Side:はやて


 「…おはようございます、此処は忘却の彼方…」

 「はやて?」

 「はやてちゃん…起きて早々、何を言ってるの?」


 ん〜〜〜…何となくボケかましたい気分やったんや。
 如何にも変な夢見てなぁ?

 林の中で見知らぬ男の子が、けったいなモンスター相手に戦ってるんよ?
 見た事もない男の子がやで?…変な夢やろ?


 「え?はやてちゃんも見たの!?」

 「うぇ!?なのはとはやても!?」


 え、なにこの反応?
 若しかしてとは思うけど、なのはちゃんとヴィータも其の夢見たん!?


 「うん、不思議な服を着た金髪の男の子が何かと戦ってる夢…」

 「偶然…じゃ、ねぇよな?」


 そら偶然とは考え辛いやろ?……一体如何言う事やろ?









 魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天5
 『近付く始まりの足音』










 「其の夢ならば私も見ましたよ?見知らぬ少年が戦う夢。」

 「実は私もです。」

 「私も同じような夢を……」

 「シグナム達も…」


 なんやこれ…6人とも同じ夢見るなんて絶対普通やないで?
 これ、夢や無いんと違う?


 「可能性は有るわね。
  夢の男の子が魔導師だとしたら、あの子の経験が夢と言う形で私達に再現されたのかも…」

 「だとして…俺や美由希がソレを見てないのは何でだ?」

 「リンカーコアの有無では?
  主なのはと、はやて嬢以外には、この家でリンカーコアを持つ者は居ませんので…」


 魔法を使う素質の有無がって事やね?
 せやけど、なんであないなモンが……意味分らんで?


 「如何してかまではちょっと……でも、若しかしたらあの子は結構近い所に居るのかもしれないわ…」

 「なんやねんソレ…」

 近くにて…面倒な事が起きそうな気配がバリバリやん♪


 「と言いつつ、起きたら起きたで首突っ込む気満々だよねはやてちゃん?」

 「そら当然やろ。」

 面倒で厄介な事は、同時に面白い事やら何やらが一杯付いてくるモンやで?
 そないなモンを関西人が見逃す思うか?

 断じて否や!首突っ込まないなんてありえへん!!
 野次馬根性全開ながら、首突っ込みまくって、困ってる人が居るようなら助けて厄介事解決!
 ソレが関西人の心意気や、自論やけどな♪


 「にゃはは、はやてちゃんらしいなぁ。
  あ、そう言えば今日は病院行ってからだから、私2時間目からなの。」

 「分ってるよ〜。ちゃ〜〜んとセンセに伝えとくから安心してや。」

 「病院には我等が付き添います。
  病院から学校までは、ザフィーラが送っていきますので、ご安心を。」


 うん、ソレは安心やね。



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 ・・・



 「え!?アンタも其の夢見たの!?」

 「私も見たよ、その夢。」

 「皆さんもですか!?実は私もです!!」

 「これはもう、如何考えても只の夢じゃないわよね〜〜。
  私とアミタだけじゃなく、こんなに……更になのはちゃんと騎士さん達も見たんでしょ〜〜?
  TGS、只の偶然じゃすまないわよ〜ん?」


 うん、若しかしてとは思たけど、アリサちゃんもすずかちゃんもアミタさんもキリエさんも見たんやね。
 と言う事は、皆にもリンカーコア……魔法の素養があると言う事やね?


 「魔法の匂いもしねー街だと思ったのに、何でこんなに魔法の素養がある奴等がゴロゴロしてやがんだ此処は…」

 「一切謎や!」

 或いは『海鳴だから』としか言い様が無いて。
 天下無敵の夫婦が営む最強の喫茶店に、魔法の研究してる凄い研究所、剣術体術無双の兄妹が居て…充分おかしいやろ!
 で、自分で言うのもなんやけど極め付けは私等や!!


 「中学年なのに、学校で最強扱いされてるって有り得ないわよね…」

 「最近はヴィータちゃんも追加されたしね。」

 「お〜!負ける気はねぇぞ、誰にも。」

 「海聖最強四天王が五聖王になったからなぁ…」

 楽しいからえぇけどね。


 「でも、皆の夢はちょっと気になるよね?
  シャマルが言うには、其の夢の男の子は近くに居るかもしれないんでしょ?
  だとしたら其の変なモンスターってのも近くに出るんじゃないかなぁ?」

 「大丈夫!そんなの出ても全部アタシがぶっ叩いて倒す!!」

 「頼もしいなぁ〜、お願いねヴィータ♪」

 「おう!任せとけ!!」


 なはは、ヴィータと美由希さんもホンマの姉妹みたいやね。


 にしても…ヴォルケンズ登場後に速攻で家を増築した高町夫妻はやっぱ謎や…








 ――――――








 Side:なのは


 「では、私とシャマルは石田医師と話をしてきますので、主はそのまま学校に。」

 「なのはちゃんの事お願いね、ザフィーラ。」

 「心得た…」


 病院での検査もお終い。
 予想はしてたけど、あんまり治療の効果は出てないんだね…でも頑張るもん!
 それじゃあ、石田先生また今度!


 「はい。お大事に。」


 石田先生も親身になって治療してくれてるんだもん、私が諦めちゃダメだよね!


 「其の意志は大切かと……ですが、本当に宜しいのですか主よ。」

 「ザフィーラ?」

 「我等ヴォルケンリッター一同、貴女の命あらば、直ぐにでも闇の書の蒐集を行う事が出来ます。
  闇の書を完成させれば、主の病は消える……他の者達と同じように生活出来るようになる筈…」


 そうかもしれないけど…ソレはダメだよ。
 魔力の蒐集――リンカーコアの蒐集は沢山の人に迷惑を掛けちゃうから。

 『どうぞ魔力を蒐集してください』って言う奇特な人が居るなら兎も角、そうじゃないならダメだよ?


 「主なら、そう申されると思いました……我等は本当に良き主と巡り会えた…
  ですが、時折我侭を申して欲しい…と思ってもしまうのです。
  僅かな願い――ソレを叶えるもまた騎士と守護獣の喜びですので…」

 「そうなの?」

 ん〜〜〜…あ!
 それじゃあ今度お出掛けする時、狼状態のザフィーラに乗ってみたいな、はやてちゃんと一緒に!


 「その様な事で宜しいのでしたら何時でも…」

 「うん!約束だよ?」

 「心得ました…」


 うん、楽しみにしてるね♪




 因みに、学校到着した時に6年生が体育の授業だったんだけど…体育の先生がザフィーラに対抗心燃やした様に見えたのは…気のせい、だよね?








 ――――――








 Side:シグナム


 「命の危険!?」

 「なのはちゃんが!?」


 まさか…如何して!


 「なのはちゃんの下半身の麻痺…少しずつですが確実に進行しています。
  最善の手を尽くしていますが、このままだと…最悪の場合は内臓器官にまで麻痺が及ぶ可能性が…」


 そんな……!
 この世界の、しかもこの国の医療技術は最高水準だと聞いていたが…それでも手の施しようが無いのか?

 何故……

 こんな事実を、どうやって士郎殿達に伝えれば良いのだ…?
 愛情を注いで育てた娘が、大切な妹が命の危機に直面しているなど…どうやって…!


 いや、それ以前に主の病は何故こんなにも重いのだ?
 半身不随、下半身の麻痺は多くの人が抱える悩みだと聞いた……が、ソレが進行するなど…

 まして、事故に遭った訳でもないのにおかしくはないか?


 一体何故……まさか!!



 闇の書が、主を侵食しているのか!?
 ページの蒐集を行わないが為に、完成に必要な力を主そのものから吸収している?

 その影響で、主なのはの麻痺が進行してしまっているというのか…!


 何と言うことだ…我等が覚醒したが為に、主に危機が及ぶとは――騎士の面目丸つぶれだな。


 《シグナム、この事は…》

 《少なくともヴィータには帰ってくるまで知らせない方が良いだろう。
  ザフィーラには私から話すが…士郎殿達には……》

 《分ったわ。》


 何時までも隠して…とは行かぬだろうがな。


 「ですが、私達も最悪を防ぐ為に最善を…いえ、全力を尽くしますので――諦めないで下さい。」

 「はい…何卒、宜しくお願いします…」

 石田医師とて辛いだろうな…全力を尽くしているのに効果が無いのだから…


 だが、主の病は最早医学では治せん…!


 此れは、主との誓いを破る覚悟を決める必要が有るかも知れんな…








 ――――――








 Side:アリサ


 ふ〜〜…今日も1日頑張ったわ〜〜。
 マッタク、抜き打ちテストなんて酷いわよね!
 油断しきってたじゃないねぇ?


 「其処でやるから抜き打ちの意味が有るんだと思うんだけど…」

 「それでも1番とっちゃうアリサちゃんは凄いと思うの…」


 まぁ、抜き打ちでも負ける気は無いわね。
 ……クラスの上位5人はアタシ等だったけど。

 てか、ヴィータも頭良いのね?
 クラスで5番目って凄いわよ?


 「アリサには勝てねーです…でも、何時か追い越してやる!」

 「やってみなさい!簡単には抜かせないから!」

 「む…見てろよ、ぜってー抜いて一番になってやるからな!!」


 楽しみにしてるわ!




 《…助けて…》


 「「「「「!?」」」」」


 何今の!?
 聞こえた?


 「聞こえた!『助けて』って!!」

 「頭の中に直接響いてきた感じやな?…なんやの?」

 「念話だ…誰かが念話でアタシ等にメッセージを送ってるんだ!」


 マジで!?
 てか、今の明らかにSOS信号よね?…如何する?


 「当然助けに行くの!ヴィータちゃん、場所分る?」

 「サーチはあんまし得意じゃねぇけど……うし、見つけた!公園の林の中だ!!」


 聞くまでも無いわよね!
 じゃあ、救出に行くわよ!!


 「「「「おーーーー!!」」」」



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 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

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 ・・・



 で、何処に居るのよ?
 公園の林っていっても結構大きいのよね此れ…

 人なら居れば分ると思うんだけど…


 「「………」」

 「ん?なのはにはやて、如何したの?」

 「「こっち!!」」


 え!?
 ちょ、ちょっと待ちなさいよ!
 こっちって………あれ?…なんか居るわね?

 これは――フェレットかしら?珍しい感じだけど…
 ソレと赤い宝石と蒼い宝石が一緒に?意味が分らないわ。


 《来て…くれたんですね…》


 な!?さっきの声?
 まさか、このフェレットが飛ばしてたの?


 《助かった…》


 ちょっと、確りしなさいよ!!


 「確かこっちの方から聞こえて来た筈なんですが…」

 「ソレらしき者は見当たらないわね〜〜って、アラ〜〜皆如何したの?」


 アミタとキリエ!
 ん?若しかして2人も声を聞いたの?


 「はい、『助けて』と言う声が、こう…頭の中に直接。」

 「気になったから、声が聞こえた方に来てみたのよ〜〜。」


 成程…ってそうじゃないわ!
 取り敢えず、この子を動物病院に運ばないと!


 「此処からだと、槇原動物病院が一番近いよアリサちゃん!」

 「そうね…あそこなら家の犬達もお世話になってるから話も直ぐに通じるわね!」

 待ってなさい、今病院に連れてってやるから!
 くたばるんじゃないわよ、不思議なフェレット!!













  To Be Continued…