Side:ナハトヴァール
「オォォォォォォォォ!!」
「ちぃ!!」
コイツ、闇の欠片とは言え暴走状態のリインフォースを模しているだけに、能力がハンパではなく高いな?
それこそ、ドクター・グランツが私を治してくれていなかったら速攻で終わって居た事だろう……其れを考えると、彼には感謝してもしきれないな。
「思った以上にやるな防衛プログラムよ?
だが、お前が如何に頑張ろうとも何も変えられん……リヒティガルードの力に屈し、管制人格の腕部武装になり下がった事を忘れた訳では無かろう?
誰がどれだけ集まろうとも、リヒティの復活を止める事など出来ん……無駄な足掻きはせずに、お前も闇の誘惑に身を委ねろ。」
「……確かに其れが最良の選択か……」
「その通りだ――」
と、以前の私ならばそう言っていただろうな。――だが、今の私は相手が誰であろうと屈しはしない!
ドレだけ困難な状況に置かれようとも、諦めさえしなければ必ず道は開けると言う事をマイスターなのはは教えてくれた!不屈の意思を教えてくれた!!
故に退かぬ!
ドレだけ強大な相手であっても、諦めぬ限り必ず道は開ける!マイスターなのはが教えて下さった事を、私は信じる!!
「愚かだな防衛プログラム……所詮そんなモノは幻想に過ぎん。
だが、貴様がその幻想にすがると言うなら其れもまたいいだろう!精々、その幻想と共に深き闇に堕ちるが良い!闇の書の復活は誰にも止められん!」
「いや、止めるさ……私とマイスターなのは、そしてその仲間達が必ずな!」
寧ろ貴様こそ、有りもしない『闇の書の復活』という幻想を抱いて闇に帰るが良い!闇の欠片は闇に帰るべきなんだからな!!
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天62
『現れし黒幕・マテリアルの狂炎』
闇の深淵に戻れ!ナイトメアβ!!
――ゴウゥゥゥゥン!!
「!!反射性能を持った高速魔力弾か…厄介な!!
だが、この程度ならば対処できんレベルではない!!……穿て、ブラッディダガ―!!」
――ドドドドオドドッドドオドッドオドッドドドドオドドドオドドドド!!
計10発の反射魔力弾を、全て相殺するとは見事なモノだ。
――流石はリインフォースを模しただけは有るな闇の欠片よ?だが、其れを相殺したところで序の口に過ぎん!!
「何だと?――!ぐ!!!一瞬で間合いを詰めての飛び膝蹴りだと!?
完全に気配を消して……ずぶの素人ならば防御も出来ずに蹴り倒されているだろうに……何とも恐ろしい技を使ってくれるモノだな防衛プログラムよ!」
「まぁ、此れ位の攻撃でなくてはお前には届きそうにないのでな。」
「故の全力か……だが未だ甘い!
確かに魔導も体術も見事だが、お前の動きは見切ったぞ!お前の攻撃は、私にはもう当たらない!!」
そう思うか?
――クンッ、バキィィィィィィ!!!
「ガハァ!?……ば、馬鹿な、攻撃の直前に蹴りの軌道をずらすとは……!
確かにカウンターを決めるには充分だが、其れを実戦の場で実行するとは、貴様本当にあの弱弱しかった防衛プログラムなのか?大凡信じられん…!」
信じる信じないはお前の勝手だが、現実に押しているのは私の方だ。
しかも、今のラッシュを喰らってお前とて無事では無いはずだ――恐らくあと10分でも顕現していられたら僥倖と言うレベルじゃないのか?
「確かにその様だが……だが、其れでも闇の書の復活と言う目的だけは遂行する。」
「…如何して其処まで闇の書、と言うよりもリヒティの復活に固執する?
お前達闇の欠片が、私達の記憶から作られていると言うならばアレの危険さは理解して居る筈だ。其れなのに何故だ?」
「何故だと?其れは勿論――!?」
如何した?
「???……なんだ?アレを復活させる理由が見つからん。
いや、其れでも闇の書は再び復活させなくてはならない……だがなんの為に?なぜ私はこうも闇の書の復活を成さんとしているんだ!?」
まさか、闇の欠片であっても詳しい事は分からないと言うのか?
恐らくは誰よりも『闇の書』には詳しい筈のリインフォースの記憶を再生したこの欠片ですら、詳しい事は分かって居ないのか。
だが、目的の真意が分からずに只只管に、突き動かされるままに行動したのではまるで意味は無いぞ?
なんの為にか分からず、目的を遂行しようとするなど愚の骨頂と知れ!!――此れで終わりにする!!
「!!!」
「封縛、吼えよ!!」
――バガァァァァァアァン!!
「ぐあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!
く……たかがバインドの炸裂だと言うのに何と言う威力だ……!!まさか、此れだけの力を有して居るとは……!!」
「マイスターなのはが私を解放して下さったおかげだ。
いや、私だけではない。リインフォースも、シグナムも、そしてシャマルもヴィータもザフィーラも、マイスターなのはが闇から解放して下さったんだ。
故に私達は闇には捕らわれていない!最終目的も分からずに、闇の書復活と言う闇に捕らわれている、お前達闇の欠片に負ける理由は微塵もない!」
――ズバァァァァァァァァァッァ!!!
「こんなバカな……まさか、お前がこれ程の力を持っていたとはな……」
「浸食され腕部武装になり下がって居た頃の私ならいざ知らず、今の私には護りたい人が、世界が有る……早々簡単にやられはせんさ。」
「そうか……だが、ギリギリで1つ思い出した――我等闇の欠片は、只の力の片鱗に過ぎん。其れこそ奴が顕現する為の駒でしかない。」
なんだと!?お前達が片鱗!?
其れよりも奴とは一体何だ!?其れがこの事件の黒幕なのか!?
「間違いなくな。
だが気を付けろ、アイツからは今のお前の主と同じ匂いがする――闇の欠片とは違い、一筋縄で行く相手ではないからな。」
マイスターなのはと同じ匂いだと?
確かに其れは一筋縄で行く相手ではないだろうが、その言い方だと単純にマイスターを模した闇の欠片ではないのだな?
「さぁな?其れは自分の目で確かめると良いさ――闇の淵で、お前達の歩む道を精々見物させて貰うさ………」
――シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
言いたい事だけ言って消えたか。
だが、マイスターなのはと同等の存在でありながら闇の欠片ではない……其れは一体何なんだ?
「……あまりにも情報が少ないな?少しばかり散策して情報を集めた方が――」
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
「!!!」
な、なんだこの強烈なまでの闇の気配は!!
何かが、何かが来る!其れこそ全てを覆い尽くすほどに強い闇の力を宿した何者かが!!!
「……力が充分に溜まったようですね?」
コイツは……マッタク持って何と言う姿で出て来てくれたのだ?
マイスターなのはと真逆になる、白地に赤いラインの入ったバリアジャケットと闇色に輝くレイジングハートそっくりのデバイス、色違いの夜天の魔導書……
髪型こそツインテールではないが、よもやマイスターなのはとそっくりな者が現れるとは――!!
「ふむ、高町なのはの姿を模して顕現しましたか。
――姿形だけでなく、戦闘形態も彼女を模したようですね……良いでしょう、同じ土俵で彼女を打ち負かせと言うのならば望むところです。
ですが、その前に――」
「私を倒す…か?」
「如何にも。
高町なのはとの戦いの前哨戦として、先ずは貴女を倒しておきましょう防衛プログラム。」
やるしかないんだろうな……逃げ道はないし、コイツから逃げ切る事は出来なさそうだ。
だが、コイツの力は確かに闇の欠片の比ではないな?私と同等か、或はそれ以上なのは間違いないと見て良い――そんな奴を相手にして勝てるのか?
弱音を吐く気はないが、勝率は精々50%と言ったところだな。
勝率半分と言うのは正直きついが、だが今私がやらねば誰がやる?………仕方無い、覚悟を決めるか!
――――――
Side:なのは
「ディバイィィィィィン……バスターァァァァァァ!!!」
『闇に消え去りなさい、下賤なる闇の欠片が。』
「撃ち抜け、ナイトメアハウル!」
――ドガバァァァァァァァアァァァァァァァァッァァァァァァァン!!!
「「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」
よし、闇の欠片ザフィーラ×4完全掃滅!
鉄壁の守護獣を模したって言っても、只の物真似じゃ本物には遠く及ばないの!本物のザフィーラの防御は正にダイヤモンドの如き堅牢さを誇るからね!
「確かに、欠片のザフィーラの防御は……精々『極薄鉄板の防御力』と言ったところでしょうか?
一撃のみならば耐える事は出来るでしょうが、それ以降の攻撃に対しては余りにも脆すぎる……闇の欠片は、能力は完璧に模す事は出来ないのか…」
有り得るね。
あくまでも『闇の書の闇』を砕いた私達の記憶をベースに造り出されてはいるけど、その本質までは再現できないのかも。
まぁ、個体差は有るみたいだし、時には物凄く強いのが出て来るかも知れないけど、だけど何れにしても私達の敵じゃないよリインフォース。
「何体か倒して分かったんだけど、ドレだけ強い個体だろうとその力が私達を超える事は無い。」
「何故そう思われますか?」
多分だけど、闇の欠片は闇の書の闇を砕いたまでの私達がベースになってるからだよ。
アレから僅か数日とは言え、その僅かな日数でのトレーニングの分だけ私達の方が強いからね?――私達が負ける理由は何処にもないの!
「確かにその通りですね。ならばこの勢いのまま、全ての闇の欠片を――」
――ゴゴゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
「「!?」」
な、何?この濃密なまでの闇の気配は!?其れこそ暴走した『闇の書の闇』にすら匹敵しかねない強さだよ此れ!?
一体何が起きてるって言うの!?
「分かりませんが……しかし、これ程までに強烈な闇の気配を捨て置く事は出来ませんよ我が主?」
「だよね……」
此れだけの闇の気配は、只の闇の欠片が現れたって事じゃないと思うからね。
多分、十中八九この事件の黒幕が姿を現したと見て良いと思うの!………だったら、其れの相手は私がやらないで誰がやるの?
夜天の魔導書の主として、闇の書の彼是に対する最終決着は私自身の手で幕引きをしないとだからね?行くよ、リインフォース!!
「はい、何処までもお供いたします。」
この闇の気配を発してるのは、一体何者なの?
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で、その気配のする場所に到着した訳なんだけど、此れは一体如何言う状況なの!?
「中々の強さでしたが、所詮は防衛プログラム、私の敵ではありませんでしたか……」
「ぐ……貴様などに………!!」
私にそっくりなショートカットの魔導師がナハトヴァールを吊し上げてる!?
ナハトヴァールの魔導師ランクはSSなのに、其れを圧倒したって言うの!?……あの子は一体誰?
「ですが、貴女に止めを刺すのは少しばかり延長せざるを得ないようです。――真打が登場してくださいましたからね。」
――グラリ……
ナハトヴァール!!大丈夫!?
「な、なんとか飛ぶくらいは……まさか、手も足も出ないとは思いませんでした――彼女の力は計り知れない。」
みたいだね?
見た感じから察するに、ナハトヴァールの攻撃は一切通じなかったなにも拘らず、あの子は的確にナハトヴァールにダメージを与えたみたいだからね。
だけど、其れだけの相手でも退く気は一切ないよ?
もしも此処で退いてしまったら、其れこそ一生後悔する事になるだろうからね!
「そう言う事だ。此処からは私と我が主に任せて、お前は少し休んで居ろナハトヴァール。この事件の黒幕は、私と我が主が直々に砕く!
何よりも我が主を模した、闇の欠片とは違う存在が居る等と言う事は認められん……一気に叩き潰すだけだ。」
その通りだよリインフォース。
相手が誰であろうと、目の前に立ち塞がる壁は砕いて進むだけなの!!――行くよ、リインフォース!!
「Jawohl Meister Nanoha。(了解です我が主。)
リンカーコア同調率98%、高町なのはの残存魔力に私の魔力を上乗せ、肉体同調率99%オーバー、臨界点突破――行きます、ユニゾン・イン!!」
――轟!!
『融合完了。夜天の祝福、今此処に!』
「夜天の主、高町なのは行きます!!」
此れが、夜天の主の究極奥義のユニゾン!今の私は簡単にはやられないの!!
「予想通りユニゾンして来ましたか。
ですが、其れでも私を倒す事など出来ませんよ?……何故ならば、私は闇その物であり敵対する者は全て喰らい尽くすが信条ですので。
ユニゾンした事で力を増したようですが、その程度の強化で私を止める事は出来ません……大人しく、やられるのが良いと思いますよ?
何よりも貴女は気付いてしまったのでしょう?如何にユニゾンしたとは言え、本気を出した私には及ばないと…ならば無駄な戦闘は行うべきではない。」
確かに其れは一理あるね。
だけど、だからと言って諦めるかって言われれば其れは絶対にノーなの!諦めるなんて事は先ず有り得ない事だよ!
「あくまでも抵抗しますか……ならば、纏めて吹き飛ばすだけの事!消えなさい、ブラストファイアー!!」
――ゴォォォォォォォォォォォォ!――ガキィィィィン!!!
「な!?」
「炎使いとは親近感を覚えるが、我が主と私の姉に牙を剥いた事を許す事は出来んな?」
何て言ったって、筆頭守護騎士たる烈火の将が来てくれるんだから。
――結果的には良いタイミングだったけど、少し遅刻だよシグナム?
「跪いて謝罪すればよろしいので?」
「違うよ、待ってたって事。」
私がユニゾンしてもあの子には勝てない。
だけど其れはあくまで一対一の勝負の上での事、調停者の力を解放したシグナムが一緒に戦ってくれるならその限りじゃないからね?
「成程……ですが、そう言う事ならば出し惜しみの必要もない。
――最初から全力で行くのみです。覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁ……でやぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!」
――バァァァァァッァァン!!
「夜天の調停者シグナム、今此処に!」
「此れは……よもやこんな事が出来るとは――如何やら少しばかり貴女方を侮っていたようです。
ですが、融合状態の高町なのはと、そして己の力を解放した剣騎士が相手では、出し惜しみなしで戦わねば勝利する事は難しいでしょう。
……なれば、此処からはお互いに一切の慢心も手加減もなしと行きましょう。――最後に戦場に立っていた者が、最終的な勝者であるのですから!
さぁ、始めましょう高町なのは、剣騎士。心が滾る最高の戦いと言うモノを!……焼き尽くせ、ディザスターヒート!!」
炎熱砲!!……迎え撃つよシグナム!!
「委細承知!おぉぉぉぉ……飛竜一閃!!」
「いっけーーー!ハイぺリオン……スマッシャーァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
――ドォォォォォォォォォォォォォォン!!
「く……互角!!」
だね……まぁ、ユニゾンした私とシグナムが力を合わせて互角って言うのは正直トンでもない事だと思うんだけどね。
だけど、この戦いは絶対に負けられないからね?……レイジングハート、エクセリオンモード起動!!
『その命令を待っていましたMaster.一切の手加減無しでの全力全壊を打ちかましてやりましょう。
Excellion Mode Standby Drive ignition.さぁ、我等に仇名す愚か者に一撃必殺の鉄槌をブチかましてやりましょう!』
――轟!!
「!!その姿は!!」
「此れが私の本気の姿……だからもう、貴女の好きにはさせない!」
リインフォースとユニゾンして、更にエクセリオンモードまで解放した今の私は、正に完全無欠の魔導師だよ。
だからこそ貴女の好きにはさせません……私によく似た魔導師!――貴女にだけは絶対に負けない!負けてなるモンですかなの!!
必ず貴女の事は退ける!最後の夜天の主の名に誓って必ずね……………
To Be Continued… 
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