましょう――如何か再び合い見えるその時まで、高町なのはと剣騎士の道が勝利で彩られますように……」



――シュゥゥゥゥゥゥン



消えちゃった……うん、バイバイシュテル。
機会が有ったらまた会おう?……そしてその時こそ本気で手加減抜きの勝負をしようよ――私は絶対に負けないから!!



――ヴィン


『なのは~~!こっちは粗方片付けたけど、そっちは如何よ?』


アリサちゃん………大丈夫、こっちも何の問題もなく進んでるからね。
って言うか、シュテルが消えた以上、闇の欠片がこれ以上増える事はない――現状活動してる闇の欠片を片端から倒していけば其れでゲームエンド!!
自然消滅を始めた個体も有るだろうから、そんなに苦労はしない筈だよ。


『黒幕は倒したって事ね?――だったら、最後の総仕上げとして残る闇の欠片を塵も残さず撃滅してやるわ!!』



うん、お願いね!!










そして、それから30分と立たない内に、全ての闇の欠片は掃討されて在るべき所に帰って行った。
其れと併せるようにして、アースラでも新たな闇の欠片の発生を感知する事はなく、狩られた闇の欠片の数だけが集計されて居たみたい。


だけど、此れで今回の件は全て終了!
後に『闇の欠片事件』と呼ばれる事件は、こうして静かに幕を閉じるに至った。ただ一人の犠牲を出す事もなくね。



本当に、大きな犠牲が出なくて良かった――事件が無事に解決した事に対して、私はそれ以上の事を思うことは出来なかったの。



皆、本当にお疲れ様でした――だね。













 To Be Continued…