Side:はやて
手に入れたジュエルシードから早速魔力を蒐集〜〜〜…と行きたい所やけど、危険なロストロギアやから一応の検査をしてからやないとアカンのよね。
まぁ、普通に考えれば其れが当然の事や…個人的にジュエルシード集め取るんなら兎も角、公的機関として集めとる訳やからね。
そんな訳で、検査終了までは暇を持て余しとるところやろうけど――其れがそうでもないんよね。
「クロノ君、忍者さん達の本拠地は割り出せそう?」
「極小レベルのバインドの反応を追う訳だから時間は掛かるだろうが、割り出す事は不可能じゃない。」
絶賛、あの忍者連中の本拠地索敵中やからね。
クロノ君が連中に取り付けた極小バインドの反応を追って位置の特定をするって、中々如何して反則的な索敵法やね……まぁ、ある意味確実やけど。
「クロノの実力は母さんも認める程だし、エイミィさんのオペレーターとしての能力も多分管理局で5本の指に入るレベルだと思う。」
「それに〜、パパも忍者連中を探してくれてるから直ぐに見つかる筈よ〜〜ん?」
……今更やけど、ホンマに私等の戦力てどないなってんのやろね?
闇の書の主とその守護騎士に、グランツ博士のデバイスを有するのが4人で、次元大魔導師の娘さんが2人に、最年少執務官のクロノ君。
そんでもって、アロンダイトに選ばれた私がおって……過剰戦力って言われても過言やないで此れ。
「確かにはやての言う事も尤もだが、君達はあくまでも『現地での協力者』に過ぎないからな…アースラが過剰戦力と言われる事はないさ。」
成程…物は言いようと言う事やね。
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天24
『第六天魔王の挑戦状』
Side:なのは
クロノ君が忍者さんに取り付けた極小バインドの反応を追跡して、遂に場所が突き止められたけど――此れは何処なの?
赤い矢印が示す日本地図のとある場所……アリサちゃん、あそこって何かあったっけ?
「ちょっとまって……あそこはねぇ……あるわ!!
てか、あの場所は日本人なら忘れちゃダメでしょうが!!矢印が示してる場所にあるのって『富士山』じゃない!」
えぇぇぇぇ!?ふ、富士山!?
何でそんなところに?…それ以前に山頂付近に下手に建物なんて建てたら、富士山に吹き付ける突風で跡形もなく吹き飛ばされちゃうの!!
――ヴン
『其れについてなんだけど、少し良いかい?』
「お父さん?」
「パパ?」
グランツ博士、何か分かったんですか?
『うん、少なくとも相手の本拠地に関しては可成り大きなデータを得る事が出来たよ。
彼等が富士山を本拠地として使っているのは間違いないけど、それは富士山の表面じゃなくて――富士山の内部なんだ。』
「「「「「「富士山の内部!?」」」」」」
『封印されたジュエルシードの魔力パターンを記録しておいてね、其れを探してみたら富士山内部からの反応をキャッチしたんだよ。
同時に、彼等の移動の足跡も分かった――彼等は海鳴から『転移』するような形で富士山内部に移動してるんじゃないのかな?』
「えぇ、仰る通りです。
確かに彼等は、先刻の海上戦闘の後、転移としか思えない方法でその場所に移動しています。」
転移……其れはそうだよね?海鳴から富士山までは相当な距離があるんだから。
でも、あの忍者さん達は魔法は使えないのにどうやって転移紛いの事をしたんだろう?
「そりゃ忍術でしょ?あいつ等忍者なわけだし。」
「そうじゃなければ、え〜と……そう、陰陽術とかで使うって言う御札とかで?」
「転移符ですか――あるかも知れませんね。」
魔法以外にも不思議な力は意外と多いんだね?…そう言えばお兄ちゃんとお姉ちゃんも剣術で『気』が如何とか言ってたっけ。
「でも、不思議ですよね?富士山の内部に、活動の拠点として使えるくらいの空間があるならとっくに誰か見つけてると思うんですけど…」
『恐らくは内部への入り口が、富士の裾野の何処か人の立ち入らないような場所にあるんじゃないかな?…例えば樹海とか。』
「あぁ〜〜……其れやったら確かに見つからへんわ…」
「あの人達は鍛えられた忍者だから、そんな場所でも入って平気って事なのね〜〜…まぁ、今は転移で移動してるんだろうけど〜〜…」
もう何が何やら……だけど、此れであの人達の居場所が分かったんですよね?此れから如何するんですか?
「場所が分かれば其処に転移するのは簡単だ――武装隊員を送り込んで彼等を全員確保する。
ロストロギアの違法所持と言うだけでも拘束する理由は充分だからな。」
「クロノ君、其れは止めておいた方が良いと思うの。」
「何故だ?相手の本拠地が分かったんだ、此方から攻め込むのも悪い手ではないと思うんだが…」
「相手が普通ならそうかも知れへんけど、今回ばっかりは忍者が相手やからなぁ……富士山内部のアジトにはきっと大量の罠が仕掛けられとるで?
具体的に言うと、鉄のトゲトゲが大量に付いた吊り天井が落ちてきたり、竹槍が仕込まれた落とし穴があったり――」
前後の扉が塞がれて左右の壁が迫ってきたり、階段の上から巨大な鉄球が転がってきたりする可能性も有るの。
幾ら魔導師とは言っても、忍者トラップを喰らったら無事じゃ済まないと思うよ?
「一体何者なんだ忍者って言うのは……だが、手を拱いている訳にも行かないだろう?
仮にトラップが仕掛けられていたとしても、相手の目の前に直接転移させればそんなモノは意味がないしな。」
其れは確かにそうかもしれないけど……ん〜〜〜〜…何か嫌な予感がするんだよねぇ。
ねぇ、シグナムは如何思う?騎士としての貴女の意見を聞かせて貰って良いかな?
「僭越ながら…戦闘以外の危険を回避できると言うならば、敵の本拠地が判明しているこの状況での突入は妥当な判断かと思います。
より危険性を回避するならば、転移にシャマルの『旅の鏡』を併用すればより正確な位置に転移させる事は可能な筈ですので。」
成程……歴戦の騎士であるシグナムが推すなら大丈夫かなぁ?
だけど、この胸のもやもやが消えてくれないのが何とも嫌な感じなの〜〜〜!!
『なのは、ちょっといいかしら?』
「お母さん!?……アレ?家や翠屋に通信機器って置いて来てたっけ?」
『グランツさんが作ってくれたのよ〜〜♪』
『いやぁ、やっぱり家族と連絡が取れる手段が携帯電話だけと言うのは味気ないからねぇ?』
其れで光学ディスプレイ付の通信機器を即刻作り出しちゃうグランツ博士は、若しかしたら未来のノーベル賞受賞者なのかもしれません。
って、如何したのお母さん?私達はしっかりやってるから大丈夫だよ?
『其れについては安心してるわ。
今日連絡を入れたのは別件よ……なのは宛に『決闘申込状』なんて物が家の庭先に放り込まれてるのを恭也が見つけてね…』
「決闘申込状だぁ?なのはに決闘挑むなんざ良い度胸じゃねぇか。
だが、なのはが出るまでもねぇ――なのはに…いや、なのはだけじゃねぇ!アタシの仲間に盾突こうって奴は、アタシが纏めてぶっ潰す!!」
にゃはは…ヴィータちゃんは頼もしいね。
だけど、私宛に来てるって言うなら私が受けなきゃ――内容を見てからだけどね。
「シャマル、お願いして良い?」
「は〜い、お任せ〜〜♪」
便利だよねぇ『旅の鏡』。
画面の向こうにシャマルの腕が……物凄く気妙な光景が目の前で展開されているの――其れに動じないで、シャマルに書簡渡してるお母さんも大概だけど。
と、ご苦労様シャマル♪
「いえいえ、此れくらいはお安いご用ですよ〜〜♪」
其れでもね。
さてと……うん、確かに私宛になってるね…内容は――
『高町なのは殿へ。
貴殿に一対一での決闘を申し込みたい――互いの所有する『魔力を内包したジュエルシード』の全てを懸けて。
貴殿が勝利した場合は、此方の持つジュエルシードを全て譲渡する事を天地神明に誓って宣言しよう。
だが、某が勝利した場合は貴殿の有するジュエルシードを全て此方に渡して貰う。
条件は此れにて対等な筈…決闘を受けてくれるのであれば、明朝六時に海鳴臨海公園に来られたし…貴殿が来てくれることを心から願っている。』
本当に一対一での決闘の申し込み、其れもジュエルシードを全て懸けての!!
差出人の名前はないけど、此れは間違いなく本気の決闘申し込み……!!
「そんなに固く考える必要はないさ…その決闘を受ける必要はない――今し方、アースラの武装隊員を指定座標に転移した。
自慢じゃないが、アースラの武装隊員は全員がAクラスの魔導師だ、早々簡単にやられる事はない。」
「クロノ君!!」
確かに、それならやられる事はないかも知れないけど、なんだかすごく嫌な予感がするの!武装隊の人達を戻して!!
『…ほう…此処に乗り込んでくるとは称賛に値する連中だ。だが、ワシは貴様等に用はないのだがな…』
『お前になくとも此方にはある!
ロストロギアの違法所持でお前を逮捕する――無駄な抵抗はしないで大人しくしろ!』
モニターの向こうでは、アースラの武装隊員さんと、まるで戦国武将みたいな人が対峙してる――あの人が忍者さん達のリーダーなのかな?
…何て言うかモニター越しでも分かる――あの人は只者じゃないって。
「主なのはも気が付きましたか?……アレは只者ではない、間違いなく幾多の戦場を駆け抜けて来た豪傑でしょう。」
「やっぱりそうだよね…」
『無駄な抵抗か……生憎とワシは無駄な事はしない主義でな?
無駄ではない故に抵抗させてもらおうか?……安心せい、命までは取らぬ――ただ、魔王の一撃をその身で知って貰うがな。』
!!
クロノ君、今すぐ武装隊の人達を戻して!!あの人、一撃で全滅させるつもりなの!!
あの人は――多分、武装隊の人達の何倍も強い筈だから!!
「確かに、彼は危険そうだ…エイミィ、転送ポートを――!」
『冥低に沈め…!』
だ、ダメ!!間に合わないの!!!
――ドガァァァアッァァァァン!!
うそ……一瞬の閃光の後で映し出されたのは、ボロボロになった武装隊員さん達――生きてはいるけど、これ以上の戦闘は絶対無理なの…!
でも、それ以上にAランクの魔導師を一撃で葬り去ったこの人は一体…?
『うむ…誰も死には無かったか――天晴なモノよ。
さてと、この装置は貴様等の本拠地と繋がっているのだろう?――ふむ、成程お前達がワシ等の相手となる者達か。』
光学ディスプレイの通信機器を利用して!!
――はい、確かに私達が貴方の相手になる者です……この決闘申込状は貴方が?
『ふむ…無事に届いたようだな――成程、お前が高町なのはか――確かに良い目をしておる。決闘申込状は見たか?』
「はい――互いのジュエルシードを懸けての一騎打ち、ですよね?」
『うむ…だが、其処に条件を追加しよう、主が勝った場合には、ワシの攻撃で沈んだ連中も無条件で解放しようではないか。』
その人達を無条件で――破格な条件ですね?
実は裏があるんじゃないですか?……其れがないと此れだけの破格取引は有り得ませんから。
『幼いながらも頭の回る少女よ…それは主の友も同じであろうがな。
確かに裏はある――ワシが勝った場合には、主等の所持するジュエルシードに加えて、主等も我が配下に加わって貰う事になる!』
やっぱり…!
だけど…クロノ君、この決闘は受けても良いよね?
「あぁ…寧ろ受けてくれ。
彼等は大事なアースラのスタッフだ、みすみす失う訳には行かない。」
了解!……と、言う訳で貴方との一騎撃ちは受けて立ちます!――だから、貴方が倒した武装隊の人達の無事は約束してください!
『無論その心算だ…だが、それ以上に決闘を受けてくれて嬉しいぞ、高町なのはよ。』
其れはどうもです。
ん?そう言えば、私の名前は貴方に知られているけど、私は貴方の名前を知らないの――名前を教えてもらっていいですか?
『よかろう…ワシがお前の名を知っているのに、お前がワシの名を知らぬのは不公平だからな。
では心して聞け、我が名は織田信長――戦国の世からこの時代に時空転移した第六天魔王こと、織田上之介信長よ。』
「な、織田信長やと!?」
「戦国屈指の大大名ですって!?幾ら何でもないでしょそれは!?」
「あ、でも実は本能寺の変の時に何らかの力が働いてこの時代に転移した…とか?」
「まさか、戦国の英傑をこの目で見る事が出来るとは感激です!!」
「アミタ〜〜…そんな事言ってる状況じゃないと思うんだけど〜〜〜?」
織田信長さん!!――戦国時代屈指の英傑!!!
勿論、その名を語った偽物の可能性の方が高いけど……この人は偽物なんかじゃない――間違いなく本物の織田信長さん。
証拠とかそんなんじゃなくて、私の直感が『この人は本物だ』って告げてるから。
「織田…信長公ですか――感激ですね、歴史の授業でしか知らない戦国武将とこうして話が出来るなんて。」
『左様か…ワシも感激しておるぞ?主等の様な強き者が後世に存在していたと言う事にな。』
褒め言葉として受け取っておきますね。
でも、信長さん――一対一の決闘……私は負けませんから!
『その意気や良しだ――ワシとて負ける心算はない。互いに全力を尽くして戦おうではないか?』
望むところです!私の全力を持って貴方を倒します!!――いえ、倒すんじゃなくて私が勝ちます!!
『ほう…では明朝の決闘を楽しみにしていよう――分かっているとは思うが、くれぐれもジュエルシードの魔力を吸い取ったりするなよ?』
「はい、分かっています!」
『ふむ……それではな…お前と直接見えるのを楽しみにしておるぞ。』
――プツン
通信終了――だけど、急展開とは言え此れは悪くないと思うの。
私が信長さんと戦って、そして勝てば全てが丸く治まるから――だから私が出る…良いよね?
「主なのはがお決めになった事――そしてそれが間違った事でないのならば、我等は止めはしません。
主の思うままに、存分に信長公とやり合ってください……但し、貴方の命に危険が生じそうな場合は有無を言わずに介入する事だけはご容赦ください。」
「うん、分かってる――ありがとうシグナム、了承してくれて。」
「いえ…主なのはの成さんとしている事は間違いではないので…」
其処まで信頼して貰ってるなら、この決闘は絶対に負けられないね!
悪いけど、この決闘は私が勝たせてもらうよ信長さん――闇の書の主、高町なのはが勝たせてもらうの!!
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そして翌日の明朝――海鳴臨海公園。
「来たか…待っていたぞ、高町なのはよ。」
「高町なのは、此処に推参しました――宜しくお願いしますね、信長さん!」
夜が明け始めたその場所で、私は戦国時代最強の英傑と邂逅した―――
To Be Continued… 
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