Side:なのは
――カラコロ、カラコロ…
街中に響くのは下駄の音、日が暮れはじめた街に灯りをともすのは、至る所に吊られた提灯。
今日は年に1度の夏祭。
年に1度の大イベントで、毎年夏祭は家族全員で回るんだけど……今年なのはは闇の書の守護騎士の皆と一緒に回っています。
私は皆と回ろうかと思てたんだけど、お父さんが…
『流石に大人数すぎるからねぇ?
折角だからなのははシグナム達と祭りを回ってみたらどうだい?闇の書の主として、夏祭の楽しみ方を教えてあげると言うのも大切な事だろう?』
って言って、はやてちゃんも『名案や♪』って同意しちゃうし、お兄ちゃんはそもそも忍さんに連れて行かれる事が確定してるからね。
まぁ、私としても皆に夏祭を楽しんでほしかったし、祭りの楽しみ方とかを教えてあげたかったから此れで良いのかも。
「しっかしスゲー活気だよな?
若しかしたらこの活気って魔力として闇の書で蒐集できるんじゃねぇか?」
「いや、幾らなんでも其れは無理だろう?
この活気は人の生命エネルギーが発する物だろうが魔力的なモノではないからな?其れに、下手に蒐集して問題が起きても困るだろう?」
「ちぇ〜〜〜……蒐集できれば、なのはが楽になると思ったのにさ〜〜。」
にゃはは……その気持ちだけ貰っとくねヴィータちゃん。
と、ほっぺに綿あめついてるよ?
「ん?あぁ、ホントだ……なんつ〜か此れも面白いよな?只の砂糖がこんなにふわふわのお菓子になるんだもん!
おっちゃんに頼んだら色付きのやつ作ってくれたし!桃子さんのお菓子には劣るけど、此れは此れで美味しいし楽しいよな♪」
ヴィータちゃんはすっかり夏祭を堪能してるみたいだね♪
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天33
『SummerEvent2:華の夏祭』
因みに、今日は当然シグナム達も浴衣姿。
夏祭の備えて買っておいてよかったの、皆の魔力光をイメージした浴衣はとっても良く似合ってるからね♪
「しかし、本当に活気溢れる場所ですね――皆でこの空間を共有し共に楽しむ、とても素晴らしいモノだと思います。
其れに何と言うか、この夏祭の熱気と活気の中に居ると、自然と身体が動くと言うか――祭りの空気を楽しもうとしているのが分かりますから。」
「其れがお祭りの持つ力だよ。」
海鳴の夏祭は決して大規模じゃないけど、商店街の人達や街の人達が一つになって行う一大イベントなの。
皆海鳴が大好きな人達だから、自然と熱が入るし、海鳴以外からも出店出す人やお祭りに参加する人は沢山来るからね――夏の風物詩なの。
「ふむ……相当な数の人間が集っているように思えますが、ドレだけの人数が?」
「詳しくは分からないんだけど、確か去年の新聞(地方紙)には『海鳴の夏祭今年は市外からも2万人超が来場』って出てた気がするよ?
市外からの人達+海鳴の人を合わせたら、軽く4〜6万人くらいになるんじゃないかな?」
「其れは凄いですね〜〜!
古代ベルカにも祝祭の日はありましたけど、此処まで熱気があるモノじゃなかったように思いますよ?」
そうなんだ?
まぁ、古代ベルカのお祭りと現代日本のお祭りじゃ全然違うと思うからね――なら尚の事、このお祭りを楽しまなくちゃ!
其れに、何もお祭りの屋台は食べ物だけじゃないしね?
「その様ですね?あの店もそうなのでしょうが、アレは一体何です?客が皆、銃器を手にしているようですが?」
「アレは『射的』だよ。
コルクの弾を発射するおもちゃの銃で景品を撃ち落とすの――結構難しいけど、やってみる?」
「やる!やってみる!景品にでっかいのろいうさぎがあった!絶対取ってやる!!」
「あ、おいヴィータ!!」
にゃはは……ヴィータちゃんは本当にのろいうさぎ好きだよねぇ?
不気味さと可愛さを兼ね備えたのろいうさぎの魅力が分かるって言うのは流石だと思うの。意外と人気のあるキャラクターなんだよねぇ♪
「そうなのですか?……まぁ、のろいうさぎは兎も角、面白そうですので私も挑戦してみるとしましょう。」
「では私はその隣の出店のモノを…」
そっちはハンマーゴングだね?壊さないように注意してねザフィーラ?
「心得ました…」
「じゃあ、私は何か食べ物や飲み物を買って来ますね〜〜♪」
宜しくねシャマル〜〜♪あ、チョコバナナと杏子飴は必須だからね?
「は〜〜い、了解で〜〜す♪」
さてと、私も射的を楽しもうかな。
ヴィータちゃんはもう挑戦してるみたいだね?
「悪いなのろうさ、其れだけデカけりゃ当て放題だ!お前はアタシの物になって貰うぜ!!!」
――ポン!
見事命中!……だけど1発じゃ落ちないよねぇ?
其れにあの大きさだと、ど真ん中に命中させても絶対に落とす事は出来ない――頭の先に当てるのがコツだよヴィータちゃん!
「先っちょにか……よし!ならこいつで如何だ!!」
――ポン!
あぁ、惜しい!!!
少し高すぎたね……だけどヴィータちゃんなら今ので何処を狙えばいいか分かった筈――残り弾は3発だけど、鉄槌の騎士には其れで充分なの!
――ポン!ポン!!ポン!!!
――シ〜〜〜〜〜ン…
「だぁぁ!くっそ〜〜〜!!落とせなかった!!!!!!」
「だっはっは!残念だったなお嬢ちゃん!ま、次頑張りな!!」
む……オカシイの……前にアレと同じサイズのぬいぐるみをお兄ちゃんが取ってくれた事が有ったけど、頭の先の方を狙って見事に落としてた。
銃の威力に差は無いから、ヴィータちゃんの正確な狙いなら、残り3発で落とせる筈――其れ以前に弾が命中してるのに少しもぶれないなんて…
「おじさん、今度は私がやっても良いですか?」
「おう?こりゃまた可愛いお嬢ちゃんだねぇ?
まぁ、客は選ばないが、お嬢ちゃんはちょっときつくないかね?車椅子に座ったままじゃ狙いが付けられないだろう?」
其れについては大丈夫です!シグナム。
「御意に。…では、失礼をして……」
――ひょい
此れなら大丈夫です!別に反則じゃないですよね?
「まぁな……まぁ、金は払って貰ってんだ、5発の弾で見事景品ゲットしてくんな!」
勿論その心算です――序に貴方の『インチキ商売』も暴かせてもらいますから。
取り敢えず4発で……うん、髪止めとブレスレットとドックタグとキーホルダーを貰おうか?
――ポン!ポン!ポン!ポン!
「な!?」
「全弾命中なの!
そして5発目は……この1発で、さっきヴィータちゃんが落とせなかったのろいうさぎをゲットして見せるの!!!」
何で落とせないか絡繰も読めたしね。
レイジングハート、最後の1発に『景品台を破壊する』位の魔力を乗せる事は出来るかなぁ?
《可能ですよMaster……しかも、景品そのものは破壊しないようにでしょう?
其れ位ならば造作も有りません、不正を働いたボケナスに天誅を喰らわせてやりましょう……寧ろ直接バスターかますのを推奨します。》
《其れは流石に危ないからね?》
兎に角これで決めるの!
狙いはのろいうさぎの少し下………ファイヤーーーー!!!!
――ボン!ドバガァァァァァァァァァァァァァン!!
「なんだこりゃぁ!?」
「粉砕・玉砕・大喝采!!!なの。」
見事に砕け散ったけど……ねぇオジサン、のろいうさぎが乗ってた板は宙ぶらりんになってるのに、なんで逆様になったのろうさは落ちないの?
「いぃ!?」
「其れに良く見たら、その板に刺さってるのって釘ですよね?
若しかして、板の裏から釘刺して絶対に落ちないようにのろいうさぎを固定してたんですか?……此れって明らかに詐欺ですよ?」
如何言う事かなぁ?かなぁ?
ヴィータちゃんは心底そののろいうさぎが欲しくて挑戦したのに、絶対に落とせないようになってるって言うのは如何なのかなぁ?
それ以前に、この海鳴の夏祭でこんなインチキ商売して良いと思ってます?……商店街の人達が黙ってませんよ?
「おう、オッサン……アンタ他所からの参加者だな?
此処の夏祭でそんなインチキ商売してくれるたぁいい度胸じゃねぇか……ちぃとばかし海鳴商工会の方に顔貸してもらおうかい?」
「ばれちまった時の覚悟は出来てたんだろ?」
「いぃぃ!?」
つまりそう言う事です――たっぷりと頭冷やして来てくださいなの。
「あの、何やら連行されましたが大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよシグナム、商店街の『屈強』なオジサン達とO・HA・NA・SHIするだけだから♪」
「なにやら、言いようのない恐怖を感じたのですが、話をするだけと言うのならば大丈夫でしょう。
ですが、この店は如何したモノでしょう?景品台は壊れて店主も不在……営業は不可能と思いますが?」
放置の方向で。
まぁ、こののろいうさぎだけはどんな形であれ『落とした』から貰っておくけどね。はい、どうぞヴィータちゃん♪
釘が刺さってたから穴が開いちゃってるけど、其れは後でお母さんに頼んで縫って貰えば良いし――貰ってくれるかな?
「おう!てか、断る筈ないだろ?なのはがアタシの為にとってくれたんだからな…♪」
なら良かった♪
其れから髪留めはシグナムに、ブレスレットはシャマルに、ドッグタグはザフィーラにプレゼントだね。
「此れは……ありがたく頂きます、主。シャマルとザフィーラもきっと喜びますよ。」
だと良いなぁ♪
ところで、ハンマーゴングに挑戦してるザフィーラは如何かなぁ?
「ぬぅぅぅん……でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
――ドゴン!!………カ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!
「見事だ兄ちゃん!見事ゴングを打ち鳴らしたんだ、好きな賞品持ってきな〜〜!!!」
「うむ……では遠慮なく…」
見事にクリアしたみたいだね……まぁ、ザフィーラならクリアするのは難しくないと思ったけどね。
で、おかえりシャマル♪
何を買って来てくれたのかなぁ?
「なのはちゃんに言われたモノを全員分と、あとは焼きそばやお好み焼きなんかを適当に。
焼きそば屋のおじさんはおまけして少しだけ増量してくれました♪」
「それは良かったね♪折角だから冷めない内に食べようか?」
「賛成〜〜〜♪」
お祭りの空気の中で食べると、こういうのも美味しいよね♪
うん、やっぱりチョコバナナは外せないの!
「ふむ…悪くない。
?……あの、主なのはこの丸いのは何でしょうか?お好み焼きに似ていますが?」
其れはタコ焼きだよ。
ん〜〜〜〜と、タコを具にした一口サイズのお好み焼きみたいなものかな?
「食べてみる?はい、どうぞ♪」
「へ?あの、主なのは?」
「ほら、口開かないと食べられないの。あ〜〜ん。」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?あ、主なのは、そそそそ、其れは幾ら何でも恐れ多いと言うか恥ずかしいと言うか///……ひ、一人で食べられますよ!?」
うん、知ってる♪
だけど、此れはある意味お約束だし、折角のお祭りなんだから此れ位は普通だよ?
「そ、そうなのですか?……で、では……あ、あ〜〜〜ん///」
――パクリ
如何?美味しい?
「………えぇ、中々に美味しいモノですね///――では今度は私が…どうぞ、主なのは。」
「あ〜〜ん♪」
――パクリ
うん、やっぱりタコ焼きもお祭りには外せないメニューだね♪じゃあ、今度はまた私のターンだよ♪
「矢張りですか……まぁ、予想はしていましたので、この際最後まで付き合いますよ。」
「いや、何してんだオメェ等?」
「無粋な事は言いっこなしよヴィータちゃん♪」
「うむ……主があんなに楽しそうであるし、シグナムとて満更でもなさそうだ……此処は温かく見守るのが従者の勤めと言うモノだろう。」
「それって色々おかしくねぇか!?」
如何だろうね〜〜?
あ、若しかしてヴィータちゃんもやってほしかったの!?其れは悪い事をしたの……ゴメンねヴィータちゃん?
「ちげーから!そうじゃねーから!!アタシは良いから、なのははシグナムとタコ焼きを食べてろって!!!」
あれ?違ったの?てっきりそうだと思ったんだけど……なら、タコ焼きは私とシグナムで美味しく頂くね♪
――――――
Side:アリサ
ねぇすずか、アレは突っ込んでも良いわよね?寧ろ突っ込むべきよね?今すぐ突っ込み入れながら突貫しても絶対に罰は当たらないわよね!?
「お、落ち着いてアリサちゃん!!そんな事したらなのはちゃんとシグナムさんに悪いよ!?」
「だまらっしゃい!!
何処のバカップルよアイツ等は!?見てるこっちの方が恥ずかしくなるじゃない!!!しかも妙に絵になる光景だし!!」
夏祭には来てるだろうから、会場で会う事も有るとは思ったけど、何してんのアイツ等!!
公衆の面前で『あ〜〜ん』とか、本気でバカップルなの!?
って、なのは!アンタ、シグナムのほっぺに付いたソースを指で取って舐めんじゃないわよ!!無自覚なだけに性質が悪いわねなのはは!!
「確かになのはちゃんて無自覚であぁ言う事するからねぇ?
せめてもの救いは、対象が私達を含めて女の子って言う事だけど、相手が男のだったら絶対勘違いしてフラグが立ってるよね?」
「しかも乱立ね……そして、乱立させておいてその全てをへし折るわよなのはなら。」
「否定できないなぁ……でも、なのはちゃん凄く嬉しそうだし、シグナムさんも照れてるけど何処か嬉しそうだから良いんじゃないかな?
きっとなのはちゃんは、守護騎士の皆に色んな事を経験してほしいと思ってるんだよ……将であるシグナムさんには特にそう思ってるのかも。」
その可能性は大有りね。
守護騎士のリーダーであるシグナムは、きっと今まで一番苦労して来たでしょうしね……なのはも其れを知ってるからきっと無意識にシグナムをね。
ふぅ、其れを考えたら熱くなってたのが馬鹿らしく思えるわ。
よくよく考えたら、なのはに限って下心アリであんな事をする筈がないわ、勿論シグナムもね。
ったく、精々主従の触れ合いを楽しみなさい――なのはもヴォルケンリッター達も、目一杯楽しまなきゃダメなんだからね。
さて、なのは達の邪魔するのも悪いわね?アタシ等は何処から回ろうかすずか?
「そうだねぇ?……あ、ダーツゲームやってみない?」
「良いわね?なんなら勝負する?」
「ふふふ、こう見えてもダーツは得意だから負けないよ?」
言ったわね?じゃあ、負けた方は勝った方にカキ氷奢り!異論はないわねすずか!?
「良いよ?ごちそうさま、アリサちゃん♪」
「やる前から勝った気になってんじゃないわよ!その自信を木端微塵に砕いてやるから覚悟しなさいよ?」
さぁ、勝負よすずか!!
仮に此処で負けても、夏祭はまだまだ此れからだから、色んな出店で勝負するからね?
今夜はとことん楽しむわよ〜〜〜〜〜〜♪
To Be Continued… 
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