Side:プレシア
「……流石は次元世界最強と謳われた魔導師だね?臨戦態勢になると、その凄さを実感できるよ。
貴女ほどの魔導師ならば、嘗て等と言わずに今現在でも『次元世界最強』と言っても過言ではないんじゃないかと、僕はそう思うんだけどね……」
表立って動く事はなくなったけれど、其れでも日々魔導の鍛錬と己自身の鍛錬は怠って居ないモノ。若しかしたら、昔よりも今の方が強いかもねぇ?
貴方も11年前よりもずっと強くなってるようだけど、其れでも私に言わせればマダマダひよっこよ?
純粋な戦闘力で言ったら私の娘達の方が強いんじゃないかしら?
「まぁ、僕は元々直接的な戦闘に向くタイプじゃないからねぇ?
そもそも、使える攻撃魔法も単体では使い辛い砲撃と広域攻撃だけさ……だけど、この閃光の魔導書は闇の書のコピーデバイスって言っただろ?
貴女ならその意味が分かるだろう?……そして僕が何を従えているのかもね。」
「守護騎士のコピーと言う事ね……其れを使えば私に勝てると言いたいのかしら?」
「さぁ?……だけど、強化したコイツ等に貴女はうってつけの相手だ!!
出てこい、閃光の守護騎士『ブラインシュバリエ』!!僕の大望を阻止せんとするこの魔女を八つ裂きにしてやれ!!!」
「「「「ハッ!!!!」」」」
話しには聞いていたけれど、本当にヴォルケンリッターの面々を性別反転したような見てくれだわ。
だけど、果たしてコピー品がドレだけできるのかしら?強化したとは言っていたけれど、精々すぐ地獄行きにならない様に気を付けなさい?
魔女の紫電は……
――バチィ!
思いのほか激しいモノだからねぇ?
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天43
『蒼穹に舞う夜天の仲間達』
――ガキィィィィン!!!
とは言え、流石はコピー品でも騎士を名乗るだけはあるわね?その踏み込みの大きさと、超重量武器とは思えない攻撃速度は評価に値するわ。
しかも、先ずは1人で斬りかかって鍔迫り合い状態をつくれば、相手の事を他の3人は的に出来るモノね。
確かに作戦そのものは悪くないけれど、其れはあくまで並の魔導師か、経験の浅い子供にしか通用しないと知りなさい――フォトンランサー!!
「のわぁぁぁあ!?」
「うっそ〜〜〜〜〜!?」
「鍔迫り合いをしながら此れだけの魔力弾を連射するなんて……しかも1発1発が何て威力なんだ……!!
如何に次元世界最強と謳われたSSの魔導師とは言え、僕達4人を本当に1人で相手にするなんて……本当に人間なのか?」
失礼ね、少なくとも人間よ?少しばかり人よりも魔力が強くて大きいけれどね。
逆に貴方達は本当に強化されているのかしら?その程度では、恐らくフェイト達に勝つ事は出来ないわ――あの子達は更に強くなったんですもの。
「くくく……慌てるなよプレシア・テスタロッサ。コイツ等の強化はそんなモノじゃない。
今の状態は言うなれば肉体が、器が強化されただけに過ぎない状態だ――そう、強力に凶悪になった中身を受け止める為の器がね。」
「器ですって?」
「生身の人間では、内包できる力に限界がある。だからこそ僕も闇の書の力は、この閃光の魔導書で吸収する心算だしね。
だが、プログラム生命体ならば基本構造を書き換えて強化してやれば、理論上は無限に力を高める事が可能なのさ……こんな風にな!!!」
!?
なに?コピー騎士達の魔力が大幅に増大して……此れは、まさかカートリッジシステム!?
本来はデバイスに組み込むべき強化機構を、プログラムとして直接騎士達に組み込んだと言うの!?………何て事を……!!
「プログラム生命体も、突き詰めてしまえばデバイスと一緒さ、所詮は魔力を持った人間に使われる道具、駒にしか過ぎない。
そんなモノに一々愛着を示す方が僕には理解し難いね………さぁ、お前達の真の力を見せてやれ騎士共!」
此れは相当に精神が壊れているわね……叩きのめした後に精神病院に強制収容した方が良いかもしれないわ。
その前にはまず、この騎士達を抑える事が先決だけれどね。
だけど既に策は張ってある――捕らえなさい、フィールドバインダー!!
――バキィィィィン!!!
「こ、此れは……広域拘束魔法だと!?」
「貴方達が現れたその時に、既に罠は張らせてもらったわ。
戦いとは常に相手の二、三手先を読んで戦術を構築するくらいが出来なくては一流とは言えないわよ?魔女の雷をその身で喰らうと良いわ!!
消えなさい…!サンダァァァァァァァ……レェェェェェェェェェェェェェェジ!!!!」
――バガァァァァァァアァァァァァッァン!!……シュゥゥゥ…
……呆れた頑丈さね?拘束された状態で私の最大出力のサンダーレイジに耐えるなんて……此れは少し拙いかしら?
今のが決定打にならないとなると、流石の私もキツイ物があるわね……尤も、だからと言って窮地と言う訳ではないようだけれどね。
「今ので倒せなかったのは拙かったねプレシア……だが、此れで証明できた!強化した騎士達は無敵だ!!!」
「其れは如何かしら?」
「……なに?」
確かに其れだけ頑丈で、更にオーバーSレベルにまで強化されたコピー騎士を私1人で相手にするのは少しばかりキツイかもしれないでしょうね。
だけど、貴方達は何か大切な事を忘れていないかしら?
この街には、何れ私をも超える魔導師の卵達が居るのよ?
「……まさか、もう回復したのか!!!」
「ふふ…正解よ。」
待ちかねたわよ、私の可愛い娘達……そして幼き闇の書の主とその騎士と仲間達……!!
――――――
Side:なのは
「レイジングハート、復帰後イキナリの本番だけど大丈夫?」
『問題ありませんMaster.こんな時の為の私達なのですから。』
「バルディッシュも…!」
『No problem.』
うん……それじゃあ行こうか!!強くなった私達を見せてあげよう!!
『新たなシステムの初運用です、私達の新しい名での起動命令をお願いします。』
「「「「「「うん!!!」」」」」」
レイジングハート・エクセリオン!!!
「バルディッシュ・アサルト!!」
「アスカロン・ブリッツ!」
「アロンダイト・シュバリエ!!」
「フレイムアイズ・ブレイザー!!」
「スノーホワイト・イリュージョン!!」
「ヴァリアントザッパー・閃雷!!」
「ヴァリアントザッパー・爆砕〜〜!!」
「レヴァンティン・葉桜!!」
「グラーフアイゼン・轟地!!」
「クラールヴィント・天風……!」
一気に突撃………この間の借りは100倍にして返してやるの!!
「「「「「「「「「「「セーット、アーップ!!」」」」」」」」」」」」
『『『『『『『『『『Standby ready set up.』』』』』』』』』』
闇の書の主・高町なのは――生まれ変わった相棒と共に、堂々此処に参上だよ!!……さぁ、覚悟は良いよね?貴方達は此処で倒しますから!!
――――――
No Side
結界を突き破って現れたなのは達は、プレシアを囲むように陣を取って相手と相対した。
プレシアの両脇をアリシアとフェイトが固め、其れを四角く囲むようになのは、はやて、アリサ、すずかが陣取り、その外側を固めるのは守護騎士達。
そして、陣形の両翼を固めるのはアミタとキリエのフローリアン姉妹……天下無敵と言っても過言ではない陣形が其処に姿を現していた。
《母さん、大丈夫ですか?》
《えぇ、貴女達が間に合ってくれたからね……だけど、此れで状況は此方が俄然有利になったわ。》
プレシアも、あと少し増援が遅かったら危なかったかもしれないが、ジャストタイミングでなのは達が駆けつけたおかげで一切ノーダメージと健在だ。
だが、反対に面白くないのはヴォクシーの方だ。
己の計算では、デバイスが破損したなのは達の復帰にはもっと時間が掛かる筈だった。
それなのに、自分の計算よりも遥かに速くなのは達は復帰し、更に使用するデバイスまで強化されているのが見て取れる……此れは面白くない。
「下賤なる闇の書の主風情が……!!
良いだろう……そんなにやられたいと言うのなら望み通りにしてやる!!やれ騎士共!!高町なのはを血祭りに上げろ!!!」
騎士達に『なのは抹殺』を命じ、更に騎士とは違う魔導師を大量召喚すると自身はその姿を消す……恐らくは戦線から離脱したのだろう。
あくまで自身の身が第一と言うその考えはある意味で見事と言えなくもない――だが、残された騎士達は下された命令を遂行せんと動き出した。
狙いはなのは……しかしなのはに焦りは微塵もない。
「各員散開!!敵を各個撃破!!!」
レイジングハートを掲げて命令を下す。
無論それに異を唱える者は居ない………闇の書の主とかではない、高町なのはと言う少女は生まれながらにしてのリーダーであるのだ。
はやてやアリサと比べるとなのはは、その容姿は兎も角として、それ以外では『特に特徴のない女の子』と言うのが大概の認識だろう。
だがしかし、なのはは大きな特徴がなくとも、チームで動く際には絶対に必要な存在だった……なのはが居るだけでチームの士気が上がるのだ。
「「「「「「「了解!!」」」」」」」」
「「「「Jawohl Meister NANOHA!!」」」」
そのなのはの命を受けた友と騎士達は、夫々敵へと向かって行く。
だがその中で、シグナムとヴィータのコピー騎士の2人だけは誰も相手にせず、なのはへの突貫を許していた。
ミスではない――この2人はなのはが相手にすべきと誰もが思ったのだ。
前回の戦闘でなのはに煮え湯を飲ませたのは、紛れもなくこの2人なのだ……ならばなのは自身の手で借りを返すのは至極当然のことであるのだ。
其れを理解したからこそ、ヴォルケンリッターの面々も何も言わずにこの2人をなのはに任せた――主への信頼があればこそ出来る事だろう。
「へ……1人で俺等を相手にしようってのか?……斬り砕いてやるぜチビガキ!!」
「我が主の大望の為に沈め、闇の書の主よ!!!」
だが其れも、相手からしたら最大のターゲットが曝されている事に変わりはない……迷わずになのはに突貫して来た。
巨大なアックスと大剣の攻撃を受けたら、なのはは今度こそ只では済まない――一歩間違えば未来永劫病院生活と言う事態も有り得るだろう。
「レイジングハート!!闇の書も力を貸して!!」
『All right.Protection.』
『!!!』
が、其れは杞憂にもならない。
レイジングハートと闇の書が強固な障壁を展開し、一切の攻撃をシャットアウト!!前とは比べ物にならない程の防御力だろう。
「なんで……なんでこんな事をするの!?せめてお話を聞かせてほしいの!!」
「るっせぇ!!やる気の新型装備持って来て言う事かよ!!
ベルカには『調停者は槍を持たない』ってことわざがあんだ……話がしてぇなら、先ずはテメェの方から丸腰で現れやがれってんだ!!」
「其れは小話のオチでしょ?
大体、今日もこの間も行き成り襲って来ておいてどの口が其れを言うの?……スマッシャー!!!」
『吹き飛びなさい、このショタ騎士が!!』
更に其処からのカウンターで斧騎士を吹き飛ばすと、重剣騎士の攻撃は緊急離脱で回避――なのはの戦闘技術は以前よりも遥かに向上していた。
いや、なのはだけではない。
はやても、アリサも、すずかも、フェイトも、アリシアも、アミタも、キリエも…そしてシグナムも、ヴィータも、シャマルも、ザフィーラも以前とは違う。
「ぶっちぎるわよフレイムアイズ!!シャァァラァァア!!!」
『飛べオラァ!!!!』
「この刃の新たな力試してやろう……レヴァンティン!!」
『Jawohl.YAMATO form!』
アリサとシグナムは、共に炎熱系である事を生かして、群がる敵を鎧袖一触の完全焼却!発展途上の魔導師と、歴戦の騎士の炎に敵はないらしい。
現実にこの2人の一撃で20体以上の偽魔導師が葬られたのだから。
「スノーホワイト……新モード行ける?」
『問題ありませんわよすずか……寧ろ新モードの登場を今か今かと待ち望んでいましたわ!』
「我が主に仇なしたその罪……貴様等の魂で払って貰おうか!!」
すずかとザフィーラもコンビとしては最強だ。
元来サポートが得意なすずかと、バリバリのクロスレンジなザフィーラの相性は抜群であるのだ。
アミタとキリエも、己の相手を見極め、そして的確に戦い方を構築して状況を有利に持って来ている。このままなら押し切る事も可能だろう。
だが、雑兵は兎も角としてオンリーワンの性能を持たされた騎士達は流石に一筋縄ではいかない。
一瞬の隙を突いて、なのはに肉薄した斧騎士と重剣騎士は得物を一閃!、今度こそその首を取ったと思っただろう。
だがしかし、其れが易々と通るほど、なのはの戦闘技量は甘くないし柔くもない……言い得て妙だが。
「アクセルシュート!!!!」
一瞬の加速で間合いを引き離し、新たに習得した誘導弾で、その動きを制限するが敵も然るもの……その弾幕を潜り抜けてなのはに辿り着き再び一閃!!
タイミングは略完ぺきで、誘導弾を制御しているなのはは動く事が出来ない――今度こそ決まったのだろうか?
『Protection.そう簡単にはやらせません。』
だがしかし、避けられないなら防壁で防ぎきる!
本よりなのはは『避ける』よりも『防ぐ』方が得意なのだから、此れ位は造作もない事だろう。
更に!!
「ダブルスマッシャー!!!」
――バガァァァッァァン!!!
カウンターのクロスレンジ砲撃が両手から炸裂!零距離でのぶちかましとは行かなくとも、相当にダメージはあっただろう。
なのはは自身が吹き飛ばした相手が居る方を見やり、しかし冷静であった。
「此れで終わりじゃないよね?……って言うか終わらせない……闇の書を悪用する人達は見逃せないモノね。」
レイジングハートと右手に魔力を集束し、高町なのはは臨戦態勢となる……その姿は10才の少女ではなく、紛う事無き威風堂々たる『王』の姿其の物。
結界内に、未来の『絶対強者』を彷彿とさせる魔導師が降臨した瞬間だった……
To Be Continued… 
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