Side:すずか


夜天の魔導書に関する彼是が終わった3日後、私達はグランツ博士の研究所に来ていた。
理由は言わずもがな、リインフォースさんの不具合を完全に治す為。

本当は直ぐにでもしたかったんだけど、なのはちゃんが退院してからって言う事で、3日経った今日にリインフォースさんの『治療』をする事になった。

なのはちゃんは『私の事は待たなくて良いから』って言ってたけど、其れはダメだよ?
夜天の魔導書の管制人格であるリインフォースさんの完全復活の場に、最後の夜天の主たるなのはちゃんが居ないなんてのは有り得ない事でしょう?

だからなのはちゃんが退院するまで待ってたんだよ――リインフォースさんも其れを望んでたしね。


「ワクチンプログラムインストール……うん、良い感じでバグが取り除かれてるね?
 我ながら中々のプログラムだが、身体に違和感なんかはないかなリインフォース君?」

『一切問題ない――其れ所か、私を蝕んでいた不具合が消えて行くのが良く分かる……貴方には感謝してもしきれないなグランツ博士……』

「なに、僕の研究が誰かの為になると言うなら、それ以上に嬉しい事はないさ。
 何よりも、君の事は絶対に助けると決めていたし、君が居なくなってはなのは君も悲しむからね――そんな事は絶対にさせたくなかったんだよ。」


そして博士も、本当にありがとうございます。
博士のワクチンプログラムがなかったら、全てに決着が付いたとしても、私達には……特になのはちゃんには深い悲しみが残った事だと思いますから――


「そうさせない為に色々頑張ったからね?……巧く行って良かったよ。
 此れにて、リインフォース君の治療はお終い!多分大丈夫だと思うが、何か不具合があった場合は遠慮なく言ってくれて構わない。
 僕に出来る事なら、全力で対処させてもらうからね。」

「ありがとうございますグランツ博士!!」

「リインフォースさん、無事に治って良かったねなのはちゃん。」

「うん!!」


リインフォースさんの全快を持って、夜天の魔導書の彼是は本当の意味で終息したのかもしれない――それこそ最高のハッピーエンドをもってね♪









魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天58
『海鳴の日常は割とViolence!』











Side:なのは


私が退院して、そしてリインフォースの不具合が治った翌日の午後、私とはやてちゃん、リインフォースとナハトヴァールとお市さんは街に繰り出してた。

何でかって?……其れは勿論リインフォース達の服を買うためにだよ。
取り敢えずはシグナムの服を貸して貰ったけど、明らかにサイズが合ってないし、何よりも此れから生活していく上で、服は絶対に必要になる物だからね。

流石に今の季節だと、秋物と冬物しか揃えられないけど、せめて其れだけでも揃えておかないとだから。


因みに、お市さんの2本の小太刀と種子島は、グランツ博士が正式にデバイスとして改造してくれる事になった。
まぁ、流石に小太刀と銃を装備して街中歩く訳にも行かないし、デバイス化すればいざと言う時にすぐ使う事も出来るからね。

更に、序と言うかその場でのノリと勢いと言うか、リインフォースとザフィーラのデバイスも作る事になって、何て言うか博士は物凄く楽しそうだったなぁ……
ザフィーラは手甲型で、リインフォースの方は完成してからのお楽しみって事で、果たしてどんなデバイスが出来上がるんだろうね?


取り敢えず其れは其れとして、シグナム達の服を買ったデパートにやって来た訳なんだけど――此れは意外と難しそうだなぁ?

取り敢えず、先ずは夫々気に入った物を選んでもらうようにしたんだけど、リインフォースとナハトヴァールは意外と服装のセンスがないのかな?
選んだ服のデザインそのものは悪くないと思うけど、色が問題だよ色が!!

「何この目に痛いピンクと、毒々しい紫色は!?
 ピンクを選ぶならもっとライトなモノを!紫を選ぶならもっとシックで落ち着いたダークヴァイオレットのを選ばないとカラーがきつ過ぎるよ!!」

「其れにこの上着もアカンて。
 ピンクや紫にガッツリ濃い赤や青はどぎついを通り越して、直視できんほどに色合わせがきつ過ぎるで?
 リインもナハトも素材が抜群にえぇんやから、服での味付けはシンプルにせんと、かえって素材の良さを殺してまうわ。
 それにや、アンタ等は古代ベルカの時代にもこんなどぎつい色の服着とった訳やないやろ?――気持ちは分かるけど、欲張りすぎん方がえぇで?」


はやてちゃんの言う通りだよ?
リインフォースもナハトヴァールも、本当にこんな色が好きな訳じゃないでしょ?――見た事もない服の色に、少しだけ興味が湧いただけなんだよね?

だけど、やっぱり服は着る人が似合わないと意味は無いと思うんだ。
だから、貴女達が本当に好きな色を選んだ方が良いと思うの――その結果が此れだって言うなら、これ以上は何も言わないけど。


――確かに、少しばかりはしゃぎすぎましたマイスターなのは、矢張り自分に一番合ったモノを選ばねばダメですね。」

「あまりにも種類が多いのでつい暴走してしましました。
 確かに目先の物珍しさで選んでは後悔では済みそうにありません……自分が一番好きな色やデザインでなければ満足たり得ないでしょうし。」


分かってくれた?
なら、改めてドレが良いか選んでみようか♪


「「はい♪」」


其れでお市さんなんだけど、此れはある意味でお市さんにはピッタリなのかな?


「まぁ、ピッタリやと思うである意味では……」

「だよねぇ……」

お市さんが選んだのは、背中にバックプリントの入った長袖のシャツ。
それ自体は決して悪いモノじゃないんだけど、プリントされてるのが漢字で『天下統一』とか『天下布武』って……此れは女性物の所に置く物なの!?

絶対に男性物の所に置かれるべきだよねデザイン的には!?


えと、本当に其れで良いんですかお市さん?


「勿論です!
 天下統一に天下布武、どちらも兄様が目指していた物ですし、私自身もこの言葉は好きですから♪
 あ、でもこっちの可愛いのも好きですよ?この赤いほっぺの黄色い動物がプリントされた服も良いと思います♪」


成程納得、其れなら仕方ないね。
そして、ピカチュ○は、戦国の姫武将ですら虜にしたと――流石は全世界の子供達を虜にした代表的携帯獣だね。



にしても、やっぱりお市さんの身体に合うサイズってそんなに多くないんだね。
シグナムやリインフォース達も女性としては背が高い方だけど、お市さんは更に高いから女性物のLLじゃないと丈が足りなくなっちゃうもん。

現実に外出用に借りたシグナムの服は全然丈が足りないしね。

そう言えば、上は兎も角として下は選びましたかお市さん?


「勿論。“すかーと”と言うのは動き辛そうなので、此方の“じーぱん”と言うモノにしましたけど♪」

「寧ろこっちの方がお市さんには似合ってるかな?
 スカートよりも、7分丈のストレッチタイプジーンズの方がお市さんには似合ってるね♪」

「せやな、お市さんにはお似合いや♪」


ならお市さんの方は此れで。
さてと、リインフォースとナハトヴァールの方は如何かな?


「此れならば如何でしょうか我が主?」

「デザインはさっきと同じだけど、私達の好きな色を選んでみましたが……」


うん、良いと思うよ?
リインフォースがワインレッドで、ナハトヴァールが少し暗めの青紫――奇しくも2人の戦闘装備と同じ色だね。


「私もリインフォースも、人間であったころからこの色の服を好んで着ていましたからね。
 これ以外の色だと、私は白か若草色、リインフォースは淡い空色やダークブラウンの物を好んで着ていました。因みにシグナムは黒を好んでましたよ。」


成程ね。シグナムに黒は物凄く似合うよ。
で、選んだのは良いけど、2人ともそのセーターは?悪くないと思うけど、此れも2人の好きな色なのかな?


「好きになったと言うほうが正しいでしょうね。
 強過ぎず、しかし淡すぎずの絶妙な濃さの桜色は、主の魔力光と同じですから。」


そう言えばそうだね……だから其れを選んだの?――ふふ、私は思った以上に思われてるみたいだね。

其れじゃあこれを清算して、そしたら今度は地下の食品売り場で今日の晩御飯の材料調達なの♪



清算が済んだ後で、リインフォース達には買ったばかりの服に着替えて貰ったけれどね。



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と言う訳でデパ地下。
お母さんは『何でも食べたいものを買ってきていい』って言ってたけど、其れは其れで何を買うか悩むんだよねぇ?

リインフォース、ナハトヴァール、お市さん、何か食べたいものってあるかな?


「そうですね、私はヴィータが『ギガウマ』だと言っていたカレーライスと言うのを食べてみたいです。」

「私は、同様にヴィータが絶賛していたハンバーグが良いな?」

「私は魚介をふんだんに使った料理を食べたいですね〜〜〜。」


物の見事にバラバラだね!?
だけど、この希望なら纏める事は難しくない………なら今夜のメニューは『ハンバーグシーフードカレーライス』なの!!

此れならカレーもハンバーグも魚介をふんだんに使ったメニューも全てが一度に満たせるからね!!異論は聞かないよ!此れが最上の策なんだから♪


「異論など有りません、マイスターなのは!!実に素晴らしい提案です!!」

「我等3人の希望を叶えつつ、しかし作る側の負担を最小限に留めるとはお見事です、我が主。」

「此れは今晩の夕餉が楽しみですね♪」


でしょ?
だけど、此処からは戦場だよ?――準備は出来てるかなはやてちゃん?


「任せとけや姉やん……5分後に始まるタイムセール、1円でも安くて良質な素材を手に入れたろやないか!!!」

「イカとホタテとエビをメインに狙ってね?
 その3つがシーフードカレーの主役であり要とも言えるから!!それとハンバーグの材料の合挽き肉とタマネギも外しちゃダメなの!!!」

「分かっとるで姉やん!!!!!」


ふふ……なら行くよはやてちゃん!最高の晩御飯の為に全力全壊だよ!!!












――只今、大凡お見せできない主婦バトルが展開されてしまったので少しだけ待っててね?








「此れは私のよぉ!!!」

「値引き率は此れが一番……此れは渡さないわ!!って、横取り!?この泥棒猫!!」

「泥棒猫?違うな、俺は悪魔だぁ!」







――……なんか伝説の超サイ○人が混じったみたいだけど、もう少し待ってね?







「このステーキ肉は俺のモンだ……行くぜオイ!裁くのは俺のスタ○ドだぁ!!」

「初めに言っておこう、北○神拳は無敵だ!!」


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

「あ〜〜〜〜ッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタ!!!」






――何だか人外的パンチの攻防が展開されたけど、あと少しだけ待ってね?







――10分後



「此れが私の全力全壊なの――!!」

「タイムセール勝ち取る為に、ブレイカー打ちかますとは流石やななのはちゃん!……尤もこんだけの騒ぎがあってもまるっきり無傷のデパートに驚きや。
 ホンマドナイな物質で建設されたんやこの建物?なのはちゃんのブレイカーが炸裂して尚無傷とは、此れは若しかしたら未知の物質で出来とるのかも。」


ある意味否定できないね其れは。
だけどその甲斐あって、鮮度抜群の食材を確保出来たから結果オーライだよはやてちゃん♪


「そうとも言えるかなぁ?……まぁ、タイムセール利用で此れなら上々やろ?
 何よりも3人のリクエストに応える事が出来るし、お母さんのカレーとハンバーグはホンマにほっぺが落ちると思う程の絶品やからなぁ〜〜〜♪
 寧ろカレーとハンバーグを食べずして高町家の料理は語れへんと思うよ姉やん?
 翠屋が、ファミレスやったら、速攻で定番メニューに追加されててもおかしくない程の美味しさや!ホンマに想像しただけで唾液が出て来るで。」


お母さんの料理はどれも美味しいけど、カレーとハンバーグは文字通りの鉄板だから、今夜の晩御飯は期待しててね3人とも♪


「「「はい♪」」」


じゃあ、帰ろうか?そろそろ翠屋の営業時間も終わる頃だからね。








――――――








Side:グランツ


ふむふむ、市君の2本の小太刀は特に弄るところはないかな?待機状態を設定すれば其れで大丈夫だね。
種田島の方は、いっそ思い切った改造をしようかな?種子島から大型の銃器にしても、面白そうだし市君ならば即時使いこなすだろうしね。

最大の難題はリインフォース君のデバイスだね。
ザフィーラ君のデバイスならば、格闘に特化した手甲型で決まりなんだけど、リインフォース君のは如何したモノかな?


彼女は徒手空拳が得意みたいだけど、だからこそアームドデバイスをって言うのも行けるかもね。
となるとベースにする武器は此れで……此れは俄然やる気が出て来た!!僕の持てる技術の全てを注ぎ込んで最高のデバイスを作り上げて見せるさ!

何よりも机上の空論だと言われてた魔法技術が存在しているんだ……だから僕は―――



―――キィィィン……




!?……魔力反応!?……夜天の魔導書彼是はもう終わったのに一体誰が……



――シュゥゥゥ……



と思ったら今度は消えた!?
しかも今計測された魔力パターンはなのは君の物と略同じものだ――――どうやら、凄まじく面倒な事が起こるのかもしれないのは確実みたいだね。


此れは予定よりも早く、リイン君達のデバイスを完成させた方が良いかもしれない――どんな事が起きても対処出来るように、ね。
















 To Be Continued…