Side:アリア


変身魔法で性別は偽ってたし、仮面も付けてたから私等の正体がばれる事は早々ないでしょうね。
まぁ、高町なのはと守護騎士にばれるのは時間の問題かも知れないけど……特に高町は勘が良いからね?熟練の魔導師にも引けは取らないわよ。

ヤバそうな状況だったから介入したけど、高町のリンカーコアへの攻撃を止める事が出来たのは僥倖だわ。
闇の書の主のリンカーコアに問題が起きたら、其れだけで闇の書の暴走が起こる危険性だってゼロじゃないからね……間に合って良かったわ。

だけど問題は、あの時の敵――ヴォルケンリッターの面々を性別反転したような謎の騎士達。
アイツ等が使ってたのは紛れもない『古代ベルカ』の魔導運用法……つまりは純粋な戦闘体系に精通した連中だと見て間違いない……
古代ベルカの使い手なんて、今じゃ陸のゼスト坊やくらいしか居ないって言うのに、其れを使う相手だなんて……予想外に面倒な相手だわ。


「本気で面倒な事態になったよ……今回の闇の書に関する件は一筋縄じゃ行かないっぽいよアリア?」

「ロッテ?……其れ何の資料?」

「クロスケが何か熱心に調べてたから、師匠権限発動して見せて貰った訳なんだけど……見てみなよ、驚くよ?」

「?」

クロノが調べたって言うなら、確かな情報でしょうね……あの子はクライド以上に優秀で努力を怠らない子だったからね。
そのクロノが調べたモノ――……ちょっと待ってロッテ、此れは本当なの?


「クロスケはあくまで『最も可能性の高い仮説』とか言ってたけど、案外アリだと思わない?
 11年前の闇の書の暴走事故に巻き込まれた連中の中で、クライド以外の唯一の未帰還者……そいつが闇の書に手を出す可能性は高いだろ?」


言われてみればさも在りなんね……そして高町自信を狙って来たって言う事は、目的は書の破壊よりも書の力の強奪ってところかしら?
よし!ロッテは、直ぐに其れをお父様に!私は地球に飛んで高町の周囲の監視に力を入れるから!

高町なのは……あの子なら、永劫に続く『闇の書の呪い』を打ち破れるかもしれない……その希望の灯を消させてなるモンですか!!!











魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天42
『皆で一緒に強くなりましょう!』











Side:シグナム


分かってはいたが、矢張り主なのはとはやて嬢達の上達スピードは凄まじい……目を見張るものがあるなどと言うレベルではないな。

はやて嬢は僅か数日で魔法戦におけるクロスレンジの戦い方をマスターしたし、バニングスもヴィータからラケーテンハンマーを伝授されたようだ。
月村もシャマルとザフィーラから防御と補助の極意を習っているし――本当に凄まじい事だ。


そして何よりも凄いのが我が主たる高町なのは……

「覇ぁぁ!!!」

「えーーい!!スマッシャー!!


――ドォォォォン!!!


よもやこの短期間に、クロスレンジで使える小規模砲撃を編み出すとは思ってもいませんでした……見事なモノです。
元より主なのはは目が良いから、模擬戦モードの私の攻撃位ならば簡単に見切る事は造作もないでしょう――ですが、少々脇が甘いですよ!


「へ?あ……きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

「今回は私の勝ちですね、主なのは?」

「悔しいけどそうだね……って言うか、歴戦の騎士であるシグナムやヴィータちゃんを相手にして勝つのは、幾ら何でも今は無理だよぉ……」


如何に相手が主とは言え、簡単に負けたとなっては面目が立ちませんから――此処は守護騎士の譲れぬプライドと言う事にしておいてください。
まぁ、デバイス無し魔力無しの体術勝負で恭也殿と戦ったら、どうなるかはまるで分かりませんが…


ですが、今のカウンターのタイミングは見事でした。
今はレイジングハートがないせいで防壁を張るには至りませんでしたが、防壁で防いでからのカウンター小規模砲撃は可成りの脅威になりますよ?


「そうなの?
 自分の得意分野をクロスレンジで何とか使えないかなぁって思って編み出したんだけど……此れは大当たりだったみたいだね♪」

「練習用の簡易デバイスで此れなのですから、強化改修されたレイジングハートを使えば、精度・威力共にさらに上昇するでしょうしね。」

このトレーニングルームでの模擬戦の戦闘データもデバイス強化に使われるようですので、以前よりも己に馴染んだ物になるのではないでしょうか?
矢張り、共に戦う相棒が強くなると言うのは嬉しいモノですよ。


「そうだねぇ……特にレイジングハートには、凄く痛い思いさせちゃったと思うから二度とあんな事が起きない様に私も強くならなきゃ♪
 闇の書に蒐集したはやてちゃん達の魔法が使えればもっと戦いの幅は広がるんだろうけど、防御魔法以外だと私が使える魔法は多くないしね。」

「現状ではそれ程役には立ちませんか……まぁ、闇の書も我ら同様に主を護る事を己の使命としていますから防御は任せてもいいのでは?
 流石に簡易デバイスを用いた模擬戦で使ってしまっては、あまりにも強過ぎますが…」

「にゃはは…確かにね?
 だから、今の模擬戦でも闇の書は使わなかったんだけど、そのお蔭で防御魔法に頼らなくても相手の攻撃を防ぐ術は身に付いたかな?」


でしょうね……少なくとも『見切り』の技術は向上したのではないでしょうか?
先程のカウンターのタイミングは、正に『完璧』と言っても過言ではないレベルでしたので――その成長速度には心底頭が下がります。



……其れにしても、この間の騎士と思われる者達は一体何者だったのでしょう?
我等、闇の書の守護騎士の性別を反転したような外見に、明らかに『殺す事』を目的としたアームドデバイス……目的は闇の書なのでしょうが……?


「分からないよ……私も行き成りあそこに転送されて襲われただけだったから……何も聞く事は出来なかったし。
 だけど、確実にあの人達とはもう1度会う事になると思うんだ――だからその時はちゃんとこの間の事も含めてお話し聞かせてもらわないとね?」

「『O・HA・NA・SHI』の間違いでは?
 恐らくあの手の輩に真面な話し合いなど通じないでしょう……話をするにしても、先ずは其れが出来る状態にしなくてはなりませんよ?」

「分かってるよ、その為にこうして訓練してるんだもん。
 全員を五重のバインドで拘束した上で、限界の限界まで魔力を集束したスターライトブレイカーを喰らわせた上でお話しだよね♪」


うむ、分かってはいたが、行き成り襲われた事に対して主も相当に御立腹のようだな……主なのはは絶対に怒らせてはいけない相手だと言うのに。
だが此れならば、奴等と再度対峙した時にこの間のような事にだけはならんだろうな。

シャマルとザフィーラも、月村に教えながら自分のスキルを磨いているようだし、ヴィータは言うに及ばずだ。
フローリアン姉妹とテスタロッサ姉妹も、己の得意分野を徹底的に鍛えているし、何よりも――


サンダー……レェェェイジ!!!!


――ドンガラガッシャァァアッァァァァァァァァアン!!!


模擬戦の相手として、現代の魔導師では文句無しに最強のプレシア女史が参加してくれているのは有り難い事だ。
彼女の高威力魔法は古代ベルカですら滅多に目にする事は出来ない程のモノだからな?其れを相手にすれば自然とレベルもアップすると言うモノ!

次に対峙したとて、負ける気がまるでしないな。



其れにしても、プレシア女史の魔法が炸裂しても全く平気なこの特殊トレーニングルームの壁素材は一体何で出来ているんだろうか?
まさかこの壁素材も自分で開発したとか言わないだろうな?……プロフェッサー・グランツだと普通に其れ位はやりそうだからなぁ……

まぁ良い、おかげで気兼ねなくやれると言うモノだ。
主なのは、宜しければもう一本行きますか?


「うん!宜しくお願いねシグナム!」

「では……参ります!!」








――――――








Side:リンディ


……成程…矢張り居たのね?11年前にクライド以外で未帰還になって居た者が。


「はい……名前は『ヴォクシー・エスクード』。元々は全く別の部隊に所属していたAAランクの魔導師です。」

「ヴォクシー……彼だったのね…」

闇の書が暴走したごたごたであの時全員が帰還できたかどうかも確認は出来て居なかったものね。
何よりも、船の搭乗員リストも消失していたから照合しようもなかったし……其れがまさか、今こんな形で出て来るとは思わなかったけれど。

それで、彼に付いて何か分かった事はあったかしら?


「…それが、調べれば調べる程不審な点が多いと言うか何と言うか……彼が11年前の事件に係わるようになった経緯は御存知ですか?」

「確かあの事故の直前にクライドに直訴して来たのだったと思うわ。
 少し妙だったけれど、私もクライドも『此処まで熱心なら』って言う事で、急遽チームに組み込んだ記憶があるわね?」

「えぇ……ですが、彼は友人に『闇の書の力を手に入れられたらきっと凄いだろうな』と言う旨の事を言っていたらしいんです。
 その友人も『所詮冗談だろう』と思っていたらしいんですが――此方を見て頂けますか?遺品として残っていた彼の手帳です。」


手帳?何か書いてあるのかしら?


………!!クロノ此れは!!!


「持ち出すのに苦労しました……理由は不明ですが閲覧制限まで掛けられていましたから――エイミィが居なかったら無理でしたよ。
 勿論これが違法行為に抵触するのは分かってますが、一魔導師の手帳が観覧制限を掛けられるなど普通じゃない……予想通り大当たりでした。」


えぇ……確かに大当たりだわ――この手帳のメモ欄には『闇の書の暴走方法』がハッキリと示されているのだから。
そして、其れを起こす事で管理局がどう動くかまでの予想まで――つまり、11年前の暴走は彼が人為的に引き起こしたと言う事なのね?

暴走を引き起こし、そしてその上で自分はギリギリの瞬間に脱出した……マッタク許しがたいわ。
11年前はクライドを犠牲にして闇の書を暴走させ、今度はなのはさんを亡き者にして闇の書の力を掠め取ろうとでも言うのかしら?


「その可能性は大いにありますね。
 闇の書の暴走で局員が命を落としたとなれば、当然管理局の世論は『闇の書を封印ないし破壊せよ』と言うモノに傾倒しますからね。
 そして闇の書をどうにかするには、書の主を処理してしまうのが一番早い……そして主を失った書を封印して力を得るくらいは恐らく………」


可能でしょうね。
うん、事件の黒幕の事は大体分かったけど、なのはさんを襲った謎の騎士の事は何か分かったかしら?


「其方に付いては全く……精々分かっている事は、闇の書の守護騎士達に酷似している事と、古代ベルカの使い手であると言う事くらいです。
 彼等がどのような存在なのか、ヴォクシーの配下なのだとしたら、ヴォクシーは一体何処で彼等を見つけたのか……謎が多過ぎます。」


詳細は不明か……でも、此処までよく調べてくれたわクロノ。お疲れ様。


「いえ……あ、其れとこの情報ですが、アリアに『師匠命令』と言われて開示してしまいましたが――構いませんよね?」

「アリアに?……と言う事は恐らくグレアム提督の耳にも入っているでしょうね……まぁ、問題ないわ。
 グレアム提督は確りした人だし、此れを知ったらリーゼ達を地球に向かわせてなのはさんの手助けをするくらいしそうだもの。」

だけど今回のこの件は、単純な『魔導師襲撃事件』で済ませる事は出来そうにないわね?
最悪の事態を考えて、使用の申請をしておいた方が安全かも知れないわ――相転移消滅砲『アルカンシェル』の使用の申請をね。








――――――








Side:なのは


アレから数日が経って、遂にレイジングハート達が治ったの!ありがとうございますグランツ博士!!


「いや〜、ハッハッハ本当に突き詰めていくと奥が深いねぇデバイスって言う物は?
 デバイス本人の意見を尊重した上で僕が考えた強化を施してみたんだけど、此れは中々如何して見事な物に仕上がったんじゃないかなぁ?
 フェイト君とアリシア君のデバイスの最終調整もプレシア女史から任されたけど、その辺も問題なく出来たから安心して貰って良い♪」


あの……大丈夫ですか博士?何時もよりテンションが高くなって『ナチュラルハイ』を起こしてるみたいなんですけど……


「大丈夫大丈夫!ちゃんと睡眠はとっていたからね!
 まぁ、そんな事はこの際如何でも良い事さ!さぁ、会ってあげてくれるかな?」

「はい……!久しぶりだね、レイジングハート!」

『お久しぶりですねMaster.』


アレ?レイジングハート、形が――其れに付いてるのが紐から細いチェーンに変わってる?


『中々お洒落でしょう?』

「うん、カッコいい♪
 だけど、鎖のレイジングハートって少し派手じゃないかなぁ?」

『何を仰いますか、マダマダですよ?
 なんでしたら、バリアジャケットの袖にシルバーでも巻いて、更に腰回りにウォレットチェーンでも追加しましょうか?』


私のイメージじゃないから止めてね!?
だけど、本当にカッコ良くなったよレイジングハート!改めて宜しくね?


「アロンダイトもよりイケメンさんになったなぁ?また頼むで?」

『任せときな大将!やってやるぜ!!』


「フレイムアイズも、今度はアイツ等をぶちのめしてやろうじゃない!!」

『言われるまでもないぜアリサ――焼き尽くしてやらぁ!!』


「スノーホワイト……また一緒に頑張ろうね?」

『はい……勿論ですわすずか!』


「バルディッシュも…!!」

『Yes sir.』


「アスカロン、また宜しくね!」

『All right.』



皆のデバイスが凄く強化されたみたい。
アミタさんとキリエさんのデバイスも良い感じみたいだし、シグナムとヴィータちゃんも申し分なさそうだもんね♪


「詳しい変更点なんかは本人に聞いてもらった方が早いかな?
 兎に角、皆の模擬戦のデータも参考にして、僕の持てる技術の全てを注いで強化改修させて貰ったから性能は保証するよ。」


本当に、ありがとうございます博士!此れならきっと――!!


――ヴォン


『なのは、ちょっといいかしら?』

「お母さん!如何したの?」

『今日ね、プレシアさんと出掛ける約束をしていたんだけれど連絡が取れないのよ?
 なのはは何か知らない?フェイトちゃんやアリシアちゃんも何か聞いていないかしら?』


ほえ?何も聞いてないよ?
アリシアちゃんとフェイトちゃんは?プレシアさんから何か聞いてる?


「私は何も聞いてないよ?アリシアは?」

「私も何にも……リニスとアルフも聞いてないよねぇ?」

「アタシは知らないよ?」

「私も今日は桃子さんと出掛ける予定があるとしか……」


如何言う事?プレシアさんが何も言わずに約束をすっぽかすなんて事はないと思うんだけど……まさか何かあったんじゃ!!



――ビー!ビー!



『博士、海鳴市街で結界の発生を確認しました!!』

『術式は……エンシェントベルカ!!!』


「何だって!?」


一体誰が……何て考える必要すらないよね?
私と騎士の皆が此処に居る以上、真正のベルカ式を使えるのはこの間の人達しか居ない……!

街中での結界発生なんて、あからさまに私達を誘ってる気がしなくもないけど――如何しようか?


「其れを聞くかなのはちゃん?
 相手の方から態々来てくれたんや……せやったらこの前の礼をた〜〜〜〜〜っぷりとしてやるべきやろ?」

「つーかよ、街中で結界展開とか、下手したら一般人巻き込む可能性もあるぜ?
 魔法が使えないだけで、ごく弱いリンカーコアを持った奴等だって居るんだからな――其れを全く考えちゃいねぇ……何にしてもぶっ潰すだけだ!」


じゃあ決まりだね!
博士、直ぐに現場に向かう事は出来ますか?


「勿論!座標はもう分かってるから、その上空に君達を転移させればいいだろう。
 まさか、デバイスが完成したその日に実戦とは予想外だったけど、其れでこそ性能テストには持って来いと言えるからね?…皆、頑張って!!」

「「「「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」」」」


図らずにこの間のリベンジマッチになりそうだけど……私もレイジングハートもこの前よりも強くなったの!
今度は負けない……この間の借りを返した上で、お話しをちゃんと聞かせてもらうからね!!








――――――








Side:プレシア


街中で結界発生とはね……誘いの心算なのかしら?
なんにせよ都合が良いわ……出向く手間が省けたからね………そう思うでしょう、ヴォクシー・エスクード君?


「貴女ほどの魔導師には矢張り気付かれるか……この結界に何か用かな?」

「えぇ、物凄くね……貴方は一体闇の書を如何しようと言うのかしら?
 アレは、書の主以外が制御する事は不可能だという事は11年前に他ならぬ貴方自身が証明したのではなかったかしら?」

「確かに制御は難しいが、だがその機能を己のデバイスに取り込んで使うのは無理じゃない。
 その為に僕は造り出したのさ……闇の書のコピーデバイスである『閃光の魔導書』をね!何れ闇の書は此れの一部となる運命なんだ!!」


目的は闇の書の力、か……馬鹿も休み休み言いなさい!
闇の書はなのはさんの手によって暴走を起こさずに完成する可能性が高いわ……暴走を起こさずに完成すれば、此れは奇跡よ。

そしてそうなれば闇の書も危険な存在ではなくなる可能性が非常に高い……貴方のしようとして居る事は希望の芽を摘む行為に他ならないわ。


「知るか……あの力は僕ならば使いこなせる!
 ならば、脆弱な小娘に闇の書を任せておく事もない――高町なのはを滅して、僕は新たな闇の書の主として君臨するんだ…全ての次元世界で!」


誇大妄想此処に極まれりね……ならば私は貴方を止めないとねぇ?


――轟!!


「かつて次元世界最強と謳われた私の魔導……受けて貰おうかしら?」

何よりもアリシアとフェイトの友達に手を出した報いは受けさせる……魔女とまで呼ばれたその力、たっぷりと味わってもらうわ……!!!











 To Be Continued…