Side:シグナム


「おぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!!」

此処から先は一歩も通さん!!レヴァンティン!!


『Jawohl.Schlangebeissen.』

「刃の嵐に朽ち果てろ!!……舞い踊れ、陣風!!


――ドガバァァァァァァァァッァアッァァッァッァァァァァァァ!!!


所詮は雑兵、我等の敵ではない――我等ヴォルケンリッターを模した……性別を反転させたような騎士の力も大した事は無い。


幾らか強くなったかとも思ったが、所詮はこの程度――いや、或は我等が強くなり過ぎただけか?
周囲の雑兵と比べれば強いのだろうが、この程度の実力ならば、所詮は大した事は無い――精々0が0.25になった程度に過ぎん!!

貴様等も含め、この程度の雑魚ならば、例え1000人来ようとも私1人で全て斬り捨てる事が出来るぞ?

更に主なのはには、鍛錬を積んで強くなった信長の部下達が護衛として付いている――一切抜かりはないのだが……如何にも胸がざわつくな?


「死ね、闇の書の騎士が!!!」

「ふん…断る!!!!」

だが、今は其れを気にしている場合ではないか……
今の我等がなす事は、コイツ等を主の元へ向かわせない事のみ!!……我がレヴァンティンの錆になりたい奴から掛かってくるが良い!!










魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天49
『果てなき絶望―終焉の開幕』











Side:なのは


シグナム……ヴィータちゃん…シャマル…ザフィーラ……皆、大丈夫かな?
皆が負けるとは思えないけど……何だろう、胸の不安が消えてくれない――まるで『この襲撃は序章に過ぎない』と言わんばかりに……


「君の不安は分かる。
 大切な仲間達が戦場に向かうと言うのは、其れだけで不安にもなるし、色々と悪い事を考えてしまうモノだ。
 ……だが、君の騎士達は早々簡単にやられてしまう程軟ではないだろう?……特にあの剣騎士の彼女は、私達が束になっても敵わないだろうし。」


桜花さん……私だってシグナム達がやられるとは思っていません。
だけど……信じて居る筈なのに、不安が消えて無くならないんです……若しかしたら二度と皆と会えなくなるんじゃないかって言う不安が――!!


「なら、その不安を消すのは簡単だ。
 なのはちゃんが今まで以上に守護騎士の皆を信じてやりゃそいつで解決だ。
 信じる思いが強ければ強いほど、仲間への信頼は強くなって、同時に信頼もより深くなる……なのはちゃんの騎士達が負ける事なんてなくなるぜ?」


伊吹さん……そうですよね!
私がシグナム達を信じて居る限り、シグナム達は無敵で最強!!どんな敵が来たって負ける筈がないの!!


「そうそう!明るく行きましょ!!病は気からじゃないけど、明るく楽しく過ごしてれば良い事あるわよ!!」

「お?良い事言うじゃねぇか?お子様にしちゃ上出来だ。」

「85点てところだな?」

「富岳、伊吹……アンタ等また人の事子ども扱いして〜〜〜〜〜!!今日と言う今日は許さないわ!!覚悟なさい!!」

「初穂様、『病室ではお静かに』でございます♪」


――ゴスゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!


「ごふぁ!?」


「不意打ちとは、侮れぬ……」

「こりゃ、織田軍最強は、若しかしたら那岐かもな………」


充分有り得ますね其れは……だけど、何て言うか――皆さんとお話をしてたら、少し気分が楽になりました♪…ありがとうございます。


「なれば僥倖。
 護衛とは、対象者の身体を護るだけに非ず……精神的な不安を取り除くのもまた役目……」


なはは……何と言うか本当に護衛役なんですね。
そう言えば、皆さんの服は何処で?ジュエルシードの時の忍び装束とか戦闘装束じゃないみたいですけど……


「プレシア=サンが買ってくれたのさ。
 あの格好で病院に行くのは余りにも場違いで時代錯誤で、好奇の目を集めて面倒な事になるからってな?」

「ま、お代はキッチリお頭が払ったんだが……俺等は兎も角、富岳だけは中々合う服がなくてな?」

「あぁ……大きいですからね富岳さん……」

「身長195p、体重125kgと言う日本人離れした体格が着れる服など中々なくてな……3L専門店で漸く見つけたんだそうだ……」

「無駄に大きいからね富岳ってば。」

「空間支配力が凄まじい事でございますね♪」

「好き勝手言ってんじゃねぇテメェ等!!その口閉じねぇと簀巻きにしちまうぞ!!」


……ぷっ!あははははははは!!!
なんだろう、この人達といると、不安や何やらが本当に吹き飛んじゃうの――シグナム達の実力なら、そろそろ戻って来るだろうし――



――ヴォン……



「随分と楽しそうだな、闇の書の主よ……」

「テメェの命を貰いに来たぜ……!!」


貴方達はあの時の!!
だけど如何して!?シグナム達が相手をしている以上、其れを振りきって此処に来るのは不可能な筈――……まさか!!

「若しかして、仕掛けに乗せられたって言うの!?」

「あぁん!?如何言うこった嬢ちゃん!?」


さっきの襲撃は囮で、恐らくシグナム達が戦ってるのは形だけの偽物!
勿論何れはばれるだろうけど、少しだけでも其方に注意を向けさせる事が出来れば、私に近付くのは難しくない――最初から分断する心算で!!


「そう言う事だよ闇の書の主……君には此処で沈んでもらう。
 手負いの魔導師と、まぁ、人間レベルで見れば強者かもしれない護衛とやらも、僕達の前では所詮は無力――大人しくして居れば痛みはない。」


キッパリお断りします!!
真面な戦闘はキツイかもしれないけど、だからって此処でやらなきゃやられるだけ……だったら!!

「レイジングハート!!」

『まぁ、本来ならば絶対安静なのですが、こうなった以上は仕方ありません。
 と言うか、折角の聖夜に襲撃を仕掛けて来た脳足りんのアホンダラには私も少々怒っていましてね?――いっその事、殺っちまいましょう。』


「なのは殿、貴殿の相棒は何故に思想がその様に過激なのであろうか?」

「マッタク持って分かりません!!」

「へ…別に良いじゃねぇか!喧嘩おっぱじめんなら其れ位じゃないと締まらねぇ!
 それ以前に、この嬢ちゃんの命を頂戴するだと?……馬鹿も休み休み言いな!テメェ等なんぞお呼びじゃねぇ、一昨日来やがれ!!」


「その大男の言う通りだ……高町なのはへの不要な干渉は止めて貰おうか?」

「その子に死なれると、我等としても都合が悪いのでな……」


貴方達は――あの時の仮面のお兄さん!?
どうして此処に……って言うか相変わらず仮面なんですねぇ?


「本気で素顔曝したいんだけど、上が其れを許さないって言う辛い状況……大人の社会って世知辛いから覚えておいてな?」

「うん、その仮面の奥で間違いなく滝の様な涙を流しているのだけは分かりました…」

大人って大変なんですね……
だけど、此れで状況は此方が有利です!!魔力がなくても、隼人さん達は強いですし、仮面の2人は以前に貴方達を退けていますから!!

其れに全力は無理でも、私だって戦う事は出来ます!!
貴方達の思い通りにはなりません!!!


「そう思うか?……だとしたら、愚かな事だな!!――喰らい尽くせ!!」



――カッ!!



「うおぉぉ!?な、なんだこりゃ!?」

「か、身体が消えて行く!?
……此れは一体!!!」



!!隼人さん、富岳さん……皆!!!



「貴様……一体何をした!!」

「なに……この場に相応しくない魔力を持たないモノにはご退場願おうと思ってね。
 『魔力を持たぬ者を閃光の書のエネルギーとする』機能を使わせて貰った――あぁ、吸収されたお前達は我等の力として有効活用させてもらうぞ?」


そんな!……直ぐに其れを止めて!!


「外道が……其れを渡せ!!」

「其れは無理だなぁ?敵戦力を削るのは、戦いの定石だからな!!……さぁ、そいつ等を全て喰らえ!!」



――ギュル………


「「「「「「「うあぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」」


隼人さん!伊吹さん!富岳さん!大和さん!桜花さん!那岐さん!初穂さん!!!
そんな……そんな……皆消えちゃった………今まで楽しくお話してたのに消えちゃった……目の前のこの人達が消した――!!

許さない!!何の罪もない人を簡単に!!
私が戦えば、シグナム達だって気付くはず――夜天の魔導書の主の名に懸けて、貴方達をこの場で断罪する!!


「手伝おう高町……ってか、こうなった以上は正体を隠しても無意味だね!!」


――バッ!!


「時空管理局、ギル・グレアム提督が使い魔リーゼ・アリア、此れより高町なのはに加勢するわ!!」

「同じくリーゼ・ロッテ、アリアと共にアンタに力を貸してやるよ!!」


仮面のお兄さんかと思ったら、猫耳のお姉さんだった!?
しかも使い魔って言う事は……成程、猫をベースにしたって言う事ですね。

まぁ、其れは其れとして――数の上では3対4でこっちが不利ですよ?
シグナム達が駆けつけるまでとは言え、私も全力戦闘が出来ない状態だと少しばかりきついですよね?


「確かにね……だけどこう見えても、私とロッテはSランクの魔導師とも互角以上の戦いが出来るわ。
 倒し、退けるのは無理でも、守護騎士達が駆けつけるまでは持つでしょう?」

「そー言う事!…ま、無理せずやろうじゃない?」


何て言うか、そのノリに気が楽になりますね。
でもその実力なら、倒すとなればきついかもしれないけど、シグナム達が駆けつけてくれるまで持ち堪えるなら、それほど難しくないかもしれません!!


「良い威勢の良さだが…其れが果たしてどこまで持つかな?」



――ドクン!!



!!ぐ……此れは!!こんな所で発作!?……如何して――!!!


「こりゃ予想以上に効いてんなぁ?
 お前等との2度目の戦闘の時、俺等が撤退する際にお前は斬り付けられただろ?……そん時に『種』を仕込んだって事らしいぜ?
 でもって、その種の発芽が其の発作の原因だ………息をするのも苦しいだろ?」


この発作が……仕組まれた物だって言うの!?


「だが、安心しろ……この発作で貴様が死ぬ事は無い……あくまでもリンカーコアの活動を抑制し、貴様の力を抑えるだけの物に過ぎんさ。」

「回りくどい事してくれるじゃない……こんな子供を苦しめるなんて趣味が悪いにも程があるわよ?」

「つーか、今直ぐ止めろ馬鹿たれ!!
 幾ら死なないって言っても、高町が苦しんでるのは分かるだろうが!!この子を苦しめるような事をするな!!!」


アリアさん、ロッテさん……!!
ぐ……だけど此れは本気で苦しい――只の発作のレベルを超えてるよ……!!!何で、如何してこんな事に――!!


「くくく……良い感じだな?では仕上げと行くか!!」



――ヴォン…



へ?此処は……病院の…屋上?


「転移魔法だろうけど…何でこんな所に?……下手したらすぐに守護騎士達に気付かれるって言うのに……」

「くくく……この場所こそが、闇の書の主に絶望を与える場所になるからな――見るが良い!!」


――ググググググ……




「「「!!!」」」


此れは…お父さんとと母さんとお兄ちゃんにお姉ちゃん!?一体何をしたの!?


「如何に強くとも、魔力を持たない彼等を捕らえるのは容易だった。
 あまりにも簡単すぎて少しばかり拍子抜けだったが……貴様はコイツ等の事を何より大切に思っているのだろう?」

「当たり前です!!
 お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも、お姉ちゃんも、大切な私の家族です!!今直ぐ皆を解放して!!!」


「其れを聞き入れると思うか?……もう少し苦しめ。」


――ドクン



……ぐ……発作が強く……!!!此れじゃあ動くに動けない…!!
アリアさん…ロッテさん……お父さん達を助け出す事は出来ますか?


「正直言って可成りキツイよ……だけど、大丈夫だ高町、アレはアイツ等が――

「余計な事を言うなよな?」



――ギュルリ…


「「!!!!」」


アリアさん、ロッテさん!!……此れは蜘蛛の糸!?……動きを封じて……!!



「くくく……絶望を与えてやろう高町なのは……貴様の目の前で、貴様の家族を此れから処刑してやる!!!!」

「!!!」

そんな……お父さん達は関係ない……この戦いには関係ないのに!!
止めて、そんなの止めて!!お父さんを、お母さんを、お兄ちゃんを、お姉ちゃんを処刑するだなんて、そんな事は止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!



「其れを聞くと思うか?………くくく…死ね!!!」


――ズバァァァアァア!!!!


「「「「うあぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁっぁあぁ!!!」」」」


――ブシュァアァアアアア!!……ガクリ……


そんな…嘘だよね?こんなの嘘だよね!!
お父さん達が死んじゃったなんて……こんなのは絶対に嘘……現実じゃないよ………こんなのは…そうだ、きっと悪い夢を見ているだけだよ……


「夢と思うか?……ククク、この温かい血が果たして夢かな?」

「へ?」


――ベチャリ……


此れは…お母さんの腕……?
其処から感じる温度は……夢だったら感じないモノ………と言う事は………まさか…本当にお母さん達は……!!

「いや……いや……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっぁっぁぁぁ!!!!!!!」


嘘だ、嘘だ!!こんな物はすべて悪い夢に決まってる………こんな最悪の夢なんて――すべて消えてしまえばいいの!!








――――――








Side:闇の書の意思


まさか……こんな手段を持ちいて来るとは……!!
斬り捨てられた主の家族は偽物である事は間違いないが……幼き主には其れが見通せなかったか――


「夜天さん!!」

「く……よもや、こう来るとはな…!
 今回は主を喰らい殺さずに済むと思ったが――如何やら『闇の書』が抱える業の深さは、私が思って居た以上だったらしい……!!」

我が主は、目の前で起こった悲惨な出来事に対して『全て夢であれば』と思ってしまった。
そして、其れだけならばまだしも、目の前の敵に対して確かな『憎悪』と『殺意』を抱き、『コイツ等を消し去れ』と願ってしまった……もう、止まらないな…


闇を喰らう破滅の光であるリヒティガルードが起動するのは時間の問題か……!

アレが暴走したら最後、私とナハトは何も出来ん……!!



此度の主ならば、呪いを超えられるかとも思ったが……横槍が入って其れは無理だったか――今回もまた、終わりが始まってしまった………!!













 To Be Continued…