Side:アリア


ジュエルシードが合体して1体のモンスターになるなんて、幾ら何でも予想外だよ……アレの推定ランクはS-ってところだね。
で、如何するロッテ?一応介入しようか?


「必要ないんじゃな〜い?…高町なのはとその仲間達に闇の書の守護騎士と謎の集団……其れが力を合わせればアレくらいは余裕でしょ?
 其れにアリアだって気付いてるんだろ?…高町なのはと、八神はやて、月村すずか、アリサ・バニングスの異常なまでの成長速度はさ。」


えぇ、気付いてたわ。
魔法と出会ったころは、高く見積もってAランク相当だったけど、今のあの子達は間違いなくAAA+は下らない…テスタロッサの娘もね。

元よりテスタロッサの2人娘は魔法に触れる機会は多かっただろうし、実際に魔導師として活動してるんだから此れ位になっててもオカシクない。
だけどあの子達は、つい最近魔法と出会ったって言うのに、1ヶ月もしないで此れだけの強さに達するなんて信じられないよ。


もっと言うなら、高町なのはは自身が戦うだけじゃなく、共に闘う仲間に常に的確な指示を出している――指揮官型の能力も備えているからね。

その上で闇の書の主であり、凄まじい魔導ランクを有してるとなれば、最高評議会は…


「間違いなくなのはを狙うね。利用するか、或は亡き者にするかは分かんないけど…」

「やっぱりそうよね……だけどそんな事はさせないわよ。」

一度お父様の所に戻ろうロッテ――いろいろ報告する事も有るからね。


「了解〜〜。…お父様は永久凍結以外の方法を見つける事は出来たかな〜〜?……出来てると良いよね…?」


そうだね……其れがあれば、私等は高町なのはを永久凍結封印しないで済むし、あの子の家族を悲しませないで済むからね……望みは薄だけど…














魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天26
『そして全てが決着する』











Side:シグナム


主なのはと、織田信長公の戦いの影響を受けて1体の魔物と化したジュエルシードか……笑えない冗談だな。
あまり強い相手ではないだろうが、6つもの純粋魔力を圧縮して生まれた相手故に油断は禁物――圧縮魔力をどんな攻撃に使ってくるか分からないしな。

「正直な事を言うなら、主なのはは激しい戦闘を行った後故にゆっくりお休みいただきたいのですが…」

「其れはダメ!皆が頑張ってるのに、私1人だけ高みの見物なんて出来ないよ!」


ふふ…貴女ならばそう言うと思いました。
ですが、魔力が底を突き始めているのも事実でしょう?……ですので主なのはは、信長公と共に『アレ』への止めの一発をお願いします。


「封印の為の最大の一撃…」

「やって出来ぬ事はないが、今のワシ等ではアレを止めるだけの一発を放つには…」

「集束に時間が掛かるから5分は欲しいんだけど……行ける?」


5分ですか……問題ありません。
我等ヴォルケンリッターと、此れだけの仲間が集っているのならば、例え幾万の敵を相手にしようとも負ける事はありません。

何よりも、貴女は我等騎士と、友を信じて下さっているのでしょう?――あなたが信じて下さるのであれば、我等はどんな困難でも超える事が出来ます。


「そう言う事よなのは、アンタはとどめの一発をキッチリ用意しときなさい!」

「なのはさんは一杯頑張りました、今度は私達の番です!
 6個のジュエルシードが合体したからと言って何です?そんなモノ、気合と根性と友情と熱血でなんとかなります!!!」


……そうなのか、アミティエよ……まぁ、納得してしまうがな。
兎に角、此れがジュエルシードを巡る戦いの最終章です――ヴォルケンリッターが将・シグナム、先陣を切らせていただきます!


「うん!お願いシグナム!ザフィーラとヴィータちゃんも続いて!!シャマルは皆のサポートを!」

「おうよ!」

「心得ました…!」

「相変わらず的確な指示ね♪」


だな………ふ、先陣を切るとは言ったが、結局皆で一緒にと言う事か?
はやて嬢も月村もバニングスも、フローリアン姉妹とテスタロッサ姉妹も……其れに隼人達もか――だが、其れが良い。

主なのはと信長公の戦いに決着が付いた今、敵も味方もないからな――今この時は、暴走したジュエルシードを抑える仲間だ。…では行くぞ!!








――――――








Side:プレシア


「?」

「如何かしましたかプレシア?」


いえ…何か不思議な感じがしたのよ……何と言うか、何処かに――違うわね、海鳴臨海公園に向かわなければならないような気がして…


「海鳴臨海公園?
 確か、なのはさんがジュエルシードを取り合ってる相手方のリーダー…織田信長と一騎打ちをする場所だったと思いますけれど……何で突然?」

「分からないわ――ただ漠然と、行かなければならないような気がしたのよ。」

本当に行き成りなんだけれどね……何かしら一体?
若しかして、地球の歴史上の人物を実際にこの目で見たいと思った好奇心だとでも言うのかしら?
……と言うよりも、会わなければならない気がするのだけど如何してかしらね?


「さぁ?…ですが、気になるのならば行ってみた方が良いのではないですか?
 単なる気のせいだとしても、実際に行ってみる事でスッキリはすると思いますよ?留守番はちゃんとしておきますから安心してください。」


そうね…気になるなら行ってみるに限るわ。
じゃあ、申し訳ないけれど留守を頼むわねリニス。何か異変が起きたら…


「分かっていますよ、直ぐに連絡を入れます。
 私は、貴女自身が数多の局員の中から助手兼秘書として選び出した者ですよ?何が起きてもバッチリ対処してみせます!」

「そうだったわね……流石は私が見出しただけの事は有るわ。」

そう、リニスが残ってくれるなら此処は大丈夫だし、何かあってもすぐに連絡が入るわ――なら私はこの不思議な感じの正体を突き止めるだけ。



だけど、如何して私は其処に赴いてまで会わねばらならないと思ったのかしら……織田信長と言う人に――








――――――








Side:なのは


うん、予想はしてた。予想はしてたよ?シグナムやはやてちゃん達が負けるなんて微塵も思ってなかったけど――

「誰が如何見ても完封してますよね、信長さん?はやてちゃんもジュエルシードの封印は出来るから、私達が止め差す必要ってあるんでしょうか?

「うむ…膨大な力を秘めた宝玉の集合体が、まるで相手になっておらんな。この時代の娘と言うのは此れほどまでに強いモノか…


6個のジュエルシードが合体した暴走体を完封状態。
まぁ、ある意味で此れは当然の事かもしれないね……皆が力を合わせて戦えば、どんな相手にだって勝つ事が出来ると思う――ううん、勝てる。

6個も合体してるから耐久力が高いみたいだけど、其れが崩れるのも時間の問題なの。


「ふふ、真に強き者達だなお前の仲間達は……アレだけの者達がお前の下に集うとは、お前はきっと上に立つ者の器なのだろうな。」

「信長さん?」

「如何に強き力を持っていようとも、最終的に人を惹きつけるのは人間性と人としての器の大きさに他ならぬ――カリスマ性と言ったか?
 なのはよ、お前には強烈なカリスマ性が備わっている……だからこそアレだけの仲間がお前の下に集ったのだ。
 これは誇るべき事よ……ワシとて真にワシに付いて来てくれる臣下はホンの少ししか居なかった……まして、同列の仲間等は皆無であった。
 ワシには居なかった真の仲間がお前には居るのだ――お前は全てにおいてワシを上回ったのだ、この第六天魔王をな。」


はぁ……そうですか……ちょっとくすぐったいです、歴史上の有名人に褒められるなんて。
だけど悪い気分じゃありません――それよりも行けますか信長さん?そろそろアレが動きを完全に止める頃ですよ?


「愚問だな…お前の最大の一撃で落とされはしたものの、アレ如きに後れを取るワシではない。
 お前こそ大丈夫なのかなのはよ?アレだけの一撃を撃ったとなれば、魔力とやらは殆ど残っていないのではないのか?」

「大丈夫です!アレを封印する一発を撃つくらいの魔力は残っていますから!」

動きが完全に止まったら一気に撃ちます!








「覇ぁぁぁぁあぁぁぁ!紫電一閃!!!」

スティンガー!そんで…ミリオンスタップ!!

「全て凍てつけ…フリーズ・エクスキュージョン!!」


うん、皆の波状攻撃で動きが完全に止まった!


「今よ、なのはぁぁぁぁ!!!」


「うん!信長さん!!」

「ではやるか…我が力を思い知れ――宝玉如きが我等に刃向おうなど100年は早い……冥獄へ送ってくれる…魔神転輪衝!!!


此れで終わり!残る魔力を込めた全力全開の、ディバイン…バスタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!


『大人しく封印されやがりなさい……Divine Buster.』



――ドッゴォォォォォォォォォォォン!!!!……コトン




はぁ、はぁ…ジュエルシード、封印なの……だけどもう限界…魔力は空なの…


『そうですね…バリアジャケットを解除し待機状態に戻ります。』

「うん、レイジングハートもご苦労様。」


――シュゥゥゥ…ペタン


「む?如何した座り込んで?全てが終わって気が抜けたか?」

「あはは…そうじゃなくて、魔法の力が無いと私は立つ事も出来ないんです…今の一撃で魔力が切れちゃって…」

「なんと…足が動かぬ身でありながらアレだけの事を………お前には驚かされてばかりだ。」


にゃはは……まぁ、此れで特別不自由を感じてる訳ではないんですけどね――ん?如何したの闇の書?
うん、うん……え?本当に?……其れは流石に驚きなの。多分大丈夫だと思うよ?


「?如何かしたか?」

「あのですね…闇の書が信長さんに伝えたい事が有るそうなんです……」

「その書が?」


はい…取り敢えず…



――パパパパパパパパパパパパ



凄い勢いでページが捲れて中ほどで止まって…………出て来たね……


久しぶりね兄様。兄様が私を呼んだのね?

「!!お前は…お前はまさか市なのか!?……力不足故に蘇らせる事は出来なかったが。魂は呼び寄せていたいたのか…」

本当に強引なんだから兄様は――私は兄様が本能寺で死んだ10年後に死んだわ…まだ転生はしてないけど。
 だけど兄様、私はもう死んでるんだから、蘇らえたりしたらダメなんだよ?

「分かっておる……だが、ワシとて人よ――己の大切な存在を今一度手にしたいと思っても罰は当たるまい?」

うん…だけど、人様に迷惑かけちゃダメ。


まさかお市さんが闇の書の中に居たなんて驚きなの。
闇の書が言うには、近づいて来たから反射的に蒐集しちゃったって事らしいけど――此処まで来ると何でもありだね。

だけど、此れでハッキリした――信長さんはお市さんを蘇えらせるためにジュエルシードを集めていたんだね…


「しかし、来たのはお前だけか市よ?ワシは濃も呼んだのだが…」

姉様も?…居なかったよ?此処に呼び寄せられたのは私だけ……それどころか冥界にも姉様は居なかったと思うんだけど…


へぇぇ!?濃姫さんまで呼んでたんですか信長さん!?
でも、来たのはお市さんだけ?……如何して…


「成程…矢張り実際に来てみるモノだわ…」

「「「「「「プレシアさん!?」」」」」」

「母さん!」

「お母さん!」



プレシアさん?……如何かしたんですか、こんな所に……


「妙な予感がしてね…だけどその正体がハッキリしたわ――マッタク自分にこんな事が起きるとは思っていなかったわ。
 あのね、呼び寄せる事が出来るはずがないでしょう?既に私は転生しているのよ…プレシア・テスタロッサと言う私にね…」

「!!……まさか…お前は!!」

「気付きなさい?……そう、貴方の妻だった『濃姫』よ――貴方に会って思い出したのだけれどね。」


はいぃぃぃ!?プレシアさんが濃姫さんの転生体!?予想外にも程があるの!誰も予想してないの!超展開上等なの!!


「主なのは、お気を確かに!!」

「無理!闇の書にお市さんの魂が住み着いてる事にだって驚きなのに、プレシアさんが濃姫さんの転生体ってドンだけなの!!
 フェイトちゃんとアリシアちゃんだって行き成りの展開に開いた口が塞がらなくなってるの〜〜〜〜〜!!!!」

「まぁ、確かに驚きやけどね…」


驚いたなんてものじゃないの……だけど、信長さんは何か嬉しそう。
うん、当然だよね…大切な奥さんと、転生体とは言え再会できたんだから。


「濃よ…」

「今の私はプレシアよ――私はプレシア・テスタロッサ…それ以外の何者でもないわ。」

「そうか…姿形は変われど、本質は変わらぬか……ワシの愛した濃姫そのものよ。」

「当然でしょう?私は濃姫の転生体なのだから――だから、あの時伝えられなかった事を貴方に伝えるわ。
 『私は幸せでした……この身朽ちても、この心は永遠に貴方を愛しています……』此れだけは伝えておきたかったのよ。」

「であるか……ワシもまた幸せ者だな…」



信長さん、プレシアさん……良かったですね。
と、クロノ君此れ!


「あぁ、封印したジュエルシード6個だな?一応安全は確認させるから、大丈夫だったら闇の書で蒐集してくれて構わないさ。」


じゃあ遠慮なく。

ところで信長さん達はどうなるの?悪い事をするためにジュエルシードを集めて居た訳じゃないと思うんだけど…


「どうにもならないさ…と言うかどうしようもない。
 大体にして管理外世界に介入すること自体が異例な事だからな……まあ、精々今回の件に関して簡単な事情聴取をするくらいさ。
 何より、管理外世界の歴史上の人物と、素性不明の忍者を逮捕する事は幾ら何でも無理だからな。」


なら良かったの――信長さんは邪悪な意志でジュエルシードを集めて居た訳じゃないからね。
だけど、取り敢えずこれでジュエルシード事件は解決だね――皆、本当にお疲れさまなの!





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それから数日後、私達は再び海鳴臨海公園に集合していた――目的は信長さん達のお見送りなの。


「済まぬな、態々見送りになどな」

「私達がそうしたかっただけですから気にしないでください。」

其れに友達を送るのは当然の事だと思うんですけど……?



「友達か…悪くないモノよ……だが、ワシはこの時代で表舞台に上がろうとはもう考えてはおらん。
 新しき世界を造りだすのはお前達だなのはよ……ワシはゆるりとお前達の戦いを見せて貰うとしよう…」

「そろそろ時間だ…」

「うむ…ではな、なのはとその仲間達よ――機会があればまた会おうではないか!!」

「はい!!」

互いに握手をして、そして信長さんの姿は目の前から消えた…隼人さん達もね。









こうしてジュエルシードを巡る一連の事には片が付いたの――色んな事が有ったけどね。


だからこれから語られる事はホンの空白期間の事――A'sへと繋がるまでの取りとめのない、だけど大事な時間の話になると思う。



これからも色んな事が起こるだろうけど、私達なら何があっても大丈夫。
シグナム達が、はやてちゃん達が一緒なら、何があっても絶対にね。



ふぅ……うん!高町なのは、今日も1日頑張ります!

















 To Be Continued…