Side:プレシア


取り敢えず、当面の方針は決まったようね――だからと言って安心は出来ないけれど。
まぁ、私も私で出来る事をするだけなのだけれど……まさか、此処に来る事になるとはね――其れだけ状況が予断を許さないと言う事なのだけれど……


「侵入者!!――って、なんだテメェかプレシア!驚かせんなマッタクよぉ!!」

「ごめんなさいね富岳――だけど、少しばかり面倒な事が起きているの――信長は居るかしら?」

「あぁ?大将なら世界の行く末を観察しながらマッタリゆっくりだ。
 こんな平和も悪かねぇが、俺の個人的な意見を言わせてもらえば、喧嘩もねぇってのは少々退屈で仕方ないぜ。」


生粋の喧嘩好きなのね貴方は。
だけど、私がここに来たのは、ある意味では貴方の欲求不満を解消してくれるかもしれないわよ?


なにせ、この情報は戦いに直結するモノですからね。


「マジか!!だとしたら嬉しいぜ!
 高町なのはとか言う嬢ちゃんと、大将がガチバトルやった後は楽しい喧嘩が出来ずにいたからなぁ……思い切り暴れられんならなんでも大歓迎ってな!!」


頼もしいわね。

だけど、貴方達が動けるかどうかは信長の采配にかかっているわ――先ずは彼の所に連れて行ってくれる?


「おうよ!楽しい喧嘩の始まりだぜ!!」


……やれやれ、生粋の喧嘩好きと言うのも中々如何して……

だけど、彼をはじめとした信長の配下が味方として加わってくれるのなら、戦力強化としては申し分ないわ――さて、貴方はどう決断するのかしらね?











魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天46
『集う力。そして発芽する種…』











「プレシアか……久しいな、息災であったか?」


お蔭さまでね……アレから半年――無沙汰にしたわね信長。
なのはさんとの全力全壊のバトルの後遺症はないようで何よりだわ――元気が一番ですもの。


「であるな……いやはや、僅か10才の少女にやられるとは思わなんだな。
 尤も、そのお蔭で市とは再会できたし、我が意を託すに値する新たな世代と出会う事が出来た。
 そして何よりも、プレシア――我が愛する妻『濃姫』の転生体であるお前と会う事も出来た……それを考えれば敗北もまた美酒よ……」


そう言う考えもあるわね。


積もる話もあるのだろうけれど、其れはまたの機会にして――単刀直入に言うわ信長、貴方の兵を此方に貸しなさい。


「ワシの兵を?……此れはまた大胆な要求だな?
 ワシの兵は隼人達7人だけだが……其れを貸せとは穏やかではないな?……外の世界で何が起きているのだ?」

「……先日、闇の書いえ、夜天の魔導書の主――高町なのはさんが魔導書を付け狙う敵に襲われたわ。
 その時は守護騎士達と、私の娘達となのはさんの友人がギリギリで駆けつけて事無きを得たけれど……彼等が再度なのはさんを狙う事は間違いない。
 守護騎士達が居れば大丈夫だとは思うけれど、万が一の事を考えて貴方の兵を貸してほしい……ダメかしら?」

「なんと……あの娘を付け狙う虚けが居ったとは……『尾張の虚け』と揶揄されたワシ以上の虚け者だなそいつは?
 この第六天魔王をも打ち破った高町なのはを付け狙うとは愚かな事この上なかろうに……一歩間違えば守護騎士達に滅されて終わりであろうが。」


確かにそうね。
だけど、なのはさん個人が狙われたのならば、守護騎士達に任せても良いのだけれど相手は夜天の魔導書を狙っているからそうも行かないのよ。

何より相手は11年前に魔導書を暴走させ、1人の人の命を奪った外道ですからね……


「成程、戦力を強化しておいてし過ぎると言う事はないと言う訳か。
 しかし、夜天の魔導書とやらをな……アレの中には市の魂も居る――其れが虚けの手に渡るのだけは阻止せねばなるまい。
 何よりも、あの書は高町なのはにとって大切なモノなのだろう?其れを護るもまた一興!!
 あの娘は、将来必ずこの世界にとってなくてはならない存在となるであろうからな……その芽を摘ませたりはせぬ!!
 ――聞いたな皆の者!!此れより我等は、高町なのはに助力する!!平時は此処で待機し、有事の際は即時出撃出来るようにしておけ!!」

「「「「「「「了解!!」」」」」」」


統率が取れているわね……見事よ信長。


「天下人を狙うならば此れ位はな。
 時にプレシアよ、久しぶりに会ったのだから少しゆるりとしていかぬか?偶には酒を酌み交わすのも良かろう?」

「……偶には良いわね?お呼ばれするわ。」

いっそのことアリシアとフェイト、アルフとリニスも呼ぼうかしら?
どうせ宴会だと言うのなら、人は多い方が楽しいものね?


「ハッハッハ!呼べ呼べ!
 あの娘達とも一度ゆっくりと話をしてみたいと思っていた所よ!!」

「まぁ、貴方からしたら自分の娘と言えなくもないでしょうしね……」

よくよく考えれば、有り得ない程摩訶不思議な関係よね、私と信長って……まぁ、これも面白い事ではあるけれどね。








――――――








Side:なのは


夢の空間……此処に来る頻度が最近増えてきた気がするなぁ?
しかも前よりも夢の内容をハッキリと覚えてる事が多くなったし――此れは、闇の書が夜天の魔導書だって言う事を知った影響なのかな?


「恐らくはそうでしょうね。
 書の主たる貴女が、魔導書の名を正しく認識した事で私とのリンクと言うか、そう言った物が此れまでよりも明確になっているのかも知れません。」

「やっぱりそうなんだ……で、何時から此処は『白銀の茶室』になったのかな?」

「……市がどうせだったら煌びやかな方が良いと作り替えまして…」

「だって、さるが『黄金の茶室』って言うのを作ったらしいですから、負けたくないじゃないですか!
 だけど黄金は光り過ぎて下品!!と、言う事で、光沢を抑えつつ煌びやかさを演出した白銀の茶室なんですけど如何でしょう?」


確かに黄金の茶室と比べれば、光沢を抑えつつ白銀といぶし銀の美しさを備えた此れは見事だと思うの。
だけどお市さん、あんまり書の中に色んな物を勝手に作らないでほしいの!!!


「分かってますって、大掛かりなのは此れで最後ですから。
 其れに、夜天さんやなのはさんとお茶するのは楽しいですからね〜〜……特になのはさんからは、私が生きた時代にはなかった事が聞けますからね♪」


そ、そうなんですか?……だったら、こうして夢でも会えるのは嬉しいですよ。




って、よくよく考えたら、歴史上の人とこうして話しが出来るなんて普通じゃあり得ない事だよね?
歴史研究家が滝の様な涙流して羨ましがりそうだね此れは……

「そう言えば、お市さんて結構背が高いですよね?」

「確かに高いな?将が167cmで、私とナハトが約170cmなんだが、市は私よりも大きいよな?
 恐らくは推定で173………或は175を超えているかもしれないな。」

「ん〜〜〜……確かに高いかも。
 兄様も『背も高く知恵も回るか…もしも男児であったならば良き武将になったであろうな』って言ってましたからね。」


良いなぁ……背の高い女の人ってカッコイイから憧れちゃいますよ?
シグナムも夜天も背が高いし……私の背も高くなるのかなぁ……


「身長は兎も角、主は間違いなく将来は飛び切りの美人になると思います!!
 えぇ、成るに決まってますとも!!夜天の名に懸けて誓います!!貴女も、貴女の友人も将来は飛び切りの美人になると!!10年間の保証付です!!」

「10年間とは大きく出ましたね夜天さん!!
 だけど確かに、なのはさん達は将来飛び切りの美人さんになる事は間違いありません!!」


あはは……思った以上に喰いついて来たね?
だけど、そう言って貰えるのは嬉しいかな?――まぁ、お母さんがアレだからその血を受け継いでる私だってきっと!!

と、そうだ……聞きたい事が有ったんだけど、夜天は書が完成すれば姿を現してくれるんだよね?


「はい……守護騎士達を一度回収した後に、貴女の正式な起動認証を受けた後に守護騎士達と共に貴女にお仕えさせていただきます。
 今回はその時に市も一緒に外に出す心算で居ます……そしてナハトも。」


ナハト……後付けのリヒティの影響で黒蛇になっちゃた夜天の妹――貴女の事も元に戻さないとだよね。


もう少しだけ待っていてねナハト……貴女と夜天を必ず闇から救い出して見せるから!!


「はい……信じて待っています。
 ……其れにしても、貴女もまた私の事を『夜天』と呼ぶのですね、我が主?」


今はね……だってもう闇の書じゃないし。
貴女に送るって約束した名前はまだ考え中だから、今は仮に夜天て呼ばせてもらうの――完全覚醒前には必ず貴女に名前を送るからね?


「はい、楽しみにしています。……さぁ、そろそろ目覚める時間ですよ?」


そうみたいだね……其れじゃあまたね夜天、そしてお市さん……また今度ね?


「はい……次なる邂逅を楽しみにしています。」

「今度は御茶請けも用意しておくね〜〜♪」



にゃはは……まぁ楽しみしておきますよお市さん。












「あふ……今日の夢も楽しかったなぁ……」

とは言っても覚えてるのは内容の6割ほどだけどね……覚えてる内にノートに書いておかないとね。


ん〜〜〜〜……さてと、今日も一日頑張りましょう!!!








――――――








Side:ヴォクシー


ふふふ……高町なのはに植え付けた種はいい感じで成長しているね……此れなら彼女を闇に引き込むのはそれほど苦労しないかもしれない。
アレは一度発動したら、彼女の身体を容赦なく蝕むからね……彼女が弱くなってくれれば僕の思うつぼだね……彼女が絶望に落ちれば……!!


「順調なようですね主ヴォクシー……ですがなぜこんな回りくどい事を?
 正面から挑んでリンカーコアを此方の支配下に置いてしまえば全てが簡単にケリが付くと思うのですが……」


必要だからさ――闇の書を暴走させるためにね。


闇の書の暴走には高町なのはの心の崩壊が必須……此れはその為の下準備さ。
彼女の心が壊れれば、間違いなく闇の書は暴走する――そこを僕達で抑えて書の力の全てを手にすれば其れで良いのさ。

尤も、心を砕かれた高町なのはがどうなるかは知らないけれど、そんなのは如何でも良い事だからね?


書の暴走は=持ち主の死である訳なんだけど、この世界の役に立てたのなら、死しても満足だろうさ。



ククク、何よりも彼女が『悲劇のヒロイン』になってくれた方が僕には都合が良いからね……英雄譚に悲劇は付き物と言えるからな。
その悲劇のヒロインが居るからこそ、僕と言う存在が引き立つ………力を示せる……!!

この力を世に示す……そして闇の書の力を我が物とすれば、怖いものなど何もない!!



終章の時は近い……精々足掻くんだね、高町なのは――!!








――――――








――12月某日


Side:シグナム


今日もまた良き日だな……冬特有の澄んだ空が何とも気持ちいい事この上ない。
こんな日は、仕事にも気合いが入ると言うモノだが――主なのはは何時まで眠っていられるのだろう……何時もならばとっくに起きている時間なのだが…?


「まぁ、日曜日くらいは寝坊しても文句はないでしょう?
 あの子も下半身不随であるにも拘らず此れだけ頑張っているんですもの――日曜日くらい寝坊したって罰は当たらないわよ♪」

「確かに……不自由な身体であるにも拘らず、其れに負けずに日々を過ごしている主なのはには頭が下がります。
 何よりも彼女自身が、下半身不随である事をハンデと思っていませんからね……不屈と言うか、負けず嫌いと言うか……何にせよ心が強い。」

或は我等はその心の強さに惹かれたのかも知れません。
過去の主と違い、我等を人として扱い、私利私欲の蒐集はしなかった主なのは……此れまでの全ては彼女と会う為に必要な事だったのかと思ってしまうな。




「とは言え、寝過ぎと言うのは良くありませんからそろそろ起こして来ますね?」

「そうねぇ……じゃあお願いしようかしら?」


お任せを。
主の目覚めを快適なモノにするのもまた騎士の務めでしょうから――では早速………



――ゴトン………!



「「!!!!」」


なんだ今の音は?……何かが落ちたような――いや、其れよりも今の音は主なのはの部屋から!!
まさか、主に何か!!!!




――バァァァァァァン!!!


「主なのは!!」

「主よ!!」

「「なのはちゃん!!」」

「「「「「なのは!!」」」」」


思わず扉を蹴破った私は悪くない……主なのはの為ならば!!!!


「あう……くぅぅぅぅ……お、母さん?……し、シグナム?……はやて、ちゃん………」


はい、私です主なのは!!
私の声が聞こえますか!?私の事が分かりますか?……分かるなら右手を握って下さい!!!


――ギュ……


握って来た……と言う事は意識はまだ保っていらっしゃる………だが何故行き成りこんな事に!!……夜天の魔導書は安定していたのではないのか!!

だが、其れを言っても仕方ない………なぜこんな事に……大丈夫ですか主なのは!!!


「ゴメン……ね………次の日曜日の約束……果たせそうにないや……」(カクン)


!!確りしてください、主なのは!!!


目を開けて下さい!!
貴女はこんな所で終わる人ではない……!!目を覚ましてください主なのは!!なのはーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!













 To Be Continued…