Side:???
高町なのは……彼女が此度の闇の書の主である事は如何やら疑いようがないみたいだね。
所詮はプログラムに過ぎない守護騎士達を家族のように扱うなんて、滑稽過ぎて笑いが込み上げて来るよ……マッタク持って愚かしい事この上ない。
闇の書など、所詮は世界に破壊を齎す邪悪なる存在に他ならない……まぁ、その力も何れは取り込んでやるけれどね。
「だが、ジュエルシード事件を解決した中心人物ともなれば、その身に宿した力は相当なモノであるのは間違いない。
彼女の経験の少なさと、10歳と言う年齢を考えても、高町なのはの魔力ランクと魔導ランクはSランクは下らない……アレに選ばれる訳だよ。」
高町なのは以外にも、彼女の友人たる少女達には普通では考えられない程の魔力が見て取れる。
事前の情報がなかったら此処が『魔導文化は一切ない世界』であると言う事すら忘れそうになる……まぁ、其れもまた僕には如何でも良い事だけどね。
高町なのはと守護騎士、そしてその友人達がどうなろうと僕の知った事じゃない。
まぁ、精々闇の書の主に選ばれた己の不幸を呪うと良いよ……君の人生はもうじき終焉を迎えるんだからね…
「首尾は如何だい?」
「はい……仕掛けるのならば12月頃が丁度良いかと……恐らくは其の頃には闇の書の蒐集も守護騎士達を取り込むだけになって居る筈。」
「つまり、アレを暴走させるには一番いい状態になると言う訳か……くくく…何とも楽しみだねぇ。」
闇の書が暴走すれば、其れを封じると言う大義名分が出来る――彼女を永久凍結しても咎められる事はない。
1人の少女の犠牲で闇の書を封印したとなれば、僕は英雄と称えられる。高町なのははその英雄譚に華を添える悲劇のヒロインと言うところかな?
まぁ、最終的な目的は封印じゃなくて、アレの力のみを手に入れる事だけれどね。
くくく……高町なのはと守護騎士には、その為の礎となって貰おう――精々終焉が訪れるまで仮初の幸せを謳歌するんだね……
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天37
『始動、A'sへと続くスタートライン』
Side:なのは
9月1日……今日から二学期が始まるね。
何時もは夏休みの余韻を引きずって物凄く憂鬱な二学期の始まりになるんだけど、今年はそんな事にならずに済みそうなの。
「聞いた、このクラスの二学期から編入生が来るんだって!!」
「聞いたわよ!!しかもその子のお姉さんは6年生のクラスに編入するのよね?……よし、漲って来た!!あと10年は戦える!!!」
なはは…思った以上に噂になってるみたいだね…取り敢えずフェイトちゃん頑張って。
「はいは〜い静かにしなさい……既に知ってるみたいだけど、今日からこのクラスに新しいお友達が来ます……どうぞ。」
先生の紹介と共にフェイトちゃんが入って来ると、クラスの皆から感嘆の溜息が――まぁ、フェイトちゃん可愛いからねぇ。
「ふぇ、フェイト・テスタロッサです…宜しくお願いします…!」
はにゃ〜〜ん…頬を赤らめて自己紹介するフェイトちゃんGJなの!!……ようこそフェイトちゃん海聖小学校に……クラス一同歓迎するよ♪
って、アレ?なんか男子の目つきが怪しいような…
「うおぉぉぉぉぉぉ、金髪美少女来た此れーーーーー!!!」
「高町に八神に月村にバニングスにヴィータ……美少女揃いのこのクラスは天国か!?神様ありがとうございます!!!!」
「少し内気な感じが堪らねぇ!!付き合ってください、お願いします!!」
「馬鹿、お前高町や月村の時みたく玉砕する心算か!?てか、お前五聖王全員に告白して玉砕してるだろ、もう止めとけって!!」
「だが断る!!告白は我が青春!!例え玉砕しても、反省も後悔もしていないしする心算など更々ない!!!」
「よし良く言った!!ならば戦争だ、ちょっと表出ろやコラァ!!!」
ば、爆発したの……え、何このカオス?
ヴィータちゃんがクラスに来た時以上だよね!?確かにフェイトちゃんは抜群に可愛いとは思うけど、此処までぶっ飛ぶ必要はあるのかなぁ!?かなぁ!?
「絶対無いわよ…てか、アイツアタシだけじゃなくてなのはやすずかにまで告白してた訳!?
無節操にも程があるわよ!!てか、そんな誰彼構わず告白するなんて、ゴッドハンドクラッシャーで地獄に落ちなさいっての!!」
『てかよ、いっそのこと燃やした方が良くねぇか?』
『いえいえ、此処は矢張り氷漬けにするべきでしょう?』
『甘いな2人とも……いっそのこと斬り落とすのが一番に決まってるじゃねえか…そうだろ大将?』
「斬り落とすってナニをやねん?」
『そりゃナニだろ?』
ちょっと待った〜〜〜〜!!!何でデバイスの皆は揃ってそんなに物騒な考えが浮かぶの!?
全力全壊は時には大事だけど、やり過ぎると危険なの!危ないの〜〜〜〜〜!!
『『『大体レイハのせい。』』』
『解せぬ。』
レイジングハートのせいって……其れなら仕方ないね♪
『Master?』
「大丈夫だよレイジングハート……普段は兎も角、いざ戦いとなったら相手に情け容赦を掛ける気は全く無いからね♪」
『其れを聞いて安心しました、其れでこそ我がMasterです!敵対する者など、ギッタンギタンのメッタメタにしてやりましょう!寧ろするべきです!!』
『『『だからその影響を受けたんだって……』
「「「「「「と言う訳で、付き合ってくださいフェイトさん!!!」」」」」」
「え?へ!?あ、あの………えっと………その…」
『……Be gone Kids.(失せろガキ共(怒))』
――ドゴォォォン!!
って、何時の間にかフェイトちゃんが告白されて……何してるのバルディッシュ〜〜〜〜!?教室内で魔法喰らわせたらダメなの〜〜〜〜!!
それ以前に至極当たり前に魔法使わないで〜〜〜〜!!
「へ?今のは一体?」
「あの、先生今のはグランツ博士が作った『防犯用セキュリティペンダント』の効果なんです!!
不審者を感知すると、超圧縮した光学衝撃波を発射するシステムになっていて、フェイトちゃんがこっちに来た際に博士から貰ったんです〜〜〜!!」
「あら、そうだったの?グランツ博士の発明品なら納得ね♪」
納得しちゃった!?其れで良いの先生!?
それ以前に今の説明で納得されるって、グランツ博士の発明力はハンパ無いの…
「其れじゃあ授業を始めるわよ〜〜〜♪叩きのめされた子達も席に戻りなさ〜い?」
そして普通に授業を始めた!?
……今更だけど、このクラスも可成り吹っ飛んでるなぁ…
――――――
Side:グランツ
解析の為になのは君から闇の書を借りたけれど……ふむ、此れを作った人は間違いなく天才だね。
あらゆる技術を記録し保存する魔導書とは――正しく使えばこれ程人々の役に立つ物もないんじゃないかな?
尤も、その機能を自分の為だけに使おうとした歴代の持ち主のせいで闇の書は『呪われた魔導書』なんて汚名を被せられる事になったんだろうけどね。
「気分は如何かな闇の書?
解析の為にデバイス調整用のツールに入って貰っているけど、不具合が起きたり気分が悪いなんて事はないかい?」
『大丈夫だ……まぁ、市が少しばかり驚いてはいるけれどね。』
其れならば良かった。
デバイス解析用のツールに入って貰って居るおかげで、僕でも闇の書との意思疎通が出来るのは有り難い事だ、彼女から直接意見を聞けるからね。
と言うか、闇の書には確実に『何らかの意思』があるとみて間違いない。
『お市の方』の魂が内部に有るとは聞いていたけれど、其れとは別の意思が僕と話をしている訳だからね。
さてと……ふむ…アミタの予想は大当たりみたいだ。
確かに闇の書は長年の経年変化でところどころ不具合が出ているねぇ……騎士の皆の記憶があやふやなのも此れが関係しているかもしれない。
だけどそれ以上に……此れは一体何なんだろう?
闇の書の基本機能とは明らかに違うプログラム――此れは間違いなく後から誰かが付け足したモノだ……そして此れが――
「解析は如何ですか博士?」
「ん?あぁ…割と順調だよ?
闇の書の抱えている不具合を見つける事が出来たからね…先ずは此れを治してやれば闇の書の基本機能はバッチリ戻る筈さ。」
尤もそれだけじゃどうにもならない厄介なモノを見つけてしまったのだけれどね。
――それで、君は一体誰かな?
「え?」
――ガシャン!!
「!!扉が!!」
「自慢じゃないけど、僕は研究所のスタッフは全員の顔と名前を覚えていてね……君が此処のスタッフじゃない事くらいは直ぐ分る。
勿論、今日新たに入った人である可能性もあるけど、それなら僕に何らかの連絡が有って然るべきだからね――君は誰?何が目的なのかな?」
「……インドア派のインテリと思ったら中々に勘も鋭いじゃないか。
ドアをロックするだけじゃなくて、そのドアに電磁バリアまで張って逃げられないようにするとはね……一本取られたよ。」
ハハ、其れはどうも。
確かに僕はアミタやキリエと比べたら、戦う力なんて欠片ほども持ち合わせていないけど自分の身を自分で守る位の事は出来るさ。
「成程ね…こっちの認識が甘かったってとこか…高町なのはにしろアンタにしろ、ホントに良い意味でこっちの予想を裏切ってくれるもんだ。
今日はアンタの人柄を見るだけの予定だったんだけど、バレちゃってんなら良いか…どうせ力を借りる予定だったからね。」
――シュゥゥゥ……
へ〜〜…此れが変身魔法って言うモノか…完全に別人に変身できるとはね。
それで、その猫耳と尻尾が付いた姿が君の本当の姿と言う事で良いのかな?ザフィーラ君やアルフ君の事が有るから今更獣人でも驚かないけれど…
「そう、こっちがアタシの本当の姿だよ。
…改めて初めましてグランツ・フローリアン博士、アタシはロッテ……時空管理局ギル・グレアム提督の使い魔『リーゼロッテ』だ。」
「時空管理局?…確かジュエルシード事件の時にアミタ達が協力していた組織だったかな?
その管理局提督の使い魔が僕に何の用だい?君の――ロッテ君の話し方だと闇の書の強奪や破壊に来た訳ではないようだけれど……」
「あぁ…目的はそんな事じゃない――まぁ、高町が闇の書の主だって分かるまでは、其れを高町ごと氷漬けにする心算だってけど…もうそんな事はしない。
あの子にそんな事をしたら悲しむ奴が大勢いるし、あの子は10の為に斬り捨てて良い1でもない。
ましてや11年前に私等が味わった悲しみを他の誰かに味わわせる事なんて出来ないからな……だからアンタに協力してほしいDr.グランツ。」
協力?…僕に何をしろって言うのかな?
「高町と闇の書を凍結封印しないとなると、そいつを暴走させずに完成させる必要があるんだが……多分それは前例のない事だと思うんだ。
私等も闇の書の全てを知って居る訳じゃないし、ましてアタシ等が下手に介入しても事態は好転しないだろうと思う。
まして、局内部で動こうにもリンディやレティとその部下連中以外は大概『闇の書封印』賛成派で、闇の書の事を調べるのすら容易じゃない。
其処で、アンタに管理局のデータベースの総本山…『無限書庫』にアクセスして闇の書の事を徹底的に調べ上げてほしい。
闇の書の過去やら何やらが分かれば、アンタの方でも色々対策は立て易いだろ?……だからアンタに無限書庫へのアクセスIDを渡す予定だったんだ。」
成程ね……確かに、闇の書の解析を行っても全てが分かる訳じゃない。
無理に全てを解析しようとして闇の書に危害を加える結果になったらそれこそ笑えないし、なのは君達に顔向けも出来ないからね。
だけど良いのかい?此れは物凄く貴重なモノだと推測するけれど……
「良いんだ…お父様の決定だし、アタシとアリアだって高町を死なせたくないって思ってる。
何よりも、あんな良い子を『必要な犠牲』として斬り捨てようと考えていた事への、せめてもの罪滅ぼしだ……だから受け取ってくれ。」
「……分かった…そう言う事ならば有り難く使わせてもらうよ。
それじゃあ僕からも君と、君のお仲間達に此れをプレゼントしておくよ。」
「!!此れは……」
研究所の職員IDカードだ。
其れを使えば、態々転移魔法みたいなもので忍び込まなくても堂々と中に入ってこれるからね…多分、此れから必要になるだろう?
「良いのか?…確かに此れからもアンタの所に来る事はあるだろうけど…こんな…」
「良いさ、こう見えても人を見る目には自身があってね。
君の目は嘘や詭弁で僕を誤魔化して丸め込もうとしている人の目じゃない……心からなのは君を助けたいって思っている目だった。」
だから其れを渡したんだ。
其れに僕達と君達の目的は一致しているからねぇ?だったら、互いにスムーズに連絡やら何やらが取れるようにしておく事は道理だろう?
「確かに……こりゃ完全にアタシの負けだね……だけど、来た甲斐があったよ。
アンタみたいな正しい心を持った科学者が高町の仲間だってんなら、若しかしたら本当に闇の書の『呪い』は今回で終わるかも知れないね。
……だけど、多分近い内に管理局の『闇の書封印派』の連中が何かしら仕掛けて来ると思う…高町だけじゃなく多分アンタ等にも…気を付けなよ?」
肝に銘じておくよ――まぁ、此処のスタッフは全員が僕が開発した『超強力護身用スタンガン・ピカチュ○1号』を装備してるから簡単にやられはしないよ。
それに、アミタとキリエは言わずもがな凄く強いからねぇ?ま、用心だけはしておくよ。
「なんか護身用のスタンガンの名前に不穏なモンが見えたけど…まぁ、そうしてくれ。
……そいじゃ、今日はこれでお暇させて貰うよ?お父様とアリアに此処での事を報告しないといけないからね。」
もう行くのかい?……お仕事じゃあ仕方ないか。
今度は是非、グレアム提督さんとアリア君とやらも一緒に来て欲しいな?その時はお茶くらいは出すよ…いや、翠屋のお菓子も一緒が良いかな?
「その時は楽しみにしとくよ――んじゃな。」
――シュゥン!
消えた…ふむ、今のは転移魔法の一種かな?
前に見たシャマル君のとは少し違うようだが――魔法もマダマダ奥が深いね。
「あ……しまった、此れの事も伝えておくべきだったなぁ……闇の書に後から付け足されたと思われる『謎のプログラム』の事を…」
此れが何なのかは分からないし、場合によっては無限書庫とやらからデータを引き出す必要があるかも知れない。
だけど確実に分かる事が有る――闇の書が『呪われた魔導書』と呼ばれるようになった原因の9割はこのプログラムに有るってね。
一体誰が、何の目的でこんな物を付けたのか……マダマダ調べる事は多そうだ…
『苦労を掛けてスマナイな…』
いや、良いさ。
なのは君を救う為ならこれしきの事は苦労でも何でもないよ?まして僕の大好きな魔法に関する事なんだからね♪
さぁて、アミタ達が帰ってくるまでもう一頑張りと行こうかな!!
――――――
Side:シグナム
え〜と……何やらお疲れの様ですが、大丈夫ですか主なのは?
「大丈夫だよ…肉体的にと言うよりは精神的に疲れただけだから…」
「ホンマやなぁ…まさかフェイトちゃんが転校してきただけでアンだけの騒ぎになるとは予想外や。
おまけに放課後はアリシアちゃんも居ったせいで『妹より小さい姉萌え〜〜〜〜〜!!』とか言ってた輩まで居ったからなぁ…関西人もギブやこれ…」
其れはまた。(汗)
で、ですが大変だったとはいえ、其れ位ならばフェイトやアリシアも学校に馴染む事が出来るのは早いのではないでしょうか?
アリシアは元より社交的な性格の様ですし、フェイトも主達が同じクラスであるのならばそれ程緊張せずに過ごす事が出来ると思いますよ?
「だと良いなぁ……折角だからフェイトちゃんにもアリシアちゃんにも学校を楽しんでほしいからね♪」
「楽しむ事が出来ますよきっと。」
では、私は再び仕事に戻りますね?
桃子殿よりチーズケーキの仕込みを任されていますから――主達は、ゆっくりとしていて下さい。
「「は〜〜い♪」」
「では、また後ほど……」
ふふ、実に平和な事だ……マッタク、昔からは考えられない平穏な日々だな。
だが、長い時を戦いの中で過ごして来た私には分かる――恐らくはシャマル達も感じて居る筈だ。
そう遠くない未来に、ジュエルシード事件の時よりも大きな戦いが起こるだろう……そしてその戦いは主なのはをも巻き込む物になるのだろうな。
もし回避できるなら其れに越したことは無いが、仮に回避したとてこの街で戦いが起きたとなれば主達は黙っては居まい。
直接的に回避したとしても、戦いが起きた事を知れば主なのはは間違いなく其れを止める為に動くだろう……主なのははそう言う方だからな。
……まぁ、そうなったとて何も危惧する事はないか。
我等守護騎士は主が戦うのならば共に戦い、そしてお守りするのが本来の務めなのだからな!!
To Be Continued… 
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