Side:なのは
私の前に現れた闇の欠片はシグナムの姿をしている――だけど、本物のシグナムとは相当にかけ離れた存在なのは間違いない。
幾ら過去の記憶が再生されてると言っても、シグナムは絶対に他の誰かを見下したような発言なんてしないもん!
騎士の誇りを持ってして、どんな相手に対しても礼節は欠かさない筈――にも拘らず、この闇の欠片は私を未熟と言い、更にはリインフォースをも貶めた!
――絶対に許さない。
リインフォースの事を貶めた事も、私を罵った事も……何よりもシグナムの姿で其れを行った事を、私は絶対に許さない!!!
レイジングハート、手加減なしでブチかますよ!!
『言われなくとも分かっていますよMaster。
あの誇り高き烈火の将の魂を穢す存在でしかないこの闇の欠片など、ギッタンギタンのメッタメタにしてやりましょう!其れこそ欠片すら残らない程に!』
勿論その心算だよ?
相手が悪かったね闇の欠片……最強レベルの騎士を模したみたいだけど、本物とかけ離れたそんな性格じゃ私は動じない!
それどころか、シグナムの姿を模しながら、そんなにひどい性格付けをしてしまった事を心底後悔すると良いよ!――心があればの話だけどね。
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天61
『闇の欠片に手加減は不要なの』
Side:リインフォース
闇の欠片として再生されたシグナムに対して、我が主が相当な怒りを向けた事だけは私にも分かった。
――いや、最も信頼を寄せている騎士たるシグナムを穢されたと言っても過言ではないが故に、我が主の怒りは尤もであり当然の事で有るかも知れない。
加えて、我が主は、私が貶められた事についても怒って下さっている…何とも融合騎冥利に尽きると言うモノだ。其れだけ大切にされてるのだからね。
「!!……この身のこなし……貴様、只の魔導師ではないな!?」
「其れについてはノーコメント!
だけど、偽物のシグナムに負けてあげる程、私は弱くはない心算だけれどね!!……いっけーーーーーーーーーーー!!!」
『Divine Buster.』
――バガァァァァァァァァァァァァン!!!
そして、その主に対しては、闇の欠片如きでは敵う筈もないだろう――例えシグナムの記憶を再現したとしてもだ。
所詮コピーはコピーであり、オリジナルに敵わないのは絶対の真理と言っても過言ではない……何よりもコピーの相手が我が主では勝負にもならんさ。
「馬鹿な……幾ら強くても、魔導師風情がベルカの騎士と一対一の戦いで渡り合うなど……そんな事がある筈がない!!!」
「そう思う?
だけど、生憎と私の戦いの先生には超一流のベルカの騎士が居るんだよ?だから、劣化コピーに過ぎない貴女の攻撃を見切る事なんて簡単なの!」
――ズガァァァァァッァァァン!!!
正に圧倒的だな――本物には数段劣る劣化コピーとは言え、シグナムをこうも簡単にあしらうとは……我が主の実力は全く持って底が見えんな。
如何足掻いた所で、我が主が劣化コピーのシグナムに負ける事は無いだろうが――
――ガキィィィン!!
「サシの勝負に横槍を入れようとは、ベルカの騎士にあるまじきに所業だな『紅の鉄騎』よ。」
「テメェ、気付いてやがったのか……」
闇の欠片とは言え、お前の其の馬鹿正直な闘気に気付かない程耄碌はしていない心算だよ――まぁ、お前が来るとは流石に思っていなかったけれどね。
だが、ご覧のように此処は進入禁止だ紅の鉄騎よ……願わくば退いてほしんだが……
「アタシが退かねぇってのは分かってんだろ?
だったら面倒な事言わねぇで、アタシを止めてみろよ?……見事止める事が出来たら大人しく退いてやらぁ!!」
「その言葉、二言はないな?……ならば全力で押し通すだけだ!!」
――バキィィィン!!!
「んな!?……か、堅ぇ!!!」
「プロフェッサー・グランツが、私の為に開発してくれたデバイスだ――貴様の攻撃程度で破損する程度の、柔な代物ではない!!!」
――ズバァァァァァァッァア!!!
「んな!!……このアタシが……ヴォルケンリッター一のパワーを誇るアタシが押し負けただと!?…あ、有り得ねぇ!!
この鉄槌の騎士のアタシが、テメェみたいな奴に押し負けただなんて、そんな事が認められるかよ!!アタシの鉄槌に砕けねぇ物はないんだぁ!」
その意見には諸手を上げて賛成だが、最強のパワーと砕けぬ鉄槌を持つのは本物のヴィータだけであり、偽りの『紅の鉄騎』ではないのさ。
何よりも、ただその力を徒に振り回す等と言う事は本物のヴィータならば絶対にしないからな?
何れにせよ、お前では私に勝つ事など出来ん。
闇の欠片はマダマダ居るだろうから、其れを殲滅しなくては成らないのでね?――そろそろ終わりにさせて貰うぞ、闇の欠片よ……
「此れで終わりだよ……アクセルシューター・アラウンドシフト!!」
『跡形もなく吹き飛びなさい、下賤なコピー風情。』
へ?あの、我が主!?
――キィィィィィン……ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!
んな!?全方位に向かって、徹甲魔力弾の回避不可能絨毯爆撃攻撃って幾ら何でも手加減抜きの全力全壊すぎではありませんか!?
私のシールドは流石にそう簡単に破られはしませんが、闇の欠片のシグナムとヴィータは成す術がないようで……シールドが簡単に貫通されていますよ?
「馬鹿な……私が決定的な一太刀を与える事すら出来ないとは……貴様は一体何者だ、幼き魔導師よ………」
「クソが……こんな所でやられちまうんなんて……アタシは……闇の書の騎士なのに……何も出来ねぇってのかよ!!」
だが、この攻撃は効果抜群……闇の欠片を砕くには充分すぎる威力があったか……
「私は高町なのは――叢雲の騎士達を束ねし、最後の夜天の主。
だからこそ、闇の書の残滓である貴女達を野放しにしておく事は出来ない……貴女達は夢なんだよ?……だからもう眠って良いんだよ……」
「夢……ククク………そうか、所詮私は偽物だったと言う事か……
だが、消える前に聞かせてくれ……貴女が真に闇の書の主であるならば、本物の私はきっと手に入れたのだな?平穏なる平和な日々を……」
「……分からないけど、ヴォルケンリッターの皆が、平穏に過ごせるように頑張って行く心算ではあるよ?
辛い戦乱の世界を生きて来た騎士の皆には、平穏な日々を過ごす権利がある筈だからね。――私も皆には平和な世界を満喫してほしいんだ。」
「左様ですか……其れを聞いて安心しました。
ですが、気を付けて下さい――闇の欠片の中には、この私の様にオリジナルの記憶を只再生しただけではない者も存在しています。
ともすれば、オリジナルの記憶ではなく願望が再生された闇の欠片は恐らく相当に手強い筈です――貴女なら大丈夫だとは思いますが用心だけは…」
此れは……消える直前で、正気に戻ったか。
だが、この欠片のシグナムが言う事を考えると、如何やら闇の欠片と言うのは一筋縄でかたが付く相手だけではないのだろうな。
――シュゥゥゥゥゥ
「消えた……撃退出来たって事だろうけど……今のシグナムは何時のシグナムの記憶なのかな?
記憶を再生するにしても、あんな他人を見下す様な態度のシグナムは想像できないし、何よりもリインフォースを貶めるような事を言うのは有り得ないの。」
「其れなのですが、若しかしたら闇の欠片の中には、リヒティの影響を受けて本来の記憶よりも大きく歪められてしまった個体が存在するのかもしれません。
もしもそうであるならば、さっきのシグナムの態度と、私に対する物言いも納得できます……」
「成程……其れなら確かに納得だね……
だけど、だとしたら余計に闇の欠片を野放しには出来ないよ!全ての闇の欠片を砕かないと、きっとトンでもない事になっちゃうかもしれないから!
行こう、リインフォース!全ての闇の欠片を砕きに!!はやてちゃん達も手伝ってくれてるけど、此れは夜天の主の私がやらなきゃならない事だから!」
貴女ならそう言うと思いました。
えぇ、勿論お供いたしますよ我が主――この翼折れぬ限り何処までもね。この身は常に主と共に在るのですから。
しかし、何とも妙な胸騒ぎを感じるな?
そう――まるでこの一件は闇の欠片の出現だけでは済まないと言ってる様な……一体、事件の果てに何が待っていると言うんだろうな………
――――――
No Side
さて、高町なのはとリインフォースの2人がシグナムとヴィータを模した闇の欠片を圧倒的実力で殲滅したところで、再び各所の戦況を見るとしよう。
・CASE市
「まさか、兄様が再生されるとは思いませんでした……」
「複製とは言え、よもや妹の前に立ちはだかるとは思わなんだな……」
市の前に再生されたのは、己の兄である『織田信長』を再現した闇の欠片だ。
だがこの闇の欠片は、自身がコピーに過ぎないと言う事を自覚しているようだ……だが其れでも、市と戦う気は満々なようであるが。
「ふむ……成長した妹の力を見てやるもまた一興。
本物には大きく劣るだろうが、だからと言って簡単にやられてやる心算は無い――本気で掛かってくるが良い市よ!!」
「言われなくてもその心算です!――幻影とは言え、兄様に負けてられないから!!」
瞬間、市の二刀小太刀と、闇の欠片信長の大太刀が交差し、激しく火花を散らす。
歴史研究家が見たら、目ん玉飛び出すようなバトル!!だが、戦っている市と闇の欠片の信長の顔には刃を交わす喜びを感じた笑みが浮かんでいた。
・CASEはやて
はやてもまた相当数の闇の欠片を還して来たが、今し方目の前に現れた欠片には流石に動揺してしまった。
――だって、其れは自分の姉となったなのは……
「あははは!楽しいねはやてちゃん!
もっともっと全力で戦おう!其れこそ海鳴が吹っ飛ぶくらいの弩派手なバトルをしようよ♪」
「其れはもう全力全壊の範疇越えとるやろぉぉぉぉぉ!?
なんだって、こんなバイオレンス思考のなのはちゃんが再生されてんね〜〜〜〜〜〜ん!!!」
なのだが、性格が悪い方向に修正された『破壊神なのは様』となった闇の欠片だったから。
リミッターや理性がぶっ飛んでいるのか、この闇の欠片のなのはの攻撃は兎に角容赦なく、そしてえげつなく凶悪そのもの!一瞬でも気が抜けないのだ。
「ほらほら頑張ってはやてちゃん!頑張って避けないと、速攻でゲームオーバーだよ?」
「避けとるわアホンダラぁ!!
てか、そんな『良い笑顔』を張り付けながらおっそろしい事口にすんなや!!なのはちゃんに要らんトラウマ抱くようになったらドナイしてくれんねん!!」
「その時はその時だよ♪」
「軽すぎやアホンダラ!!」
再度戦闘開始!!
まぁ、如何に凶悪な闇の欠片と言えど、その力は最大でもAA+程度故に、海鳴の魔導師&騎士軍団が後れを取る事だけはないであろう。
――――――
Side:ナハトヴァール
「馬鹿な……俺はまだこんな所で尽きる事は出来んのだ!……俺は…俺ハァァァアぁっぁっぁアぁっぁあっぁ!!!!」
――シュゥゥゥン……
消えたか。
相当に洗練された魔導だったが、所詮は不完全なコピーである闇の欠片では私を討つ事など不可能だ――寧ろリハビリの相手にしかならないぞ?
そもそも、私とリインフォースは夜天の書の管制人格と防衛機構故に外敵に対する防御が極めて高いからな……お前の爪も牙も拳もこの身は届かぬよ。
「とにかく今は眠れ――目が覚めればその時は、誰よりも優しい主がお前を待っているからな。
だからもう、悪夢に身をやつさなくてもいいだろう?お前はお前だザフィーラ……その事実を否定する事は誰にも出来んだろうよ……」
其れでだ、何か用か――リインフォースの形を模した闇の欠片?
「此れを見破るとは見事だな……見破られる事は無いと思ってたんだがな。」
「普通なら見破られはしないだろうが、生憎と私は割と勘が鋭い方みたいでね!!」
だから攻撃の軌道が面白いように良く見える!!
幾らリインフォースをコピーしたとは言え、その能力の全てを写し取ったとは思えない――ならば私にも勝機はある!!
こい、リインフォースを模した闇の欠片よ!――跡形もなく粉々に吹き飛ばしてやるからな……覚悟だけは出撃前に完了しておいてくれよ!!!
――――――
Side:???
良い感じですね、闇の欠片が魔導師や騎士達と戦っている事で、必要なエネルギーも可成り溜まっています。
此れならば闇の書の復活も遠い未来ではないでしょうが――そうなると、彼女が邪魔ですね?……高町なのは!!
貴女が居るからこそ私は本物にはなれない――故に、私が私であるためにも……高町なのは、貴女の事を焼滅させていただきます!手加減なしでね…!
To Be Continued… 
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