Side:なのは
「「「「ホタル狩り?」」」」
うん、丁度良い季節だし、今日は天気も良いから郊外の河原に行ってと思ったんだけど如何かなぁ?
「如何って言われてもなぁ……なぁなのは、そもそも『ホタル狩り』って何?」
「そこからかぁ〜〜〜……あのなぁヴィータ、ホタル狩りいうのはなぁ…ん〜〜〜〜〜何て説明したモンやろかなぁなのはちゃん?
字面だけで言うなら『ホタル捕獲大会』みたいな感じやけど、今やとホタルは希少生物やから、滅多に捕まえるのもアカンしなぁ?」
ん〜〜〜〜〜……平たく言えばホタルって言う虫を鑑賞しにいくんだよ。
夜になると淡い緑色の光を発する虫なんだけど、綺麗な水場の近くにしか生息できないから近年では希少生物になってるの……
「光る虫?…何か凄そう!ドレくらい光るんだ?ネオンより明るい?暗闇照らせる!?」
「流石にネオンには敵わないけど、数匹が一箇所に集まった時には可成り明るくなるよ?
だけど、それ以上に光ながら夜空を乱舞するホタルの姿は凄く幻想的で美しいの……私はヴィータちゃん達にその光景を是非見てほしいんだ♪」
「淡い光を放ちながら夜空を舞う小さき命……確かに其れはきっと物凄く美しいモノなのでしょうね。」
うん、きっと皆が気に入ってくれると思うんだ♪
其れに、ホタル狩りもまた日本の夏の風物詩だから外す事は出来ないよ――すずかちゃんとアリサちゃん、其れにアミタさん達も来るしね。
皆には沢山知って欲しいんだ……世界はこんなにも楽しくワクワクする事に満ちてるって言う事を。
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天35
『SummerEvent4:夏の夜の彩光』
「しかし、主なのは『ホタル』とは一体どのような生き物なのですか?
自ら光を発する虫など、古代ベルカには存在していなかった故に少々想像が出来ないのですが……」
ふえ?古代ベルカにはホタルが居なかったの?……それじゃあ確かにちょっと想像し辛いよねぇ?
え〜っとね、大きさは大体1.5cm位で頭が赤くて身体は黒色――腹部を発光させて仲間との通信をしてるって一般的には言われてるの。
ホタルも色んな種類が居るだけど、この辺で見れるのは『ゲンジボタル』が殆どだね。
「ゲンジボタル?ゲンジってあの源氏から?だったら『ヘイシボタル』ってのも居るのか?」
「良い質問だね。
『ヘイシボタル』じゃないけどゲンジボタルに対比する形で『ヘイケボタル(実在)』って言う蛍は存在しているの。」
こっちはゲンジボタルよりも小型だけど、ヘイケボタルも割と全国的に見る事が出来るホタルで、今日行く河原にも結構居ると思うよ?
他にも色んな種類が居るんだけど、取り敢えず今日見る事が出来るのは主にゲンジとヘイケの2種類のホタルだね。
「へ〜〜〜〜〜…一口にホタルって言っても色々居るんですねぇ……ちょっと吃驚です。」
「だが、夜空を舞う淡い光と言うのは、何とも幻想的であるかも知れないな。」
でしょう?
其れに、今日はホタルだけじゃないんだよね♪
「へ?他にも何かあるのかよ!!
なに、何があるの?なぁ、教えてくれよなのは〜〜〜!!」
「其れは夜になってのお楽しみってやつだよヴィータちゃん♪――ただ、皆はきっと気に入ってくれると思うんだ♪」
「なんだよ〜〜〜、そんな風に言われたら益々気になるじゃんか〜〜!」
「そう言うなヴィータ、主なのはは楽しみが半減しないよう『ホタル狩り以外の何か』をぼかしておられるのだ…其れを聞くのは無粋と言うモノだぞ?」
「でも気になるじゃんかよ〜〜〜!」
「今知ってしまっては、驚きもない……其れでは主の心遣いも意味がなくなってしまうだろう?
其れに、気になれば気になるほど、実際に見た時の感動が大きいのではないか?今は我慢のしどころだぞヴィータ。」
にゃはは……まぁ、そう言う事。
お楽しみのサプライズは、種明かしをしたら意味がないからね♪
「う〜〜〜…………そう言う事なら我慢するけどさ〜〜〜……」
「そうやでヴィータ………その我慢でためたエネルギーがあればこそ、楽しみは楽しみになって明日への活力に繋がるんや!」
はやてちゃん、其れは全く意味不明なの。
まぁ、取り敢えずは陽が沈んでからだね。
ふふふ、ホタル狩り以外のサプライズ……気に入ってくれるといいなぁ♪
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陽もすっかり沈んで、PM9:30。
市街地から離れた場所に有る河原には結構な人が集まってるね……まぁ、海鳴でホタル狩りをするって言ったら此処は絶好の場所だからね。
因みに、私は当然車椅子なんだけど――グランツ博士が造った『悪路用車椅子』のおかげでごつごつした河原でも問題なく移動できてます。
車輪部分にフレキシブルなサスペンションを搭載した車椅子って……此れ普通に商品として売り出せると思うの…
「まぁ、其れはまだ試作段階だけどね……使ってみて思うところが有れば遠慮しないで言って欲しいな。
自分の持てる技術が他の誰かの役に立つって言うのは、科学者として最高の喜びだからね。」
「はい、そうさせて貰います♪」
ホント、グランツ博士は凄い技術と科学力を持ってるのに、一切の名誉欲が無い『科学者の鏡』なの。
その辺がプレシアさんとも共通してて、すっかり『凄い科学者』同士意気投合してるみたいだしね。
時にお兄ちゃんとザフィーラは……
「おい、忍……」
「アルフよ……」
「「そんなに密着して来るな!」」
「え〜〜?良いじゃない恭也♪」
「そうそう、ザフィーラだって恥ずかしがる事ないだろ?」
「「恥ずかしいとかではなく、動き辛い!!」」
忍さんとアルフに捕獲されてました……うん、物凄く仲がいいって事で納得するしかないね――さて、そろそろ出て来ても良い頃なんだけど……
――ポウ…
「お!今光った!!光ったよ、なのは!!」
「今光ったのがホタルだよ♪……ほらあそこにも!」
――ポウ……ポッ………ポポゥ……
「ふわぁ……スッゲェ………河原が緑色の光で一杯だ………」
「淡い光がとても綺麗……凄く幻想的で素敵です………」
「自然が作り出す光のイリュージョン………見事なモノですね。
確かに、主の言うようにネオンサインのような強烈な明かりではありませんが、この優しき翡翠の輝きは見ていて心が落ち着きます……」
でしょ?
それに、今年はなんだか何時もよりもホタルの数が多いね――多分例年の1.5倍から2倍は居るんじゃないかな?
若しかしたらホタル達も、初めて此処に来たシグナム達を歓迎してくれてるのかも……
「だとしたら、嬉しい限りです……淡く、儚い自然の美――とても素晴らしいモノだと思います。
古代ベルカの時代には、この様な光景を見る事は出来ませんでした……此れを見れた事に心から感謝しなくてはなりませんね。」
気に入ってくれたみたいなら良かったの♪
さてと……ねぇアリサちゃん、今何時?
「ん?え〜と……10時5分前――『ソロソロ』よなのは。」
「そっか、ソロソロだね♪」
「へ?ソロソロってなにが?」
昼間に話した『ホタル狩り以外の何か』だよヴィータちゃん♪
定時に始まる訳じゃないから、5分前なら1個目が来ても良いかもしれないね……
――キラリ
「あ!流れ星!!」
始まったね!さぁ、此処からが1年に1度の夏の大イベントなの!
――キラ!キラリ…キラキラ…ヒュゥゥゥン……
「此れは……文字通り星が降っている…!!」
「此れが海鳴の1年に1度の大天体ショー〜〜〜〜〜!時間は僅か10分で規模も大きくないからマニアじゃないと知らないんだけどね〜〜♪」
「そして、ホタルの光と流れ星の煌めきが、更なる美を演出してくれます!」
――キラ、ポウ………ポッ、キラリ………ヒュン、ポポゥ………
「スゲェ……」
「こんなの見た事ありません!凄い…凄いです!!」
「成程……此れは確かに素晴らしサプライズです……貴女が伏せておきたくなるわけですね。」
うん、何かあるって事だけが分かってた方が驚きも一入だと思うしね……皆にはこのホタルと流れ星の競演を是非見てほしかったんだ。
1年に1度、この日のしかも晴れた時にしか見る事が出来ない、この光景をね……
――ぎゅ
「主なのは?」
「ねぇシグナム……この光景は何時も見る事が出来る訳じゃないんだ。
今年は晴れてたから見れたけど、来年また見る事が出来るとは限らない本当に限定的な光景なの……だから、確りと心に刻んで欲しいんだ。」
「えぇ、確とこの心に刻みましょう……我が主と、そして我が友達と観賞したこの素晴らしき光景を……」
うん……そして、来年もまた此れが見られることを願おうね。
――キラリ、ポゥ………ポポゥ、キラ……
今年の夏の一大イベントは、去年までとは違う、何か物凄く特別ななった気がするの……ううん、きっと特別だったんだね。
お天道様の機嫌次第だけど、来年もまた皆で一緒にこの光景を見る事が出来ると良いね♪
To Be Continued… 
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