Side:なのは
博士、レイジングハート達は治りますか?
「レイジングハートは大破したけどコアは無事だし、他は精々中破程度だから治すのは難しくないから安心して良いよ?
だけど、僕が造ったデバイスは兎も角、レイジングハートとアロンダイトは強度的にも最高レベルなのに、其れを此処まで壊すなんて信じられないよ。」
「てか何なのよアイツ等?アイツ等が魔法使う時に現れた魔法陣て、シグナム達が使ってるの同じよね?」
「……アレは近代ベルカ式ね。純粋な戦闘魔法であるベルカ式に、ミッドチルダ式のアレンジを加えた『準純粋戦闘魔法形態』とでも言う物よ。
だけど、なのはちゃんを襲った相手が使ってたのは……」
「……エンシェントベルカ。我等と同じ純粋な戦闘魔法運用形態。
魔法陣の形のみならず、魔力カートリッジ機構を有したデバイスからもしやと思ったが、矢張りだったか……」
エンシェントベルカ……私やシグナム達が使う魔法の運用形態――もう、使える人は私達以外には居ないと思ってたけど、他にも居たんだね?
だけど純粋な戦闘魔法って言う事は、私の砲撃やすずかちゃんの氷魔法よりも殺傷能力は格段に高い筈……
シグナム達だって使う魔導は同じだけど、その力を理解してるから非殺傷設定で戦ってるし、何より行き成り人を襲うなんて事は絶対にしない。
なのに、昨日の人達はいきなり私に襲撃を掛けて来た……何が目的で、何で私を襲うのかすら言わずにね。
だけどあの人達は本気で私を叩きのめす……ううん、きっと『殺す』心算だった――物凄い殺気と殺意を感じたからね!
レイジングハートが文字通りその身を盾にしてくれて、更にシグナムとヴィータちゃんの到着があと10秒遅かったら、私は確実にやられてたモン。
「だろうね……レイジングハートが盾になってくれなかったら、なのは君は間違いなく胸骨骨折に至っていただろうからね……
だが其れを踏まえると、全てのデバイスを修理だけじゃなくて強化改造を施した方が良さそうだねぇ?」
強化改造ですか?……確かに昨日の人達みたいのを相手にするなら、強化は必要なのかも……うん、お願いしますグランツ博士!!
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天41
『色々とパワーアップ計画!』
レイジングハート達の『治療』はグランツさんに任せて、今は皆で翠屋に向かってる最中。
序に言うと、シグナムとヴィータちゃんも私達同様にデバイスを持ってない――グランツ博士が強化改造を申し出て、其れで預けて来たんだよね
元々高性能なレヴァンティンとグラーフアイゼンが強化改造されたらドレだけ凄いデバイスになるんだろう?ちょっと楽しみかな♪
「普通ならば自らの剣を他者に預けるなど論外ですが、プロフェッサーグランツならば、我が剣をよりよいモノとしてくれるだろうと思いましたので。
其れに、我等のデバイスも随分と長い時を共に歩んで来ましたから――この辺で少しばかり機能が向上しても良いでしょう?」
「悪くないよ?寧ろ、またあの人達と戦う可能性がある事を考えると、妥当な判断だと思うの。」
あの人達も無傷じゃないから、直ぐに最襲撃って事は無いと思うけど、このまま引き下がって何事もなく大人しくしてるって言うのは考えられないもん。
間違いなくまた戦う事になると思うの……だったら強くなる為の手は尽くしておくのが当然じゃないかな?
「なのはちゃんの意見に賛成やね。
相手はいきなりなのはちゃんを隔離して、しかも男2人で襲い掛かるような外道や……強くなるに越した事はあらへんで?」
「そうよねぇ……正攻法で戦えば兎も角、今回みたいに武器破壊みたいな裏技で攻められたら、ちょっとキツイわよ。
まぁ、博士ならデバイスの強度も更に上げてくれるだろうけど、デバイスの性能アップだけじゃなくて私達ももっと強くならないとヤバいわ。」
うん……。
特に私は今回の事で、シグナム達と分断された場合に複数の近接戦闘型を相手にした場合の『脆さ』が浮き彫りになったからね。
前の信長さんとの戦いは、ある意味で『試合』だったから勝つ事が出来たけど、今回みたいな『戦闘』だと得意間合いを外されると勝つのは無理だった。
近距離戦が苦手なのはどうしようもないけど、間合いを外された時にとっさに出せる砲撃や、間合い維持の為の誘導弾をもっと練習しないとね。
「と、そう言う訳だから――特訓の相手をお願いね皆?」
「我等で宜しいのですか?
無論、主や皆の特訓の相手をしろと言うのであれば断る理由はありませんし、喜んで務めさせていただきますが……」
シグナム達が一番適任なの。
最初に私を襲った2人は武器こそ違うけど、戦い方の大筋はシグナムとヴィータちゃんの其れとそっくりだったし、何より2人とも近接戦は超一流でしょ?
だったら、シグナムとヴィータちゃんの2人を相手にして巧く立ち回れるようになれば、大抵の近接戦闘型に対応出来る事になるもん。
其れにはやてちゃんとアリサちゃんも近接型だから、シグナムとヴィータちゃんに指導して貰えば効果は大きいと思うんだ?
すずかちゃんは基本が防御+支援だから、シャマルとザフィーラは良い先生になると思うの――アレ?此れって誂えたように役割がピッタリだね……
「言われてみれば確かにそうやなぁ?
そら今までも一緒に練習した事はあるけど、基本的にシグナムもヴィータも恭也さんや美由希さんとの模擬戦が殆どやったもんね?」
「それ以上に私とアリサちゃんなんて土日や休日の時位じゃないと一緒に練習は出来なかったし……」
「ここらで本格的にデバイス共々パワーアップするってのも悪くないんじゃない?」
そう言う事……それに、レイジングハート達があんな目に遭うのは今回だけにしたいし、何も出来ずに負けるのなんて真っ平なの!
だからお願い皆!私達に教えてほしいんだ、歴戦の戦士の戦い方って言う物を!!
「………分かりました。
主とその友人達から、其処まで願われたのであれば、応えないのは騎士の名折れですし何よりも不義理に過ぎます。
我等が知る限りの古代ベルカの騎士の技と業――誠心誠意、全身全霊を持って授けさせて頂きます……!!」
「其れに、なのはちゃん達に教えるって言う事は同時に私達の訓練にもなりますもの♪」
「近代の戦い方にもより的確に対応出来るようにならねばな……」
「ま、そーゆー事だから、大船に乗ったつもりで居ろよなのは!!」
うん!ありがとう皆!!
――――――
Side:フェイト
『と、言う事で皆で一緒に練習する事になったんだけど、フェイトちゃんとアリシアちゃんも一緒にどうかなぁ?』
「勿論私とアリシアも、アルフだって参加させてもらうよ。」
「って言うか、なのはナイスタイミング!
実は私達も今、トレーニングの事を話してて『なのは達と一緒にトレーニングしたらどうか』って言ってたところなんだよ~~~♪」
うん、やっぱり真正ベルカの騎士から学ぶ物は多いし、純粋な戦闘魔法技術はベルカ式の方がミッド式よりも上だからね。
『そうだったんだ……』
「うん……だから、その件は有り難く受けさせて貰うよなのは。
アレ?でもそうなると何処でトレーニングするの?シャマルの結界でも全員でトレーニングしたら流石に耐えられないと思うんだけど……」
『其れについては大丈夫なの。
博士の研究所に3ケ月前に出来た『魔法戦用特殊トレーニングルーム』なら、私が本気でブレイカー撃っても全然へっちゃらだから♪』
「「其れってどれだけの強度!?」」
「アレを本気で撃っても全然平気ってどんな部屋なんだい其れ……あの人の技術力はアタシにゃ理解できないよ……」
「安心してくださいアルフ、私も理解できませんから……」
「何を隠そう、彼独自の技術は私だって理解しきれないわ……魔法技術ゼロの世界で基礎理論の9割を構築した実績は伊達じゃないわね…」
母さんでも分からないんじゃ、私達に分かる筈がないね……うん、グランツ博士の事はあまり深く考えない方が良いよね絶対……
ま、まぁ其れは其れとしても、練習場所も確保できてるなら問題ないね。何時から始めるの?
『デバイスがないから本格的な戦闘訓練はまだだけど、基礎訓練は棍棒や木刀があればできるから今度の土曜日からの予定。
あ、私も闇の書の補助があれば立つ事は出来るから基礎訓練にも参加するからね?』
「うん、分かった……次は勝とうね!」
『うん!!』
其れじゃあまた明日――学校でね。
ってアリシア如何したの?
「ん~~~~……バルディッシュとアスカロンはお母さんとリニスが治したから性能が向上してるのは当然として…レイハ達どうなるんだろう?
改修するのがグランツ博士だと、何て言うかこう……物凄いレベルの『魔改造』を施しそうな気がするんだよね……」
「其れは確かに否定できないかも……」
なのはは元々砲撃能力だけなら誰よりも凄かったし、レアスキルって言っても過言じゃない空間認識能力と並行思考能力がある。
そのなのはが、真正ベルカの騎士の近接戦に対応出来るようになって、更にレイジングハートも凄まじい強化がされたとしたら……
若しかしたら、母さんすら超えた、次元世界最強の魔導師が誕生しようとしてるのかも……
――――――
Side:クロノ
11年前の闇の書事件……居た、父さん以外にもあの船から姿を消した局の魔導師が1人だけ……!
しかもこの魔導師は、闇の書が暴走を始める前から誰も姿を見てない……書の暴走に巻き込まれたと言うにはあまりにも不自然だ。
「クロノ君、はい珈琲。
気持ちは分かるけど根を詰めすぎじゃないかなぁ?今だって眉間に物凄く皺が寄って怖~い顔になっちゃってたよ?」
「エイミィか……スマナイ、気を使わせてしまったな。」
「ま、こう見えてもクロノ君の補佐官だから此れ位はね。
それにしても、冗談ぬきに怖い顔して何かあったの?今見てる其れって、11年前の闇の書事件に係わった局員のリストだよね?」
あぁ……今回のなのは達が襲撃された事件の犯人は、如何やらこのリストの中に居るんじゃないかと艦長は考えているらしい。
そしてその人物は、当時の犠牲者である僕の父さん――クライド・ハラオウン以外の未帰還者じゃないかと辺りを付けてるらしくて、其れを調べていた。
「!!……って言う事は見つけたんだね?」
「あぁ……たった1人だけ居るんだ父さん以外の未帰還者が……」
だが、まるで闇の書の暴走が起きる事を予見していたかのように、暴走前から船から姿を消していた可能性が出て来たんだ。
艦長が言うには、11年前の闇の書は厳重な封印を施していながらも暴走したらしい……其れだけすさまじいロストロギアなのかと思っていたんだが…
「まさかクロノ君、その人が作為的に闇の書を暴走させて船から逃げたって…!!」
「あくまでも可能性の話さ……だけど、書の暴走以前から誰もその姿を見て居ないと言うのはおかしな事だろう?
其れに更に調べてみたら、事件発生と同時に緊急用の脱出ダストが解放されていたらしい……」
生身で次元の海に飛び出すのは自殺行為だが、簡易式の作業服でも持っていれば話は別だ……この人物がクロである可能性は高いと思う。
だがそうだとしても分からない事はまだ有る……彼がクロだとして闇の書を暴走させるメリットは何だ?
其れに今回なのはを襲ったのもそうだ。
闇の書の主を襲撃して、よしんば倒す事が出来るとして一体どんなメリットがあるって言うんだ?
主を失った書は守護騎士を回収して新たな主を求める果て無い旅路に出るだけだって言うのに……一体何が目的で闇の書に係わっているのか…?
「確かに謎だらけだね……クロノ君、此れは……」
「あぁ…近い内に『特命』として地球に向かう事を考えておいた方が良さそうだ。」
エイミィ、その時は君にも同行して貰うからその心算で居てくれ。
「了~~~解!!エイミィ・リミエッタ執務官補佐、その任拝命しました!!」
スマナイな。
しかし、嫌な予感がする………なのはと騎士達に何かトンでもない事が起きそうなそんな予感が……僕の杞憂であればそれでいいんだがな…
――――――
Side:グランツ
ふむふむ……機体強度を此れまでの5倍に引き上げればまず大丈夫だろう。
アミタとキリエのザッパーは機体強度以外は変えるところは見つからないけど、アミタはスピード重視、キリエはパワー重視の設定にした方が良いかな。
シグナム君とヴィータ君のデバイスは元々が高性能だから機体強度の強化もそれほど必要はないんだが…ふむ、形態を追加してみるか。
レヴァンティンには『斬る事』に特化した形態と『高速斬撃』に特化した形態を追加してみようかなぁ?
グラーフアイゼンはとことん『一撃必殺』に拘るのも良いかもしれないねぇ?……うん、イメージが湧いて来た!!
其れとは別に問題はなのは君達のデバイスだ。
修理と機体強度の強化は可能だけれど、其れだけじゃ今回の相手には勝てないだろうし、何よりも彼女達が納得しないだろうからねぇ?
はてさて如何したモノか……
『Dr.グランツ、宜しいですか?』
「レイジングハート?如何したんだい?」
『私達の改修に当たり提案があります。
私達が今回此処まで壊されたのは、防御魔法が破られた事が大きいのです……魔力カートリッジで強化された魔法によってね。
如何に私達を強化しても、カートリッジ有と無しではその差は明白……ですので私達に『CVK792』を含むシステムの搭載を推奨します。』
CVK792?……あぁ、レヴァンティンとグラーフアイゼンに搭載されている魔力カートリッジシステムと同型のモノだったね?
確かに其れを搭載すれば戦闘に於ける能力は爆発的にアップするけど、だが同時に君達にかかかる負担もまた大きくなるよ?
『構いません……Masterを護りきれなかったこの身の汚点……せめて其れ位をしなければ濯ぐ事は出来ません。
何よりも、Masterが更なる強さを望むと言うのに、その片腕たる私がMasterの足を引っ張る存在であってはいけませんからね……』
ふむ……成程ねぇ?――よし分かった!その希望に応えようじゃないか!
必要なシステムも、アリア君やロッテ君経由で頼めば手に入れるのは容易だしね……僕の持てる力の全てを使って君達を治すと誓うよ!
そうと決まれば早速連絡してカートリッジシステムを取り寄せないとね。
あ、折角カートリッジシステムを搭載するんだから、機能も強化しないと格好がつかないねぇ?
此れはヤル気が満ち満ちて来た!!
待っててくれ皆……君達のデバイスはこの僕が、全責任を持って治し、強化するからね!!!
そうと決まれば今日から徹夜だね!!全力全壊で頑張らないと、良いモノは出来そうにないからねぇ!!!
『その心意気は見事ですが、適度に睡眠はとって下さいね?』
分かっているよ!……さぁ、作業開始だ!!!!!!
To Be Continued… 
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