Side:はやて


夏の納涼と言えば、海にプールに夕涼み……縁側につるした風鈴も風情があって良いモンや。

せやけど、夏と言えば絶対に外せない納涼方法が『肝試し』やろ!!寧ろ此れをしないで夏が語れるか!?否、語る事は出来へん!!
肝試しをやってこその夏!寧ろ夏じゃないと出来ません、冬やと寒すぎるんで!!


「其処までかどうかは兎も角として、確かに1度は肝試しをするのも悪くないわよねぇ…夏だし。」

「?……なぁ、『キモダメシ』ってなに?」


あぁ、ヴィータは知らんのやったね?
きもだめし言うのはな?ウナギの『キモ』と『ダ』イコンを混ぜ込んだ『メシ』の事や、夏バテによく効くんやで〜〜♪


………はやてちゃん……

「はいぃぃぃぃぃ!?」

純粋で純真なヴィータちゃんに、如何にも其れっぽい嘘を教えるのは止めてほしいんだけどなぁ?其れを信じちゃったら如何するの?

「顔は笑顔やけど、目が笑ってへんよなのはちゃん…(滝汗)」

冗談や、冗談!
其れに幾ら何でも、こんな嘘に騙されたりせぇへんやろ?古代ベルカにも似たような度胸試しくらいは有った筈やと思うけどなぁ?


「え?違うの!?てっきり、日本独特の食べ物なのかと思った……」


って、信じとる!?
アカン…予想以上に純粋すぎるでヴィータ……こら確かに、其れらしい嘘を教えるのは危険やなぁ?
ゴメンなヴィータ、ちょおふざけ過ぎたわ――肝試しっちゅうのは、まぁ、平たく分かり易く言うなら一種の『度胸試し』みたいなモンで、夏の風物詩や♪












魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天34
『SummerEvent3:納涼肝試し!』











「度胸試し?何でそれが納涼に繋がるんだ?」

「ん〜〜〜〜……まぁアレよ、怖い話聞くと背筋が寒くなるでしょ?
 ハラハラドキドキ、ちょっぴり怖い体験して、気分的に涼を味わおうって感じ――分かった?」

「まぁ、何となく……だけど高が度胸試しだろ?その程度で涼しい気分になれんのかよ?
 ワリィけど、アタシは此れまで何度も死線潜り抜けて来てるから、大概の度胸試しじゃビビりもしねぇぜ?矢でも鉄砲でも何でも来いってんだ!!」


うん、まぁ強気なのは内容を知らんからやろね。
確かに歴戦の騎士様に大抵の度胸試しは意味を成さんのかも知れへんけど……この肝試しは『ホラー系』やで?


「え?」

「せやからホラー系やて。
 日がとっぷり沈んだ後でな、廃ビルやら墓場を舞台に決められたコースを回って戻ってくるんや……懐中電灯の明かりだけを頼りにしてなぁ…
 特にこの時期、陽が暮れた柳の下には、よく白装束を纏った顔面蒼白の女性が出て来るらしいからなぁ……青白い人魂と一緒に……」

どや、其れでもビビらへんか?


「べべべべべべ別にそんなモン怖くもなんともねーです!
 幽霊でも、お化けでも、悪魔でも、正体不明のすっとこどっこいでも纏めてアイゼンで叩き潰してやるです!」


うわお……思いっきり怖がってるやん!
微妙に震えながら、なのはちゃんのシャツの裾を握りしめて言うても説得力皆無やて……まぁ、ゴッツ可愛いから無問題やけどな〜〜〜。


「大丈夫だよヴィータちゃん、お化けなんてそう滅多に出るモノじゃないし、肝試しだって1人でやる訳じゃないから。
 2人1組でコースを回るなら怖くないでしょ?」

「だから怖くねーって!
 じじじじ上等だよ、肝試しだろうとキモ男子だろうと何でも来いってんだ!」


其れは地雷やでヴィータ?
せやけど、其れやったら今晩やろか?アミタさん達も呼んで、場所は数年前に持ち主が夜逃げした高台のビルでドナイや?アソコなら雰囲気あるし。


「確かにアソコは場所としては最高ね……良いじゃないの、早速アミタ達に連絡とらないとね!」

「おぉ、ノリノリやなアリサちゃん!」

「当然じゃないはやて!
 肝試しは日本の夏の風物詩よ!其れをやらずに夏休みを終われる?……断じて否よ!!日本人なら肝試しは外せないのよ〜〜〜〜!!!」


いや、アリサちゃん日本人とちゃうやろ。
そもそも、今回の肝試しの参加者で純然たる日本人は私となのはちゃんとすずかちゃんだけやからね?言っても聞いとらんと思うけどな。


で、あれよあれよとトントン拍子に肝試し大会が決定!
因みに、あれよあれよと話が進んでいく中でなのはちゃんのシャツを確りと握りしめながら強がるヴィータはゴッツ可愛かったで……此れが萌えか。

まぁ、取り敢えずやる以上は楽しまなアカンからね〜〜♪た〜〜〜〜っぷりと楽しもうやないの……ククククク……


「はやてちゃん、キャラが崩壊してるの……」

「突っ込んじゃ駄目だよなのはちゃん……はやてちゃんは最近なのはちゃんとシグナムさんが妙に仲良く成ってるからキャラ崩壊でもしないと立場が…
 なのはちゃんの『嫁』の立場をシグナムさんに奪われる寸前だから必死なんだよ色々と……」


待てコラぁ!!何言うてんねんすずかちゃん!人を痛い子設定せんといて〜〜〜〜!?
てか、なのはちゃんの『嫁』って何やねん〜〜〜〜!!なのはちゃんの方が皆の『嫁』に決まっとるやん!って私も何言ってんねん〜〜〜〜!!


『…………』(少し傾き)

「闇の書もそう思う?良い具合に混乱してるよね。」

『〜〜〜〜〜?』

「実害はないから放っておいても良いんじゃないかって?……確かにアレは自然回復を待つのが上策かもしれないよね…」


ちゃうって……よし、落ち着け私……うん、大丈夫や。
兎に角今夜の肝試しは気合い入れて行くで!!








――――――








Side:すずか


で、時は進んで夜と言うより夜中。
結局、アミタさんとキリエさん、フェイトちゃんとアリシアちゃんにアルフさんも呼んで皆で肝試し大会。

組み合わせはクジで決めたんだけど、場所が廃ビルで階段移動もある事から、なのはちゃんだけはザフィーラさんと一緒。
更に、2人一組だと1人溢れるから1チームは3人なるんだけど、そのチームが私となのはちゃんとザフィーラさんのチーム。

只今、第1組目としてビル内を移動中。

「そう言えばなのはちゃん、闇の書は如何したの?」

「ん?闇の書だったら『私に驚かす役をやらせていただけないでしょうか?』って言って、私も了承したから今はこのビル内に居ると思うよ?
 『この間の怪談大会の時よりもゾッとする演出を考えますね』って楽しそうだったよ?」

「そ、そうなんだ……」

何て言うか、妙に人間味がある気がするなぁ闇の書って。
今はなのはちゃんとシグナムさんしか明確な意思疎通が出来ないみたいだけど、何時かは私達とも意思の疎通が出来るようになると良いな?

「それにしても、何て言うか狼状態のザフィーラさんに騎乗するなのはちゃんて本当に絵になるよね?
 いっそ、アリサちゃんやはやてちゃんが言うように『海鳴のもののけ姫』を名乗っても良いんじゃないかなぁ?」

「其れは流石に如何かと思うの……まぁ、ザフィーラの背中は大きくて温かくて、私は乗るの大好きなんだけどね♪」

「その様に言って頂けるとは誠に光栄、恐悦至極。
 主が望むならば、我が四肢は何時でも主の足となりましょう……」

「うん、ありがとうザフィーラ。」


うふふ、本当になのはちゃんと騎士さん達は仲が良いね。
けど、何て言うかザフィーラさんは身体も大きくて頼りになるから、一緒に居ると夜中の廃ビルもあんまり怖く感じないね?
仮に本当にお化けや幽霊が出て来ても倒してくれそうな感じがするよね?


「確かに……如何なのザフィーラ?」

「明確な敵意を持ち、主に害をなすものであるならば排除はしますが、そうでないのならば此方から仕掛ける事もないかと…」

「成程………と、そろそろ折り返し地点だけど、何も起きなかった………!!!!」

な、なのはちゃん、後ろ!!!


「ほえ?」

「む?」

………此処に何用かぇ〜?


ででで、出たよ本当に……で、出ちゃったよ〜〜〜〜!!!


「………相当に凝ってるね?中々の演出だよ闇の書♪」

『…………♪』


え?闇の書?……そのお化けは闇の書なの!?


「『ばれましたか♪』だって。
 まぁ、私とシグナムは分かると思うよ?闇の書の気配が確りしてたからね……だけど他の人は如何かなぁ?」

「た、多分分からないと思うよ?凄く怖かったよ!?……一気に気分が涼しくなるくらい怖かったよ……凄いね闇の書…」

『………♪』

「『褒めて貰って光栄だ』だってさ?」


うん……凄く見事な演出だったよ?………此れは皆怖がると思うなぁ…








――――――








Side:闇の書の意志


ヤレヤレ、流石に我が主には気付かれてしまったか。
だが、月村すずかは見事に引っかかってくれた……此れならば、残るメンバーも将以外は驚いてくれるだろう……何よりも、早くヴィータに来て欲しい。


「楽しそうですね、夜天さん?」

「ん?割と楽しいぞ?
 あぁ、どうせなら市も姿だけでも出してみるか?暗がりに浮かぶ美女の霊……実にピッタリの演出だと思わないか?」

「幽霊扱いですか!?……いえ、名実ともに幽霊状態なので何も言えないのですけど……
 でも、そうですね?折角ですし、楽しまないと損かもしれません……じゃあ、出して貰った時には啜り泣きでもしながら『1人にしないで…』と言って…」


その後で『ス〜〜〜〜〜…』と消える演出が良いな……うん、地味に怖い。
やるなら徹底的に、顕現レベルを落として肌を蒼白に見せればより効果が高いな……序に此れを身体に巻き付けてみるか?


「何ですか、その黒い蛇?」

「この身が呪われた魔導書となってしまったせいでこんな姿になってしまったが、此れは私の妹の『ナハトヴァール』だ。
 双子だから、元の姿は私と瓜二つの外見だ……ナハトは褐色肌に色の薄い金髪と言う違いがあるがね。
 書が暴走せずに、正しい完成を迎えた暁にはナハトも本来の姿に戻れる筈だ……で、如何する?こんな見た目だが怖くはないぞ?」

「それはちょっと、遠慮しておきます……戦国時代の生まれとは言え、やっぱり女の子は蛇とか苦手ですから……って形が変わりましたよ!?」


……こらこらナハト、拒否されたからと言って拗ねて腕部武装となって私に取り付くんじゃない、市が驚いているじゃないか。


「良いですねその武器……カッコいい!」

「そう来たか。」

だが、この状態のナハトを武器として使えるのは私だけだからな?
いや本来妹を武器として使うのはオカシイのは分かっているんだが……過去に暴走した際には、必ずナハトと共に破壊活動を行っていたからな…
今回ばかりはそんな事は無いだろうがね。


む……如何やら次の組が来たようだな?
2番手は……ヴィータか……では、頼むぞ市?


「はい…任せて下さい!」


さて、果たしてヴィータは怖がってくれるかな?








――――――








Side:アリサ


「ヴィータ……アンタそんなに怖いんなら無理に来なくても良かったのよ?」

「ななななのはが行くってのに、あああアタシが行かないとか有り得ないだろ?
 そそそそれに、なのはだってお化けや幽霊は滅多に出て来るモンじゃないって言ってたし……ってアタシは怖くねーです!」


ならなんでアタシのシャツをそんなにしっかり握って密着してるのか教えてほしいわね?


「これはその……アリサがはぐれねーよーに捕まえてやってるだけです!
 其れに此れなら、仮に後ろからアリサが襲われてもアタシが幽霊やお化けを即座にブッ飛ばせるから問題ね―です!ねーはずです!」


ったく本当に強がりの天邪鬼なんだから……って、アタシも人の事言えないのかしら?
ん〜〜〜……ヴィータの此れは可愛く思えるんだけど、アタシは他の人の目には如何映ってるのかしら?……聞く勇気は無いわね。
まぁ、キリエに言わせるとアタシはアタシで可愛いらしいんだけど……天邪鬼は程々にした方が良いかもね――キャラが被るの良くないし。

「さてとそろそろ折り返し地点だけど……何もなかったわね?」

「ふぅ……何も出て来なくて良かった…」



――カタッ…



「「!!?」」


な、何今の物音!?
この廃ビルに有るのは崩れたコンクリの欠片だけよね?……何かが動く音がする筈が……


『うぅ…ひく…ぐす…』

「「!!!!!」」


な、なによこのすすり泣くような声は……ま、まさか本当に出たとか言うんじゃないでしょうね!?


――ぼう…


『う…ひく………お願い……もう、1人にしないで………』


――スゥ……



何よ今の女の人は!!青白い肌だけど滅茶苦茶美人さん……だけど消えた……う、嘘よね?


「あ、あ……あはははあはははははは!!で、出たよ…出た――――――――――――!!!!!」

「ちょ、ヴィータ!?」

「で、出やがったな幽霊!!お前なんて怖くねーです!叩きのめしてやるです!!!」


『ほう?…妾を叩き潰すと申すか?面白い女子じゃ……出来るモノならやってみるが良い…クククク…』


「うわぁぁぁあぁぁ!?あ、アイゼン!!!」

『よし、ブッ飛ばす!』


ちょ!待ちなさいヴィータ!室内でそんなモンかましたらヤバいわよ!!!


「消えちまえ幽霊野郎!!お前なんか、ぜってー怖くねーからなぁ!!!!!ぶっ飛びやがれぇぇぇ!!!!

『Schwalbefliegen Claymore.』


――キィィン……ドバガァァン!!!


な!!嘘でしょォォォぉぉぉぉォォォ!?廃ビルが……爆破解体ですってぇ!?








――――――








Side:なのは


――ゴゴゴゴゴゴゴ……ズゥゥン…!


い、行き成り廃ビルが倒壊したの!
ヴィータちゃんの悲鳴やら何やらが聞こえた気がしたけど、アリサちゃんとヴィータちゃんは大丈夫なの!?


『2人の魔力パターンは計測できますから無事でしょう…アリサとヴィータ共に防護服の展開は出来たようです。』

「其れなら良いけど……一体何があったって言うの?」


――シュン!


あ、闇の書……一体如何したの?


『………(汗)…………!!…………!!』(何度も空中で倒れたり起き上がったり、要するに連続土下座状態)


え?気合を入れ過ぎてヴィータちゃんを驚かし過ぎた?
書の中に居るお市さんまで使って恐怖の演出をやりすぎた結果、ヴィータちゃんの恐怖がメーター振りきってクレイモア炸裂させてビルが倒壊したと?


『………』(コクリ)



――ガラリ……



「ったく肝試しで死ぬかと思うとは予想外よ……魔法を使えなかったらお陀仏だったわね…」

「はぁ、はぁ……幽霊倒してやったぜ…」


あ〜〜〜……2人とも何て言うかお疲れ様なの、特にアリサちゃん……


「はぁ、はぁ……こ、こんなハードな肝試しは初めてよ……まさか、本当に出て来るとは思わなかったわ…」


……実は闇の書だったって事は言わない方が良いかもね…特にヴィータちゃんには。
ヴィータちゃん、大丈夫だった?


「だだだ、大丈夫だって!幽霊の奴はブッ飛ばしてやたから安心して良いぜ…!!」

『ククク…あの程度で払ったつもりか?
 まぁ、今の一撃に免じてこの場は退いてやろう……だが、時が来たら必ず……楽しみにしておるぞ、赤髪の娘よ……』


「ぎゃぁあ!!まだ居た〜〜〜〜〜〜!!!!」


こ〜ら闇の書やりすぎだよ?
怖がらせ過ぎたらだめ。肝試しの恐怖演出は程々に怖い程度にしないとね?


『…………♪』


怖がるヴィータちゃんが可愛いからって……何て言うか闇の書って世話好きで悪戯好きなお姉ちゃんみたいな感じなの。



まぁ、其れは其れとしてビルが崩れちゃったらもう肝試しは無理だよね?……此れからどうしようか?


「大丈夫よ〜〜ん、もしも肝試しがおじゃんになった時の為に花火持って来てあるから、此れを楽しみましょ♪」

「キリエさん、ナイスです♪」

此れなら態々夜中に出て来たのも無駄にならないね。
こっちおいでヴィータちゃん、今度は私と一緒に花火を楽しもうね?


「うん……そうする。アタシには肝試しよりこっちの方が向いてるかも知れねぇ…」

「かもね。」

まぁ、こんなのもありかな?廃ビル爆破解体は流石にアレだけどね。













因みに、翌日の朝刊に『海鳴の廃ビル謎の倒壊?』って記事が載ってたけど、私は何も知らないの!うん、知らない!


「なのは、このビルは昨日皆が…」

「知らないの!何も知らないの〜〜!」

アレは自然崩壊だも〜〜ん!私達は何もしてないもん!し〜〜らない!!!
知らないモノは絶対に知らないも〜〜ん!













 To Be Continued…