Side:なのは
「い、如何でしょうか、主なのは…」
「似合ってるかしら、なのはちゃん?」
うん、シグナムもシャマルも良く似合ってるよ。
シグナムはカッコ良くて、シャマルは優しそうな感じ。
「ならば良いのですが、こういった服は此れまで着る機会が無かったものですから。」
「じゃあ、とっても貴重な経験だね。」
「そやな……まぁ、シャマルとシグナムは良いとしてや……こっちは少々壊滅的やなぁ…」
はやてちゃん、ハッキリ言っちゃダメだって…否定できないけど。
お母さん、ザフィーラにウェイター服はやっぱり無理じゃないかなぁ?
LLサイズでも袖破らないと入ってないんだけど…
「だから私は裏方の方が良いとアレほど…」
「仕方ないわねぇ…ワイルド系イケメンのウェイターは行けると思ったんだけど…
特注のウェイター服が出来るまでは裏方で頑張ってもらうしかなさそうね。」
ソレでも最終的にはウェイターにするんだ……ゴメンねザフィーラ、頑張って。
「いえ、与えられた任をこなすのも守護獣の勤めですのでお気になさらずに。」
「うん。でも、無理はしないでね。」
さてと、こっちは良いけどヴィータちゃんは如何かな?
ソロソロ着替え終わると思うんだけど…
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天4
『突撃グランツ研究所!』
「着替えた!如何なのは?似合ってる?」
「ヴィータちゃん、うん、良く似合ってる。凄く可愛いよ♪」
「赤い髪と白い制服のコントラストはばっちしやな。
ヴィータは性格も明るいから、4−1の皆ともすぐに仲良くなれるんと違うかな?」
そうだね。
今日からヴィータちゃんは私達と一緒に海聖小学校に通うことになってる。
私達と同じ学年で同じクラスにって事だけど……お父さんをお母さんはどんな裏工作をしたの!?
普通に考えたらヴィータちゃんは学年下だよね?
ソレを同じ学年で、しかも同じクラスって……普通に編入手続きだけじゃ無理だよね?
大体、昨日の今日で制服出来てるって如何言う事なんだろう…
まぁ、そもそも私が普通の小学校に通えてる時点で物凄い事なんだけど…
「桃子さんと士郎さんはドナイな権力持ってるんやろうか?」
「謎だ、俺にも分らない。」
「まぁ、お父さんとお母さんだからね〜…」
ソレで良いのお姉ちゃん!?
いや、全くは否定は出来ないけど……私の両親は謎だらけ――深く考えるの止めとこ…
「そやなぁ……と、ソロソロ時間や!ほな、行ってきます!」
「ホントだ!アレ、お姉ちゃんは準備しなくて良いの?」
「今日は試験休み、だからお店のお手伝いね。」
「俺も今日は2限目からだ。」
そうなんだ。
じゃあ今日は小学生だけで登校だね、行こうはやてちゃん、ヴィータちゃん♪
「うん!」
「ほな出撃や〜〜。」
「安全運転でお願いします♪」
シグナムとシャマルとザフィーラも、お仕事頑張ってね?
「はい。」
「は〜い、それじゃあ気をつけてね♪」
「お任せを…」
ん?どうしたの闇の書?
「〜〜〜」
学校に行く前にお母さんに伝えておいて欲しいって?
うん、うん…え、そうなの?……ソレは確かに問題だね。
「なのは?」
「あのね、お母さん。闇の書が『客が死んでしまうと大事なのでシャマルは絶対に厨房に入れないで下さい』って。」
「ちょ、闇の書酷い〜!!」
「「「あ〜〜〜〜〜…」」」
「シグナム達まで〜〜!?」
…ヴィータちゃん、シャマルって料理ダメなの?
そんなに酷い?
「アタシはシャマルの料理食って三日三晩寝込んだ事があるし、シグナムは腹下して、ザフィーラはガチに死に掛けた事が…」
「「うわぁ…」」
「其処まで酷くないわよ〜〜!」
「いや、酷い……大体如何焼いたらパンが炭化するんだ?」
「竃が爆発した事もあったな…」
何かもう、此れはダメダメなレベル?
お母さんが矯正しても直るかどうか……取り敢えずシャマルは厨房出禁ね?
「うぅ、しょんぼり……桃子さん、今度料理教えてください!!」
「は〜い、頑張りましょうね。」
ソレで改善できると良いね。
さて、本当に良い時間だし、行こう。
今日も1日頑張らなくっちゃ!!
――――――
Side:はやて
と、言う訳であっという間に1週間が経って土曜日や。
ヴィータは予想通り、あっという間にクラスに馴染んでもうた、良い事や。
まぁ、質問攻めを巧くアリサちゃんが捌いてくれたのも大きいけどな。
その時の事も有ってか、ヴィータはアリサちゃんに懐いてるみたいや……一番はなのはちゃんで間違いないけど。
でもって翠屋。
ぶっちゃけ売り上げ倍増や。
ザフィーラがサイズ合うウェイター服手に入れてからは余計に!
タイプの違う2人のウェイトレスと、ワイルド系イケメンウェイターが居る、絶品喫茶ってそらはやるわ。
勿論、桃子さんのお菓子と士郎さんのコーヒーが美味しいからこそやけどな。
で、半日授業の土曜の午後、やって来たのは…
「相変わらず大きいわよねぇ…」
「途中から道路も私道を引き込んで…規模が桁違い…」
海鳴名物(?)グランツ研究所!
いやまぁ、リアルにSFチックな研究所も此処以外にはそうそう無いやろな。
「此れはまた巨大な…主なのは、此処は一体?」
「グランツ・フローリアン研究所、通称『インダストリー』。
遊び心満点の科学者、グランツさんの研究所だよ♪」
「何でアタシ等を此処に?」
それはなぁ、グランツ博士はロボット工学の分野で凄い人なんやけど、実は魔法の研究にも熱心なんよ。
『魔法は存在する!僕は魔法の存在を確立して人の役に立てたい!』ってな♪
「魔導技術皆無の世界でもその様な研究をしている者が…と、言う事はつまり。」
「うん、博士に魔法を見せてあげて欲しいんだ。
博士も喜ぶし、皆もきっと博士と仲良くなれると思うんだ♪」
う〜〜ん、なのはちゃんはすっかり『闇の書の主』やな。
何と言うか主としての責任感というか貫禄というか…そんなんが出てきた気がするわ。
「それにしても此れだけ広いと迷っちゃいそうですよ?」
「ソレについては問題ないわよ?エントランスで待ち合わせだから。」
「バニングス?ソレは…ん?」
「スイマセン、お待たせしました!」
「ハロ〜、なのはちゃん、皆〜〜、ようこそいらっしゃいましたのYIM♪」
どうも、お邪魔しますアミタさん、キリエさん♪
「こんにちわ、アミタさん、キリエさん♪」
「良く来てくれました!…そちらの方達が電話で言っていた?」
「はい!紹介しますね、闇の書の守護騎士、ヴォルケンリッターの皆です。
皆、此方はアミタさんとキリエさん、この研究所の所長、グランツ博士の娘さんです。」
うん、ホンマに見事やなのはちゃん。
アミタさんとキリエさんとシグナム達をうま〜〜く繋げたなぁ?
「才能よねアレは、ぶっちゃけなのはが居なかったらアタシ達は今みたいな関係じゃなかったと思うわ。」
「友達にはなれたかも知れないけど、此処まで深い付き合いにはならなかったかもしれないね。」
「そやな…」
なのはちゃんには『人との縁を結ぶ力』が有るのかも知れへんね。
「じゃあ、案内お願いします。」
「手数をかけるな、2人とも。」
「いえ、これもお父さんの為です!」
「パパが喜ぶのが一番だからね〜〜♪」
って、ちょお待って!置いてかんといて!
こないな広い所に放置されたら迷子になってまうって!!
「いざとなれば私が匂いで追跡できるがな。」
「いや、ザフィーラそういう問題やないから。」
「行くよはやてちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん〜〜♪」
了解や〜〜。
マッタク、大張り切りやな、なのはちゃん♪
――――――
Side:シグナム
正直に言おう……汚い。
主なのは達曰く『研究者の研究室なんてこんな物』、フローリアン姉妹曰く『博士は研究に没頭するとこうなる』との事だが…
此れは些か常軌を逸しているのでは?
足の踏み場がないと言う言葉が有りますが、此れは『足の踏み場もない』のでは無いでしょうか?
「いやぁ、ゴメンね皆。研究に没頭するとついね。
こと、この目で実際の魔法を見れるとなるとワクワクして、今出来る限界までの理論を組んでたらこうなっちゃったよ♪」
「研究に没頭するのは良いですけど、やりすぎは良くないですよ?」
「そ〜よ、適度に休憩入れないと身体壊すわよ博士?」
「あはははは、耳が痛いなぁ。
さてと……君達がなのは君の持っていた魔導書から現れた守護騎士さん達だね?
初めまして、グランツ・フローリアン研究所の所長、グランツ・フローリアンだ、宜しくね。」
む…このオーラは…一流の者にしか纏う事ができない物。
研究と言う分野だが、彼は常に己を磨いているという事か…
「闇の書の守護騎士、ヴォルケンリッターが将シグナムです。お見知りおきを。」
「鉄槌の騎士ヴィータ。え〜と、宜しくな?」
「湖の騎士、シャマルです♪」
「盾の守護獣ザフィーラ…」
「うん、宜しく頼むよ。
しかし不思議だねぇ…こうしてみると生身の人間にしか見えないんだけれど、書のプログラムの一部とは驚きだよ。
まぁ、君達は己の意思と自己を持っているから、その点では人間と同じだね。」
そう、ですか?
今までそんな事を言われた事は有りませんでしたよ。
時にグランツ殿は何故魔法を?
「あぁ、僕の事は『博士』って呼んでくれるかい?
名前で呼ばれるよりもそっちの方が馴染むというか、シックリくるからね。」
「はぁ?…して博士、何故魔法を?」
「僕も知らない未知の領域であり、世間的には御伽噺の中だけの物と否定されていたからさ。
確かに創作もあるだろうが、世界中に魔法が出てくるお話が有る以上、ソレが只の架空の存在とは思えなくてね。
それで魔法の研究を始めて、9割方の推論は立ったんだけど、最後の重要な1ピースがね。
即ち魔法はどんな過程を経て魔法と成って放たれるのか分らなかったんだ。」
成程…ソレを踏まえると我等の起動はある意味で良いタイミングだった訳だ。
と、言う事はつまり…
「あぁ、君達の魔法を見せて欲しいんだ。
恐らくそれで基礎理論が作れるはずだからね。」
「矢張り。」
まぁ、魔導を見せる分には構わないが…主なのは、此処で使っても?
「良いよ。あ、それからこの前作った騎士服も展開してね。」
「騎士服まで?…了解しました。」
と、言う訳で全力で協力しましょう博士。
ですが、我等の魔導に耐えられるくらいの場所は用意して置いてくださいね?
「善処しよう。」
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ふぅ、やっと全てが終わったか。
中庭での魔導の披露から、騎士甲冑とデバイスの解析、果てはシュミレーターと言う物を使っての仮想模擬戦とは。
…フローリアン姉妹が意外に強かったのには驚いたがな。
「シグナム、大丈夫?ゴメンね行き成り色々…」
「いえ、大丈夫です。
博士も『此れで魔導理論が完成した』と喜んでいましたので、人の役に立てたのならば本望ですよ。」
「そう?それなら良いんだけど…」
ソレに、博士が喜んでいたのを見て、貴女も嬉しそうでしたので。
騎士として、矢張り主が嬉しそうなのを見ると、此方も嬉しくなるんですよ。
此処は本当に良き世界だ。
命を奪い合う事も無く、平和に過ごす事ができる……望まぬ戦いをする事もない。
逆に己が望む強者との戦いを選ぶ事ができる…良い世界だ…実に良い世界だ…!
「落ち着け戦闘狂。」
「シグナムってホント、何て言うか純粋に強さを競う戦いが好きよね〜。」
む…まぁ、否定はしない。
バニングスとてこの気持ち、分るだろう?
「ま、少しくらいはね?」
「けど、練武場を壊さないように注意しなきゃダメですよ?」
月村…うむ、心得ておく。
……恭也殿との手合わせはつい熱が入るので確約できないのだがな…
ん?如何しました主なのは。
「お母さんからメール。
え〜と、『帰りに商店街で、玉ネギ、ニンジン、ジャガイモ、豚肉10人前』だって。今日はカレーだね。」
「ホントに!?やったー!!」
「なはは…ヴィータは、ホンマにカレー好きやなぁ♪」
まぁ、桃子殿の料理は美味ですので。
では、手早く買い物をして戻るとしましょう。
「そうだね♪」
「はい。」
さてと、商店街に入る前にだ…
《…お前が何処の誰で、何の目的で主を監視しているかは知らん。
だが、主なのはと、その家族・友人に害をなしたら、その時は容赦なくレヴァンティンで両断する…覚えておけ。》
研究所を出た頃から感じていた気配に念話で警告を飛ばす。
効き目があるかどうかは知らんが……取り敢えず気配は消えたか。
願わくば、このまま退いてくれ……この平穏を、我等から奪わないでくれ…頼む。
――――――
Side:闇の書の意志
矢張り我が主には監視が付いていたか。
私が犯した過去の咎…ソレを踏まえれば当然の事だな。
このまま行けば何れは今までと同じ運命を辿る事になるだろうが…
「希望が無いわけでもなさそうだ。」
あの博士…彼ならば或いはこの身の呪いを解く手段を導き出せるかもしれない。
いや、私は無理でも、あの日からナハトを苦しめている改悪プログラムを消去できれば或いは…
…済まないなナハト、私の力が及ばなかったばかりに、防衛機構のお前には辛い思いをさせてばかりだ。
だが、この世界なら或いは呪いを解く手段があるかもしれない…
だから今は、私と共に少し大人しくしていてくれナハト――我が妹よ…
To Be Continued… 
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